FFの恋する小説スレPart11at FF
FFの恋する小説スレPart11 - 暇つぶし2ch2:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/10 03:18:15 AbSJKz+M0
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
スレリンク(ff板)
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart2
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart3
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart4
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart5
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart6
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart7
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart8
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart9
スレリンク(ff板)


【FF・DQ板内文章系スレ】
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら15泊目
スレリンク(ff板)

3:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/10 03:19:30 AbSJKz+M0
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
   その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 URLリンク(m-ragon.cool.ne.jp)

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ)
 FFDQ板の官能小説の取扱い URLリンク(yotsuba.saiin.net)
 記述の一般的な決まり URLリンク(yotsuba.saiin.net)
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 URLリンク(www3.to)
◇関連スレ
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の3
スレリンク(ff板)
◇21禁板
 FFシリーズ総合エロパロスレ 6
 yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1258013531/
 FFDQカッコイイ男キャラコンテスト~小説専用板~
 jbbs.livedoor.jp/game//3012/
【補足】
 トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
 どうしても議論や研鑽したい方は URLリンク(love6.2ch.net)

 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ URLリンク(ponta.s19.xrea.com)

4:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/10 03:20:45 AbSJKz+M0
【参考】
 FFDQ板での設定
 URLリンク(schiphol.2ch.net)
  1回の書き込み容量上限:3072バイト(=1500文字程度?)
  1回の書き込み行数上限:60行
  名前欄の文字数上限   :24文字
  書き込み間隔       :20秒以上※
  (書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
  連続投稿規制       :5回まで※
  (板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
   1スレの容量制限    :512kbまで※
  (500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)

5:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/10 03:22:40 AbSJKz+M0
落ちていたので上げました。
ここも大変な事になっていますね。
前スレのログをアップ出来る所を探して来ます。

6:前スレログ
11/01/10 13:30:05 AbSJKz+M0
前スレログ
パス:ff

URLリンク(uproda.2ch-library.com)

お待たせしました。
htmlファイルでDLで来ます。
何か不具合がありましたらご報告お願いします。

7:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/10 16:39:31 fqKJYpXr0
>>1-6
乙です!

8:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/11 00:10:12 wEdNsSF00
>>1-6
乙!&過去ログまでありがとう。

あの騒動がここまで波及してくるとは正直思ってなかったw
ってなワケで保守。

9:6
11/01/11 00:59:24 rFCVldEd0
過去ログ無事読めていますか?
当方Macなんでちと心配。
たくさんのSS投下お待ちしてます。

10:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/11 20:01:45 jBATeq480
>>9
windowsで読めました
ありがとうございます

11:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/12 01:00:10 ZjoUOgFs0
>>9
読めてるよー、乙!

ひとまずは落ち着くかな?念のため保守。

12:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/12 22:19:55 m+QFpwUj0
>>9
ありがとうございます

13:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/13 22:55:27 xWBkBK1lP
いちおつ保守

14:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/15 00:13:38 g0wuaRoJ0
のんびりSS待ち期待中

15:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/16 12:38:12 3WnLNLCFP
wktk保守

16:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/18 13:35:25 zcchnOzF0
>>1>>9
乙!

17:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/19 21:25:46 jr5FuEW20
書き手さん期待sage

18:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/20 22:56:27 Asu56h2Z0


19:ぼくのかんがえた何か 1/3 白 ◆SIRO/4.i8M
11/01/22 03:39:53 xrznlaJQ0
 永久に氷結せし氷。人々はそれを呪術に使い、ザストゥンと名付けた。
刻み込まれた、生命の清冽な輝き。その結晶の守護者を―クリスタル・ガーディアンズと呼ぶ。

 穏やかなビスガ緑地に、ぽかぽかと柔らかな日差しが当たる。
「ぎゃあああ! モルボルが行列してるぞー!」
「行進してますねえ」
ソルジャーの絶叫に、おっとりとした声で時魔道士が応える。
勢い良くシーフがモルボルのお財布を漁る横で、ホワイトモンクが首を傾げた。
「なぜモンスターが財布を」
「きっとですねー。モンスターの国がどこかにあるんですよー」
絶賛スロウ連発中の時魔道士が、妙な事を言う。
「魔王に税金を収めて、モンスター宿屋やモンスターショップがある国ですね」
「ねー」
耳の長い黒魔道士と時魔道士が、仲良く頷いた。
「そんな国嫌だ、嫌だよ!」
「来るぞ、行け!」
叫ぶソルジャーを、ウサ耳弓使いが前線に放り投げた。

 クリスタルを狙いし異形の者共。それは、鮮血の色に染まる醜悪な肉冠を持ち
ぞっとする程に真白き翼を携えた―そんな、まんまるのニワトリスの群れ。
ヴィエラのお姉さんAが、動きの鈍ったニワトリスの羽根をモコモコしてみた。
「やーん、カ・ワ・イ・イ~(星:記号省略)」
帽子から飛び出たポンポンを震わせ、モーグリ族も羽根をモコモコしていた。
 ヴィエラのお姉さんBは、黙々と弓を引き続ける。
「この鶏共は何をしたいんだ」
寡黙なバンガ族が、行進するニワトリスを蹴倒しながらぽつりと呟く。
「クリスタルを奪うためだ」
ビスガ緑地の一本道。その向こうには貴重なクリスタルがあった。
そこに群れ集うモンスターを撃破するべく、彼等は今日も戦い続けていた。

20:ぼくのかんがえた最弱の何か 2/3
11/01/22 03:41:44 xrznlaJQ0
 突如、シーフの悲鳴が上がった。
「まずい!」
僅かながらに体力を残したニワトリスの一羽が、陣営を突破しクリスタルに迫る。
そこに小さな黒魔道士が飛び出し、呪文を詠唱し始めた。
「極寒の地の氷の神よ、我に力を与えたまえ」
「あの呪文は……!」

 不意に、大気が刃の如く震え、生暖かく見守るが如き空気が流れる。
「言葉は氷柱、氷柱は剣。身を貫きし氷の刃よ、今嵐となり我が障壁を壊さん……。
―エターナルフォースブリザード!!」

 敵味方を問わずに。戦場を埋め尽くすざわめき。氷結したのは、たぶん、場の空気だった。
「あれは『一瞬で相手の周囲の大気ごと絶対零度で氷結させ、辺り一面を暴風雪に巻き込み、
相手を氷の棺(フリージングコフィン)に永久に閉じ込める』相手は死ぬ呪文!」
「あれ、見たわー。二年ぐらい前に見たわー。相手は死ぬ呪文っすわー」
「獲侘穴流譜王棲・鰤座亜土か! 古代に伝わる、究極の黒歴史(民明書房刊)!」
犬耳のン・モゥ族が歴史書を繰りながら、ぴたりと敵を足止めする。

 エターナルなんとかを唱えたモーグリ黒魔道士が赤面し、ちょんとニワトリスをつつく。
そして、最後のニワトリスも無事撃破した。
「ごめんなさい、ちょっと言ってみただけです……」

21:ぼくのかんがえた最弱の何か 3/3
11/01/22 03:43:48 xrznlaJQ0
 そして、ビスガ緑地最後の戦いが始まった。敵が誰であるか、それすら伝わらぬままに。
「最後って、『アイツ』かなあ」
「いやー、ないでしょー。探検がドリ○ンドとか、怪盗がロワ○ヤルとかじゃないからー」
 ルッソ・クレメンズと呼ばれた少年。彼は、異世界からイヴァリースに迷い込んだ。
勿論、彼の持ち込んだ品々は大半が使えなかったが、大切な手帳は無事であり
FFXI、もとい「ネトゲ」呼ばれる玩具は、クリスタル防衛隊の間でも話題になっていた。
「心細いな。ヴァンさん、来ないかなあ」
「それはないでしょー」
気弱な声の黒魔道士を、ホワイトモンクが撫でる。
「ここは、まだ楽な戦場だ」
モンクは異様な気配を感じ、入り口を睨む。

