10/09/09 13:32:45 hj4V9Z/q0
■トレーニング（ランクＣ）
「はひ、はひ……ひ、ひはやひゃん……きゅうけい、休憩、しよ……はひ、はぁ……」
「まだ４キロも走ってないわよ……せめてもう１キロ行かない？」
「む、無理……ぜっっっ…たい、無理……おねがい、休憩……」
たまに誰かと走る合同トレーニングは、新しい刺激になって良いのだけど……
春香と走ると、極端にペースを乱されるのが悩みの種となります。
いえ、春香はアイドルというお仕事の点では尊敬できますし、理屈抜きで魅力的な歌を持っている
素晴らしい仲間であり、ライバルだと思いますよ。
音程を間違えまくろうが、ダンスで転ぼうが、ケーキを１ホール食べてしまおうが。
むしろ肉体的なものより、不思議と精神的に混乱させられるのは、わたしの心が未熟だからなのでしょうか？
「ねーねーいいでしょ？ほら、プロデューサーヤン、プロデューサーヤン！お願いですー！」
「地面を転げまわると、泥が付くわよ？」
「後で洗えばいいじゃない！ほらほら見て！千早ちゃんっぽい？（ゴロゴロ）」
数日前に律子が見つけてきた、わたしが赤ちゃんのように転げまわっておねだりをするアスキーアート（？）
をさっそく春香が真似しているようですが、そもそもわたしはそんな事一度もしていないのだけど。
……でも、このまま押し問答を続けても疲れるだけなので、５分だけ休憩する事にしました。
そういえば、こんな場所で休憩するのははじめてなので、目に映る風景はけっこう新鮮です。
いえ、目にうつるだけじゃなくて、なんだか独特の匂いが……
「ここは、材木置き場かしら？ヒノキのいい香りがするわ」
「あ、ホントだね！うわっ、長い……これ、５メートルくらいあるんじゃない？すごいすごい！」
さっきまでの死にそうな顔はどこへやら……春香は、見るもの全てが珍しそうに、材木置き場の周りを
ちょこちょこと走り回っています。それで身体は休まってるのかと思うほど。
「ち、千早ちゃん見て見て！スゴイの発見！ほら！！」
春香が、まさのお宝でも発見したような顔で、わたしを手招きしました。
そこには段ボールらしきものに積み上げられた本。表紙にあるのは大きな胸を露出させた女性。これって……
「ほらほらスゴイ。えっちな本だよ！！しかもこんなに一杯！！捨ててあるのかな？」
「知らないわよ。関わらない方がいいんじゃないかしら？」
「うーん……でも、ちょっとだけ！ちょっとだけ見てみようよ！！ほら、ここにトングみたいなのあるから、
これでつまんでページめくれば汚くないよ！！」
「わ、わたしは見ませんそんなもの！！だいたい、記者にでも見られたらどうするのよ？」
「大丈夫だってば。見晴らしもいい場所だし。そうだ千早ちゃん、見ないなら見張っててくれる？」
まったく、こう言う事には積極的なんだから……まぁ、少しはテンションも上がってるみたいだし、
やる気を失くされるよりはずっといい。
適度に時間を潰したら、残りを消化して早く次の仕事に行かないと……それにしても、意識的に
春香のいる方を見ないようにするのって、けっこう難しいような……
「うわぁ……この人、あずささんよりおっぱい大きい……うわわ、これもスゴイ！！ひ、ひえぇ～
見えちゃってないコレ？そっか……男の人ってこんなの喜ぶのか……」
「ねぇ春香。見るなら静かに……」
「千早ちゃんも見たいの？やっぱり！」
正直な話、絶対に見たく無いといえば嘘になるけど……でもやっぱり、メジャーアイドルがする事では無いと
思うのです。でも、目を瞑っていても春香の『うっわぁ……』とか『おぉおー！！』とか、いちいち大きい
リアクションが気になるし。見張りを頼まれている以上完全に目を瞑って耳を塞ぐのもいけませんし、
折衷案として耳は塞ぎながら、なるべく春香の方を見ないようにして、周りに注意を凝らしました。
とにかく集中して、意識を春香のいる場所以外に向けると……一応は何とかなるものです。