11/05/25 23:45:09.86 M1zX8ZI1O
さわやかな初夏の風が高層ビルディング群に季節を思い出せていた。
洋一はエレベーターが開くと同時に前に踏み出した。
「ブヒッ!」
洋一はエレベーターに乗り込もうとしていた社員とぶつかった。
「あっすみません、社長
」低姿勢で謝ってきたのは河本だった。その河本に以前の勢いはみられなかった。
それもそのはずだった。河本が構築したFF14のバトルシステムが松井によって根本から見直され修正されることになったからだ。
洋一は河本を無視して通り過ぎようとした。その時だった。背後から大声で河本が叫んだのだ。
河本「和田社長!どうかもう一度私にチャンスをください。FF14を建て直してみせます!」
しかし河本の必死の懇願も今の洋一の耳には届かなかった。洋一には余裕がないのだ。来る株主総会を乗り切るために全力を傾けているからだ。
河本はしなびたしめじのように立ち尽くすしか他になかった。
社長室に入ると秘書がすぐさま、各部署のリストラ対象者のリストが届いていると告げた。洋一はその中に河本の名を書き加えた。
その一方で、社長の首切りしようという議論が、地下水脈のように大株主の間で話されていようとは、洋一には想像さえできていなかった。
そう、洋一こそしなびたしめじなのかもしれない。初夏の風が爽やかにそうつぶやいているように社員たちは感じていた。