 そして、それは現れた。光を身に纏い、凄まじい力を秘めて。
「まさか……そんな!」
戦慄するソルジャーに、弓使いが振り向く。
「大丈夫。お前は鍛えただろう? 私もこの戦いで少しは鍛えた」
いつに無く優しい弓使いBの言葉に、ソルジャーXも頷く。
敵へホワイトモンクが怪力を叩き込み、吼える。
「―いける!」
その声が待機する仲間達に伝わり、一斉に攻撃が始まった。
「いきますよー」
「はい!」
「稼がせてもらうぜ!」
イヴァリースに息づく、クリスタルの守護者達。
勇者でも魔王でもなく。しかし彼等も又、彼等の歴史を綴り始めていた。


おわるよ

22:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/23 16:09:49 JDtNLmo6O


23:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/24 01:27:21 VtJbqY0r0
>>19-21
幻想的な情景描写の上を和やか(時にはアグレッシブw)にキャラクター達が走り回っている
作風が大好きです。
しかしニワトリスと聞いて「美味しそうな焼き鳥になると、嬉々としてファイア系を唱える黒魔道士」
の姿を連想した自分が色々間違っていた事を反省せざるを得ないw(以下、個人的黒魔道士像)
 ジョブ     :調理士
 サポートアビリティ:黒魔法(ファイア系)
 趣味・特技  :倒したモンスターを材料にその日の晩ご飯を作る「モン飯」。

ああっ、モニターに石を投げないで!w

24:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/25 18:50:14 Gc74Q91fO


25:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/26 23:03:38 U+maU7+X0


26:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/27 18:26:58 6g20PfBX0
何故ここの保守は「まりも」なのかについて。

27:ラストダンジョン (392)   ◆Lv.1/MrrYw
11/01/28 02:16:24 4sTPf1D20
前話:前スレ263-266
(まとめページで言うと29-2,3辺りの続き)
----------

 各々がここに至るまでに遭遇した出来事をふまえて考えてみると、リーブの中には仲間に
対する揺るぎない信頼と、それ故に重荷を背負わす事への葛藤があるのだろう、とヴィンセント
は自身の推測を口にした。その上で彼は、寄せられた信頼に応えると決意した。ただし、それを
引き受けるのは自分一人でという条件が付いていた。
 その為にも、ティファとシャルアにはここで引き返してもらう必要があった。
 ヴィンセントの決意も、その言い分にも一理あるとティファには思えた。だからといって、彼の
主張が自分には受け容れがたい物であるのも間違いなかった。だからティファは反論の糸口を
必死になって探した。けれど考えれば考えるほど、反論のために用意した言葉は頭の中から
次々と消えて行った。結局なにも言えないまま、それでもヴィンセントから視線を外そうとしな
かった。それが無駄と知りながらも、せめて自分の意思は示していたかった。
 ティファの沈黙を返答ととらえたのか、しばらくするとヴィンセントは立ち上がって二人に背を
向けた。こうしてティファとシャルアがエレベーターに乗る以外の進路を塞ぐ。言葉はなくとも
「ここから先へは来るな」と、その背中がはっきりと告げていた。
 なにも反論できない以上、ティファはそれに従うより他になかった。ここで無理やりにでも進もう
とすれば、阻まれるのは目に見えている。寡黙でも決意を宿したヴィンセントにはとうてい太刀
打ちできない、という事をティファは理解していた。何もできずにとうとう俯いたティファは、悔しさ
に唇を噛み締めた。
 そんな重苦しい沈黙の中、口を開いたのはシャルアだった。
「残念だが引き金を引く役はあんたじゃない」言いながら小さく笑う「……もっとも、仲間に銃口を
向けるのを楽しみたい、と言うなら止めはしないが」。
 口調こそ喧嘩腰ではあったが、どこにも本意が無いと見透かしていたヴィンセントは振り向くと、
静かにこう返した。
「そんな口上では挑発にもならない」
 その言葉に応じて顔を上げたシャルアは、観念したよと苦笑を浮かべてこう言った。
「察しの良いあんたの事だ、もう分かっているのだろう? 局長は心からそれを望んでいない」
その言葉に今度はティファが顔を上げる。それこそが、ティファの探し求めた反論だった。

「あんた達への信頼は、局長にとって“期待”なんじゃないのか?」
 自分自身ではどうしようもない事態を、信頼する仲間達なら変えられるかも知れない。局長の
信頼に応えると言うならば、為すべきは彼に銃口を向ける事ではないはずだ。
 ほんの僅かだがヴィンセントの表情が変わった。なるほどシャルアの言うとおり、確かにそれも
信頼の一面だ。

「つまり、引き金を引く役はあんた達の中の誰でもダメなんだ」それから、自身の胸に手を当てて
続けた「そのために私がここにいる」。

28:ラストダンジョン (393)   ◆Lv.1/MrrYw
11/01/28 02:22:00 4sTPf1D20
「シャルアさん!?」
「おいシャルア」
 ティファとヴィンセントの制止を気にせずにシャルアは話を続けた。
「……さっきの話、不自然だと思わなかったか?」WROのデータベースから消えたSNDの実験
記録。リーブが持つとされる異能力と、その存在を示唆する研究論文。未完成のまま人知れず
放置された論文と一致するキーワードを、同じ場所で目にしたシェルク―直接的ではないに
しろ、シェルクがこの件に何らかの形で関与していると疑うのなら、なぜシャルアは直接シェルク
の元へ行かなかったのか?―それは、話を聞き終えたヴィンセントが不可解に思った点だった。
 この口ぶりからすると、やはりシャルアは自覚していた様だ。
「あいにくと私は、あのインスパイアの論文には否定的でね。そんな生命など無い、あったとして
も単なるまがい物だ。これでも科学者の端くれ、まがい物を認められる筈ないだろう? 私は
それを証明するためにここへ来た。それは、星に還り損ねた私が果たすべき役目なんだ。……
ただの自己満足と言われれば、否定はできないが」言い終えると、自嘲するように口元を歪めた。
「つまり人が新たな生命を生み出す術は、子に対する親の祝福のみだと?」
 ヴィンセントの言葉にシャルアは迷い無く頷いた。
 あの時、自身が生み出された理由を問う人形に対してヴィンセントが示した答えとシャルアも
同じ結論だった。
 彼らの遣り取りを眺めていたティファは、言葉の裏にある別の意図に気が付いて思わず声を
上げそうになり、慌てて口に手を当てた。
「……ティファ?」
 訝しげな視線を寄越すヴィンセントから逃げるように顔を背け、ティファは俯いた。自身の発想
が突飛なのかも知れないと恥じ入る反面、考えれば考えるほど自分が立てた仮説は正しいと
確信は増すばかりだった。
「どうした?」ティファの異変に気付いて今度はシャルアが手を伸ばし、その額に触れる「熱でも
あるのか?」。
 違うんです。ティファはそう言って額に添えられたシャルアの手をそっと退かすと、それを両手
で包み込む。
「シャルアさん……」その先を続けようと顔を上げたものの、いざ口に出そうとすると耳の辺りが
熱くなるだけでなかなか言葉が出て来なかった。首を傾げながら、それでも辛抱強く自分の
言葉を待っているシャルアを前に、このまま黙っていても仕方がないと意を決してティファが言う。

