10/08/17 14:55:16 DSrI/BiE
つい頬を緩めた左近だったが、続くあるじの言葉はまさに衝撃だった。
「島の左近の浮き名を、俺が知らぬとでも思ったか!」
「は……」
「左近ばかりがそうではない……俺も思いを寄せているとは、なぜ思わぬ!!」
「!!」
肩で息をつくように叫んだ三成の目には、感情の高ぶりゆえにか、うっすらと涙が浮かんでいる。
その姿に加え、告げられた言葉の意味を悟って、左近は大きく目を見開いた。
「殿……」
「知らぬ、左近など!!」
叫ぶように言った三成の、その指先が小さく震えていることに左近は気付く。
どれだけの勇気を振り絞って告げられた言葉か分かろうというもので、
それを目にした瞬間、左近の心に温かいものが走った。
「覚悟を決めて、いらっしゃったと?」
「最初から、そう言ったではないか」
尖った声は周囲との軋轢を招くものだが、左近にとってはただの意地っ張りの強がりでしかない。
ゆっくりと、あるじとの距離を詰める。
そっと肩を抱いても、三成は逆らわなかった。
「この左近のものに、なってくださると?」
「夜這いだと……言ったろう」
憎々しげな言葉が、どうしてこうもいとしい。
堪らずに抱き寄せれば、細い肩は左近の腕の中へすっぽりと収まってきた。
「大切にいたしますよ」
「……ああ」
(お粗末様でした!)