10/11/25 01:14:12 yW4xWrEM0
■(prodhucer view)
呼び鈴を鳴らすと、ドタンバタンという音と共に、誰かが駆けてくる音がした。
一応千早から合鍵を預かってはいるが、非常手段以外は使わないと決めているが、何かあったのか……
ガチャ。
「すまん、やっと仕事終わったよ……うおっ!?」
「お、お帰りなさいませプロデューサー……ご飯とお風呂、どちらに……だ、ダメッ!やっぱり言えません!!」
い、今目の前で起こったことをありのままに話すぜ。
ドアを開けたら三つ指ついた千早が深々と頭を下げて俺を迎えてくれた。
しかも、ピンクのフリフリエプロン以外は【俺の視点と角度からは服が見えない】状態で、だ。
振り向き様に、真っ赤になって逃げた千早の後姿から、水着姿を確認はしたけど……
一瞬、何が起こったかワケわかんなかったぜ。最も恐ろしいものの片鱗を味わったような……
そして、リビングのドア影からこっちを見て、ガッツポーズをする天海さん。
なるほど、これは彼女の差し金か……嬉しい不意打ちだが、後で千早のテンション真っ黒になるから程々にね。
「……というわけで、カラオケ点数勝負に勝った賞品として、水着エプロンでお出迎えを選んだんですよ♪」
「あー、確かに、千早は点数取るために歌うの、いまいち苦手だしな」
「くっ……あずささんも、よりによって何と言うデザインのものを置いていったのか……」
確かに千早のエプロン姿は見慣れているが、三浦さんが置いていったというアレは反則だ。
半ばコスプレ衣装っぽい、薄ピンク色でフリルやらヒラヒラいっぱいのビジュアル重視のアイテム。
せめて機能性を重視して、燃えにくい布で作っている事が唯一の救いかな。
水着の上からコレを着ると、18歳未満お断りのシチュエーションに一瞬見えるから始末が悪い。
天海さん、こんな事自分の担当Pにしたら、正座で二時間お説教だから気をつけるんだよ……でもGJだぜ!
俺が帰ってくるまで二人で食事の用意をしてくれたのか、エプロン姿のアイドル二人と飯が食える
この状況を、俺は幸せに思わないと罰が当たるだろうな。
「うん、美味い!マジで美味いよ……肉だからってわけじゃなくて、腕前もいいし」
「そうですか……今日はちょっと厚切りだったので、好みに合って良かったです」
「だって、ほら……そこらの牛丼系チェーンで食うと、焼いてなくて【生姜煮】っぽいんだよね。
でもこれ、ちゃんと焼いてるし臭みも無いし、肉の味もちゃんと出てるし!!」
「そうなんですよねー。タマネギ入れるタイミングとかもキッチリ計ってたし……しかも今日は
乙女よ大志を抱け!出ましたよ!」
「ちょっと春香!?それは別に言わなくていいでしょ!?」
「あー、動画で見せたかったなー……フライパン振りながら【乙女よー大志を抱け♪】の辺りを歌う時の
千早ちゃんの顔!!エプロン姿のアレ見て、堕ちない男性は絶対いませんよ!!
【たーちーあがれー女諸君!】で、きっちり火を止めて、最後の節で盛り付ける様子とか、もう……
どんだけ幸せ光線出してるんだよって顔で、ついつい意地悪の一つもしたくなるわけですよ!!
しかも、憎たらしいくらい生姜焼き美味しいし!!お行儀悪くてもタレをごはんにかけて食べたいくらい!」
「そ、それは申し訳ない……」
さすがにこの後俺は自分の安アパートへ帰るが、天海さんと二人なら大丈夫だろう。
騒がしくても、精神的に疲れても……孤独でいるよりはずっといい。
千早もそれを良く知っているから、天海さんにさんざんいじられようが、本気で迷惑な素振りを全く見せないんだ。
たまーにテンション真っ黒になってる時もあるけど、きっと君のおかげで千早が救われてる部分の方が多い。
千早が本当の意味で、笑ったり泣いたり、怒ったりする存在は天海春香ただ一人なんだから。
だからいつも思う。本当にありがとう、と。
※肉じゃがは家庭的料理の代名詞だと言うけれど、個人的には【生姜焼きを美味しく作れる千早】を推したい。
疲れて帰って来た身体に染みる生姜の香りと肉の味わい、そこに挟み込むキャベツと、熱い豆腐とネギの味噌汁!
千早の料理風景とゴチソウサマの顔で見守る春香さん。そしてぶ厚めの生姜焼きを頬張る幸せな絵が、
皆様の脳内で再生されますように……さて、明日の昼は生姜焼き定食を食うぞ!!