29:ラストダンジョン (394)   ◆Lv.1/MrrYw
11/01/28 02:23:13 4sTPf1D20
「シャルアさんがここまで来た理由、本当は違いますよね……?」科学者ではない自分には、
シャルアの語るすべてを理解できそうにない。けれど、ひとつだけはっきり分かった事がある。
 シャルアは嘘を吐いている。その嘘に悪意はなく、それどころか本人の無自覚によるものだと
しても。
「違う、というのは?」
「それは……」
 ティファにとって返すべき答えは出ていた。けれどそれを口にして伝えようとした瞬間、喉元まで
出かかった言葉が一気に膨れあがった。自分の内にあれば間違いではない。しかし、いざ口に
出してしまうとどれも正確ではなくなってしまうように思われた。
 言葉に詰まったティファの姿を見下ろしていたヴィンセントは、なるほどと頷いてから先を続けた
「当事者が自覚するまでは、我々が口を差し挟む問題では無いと思うが」。こういった類の問題に
慣れている、と言う自負がある訳ではもちろん無い。ただ、得てして当事者よりも第三者の方が
はるかに状況を把握しやすく、一方で言葉としてそれを伝えるのは非常に困難だと言うことは、
多くの場合に共通して言えるのだと経験から学んだ。
 だからそれで良いのだと、ヴィンセントはティファに向けてもう一度うなずいた。
「お前達、さっきから何を言っている?」訝しげな声でシャルアが問うと、ヴィンセントは当然と
言うように答えた。
「私とてこれが本望ではないし、だからこそ我々はここへ赴いた。お前もそうなのだろう? 仮説
としてのみ示されている異能力への反証と言うならば、わざわざ危険を冒すまでもない。自身の
行動を裏付けるために、理屈を並べる必要はない」それこそがシャルアの話に覚えた違和感の
正体だった。
 シャルアは反論せず、ただ黙ってヴィンセントを見つめていた。
 落ち着きを取り戻したティファが、助け船を出したヴィンセントを見上げて頷いた。
「だからと言って黙って見てるだけなんてできません。リーブさんが私達を呼んだ理由は、
シャルアさんの言ったことが正しいんだと思います」そう言って頭を振ると、苦笑がちに続けた
「……思いたい、かな?」。
 もし仮に、ヴィンセントの言った“信頼”の解釈が正しいとすれば、ティファの主張はお節介以外
のなにものでもない。彼女自身もそれは承知のうえだった。
「どうしても私には、インスパイア能力の事や局長さんの事情を理解できそうにありません。けど、
今はこうして招かれて舞台に上がった役者だと言うのなら、ラストは最高の笑顔で迎えたいって、
そう思うんです」
 そう言って、ヴィンセントとシャルアに微笑を向ける。
「それに。このキャストでシナリオ通りに事が運ぶと思います?」
 その問いに、ヴィンセントはふっと小さく笑んでから答えた「……そうだな」。
「もしもリーブさんが役者の心情を理解しない脚本家だって言うのなら、私達も脚本家の意図を
理解しない役者になって、シナリオを書き換えれば良いんです!」
 もちろん出演料はきっちり頂きますよ? いたずらっぽく笑うティファはすっかりいつもの自分を
取り戻していた。ふたりにつられてシャルアも笑顔を浮かべた。
 ティファの携帯が鳴ったのは、その直後だった。

30:ラストダンジョン (395)   ◆Lv.1/MrrYw
11/01/28 02:34:33 4sTPf1D20
『や~っと繋がった!』受話口からは相変わらず賑やかな、けれど焦りを含んだユフィの声が
聞こえて来た。ヴィンセントとシャルアは、ティファの話しぶりから電話の相手がユフィだという
事を察した。
 しかし、ティファの言葉で穏やかだった空気は一瞬にして緊張に包まれる「……空爆、ですって!?」。
 こちらの驚きをよそに、電話の向こうのユフィはさらに捲し立てる。
『シドは飛空艇に戻って、万が一に備えて上空待機してる。でも大丈夫、そうならないように
アタシ達がいるから安心して』
 一方的にそれだけ言うと、ティファにこちらの状況を尋ねている様だった。それから質問の隙を
与えずに通話は途切れ、電話を片手に半ば呆然と立ち尽くすティファは、うわごとのように繰り返す。
「……空爆って」
「我々がし損じたときの為の備え、と言う事だろうな」
「どうあっても考えは曲げないつもりらしい」ああ見えて相当の頑固者だからなとシャルアが苦笑する。
「飛空艇師団の事はシドに任せよう」そんな無茶をシドが認めるはずがないと言い当て、ヴィンセントは
冷静に続けた「いずれにせよ、この件に臨むリーブが本気だと言うことは分かった筈だ」。
 あわよくばこれで二人が引き返してくれればと、僅かばかりの期待を込めて言ったのだが、
これは当てが外れた。
「もう容赦しないわよ!」
 引き返すどころか、ティファなど俄然やる気を増している様に見えるのは気のせいだろうか。
「説教してやるんだから!」
 そう言って歩き出すティファの背中を見つめながら、呆れたように溜息を吐いたシャルアが言う。
「局長に負けず、お前達は頑固だな」
 ふっと小さく笑みを作り、視線だけをシャルアに向けたヴィンセントが言う「お前も含めた皆が、
他人のために頑固になるお人好し、と言うわけだ」。
 そう言ったヴィンセント自身が改めて考える。

 ―他人のために頑固になれるお人好し―そんな仲間達に寄せる信頼の形とは、確かに
期待と呼べるのかも知れないと。



----------
・一応スレタイに則しt(ry テーマに対して直球だとは思うけど、直球過ぎてよく分からなくなった話。
・インスパイア能力(「命を吹き込む」)の解釈って、性質上いろいろアレなんですが、まあ作者がアレなんで。
・ティファさんこんな役回りでごめんなさい、悪いのは表現力のない作者です。

31:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/28 18:32:22 sV9znLB6O
乙!

32:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/28 20:42:10 SxYzSL410
乙乙!!

33:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/30 00:25:24 x/h/7Aq/0
GJ!

34:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/30 01:41:10 Ei4hteEX0
最後のヴィンセントのセリフにぐっときた。7の面子のそういう所が好きなので、そういう所を書いてくれるうp主に感謝だ。

35:風呂場のガールズトーク【1】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 15:49:15 Ei4hteEX0

※DFF012の女性陣が温泉に入ってガールズトークを繰り広げるというお話。
※ガールズトークなので、セリフが多いです。あと、入浴シーンがあります。
※FFXは未プレイのため、ユウナの言い回しがおかしいです。ごめんなさい。
※内容はトレーラーを見た投稿人の勝手な妄想です。
 完全なるフライング小話です。ゲーム本作の内容とは異なります。

決して陽のさす事のない月の渓谷に突然巨大な火柱が上がり、噴煙はあっという間に月を覆ってしまった。
敵とは違う自然の脅威にコスモスに召還された戦士達は息を詰めてその様を見守っていた。
噴火がおさまった所で、ヴァンとスコールが偵察に向かった。
「温泉?」
戻って来た二人の報告を聞いて、ウォーリア オブ ライトは首を傾げた。
「なんだ、知らないのか?」
言いにくい相手に言いにくい事をずけずけと言ってのけるヴァンに、スコールが眉を顰める。
「地下からお湯が沸き出すんです。」
召還士の少女、ユウナがうれしそうに口を挟んだ。
「泉のようにか?」
「はい。沸き出したお湯には薬湯の効果もあって、私達の世界ではその湯に浸かって、病気を治したり疲れを癒したりするんです。」
「疲れを癒す」というユウナの言葉に、では早速入りに行こう!とジタンとバッツが盛り上がり、ジェクトとラグナがおもしろがって    
それを諌めようとしたウォーリア オブ ライトだが、セシルの「明日からの戦いに備えるためにも、たまにはいいんじゃないかな?」という一言で、漸く首をたてに振ったのだった。

