10/12/11 00:58:57 Q5Ivfs050
「すみません、留置担当お願いします。」
「……ん? お嬢ちゃん? 弁護士ごっこは公園でやろうね。」
「名刺とバッジを見てください。わたしは弁護士です。」
受付の署員が名刺を見る。確かに、名刺にはこう書いてあった。
―弁護士 絢辻つかさ。
「え? ええ!? じゃあもしかして貴方があの小学生弁護士……!?」
「弁護士の、絢辻つかさと申します。」
史上初の小学生弁護士、絢辻つかさの知名度は、ここ千葉県銚子市においてはまだ今一つのようだった。
IQ190の天才児として8歳で都内の大学へ進学。大学3年の時に司法試験に合格し、
直ちに大学を退学、1年間の司法修習を経て、
現在は都内の刑事弁護中心の法律事務所に勤務している。
今日はこれから依頼人になるであろう被疑者との初めての接見だ。
被疑者の名前は、橘純一。昨晩、住宅街で空き巣を働いていたところを現行犯逮捕された。
「橘さんと接見したいのですが。初回なのですぐにお願いします。」
「え、えーっと、分かりました。少々お待ち下さい。
……あーもしもし留置担当? 橘に接見。弁護士来てる。
調べ入ってるって? あー、うん、今日初めてだからちょっと時間作ってあげて。よろしく。」
署員は手早く用件を伝えると、ソファーに腰掛けている絢辻の方を見てこう言った。
「あ、それじゃ先生、どうぞ。」
先生、か……。絢辻はこう言われる度に、いつもくすぐったい気持ちになる。いつになったら慣れるのだろう。