11/02/15 23:20:44 Dx29baZl0
彼は僕を力強く抱きしめながら耳元でささやいた。まるで魔法をかける呪文のように…。
「今夜は可哀想なことをしたね。でも初めから気持ちよくはならないんだよ。でもこの気持ちよさを味わえるようになったら
君も大人になれる」
僕は無意識のうちに嗚咽していた。震えた肩を彼が更に抱きしめた。初めて味わった感情だった。
「男に抱かれるのが大人のセックス。気持ちいいのはおちんちんだけじゃないんだよ。アナルも性感帯なんだ。
君はまだ幼いから早く大人になりたいだろ?」
僕の嗚咽は止まらない。彼は赤子をあやすように続けた。
「やっぱり今日は可哀想なことをしたね。君はまだ幼い。だけど人生にはいろいろな経験が必要だ。さあ、
涙を拭いて可愛らしい無邪気な笑顔をみせてくれないか」
僕は彼の言葉通り泣きながら強いて微笑んだ。
「そうだ。それでいい。美しい少女のようだ」
彼は言いながら僕の濡れた頬から指先で涙を拭った。
僕の中では彼がさっき呟いた魔法の呪文が渦のようにグルグルと回っていた。
彼と次に逢う約束をすると僕は自室に戻った。午前2時を回っていた。
同室の選手は電気をつけたままいびきをかいていた。僕は電気を消しベッドに潜り込むと、今夜味わった快感と苦痛を一つづつ思い出して
いた。まだ熱を帯びて疼くその場所は、僕を倒錯した世界へと導く誘惑と逃れようとする葛藤が入り混じる肉の門だった。
彼が別れ際、僕にささやいた呪文は甘くて重いビターチョコレートのように、僕の心の底まで甘くねっとりとした感触で満たした。
今夜また一つ僕の胸に灰色の結晶が生まれた。どうしていいのか分からない想いの塊。濃い霧の中で迷い戸惑う僕自身の姿が瞼に浮かんだ。
僕は吸い込まれるように眠りに落ちた。夢を見ることもなく朝を迎えた。
読んでくれてありがとう。監督との残り部分を投下して終了します