**********************

温泉の湧く岩場で、ユウナはうれしそうに手の先を湯に浸す。
湯の中からは小さな気泡がぷくぷくと沸き上がり、炭酸が含まれた温泉のようだ。
「丁度良い湯加減ですよ。」
レディファースト、という事で男性陣は見張りで場を外している。
「ユウナの世界では外でお風呂に入る習慣があるのね。」
横からティファが覗き込む。
「だが、水着がない。」
憮然とライトニングが言い放つ。
「ライトニングさん。水着なんか着ませんよ。」
ユウナ以外の女性陣が凍り付いた。
「そもそも水着、持って来てないでしょ?」
「じゃあ……裸で?」
驚くティナに微笑みかけると、ユウナは刈安色の帯をするすると解き始めた。
「で…っ、でも!誰が見ているか…」
「皆さんが見張っててくれてるじゃないですか。それに、この世界には私達しか居ないんでしょう?」
袴がストン、と地面に落ちた。
ユウナは着ていた物を脱いだ順番に丁寧に畳み、最後に靴を脱ぐと、爪先からゆっくりと湯には入る。
腰を屈め、肩まで浸かった所で、ほう…と大きく息を吐いた。そして、呆然としている三人を見て首を傾げる。
「皆さん、入られないんですか?とっても良いお湯ですよ。」
ユウナはリラックスして、う~ん、と腕を伸ばす。
本当に気持ち良さそうだ。
いつ敵が現れるか分からず、元の世界へ帰る術も記憶すらあやふやな状態で戦いに明け暮れる毎日。
そんな中で目の前の温泉は魅力的過ぎた。
「…よし!」
ティファは決心すると、思い切ってタンクトップを脱ぎ捨てた。

36:風呂場のガールズトーク【2】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 15:51:50 Ei4hteEX0
「入るのか?」
ライトニングが呆れ返る。
「いつ敵が来るか分からないのに。」
「そこは男性陣を信用しましょ?」
「ライトニングさんもティナも入りましょう?本っ当に良い気持ち…」
恥ずかしがると却って気まずいと、ティファは潔く着ている物を脱ぎ捨てると、
ユウナに続いて湯に浸かる。
「わぁ…本当!」
温かい湯に浸かると、一瞬で身体の力が抜けた。
湯はまろやかな感触で淡いエメラルド色をしている。
小さな気泡が身体にまとわりついては弾ける。
「でしょ?」
ユウナはティファの長い髪をまとめてやりながら、
未だにモジモジとしているティナと呆気に取られているライトニングに声を掛ける。
「服を脱ぐのが恥ずかしいなら、あっちを向いてますから!是非!」
「女同士なら平気よ!」
すると、ティナがおずおずと温泉に歩み寄り、
「本当に…あっちを向いててもらえる?」
「ええ、いいわよ。」
ティファは鷹揚に応えると、ユウナと二人してティナに背を向けた。
ティナは何か言いたげにライトニングを見る。
「分かった!あっちを向いていれば良いのだろう!」
ライトニングが背を向けると、背後で衣擦れの音がする。
「まったく…何を考えているんだ。」
ブツブツ言っている間に衣擦れの音が止み、ティナが湯に入る音がした。
「……わぁ……」
ティナは両手に湯を掬って、落とした。
「いい匂い…」
「ティナ!もうそっちを向いても良い?」
「ええ!……本当に……気持ち良い……」
ライトニングも振り返ると、三人が頬をピンクにして楽しそうに湯に浸かっている。
(これでは…入らない私がなんだか…)
急に居心地の悪さを感じたが、だからと言って一緒に入るのもなんだか悔しい。
そんなライトニングの心中を察したのか、ティファがおずおずと声を掛ける。
「ねぇ、ライトニング…?」
ユウナもティナも、お願いする瞳でライトニングをじっと見つめる。
決してブレない光の戦士、ウォーリア オブ ライトとサシで渡り合い、
男どもを怒鳴りつけるライトニングだが、年下の女の子には弱い。
「分かった!入れば良いのだろう、入れば!」
半ば自棄になってそう言い捨てると妹分二人は歓声を上げ、
ティファもうれしそうに微笑んだ。

**********************

湯に浸かったライトニングは、肩どころか顎のラインすれすれまで身体を縮めている。
「鉄壁ね。」
ティファが呆れる。
「…どうせ私の身体なんか誰も見たがらないだろうが。」
「あら、ライトニングは素敵よ。」
ティファにストレートに褒められ、ライトニングは面食らう。
「私もそう思います。私の居た世界に足の速い、とても美しい動物が居るんです。
ライトニングさんが敵の攻撃をくぐり抜けて走っているのを見ていたら、
いつもその動物の事を思い出すんです。」
「そうよね、ライトニングの足はカッコいいな。すらっとして。」

37:風呂場のガールズトーク【3】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 15:53:30 Ei4hteEX0
ライトニングはやれやれと肩をすくめ、隣に座るティファの膝を軽く叩く。
「ティファに言われるとは、光栄な事だな。」
「そう!ティファさんの胸!」
「私もいつも羨ましくて…」
ティファは困ったように首を傾げ、
「う~ん…これはこれで大変なんだけどな。」
「でも胸がそんなに大きくて、でもウエストはすごく細いし…」
「全くだ。」
「あら、胸ならライトニングだって。E(カップ)あるんでしょ?」
「…かもしれんが、どうも私の身体は鍛えてるせいか女性らしさに欠ける。
ユウナのようなまろやかな肩と背中とか、抱きしめたら折れそうな華奢なティナとか…
羨ましい限りだ。」
話をしているうちにしっかりとガードしていたライトニングも足を伸ばし、くつろいだ座り方になる。
「そうかな…」
「ライトニングさんに言われると、自信、持ってもいいのかなって思っちゃうね。」
ティナとユウナが顔を見合わせて笑う。
おや?とティファは興味深げにライトニングを眺めた。
(今のって、ティナとユウナをフォローしてあげてたんだよね…)
キツい物言いをするが、
(本当は優しいんだな…)
「それより、この世界に私達しか居ないとしても、
そこで見張っている奴らは大丈夫なのか?」
「鎧を着ている騎士さん達は、そんな事しないでしょ?」
裸での入浴にすっかり慣れたのか、ティファが大きく伸びをする。
「騎士の誇りにかけて?」
一番最初に入ったので、少しのぼせ気味なユウナが岩に腰掛けながら尋ねる。
「そう!特に眩しいあのお方なら、ね?」
ティファの冗談にティナとユウナがわぁ、と声を立てて笑い、
ライトニングも笑いを堪えているような表情をする。
「怪しいのは…」
「バッツ?ジタン?」
「でも、ジタンは女の子を大事にするから、嫌がる事しないんじゃないかな。」
「バッツはつかみ所がないから分からんな…」
「以外とスコールとか!」
「かもな。まだ17らしいし。」
「お年頃ね。」
「でも、そんな風には見えないな。クールで真面目だし、興味なさそうだよね。」
「そういう奴程ムッツリだったりするからな。」
「ジェクトさんとラグナさんは…大人だからない…かな?」
「あと、セシルな。ああ見えてどうやら妻帯者らしい。」
「ええええ?いつ聞いたの?」
三人は色めき立って、ライトニングに詰め寄る。
その釣られようと三人の盛り上がりにライトニングは驚きつつ、
「本人に聞いたわけじゃない。指輪をしているのを偶然見ただけだ。」
「そっかぁ。ライトニングさん、いつの間にセシルさんと
そんなお話をしたのかと思っちゃいました。」
(…驚いたのはそこなのか。)
「きっと優しい旦那様なんだろうね。」
「いいなぁ、セシルさんの奥様。」
「カインは?」
「プライドの高い男だからな。」
それはないだろう、と行動を一緒にしていたライトニングが太鼓判を押す。
「たまねぎ君は?」
「あの子は小さくても騎士だよ。」
そこはティナがすかさずフォローする。
本当に男性陣が覗きに来るなんて、誰も思ってはいない。
ただ、コスモスの戦士と言えども、やはり女性だ。
こんな他愛もない話が楽しくて、きゃっきゃとお喋りに花が咲く。

