10/09/17 21:12:54 NJEYJ4aa0
思えば、始まりは単純なことだった。押し入れの奥にあった箱の中身・・・・・・
そう、学生時代に遊んだゲームソフトが全ての始まりだ。
「プロデューサー、こんなのばっかりで遊んでいたんですか?」
なぜか自室のように入れ浸っている千早が呆れた声を出す。
今日はオフ、ここはあなたのささやかな2DK我が家。
それなりに綺麗に使っているはずだがそれでも社会人。
毎日のように掃除するわけにもいかず、洗濯物は溜まり、
仕事や趣味の品々が床に並び、缶ビールの空き缶が塔を築く。
たまたま(頻度は週に六日ほど)訪れた千早が心の何かをぷっつりと切れさせた。
「先週は忙しく来られませんでしたがここまで酷くなるとは。プロデューサー、お掃除しましょう」
後は彼女の独壇場。
あなたが空き缶を片付け、雑誌の山から要らない雑誌を選び出し、
それを千早が「プロデューサー、これも不要です」と差し出した秘蔵本と共に
涙を流し、ヒモで括った。その後ろで千早は洗濯をして、冷蔵庫を片付けていく。
そして、彼女が秋物の服を取り出そうと押し入れを漁っている時に見付けたのが件の箱だ。
「いやぁ、まだ取ってあったとは・・・・・・」
あなたとしても頭を掻くしかない。貧乏学生時代、短いサイクルでソフトは手放していたはずだ。
「ああ、残っているのはギャルゲーばかりか。納得、納得」
飽きやすい格闘系、シューティング系は残ってなく、あるのはギャルゲーばかり。
「・・・・・・全ソフト、女性の絵ばかり描かれていますね、プロデューサー」
「ほら、あれだ、この頃からどうやって女子高生と良い関係を築くか興味があったんだ」
「随分と高尚な目標があったんですね。尊敬し直しました」
「まあ、実際には役に立たなかったけどね」
「当たり前です。逆に役に立っていたら、怖いくらいです」
苦笑する彼を見て、千早はため息を付く。そして、あることを思い出す。
このゲームのヒロインから彼の好みを推理することが可能ではないだろうか?
「プロデューサーはどんなキャラクターが好みだったんですか?」
千早は言ってから気付く。ストレートに好みを聞いている、と。
「えっと、初期から親しいキャラはあまり好みじゃなかったなぁ。
どちらかと言うと突き抜けた何かを持っているキャラが多かったな。
お色気キャラも攻略は後回しだったし、メインヒロインは放置したゲームもある」
彼の言葉に千早は心の中で安堵の息を付く。かなり自分は彼の好みでなかろうか?
「でも、この頃のゲームは今考えると現実無視していると思う」
「いえ、今のゲームも現実を無視していると思いますよ」
と言っても千早自身はあまりゲームで遊ばないので断言は出来ないが。
「いや、だってさ、キャラ紹介を見てくれ。何か気付かないか?」
「そうですね。趣味が無難な物ばかりですね」
「いや、そうでなくって・・・・・・」
彼の言葉に千早は他のソフトも手に取るがなにも思い当たらない。
「しょうがないな。3サイズの欄を見てみろ」
「分かりました。メインヒロインは84と言う数字が多いですね」
「まあ、無難な数字なんだろうな。問題は下限の方だ」
そう言って彼は幾つかの取扱説明書を開く。
「ほら、高校生キャラで貧乳キャラは大体78くらいなんだ。
笑っちゃうよな。実際はこれくらい普通なのに。
絶対に制作スタッフはアイドルの公称値しか知らないって。なあ、千早・・・・・・」
そこで彼は気付く、隣で千早の肩が震えていることに。
「そうですか、つまりプロデューサーは私の体は高校生らしくない、と」
「い、いや、違うよ。千早が普通の貧乳であってだな」
「『普通』と『貧乳』が思い切り反発し合いますよ。
そして、プロデューサーにとっての貧乳許容限度は78だと」
「いや、違うから。真も千早も大丈夫だよ、うん」
「そもそも人の魅力は数字で表せない物です。それを・・・・・・」
そう言って語り出す千早を見て、あなたはため息を付く。
自分にだって、数字が魅力の全てではないのは分かっている。
なぜなら、こうして間違った説教をする千早の魅力を数字で表せないと知っているから。
千早、コンビニで丸ごとバナナを買ってきた。派手に口を汚しながら食べてくれ。
一昔前なら、千早も78-57-78くらいだたんだろうなぁ