38:風呂場のガールズトーク【4】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 15:58:07 Ei4hteEX0
「ねえ?誰か気になる人とか、居ますか?」
こういう場ならお約束でしょう、とユウナが口火を切る。
「私は…」
言いかけてティファはすぐに黙ってしまう。
「カオスの、あの人が気になるんだね…」
「うん…前に会った事があるような気がして…彼の事を考えると、
急き立てられるみたいな…記憶はないのに…不思議ね。」
「不思議じゃないよ。私…大事な人の事を覚えていたよ。
だからあの人はきっとティファの大切な人だと思う。
それは記憶をなくしても忘れない気持ちなんじゃないかな。」
「だが、ティファには奴みたいなタイプはどうかと思うな。」
「どうして?」
不思議そうにユウナが尋ねる。
悪い奴ではない、きっと光に惹かれる者だろうが…とライトニングは前置きをして、
「何度か手合わせしたが…いつも何か言いたげだ。
言いたい事があるならはっきり言え!思う。」
「はっきり言うなぁ…」
ティファが苦笑いをする。
「じゃあ、ライトニングさんは誰がタイプなの?」
「わ…私は…別に…っ…」
唐突なユウナの質問にライトニングはまごついた。
温泉でリラックスし過ぎて、普段はまともに取り合わない様な他愛もない会話が思いがけず楽しく、
興が乗って話をしていたが、まさか自分にその手の話題を振られるとは思ってもいなかったからだ。
また軍属のため年頃の同性との付き合いも少なく、どう流して良いのか分からず口ごもる。
「あ~怪しいな?意外と、眩しいあのお方だったりしてね?」
「喧嘩する程仲が良いって言いますしね。」
ティファとユウナがからかう。
「ち…っ違う!少なくとも、アイツはっないっ!」
(…そんなに思いっきり言わなくても…)
「少なくとも…って事は、他に誰か居るのね?」
同じ年の気安さか、ティファは年下二人が聞きにくい事をずばりと聞いてみる。
「………フリオニール…かな。」
いつもなら決してに口を滑らしたりしないのだが、女同士の気安さからかライトニングばぽろり、
と本音を漏らしてしまう。
たちまち、ティナとユウナが歓声を上げる。
「そういう意味ではない!私がいた世界は文明は進んだが、人が人を信じられなかったり、
心が荒んでいる者がたくさんいた。だけどあいつは…なんと言うか、人間の…原種とでも言うか…
純粋培養とでも言うか…」
「原種…」
あまりもの言い方にティナが目を丸くする。
しかし、ひどい言い方はライトニング独特の照れ隠しと、
慣れない会話に動揺しているからだと女性陣はとっくに理解している。
「一応褒めているのね。でも、もう少し素直になっても良いんじゃない?」
「確かに…言い過ぎた。」
ティファが嗜めると、ライトニングは素直に認め、顔を赤くして膝を抱えてしまう。

39:風呂場のガールズトーク【5】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 16:03:31 Ei4hteEX0
「良い人ですよね、フリオニールさん。」
「そうね……ね、ティナはどうなの?」
あまり追い詰めては気の毒、とティファはティナに話を振ってみる。
「私…まだ、そいうい気持ちが良く分からなくて…」
「ヴァンはどうなの?ティナを私達の所に連れて来てくれたでしょ?」
と、ティファ。横ですっかり姉性(?)愛に目覚めてしまったライトニングが
「アイツは単純だから繊細なティナには…」などとブツブツ言っている。
「ずっと一緒だったんだよね?」
「…私の事を守るって言ってくれて、頑張ってくれたのを見ていたら胸が温かくなったけど…
でも…まだよく分からないの。それが好きとか、愛なのか…」
「それは分かりかけているんだよ。焦らなくて良いよ。」
寂しそうに目を伏せてしまったティナに、ユウナが優しく声を掛ける。
「心配しなくても良い。」
不意にライトニングが凛と言い放つ。
「ティナは分からないんじゃない。今は忘れているだけだ。」
三人は驚いてライトニングを見上げる。
「みんな記憶を失っているんだ。でも、元の世界に戻れば思い出せる。ティナは…」
ライトニングはどう言葉を続けるか少し考え、
「私達よりも、少し多めに忘れているだけだ。」
「ライトニングさん…」
ティナはラベンダー色の瞳をすぅっと細め、笑顔を見せた。
「私…うれしい…ありがとう。」
「ライトニングにしては、かわいらしい言い方ね。」
「私だって、一応女だからな。」
ツンと横を向いてしまったライトニングが微笑ましくて、三人は顔を見合わせて笑う。
「お風呂…って、いいですよね。」
ふと呟いたティナの言葉に全員が頷いた。
裸の付き合いという言葉があるが、お互いの事が少しだけだが分かった気がして、
距離が縮まったような気がするのだ。
(私達…仲間だものね…)
神々に選ばれた戦士であり、人間だ。単なるゲームの駒ではない。
この仲間となら最後まで戦えるとティファは思った。
「そろそろ上がりましょうか?」
「男性陣が首を長くして待ってますよね。」
「鼻の下じゃないのか?」
「もう…ライトニングさんたら…」
女性陣は湯から上がると身支度を整えた。


40:風呂場のガールズトーク【6】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/30 16:04:18 Ei4hteEX0
ユウナが起用に帯を結ぶのに残りの三人が感嘆の声を上げたり、ティナの髪を結うのを手伝ったり。
ライトニングの襟足から伸びる巻き髪は「デジタルパーマ」という技術だそうで、
「こうやって指で巻いてやるだけできれいな巻きが出来るんだ。」
というライトニングの説明に驚いたり。
その楽しそうな声が遠くに聞こえてきて、なんだかあれこれ想像してしまっていた男性陣は
何故かお互いの目を合わせないようにして、すっかり無口になってしまったのだった。

おわり。

=========================================================

※温泉に入っていたらすごくスタイルの良いお嬢さんが入って来てほぉー!と眺めていたら
「そう言えばX-2って温泉入浴シーンがあるんだよね」で思いつきました。
※Xは「アジアっぽい世界観」とどこかで読んだので、ユウナは裸でお風呂に入ると主張させましたが、
 間違っていたらごめんなさい。
※ユウナの喋り方は本当にごめんなさい。動画見て勉強しようかと思ったのですが、
 今すごく10をプレイしたいので、ネタバレは避けたかったんです。
※「(キャラクター名)はそんなこと(覗きとか)しない!」とかそういう話ならパスだ、
 の方向でどうぞお願いします。投稿人はFFキャラクター全員好き過ぎて生きているのが辛いです。
 悪意よりも愛で書きましたが、もし不快に感じられたらごめんなさい。

41:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/31 03:16:48 rzb32Tm70
GJ
ガールズトークは良いものだ

42:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/01 01:53:24 gOYSHWSu0


43:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/02 21:59:50 ax5UP1S9O


44:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/04 21:28:04 99PqUBeb0


45:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/05 14:50:23 HvVE2BwB0


46:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/05 16:45:00 1WN6hJ48O
惜しむらくはティファとライトニングは同い年じゃないところー
ティファ20歳
ライトニング21歳

47:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/06 14:51:50 EWKoZdPa0
学年が同じかもよ。

48:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/07 08:38:52 6PFkzHEzO
セラの進学が決まった時点で21だから
下手すると2学年上かもねー

49:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/07 18:55:27 vLa5BWHO0
ライトニングは作中で21歳になったんじゃなかったか?
誕生日パーティやってたような

50:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/07 23:09:18 6PFkzHEzO
>>49
あれ回想

51:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/07 23:50:43 nLtY27BD0
回想だけど本編の数日前くらいの出来事じゃないか?
だからティファより2学年上ってことは無いんじゃね

52: ◆WzxIUYlVKU
11/02/08 04:39:38 kyPBXnl30
ライトさん21歳(ファイナルファンタジー用語辞典 Wikiのキャラクターの項目より)
ティファは無印の時点で20歳(ウィキペデイアのファイナルファンタジーVIIの登場人物より)
のようです。
投稿人の調査不足でした。ごめんなさい。
年が近いということで気安い二人という感じで読んでいただけるとうれしいです。

53:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/10 15:49:19 kqh6zQE10


54:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/12 13:34:54 FsOvOrwm0


55:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/13 15:34:43 fcbUfQW00
年齢以外にも言えますが、年の考え方(数えや満)って苦手なので、この辺の事を考える時は
相当気を遣う(そして間違うw) それにしてもみんな良く読んでるし、作品を遊んでる事が
伝わって来ますね。書き手にとってはイイ緊張感かも。

>>35-40
トランス時には所構わず脱衣するギャップにティナの魅力をって……へ、変態じゃないぞ。
で、個人的には↓こうなる。

ジタン「なあなあ、俺らがトランスする時もティナ見習おうぜ!」
クジャ「君の裸を見て誰かが喜ぶとでも?まぁ僕なら…」
ジタン「それもそうだな!」 ←聞いてない

ビビ=まっくろくろすけ。いやしかし鎧を脱いだベアトrうわなにをs
(書き込みはここで途絶えている)

56:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/13 15:37:17 fcbUfQW00
ところで関係ない話(投稿時に関係して来そう)だけど、この「冒険の書」規制はなんなんだ?w

57:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/15 03:09:11 5HfaWVpg0
テスト段階なので色々変更中みたいですね

58:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/18 02:03:22 j9qfupH40


59:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/21 00:23:28.11 6kdPhLkZ0


60:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/21 13:02:30.61 1pQXYYtGO
携帯ですまん。
最近ここに来るようになったんだけど、ラストダンジョンのまとめページってどこにある?
過去ログの中を探すしかない?

61:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/22 05:23:35.83 Z4hhnNX30
>>60
URLリンク(unkar.org)
ここの>>239辺り。

62:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/24 04:01:08.92 ZMirfuLy0


63:ラストダンジョン (396)   ◆Lv.1/MrrYw
11/02/25 02:12:50.45 Qobi7jOi0
前話:>>27-30
----------

 クラウドとの合流地点に向けて飛空艇は徐々に高度を下げ、いよいよ着陸態勢に入ろうかと
言うところに来て、通信担当のクルーが異変を知らせる。
 クルーの報告から僅かに遅れでロケット村からも同じ異変を告げる通信が入ってきた。「まる
で通信妨害を受けているみたい」と言ったシエラの声も、ノイズ混じりだった。呼びかけに応じて
シドが答えようとするが、その頃には通信機器が使い物にならなくなっていた。
 通信担当によれば、異変はこの1分にも満たない時間で急激に起きており、さらに全帯域の
通信周波数で同じ現象が観測されていると言うのである。
「あり得ない……」報告を終え、半ば呆然として呟く通信担当のクルーの背後から、にやけ顔の
レーダー要員が助言する。彼は今し方、レーダーに映るモンスターの大群を発見したばかり
だった。
「お前、ちょっと落ち着いてまばたきしてみろ?」
「こんな時にふざけないで下さいよ」
 呆れと焦燥の入り交じった声で通信担当が応じると、レーダー要員は真顔になってこう続けた。

「『あり得ない』と思うんなら自分の目を疑え。次に計器の故障を疑え。そのどちらでもなければ、
そいつは事実だ。迷ってる暇は無い。お前が迷った分だけ、この飛空艇は耳を塞がれ口を閉ざす
事になっちまう」

 直前までとは打って変わった真剣な口ぶりに、思わず通信担当が振り返る。すると、待って
いましたと言わんばかりにレーダー要員は満面の笑みを浮かべた。「そ~んな情けない顔
すんな。だからホレ、休んでる暇も無いっての」言いながら通信担当の背中を叩く。
「途中まではもの凄く説得力があったのに……」
 はあ、と盛大に溜息を吐いて肩を落とし、通信担当のクルーが項垂れる。しかし当のレーダー
要員は意に介す様子はなかった。
「どうよ、俺の笑顔を見て肩の力抜けたろ?」悪気も屈託もない笑顔を絶やさなかった「そんじゃ、
しっかり頑張ってくれよ」。
 さり気なく先輩風を吹かせてから背中を向けると、レーダー要員は小走りに自分の持ち場に
戻っていった。
「……って言うわりに、自分だって持ち場を離れてるじゃないですか!!」
 抗議めいたつっこみを入れようとして、ふと考える。
 他機とのコミュニケーションを担う通信を飛空艇の耳と口とするなら、レーダーは“目”だ。
目は周囲の状況を把握する為には必要不可欠であり、その機能を失えば帰還はおろか、飛行
の維持さえままならない。
 飛空艇のどの機能を欠いても安全な航行はできない。そんな中でも重要な目を担う彼の
重圧は、自分以上であるはずだった。にもかかわらず笑顔を浮かべながら、他のクルーに配慮
する余裕があるのだから敵わない。
(ちょっと悔しいけど、俺がまだまだ未熟って事は認めなくちゃ)
 そう考えると気が引き締まった。
 依然として通信機から聞こえてくるノイズは止むことは無い。彼はもう一度、目の前の現実と
通信機器に向き合った。今もって原因は分からないものの、そうすることに迷いはなかった。

64:ラストダンジョン (397)   ◆Lv.1/MrrYw
11/02/25 02:33:04.91 Qobi7jOi0

                    ***

 一方その頃、荒野のど真ん中に突如として現れた巨大な亀裂を前に立ち往生するトラックの
運転席では、すっかりくつろいだ姿勢でレノが空を眺めていた。フロントガラスの向こうでは、
降り始めた夜のとばりを背景に輝きを増す星々と、その合間を翼端灯の規則的な明滅が横切る。
車載ラジオは相変わらず耳障りなノイズ音だけを垂れ流していた。
 任務の途上、待機を余儀なくされる場面は過去に何度も経験があった。だからこういった状況で
どうすべきなのかは分かっていた。ただ性格上、“先の見えない待機”というのはレノの好むもの
ではない。しかし退屈を持て余しているはず彼の表情は、期待に満ちていた。
 その期待が現実となるまでには数分を要した。耳障りなノイズの合間に小さな異変を捉えたレノ
は、ボリュームを上げる。
 車外で作業をしていたルードは、運転席から聞こえてくるノイズ音に反応して手を止めた。
 彼らの耳に聞こえてきたのは、彼らが待ち望んだ異変を知らせる声だった。



 エッジのセブンスヘブン2階。
 ヴェルドは頭を抱える以外にすることを思いつけず、さらに眉間に深いしわを寄せていた。
 マリンは全てを見届けた後、部屋を出て急いで階段を駆け下りた。

 エッジ郊外にある変電所の職員詰め所では、ちょうどラジオの電源を入れたところだった。
 ケリーはスピーカーから聞こえてくる声に耳を傾けながら、顔をにやつかせ。
 フレッドは復旧作業と並行して、ポケットの携帯ラジオを通して自分達の行動の結果でもある
短い放送を聞いていた。
 デンゼルは毛布にくるまりソファに身を横たえたまま、目覚める気配はない。

 ロケット村に設営された管制室では、少し前から機器の不調を疑い作業に奔走していた。
 シエラは予期せぬ出来事に戸惑いながらも、他のスタッフと共に作業の手を止め放送に
聞き入った。

 上空を航行中の飛空艇師団では。
 シドが苦虫を噛みつぶしたような表情で、かつて旅路を共にした仲間の声を聞き。
 クルー達も各々に困惑しながらも、一言も聞き漏らすまいと艇内は静寂に包まれた。

 とある建物にいたタークス。
 イリーナはモニタリングを続けながら、シェルク達の協力で実現した放送を聞く。
 ツォンは携帯電話を片手に、複雑な表情で聞こえてくる言葉の意図を考えていた。
 ルーファウスも別室でそれを聞いていたはずだが、この時どんな反応をしたのかを知る者は
いない。

65:ラストダンジョン (398)   ◆Lv.1/MrrYw
11/02/25 02:37:17.67 Qobi7jOi0
 1分にも満たない僅かな時間ではあったが、こうして各地ではまったく別々の境遇にある者達
が同じ放送を耳、あるいは目にすることになった。
 経緯はどうあれ、視聴者の多くは事情を知らない者ばかりだった。何の前触れもなく突然
始まった放送を聞かされた人々には少なからぬ混乱をもたらし、それは信じがたいスピードで
世界中に広がっていった。
 その中心にいたのは、様々な制約下におかれたケット・シーだった。彼は1分という限られた
時間の中ではとうてい伝えきれない沢山のメッセージを伝えなければならず、突飛な内容は
苦肉の策だった。
 ケット・シーの語った内容はこうだ。

 ―実はボクが本体で、今のリーブは本物のリーブではない。
    だから、囚われの身のリーブを助けて欲しい。

 それは事情を知らない者からすれば、にわかには受け入れがたい話であり。
 事情を知る者からすると、質の悪い冗談としか言えなかった。

                    ***

 ナナキ達の目の前にWROの輸送用トレーラーの一団が現れたのは、ケット・シーの放送が
終わって程無くしての事だった。受信機器を持たない彼らがその放送を知るのは、もう少し後に
なってからだった。
「もしかして、オイラ達を迎えに?」
 徐々に歩幅を狭めながらナナキが言うと、背中のダナは「ちょっと不自然ね」と首を傾げる。
トレーラーから振り落とされた自分の迎えにしては規模が大きすぎる。
「さっきの騒ぎを知ったみんなが、来てくれたんじゃないのかな?」
 ナナキが口にした予想は無きにしも非ず。とは言え、既に捜索にはナナキが出ているのだから、
わざわざ出迎える必要もないはずだとダナは訝しむ。
「ダナって疑り深いんだね?」ナナキが振り返って茶化すような口調で言った。
「思慮深い、に訂正してちょうだい」
 談笑するふたりに向かって、スピードを落としながら尚も接近してくるトレーラーのヘッドライトは、
やがてダナの視界を焼き尽くす。眩しさに耐えきれず手をかざしたところで、ようやくトレーラーが
停車した。
 トレーラーの正面まで来るとナナキも足を止め、ダナは背中から降りた。これとほぼ同時に
車列先頭の助手席の扉が開き、そこから一人の女性隊員が降りてきた。自身の背丈ほども
ある高さの助手席から地に足を付けるまでの身のこなしの中に、日々の鍛錬を窺い知ることが
できた。恐らくこの女性も少なからず戦場を経験しているのだろうと、短い間にナナキは想像した。
 降車した女性隊員は、ダナも良く知る人物だった。
「副長……?」

66:ラストダンジョン (399)   ◆Lv.1/MrrYw
11/02/25 02:42:45.57 Qobi7jOi0
 3年前のオメガ戦役当時、彼女はディープグラウンド勢との熾烈な戦いの中、しかも最前線に
立った経歴の持ち主だった。あれからずっと副長と呼ばれているが、その呼称が持つ意味合い
は当時とは少し異なっている。
 特に笑顔を浮かべるでもなく、真っ直ぐダナと向き合った女性はこう切り出した。
「私があなたの前に立つ理由は、説明するまでもないわね?」
「…………」
「ダナ?」対峙する両者の間に緊張が走った事を肌で感じ、ナナキは顔を上げる。無言で立ち
尽くすダナは、ナナキに促され視線を向けたものの、彼女の口から何かが語られることは
なかった。
 しばしの沈黙を経て、最初に口を開いたのは副長と呼ばれた女性だった。
「逃げる気は無いみたいね」
「最初から逃げるつもりなら、わざわざ戻ったりはしません」
 向き合ったふたりは一歩も退かず、そればかりか互いに相手を牽制するような言葉をぶつける。
彼女たちの事情を知らなかったナナキにも、両者の間には敵意にも似た意識が存在している事
だけは分かった。こうなったら静かに成り行きを見守るしかできないと覚悟を決めて、ナナキは
その場に腰を下ろした。
 しかしナナキの予想に反して、膠着状態が続く事はなかった。
「あなたらしい物言いね」そう言うと、女性は柔らかな笑みを浮かべてこう続けた「話は後で
ゆっくり聞かせてもらうわ。だから今は、力を貸して」
「副長?」
 思いがけない要請に、状況が呑み込めないダナは問い返す。
「仮にこの混乱があなたの狙い通りだったとしても、この先にあなたが期待するものは手に
入らない」そう言いながら、副長と呼ばれた女性は懐から携帯電話を取り出した。
 型だけを見ればありきたりな量産品とはいえ、ぶら下がっていた質素な装飾品には見覚えが
あった。これこそ先程ダナがトレーラーから振り落とされた時に一緒に車外へ投げ出された
自身の携帯電話だった。
 先程の発言から想像するに、副長は既にダナの企みを把握している様だ。携帯電話は確たる
証拠、それを手にした副長が目の前に立ちはだかるという状況が何を示しているかは、考える
までもない。
「『ミイラ取りがミイラになる』あなたに限ってそれは無いと思っていたけど……」
「私自身、最初からミイラだったのかも知れませんね」冗談ともつかない口調でダナが言うと、
副長はうっすらと笑みを浮かべて切り返す。
「それは無いわね。ミイラだろうと何だろうと、そうなる過程が必ずある」
 彼女の笑みも言葉も、ダナに対する信用の現れに他ならない。
「いつから私を?」
 単刀直入にダナが尋ねると、副長の顔から笑みが消えた。
「……正直なところ、今でもあなたを疑っているとは言い難いの」そこまで言うと、いよいよ困った
という風に眉を顰めて一度ダナから視線を外した「私達が最初に監査を担当したのは4年前。
ちょうど、WRO内部監査制度導入の年―」

67:ラストダンジョン (400)   ◆Lv.1/MrrYw
11/02/25 02:50:35.93 Qobi7jOi0
 各地の復興事業が進む中で拡大を続ける星痕症候群。それに伴う市民の混乱。人々の往来や
物資輸送路確保のための警戒任務。その後のオメガ戦役の混乱という情勢もあって、WROが
担う役割は確実に増えていった。
 そんな中、徐々に肥大化する隊の秩序維持を目的として、旧神羅出身の隊員を中心に監査部
の新設が提案された。ダナもその中の一人だった。
 局長の直轄にあたる監査部は、WROの各隊から選出された人員で構成され、定められた
任期で隊内部の監査任務に携わる。局長に次ぐ執行権を持っているのは副長で、彼女は現在
2回目となる副長の任に就いていた。
「内部監査制度とは言っても、それが文字通りの機能を発揮する事は殆ど無かった。せいぜい
隊員同士のちょっとした揉め事の仲裁役か、出来心の域を出ない悪巧みに灸を据える程度。
どれも予想の範疇だった。当初、どちらかと言えば私はこの制度そのものを快くは思っていなかった」
 銃弾の雨にさらされながらも、己の命を賭して戦う最前線の隊員達。彼らの結束を疑う余地は
なく、後方支援の部隊や非戦闘員であれ、同じ隊に属す同胞だ。それを疑って掛かる事自体が、
他ならぬ背信行為なのではないかと言う思いが強かったのだと、副長は語った。
「隊の創設当時は世の中が混乱の極みにあった。その後も外部に重要な案件が多かったです
からね。副長のおっしゃるように、結束して事に当たらなければならなかった。逆に言えば誰もが
それに追われて、造反の余裕なんて無かったです。けれど、ある程度まで組織が安定してくれば
そうはいかない」
 メテオの痛手から立ち直り、星痕症候群の脅威が消え、ディープグラウンドを退けた今が、
まさにその時期だとダナは続けた。
「あの時も同じ事を言っていたわね」
「神羅にいた人間なら、多かれ少なかれ経験というか……反省があったんだと思います」
 そして、ダナはこう告げた。

「ひとたび制御を失った組織が暴走の果てに起こす悲劇を、誰よりも近くで目の当たりにしている
のは末端の社員です。たとえ銃を持って戦場に立っていなくとも、その人が立つ場所が現場で
あり戦場になるんです」

 それこそが監査班設立の動機であり、ダナの行動原理だった。
 副長はダナに視線を戻すと、ゆっくりとした口調で問う。
「それが、あなたが隊を裏切ろうとした動機?」
 問われたダナは頷くことも首を振る事もせず、ただ目の前の副長を見つめているだけだった。

----------
・副長ねつ造し過ぎです(DCで出てくる女性隊員です)。
・ここでまさかの『ケット・シー本体説』を推してみる。
 これまで語るスレでもこのネタを見かけなかったので、誰もそんな発想はしないのかなー…なんて。
 (「ねーよw」って言われそうですねw)
・この規制(忍法帳?)は長文投下時にはちと厳しい(改行や文字数などで引っ掛かっても再投稿まで
 時間制限)ですね。
>>60
 携帯用に作ってないので、閲覧の際にご不便をお掛けするかも知れませんが。
 www5f.biglobe.ne.jp/~AreaM/PiAftSt/LCFF7PiAftSt/LCFF7_dat.html

68:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/25 12:17:24.63 RQc52MN20
GJ!

69:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/26 20:20:18.50 n8rtpg0i0
GJ!

70:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/02/27 23:37:24.54 1pN7lGf50
乙!

71:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/01 07:31:21.91 UnKib7dAO
60です
>>61,67
ありがとう!
パソコンと奮闘して読んでくる!
作者GJ!!

72:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/02 23:57:53.13 RND3X3NvO


73:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/06 02:53:44.79 rN43U44f0


74:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/08 01:44:18.70 nOTYpHiK0


75:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/09 05:05:55.60 kdGZacBC0
消えてしまった・・・
どなたか前スレのログもってらしたらお願いします・・・

76:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/09 06:00:39.90 2G/iUSz40
ありましたよー
URLリンク(mimizun.com)

77:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/11 12:06:46.49 9uxaoMxtO


78:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/14 01:57:45.26 xjfQ9FwT0
>>76 ありがと---- 。・゚・(ノ∀`)・゚・。

79:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/16 09:13:42.47 ujK7UVhIO


80:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/19 12:57:05.29 C/4qzwJ00


81:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/22 18:50:25.22 1NVeAmG80


82:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/24 15:20:12.14 2OBIgKSV0


83:ラストダンジョン (401)   ◆Lv.1/MrrYw
11/03/26 01:34:30.16 dQ4YkDz20
前話:>>63-67
----------

『主要地域の電力と信号の回復を確認しました。……すみません、時間切れです』
 スピーカーから聞こえてくるシェルクの声音が変わっていた事にイリーナは気が付いた。それ
が疲労によるものなのか、気分的なものなのかは分からなかった。
 それでも、モニタの前にいたイリーナは口を開かずにはいられなかった。
「あなたが謝る必要はどこにも無いわよ、むしろこっちがお礼を言わなきゃ」
 決して慰めなどではなく、落ち込むことなど無いのだからと。
「だって私達だけじゃ、こんな大々的な呼びかけなんてできなかったもの」こういう派手なやり口
は、いかにも先輩が好みそうだとイリーナは口元をほころばせた。
 残念ながら彼は今この場にはいなかった。建造中の新本部施設監視の任を帯びてルードと
ふたりで荒野へ向かったが、きっと今ごろは退屈になって運転席で大あくびでもしているのだろう
と、その様子が想像できた。
 一方のシェルクは、イリーナの心中を知る由もなくただ淡々と事実を述べる。
『私のした事はサポートに過ぎません』やっていることはディープグラウンドにいた頃と変わら
ない、単体では何の役にも立たない能力だと言うのは、嫌と言うほど分かっている。今回だって
そうだった『そもそも各地の協力者がいなければ、これも実現できませんでした』。
「……協力者?」
 その言葉にイリーナは首を傾げた。シェルクはケット・シーを経由して得た情報―エッジの
ヴェルドをはじめ、元タークスの面々が各地の通信基地局への送電を一時的に停止させていた
事―を伝えた。つまりシェルクは停電から復旧までの間を利用して、SNDによる通信網の
乗っ取りを実行した。彼らが外から送電を停めてくれなければ、各施設のセキュリティを破るのに
かなりの時間と労を費やすことになったはずだ。
 それを聞いてイリーナは最初こそ驚きはしたものの、その表情はすぐに苦笑に変わった。出か
かった言葉は辛うじて呑み込めたが、堪えきれずに溜息が零れた。
(姉さん、私には何も言ってくれなかったのね)
 イリーナと入れ違う様にしてタークスを抜けたメンバーの中には、彼女の姉もいた。メテオの
迫るミッドガル八番街スラム住民の避難活動―イリーナにとって、それが彼らと活動を共に
した最初で最後の“任務”だった。たった一度の任務でも、強い信頼と絆で結ばれたタークスの
連帯を実感することができた。それは一方で、自分達が歩んでいる道が既に別のものであると
いう現実の裏返しでもあったのだ。
 これまでも口に出すことはしなかったし、この先も出すべきではないと思っていた。けれど
イリーナの胸中には疎外感とも孤独感ともつかない不安定な感情が横たわっていて、それは
時折ほんの少しだけ顔を覗かせる事がある。
 不自然な沈黙を察知したシェルクが何事かと尋ねると、イリーナはやや芝居がかった口調で
こう返した。
「……諸先輩方はさすがだなぁ~と、不肖イリーナ感心しておりました」
 口調の裏にある動揺を察して、後ろからツォンが声を掛ける。
「我々には我々の、彼らには彼らの果たすべき任務があり、彼らはそれを完遂した。こちらも
感心ばかりしている暇はないぞ」
 ……そうですよね、主任? 声には出さず、ツォンは手にした携帯電話に視線を向けた。

84:ラストダンジョン (402)   ◆Lv.1/MrrYw
11/03/26 01:44:47.62 dQ4YkDz20

                    ***

 エッジにいたヴェルドは眩暈よりも脳震盪に近い感覚から立ち直れず、未だに頭を抱えていた。
電話の向こうにいる元部下の心労や機転以上に、今や目先の問題が思考の大部分を占めている。
 ようやく顔を上げると、絞り出すように声を出す。
「正気なのかケット・シー?」
『せやかて、ああでも言わな伝われへん。それに、まるっきりウソっちゅーワケでもないやろ?』
 愛嬌たっぷりに向けられた問いを、ヴェルドは素っ気なく退ける。
「お前が“本体”と言われて、信じられると思うか?」
『ん~。せやなぁ、ボクやといまいち貫禄が足らんしなぁ』
 そう言って腕組みをしながら首を傾げるケット・シーの姿から、貫禄と言う要素を見出すのは
極めて困難である。
「貫禄どころか説得力の欠片もないぞ?」
『なんやオッサン、ごっつ厳しな~!』
 それでもめげずにケット・シーが愛嬌を振りまくものだから、ヴェルドは言葉も出ずに深い溜息
を吐いた。
「確かに空爆阻止が最優先なんだが、……これでは無用な混乱を招いているだけではないか?」
 もっとも、リーブの声明を否定する為にはまず“ケット・シーを操作しているのはリーブ”という
周囲の認識を覆す必要があり、それに伴う多少の混乱はやむを得ないと覚悟もしていた筈だった。
しかし、まさか「本体はケット・シーの方だ」と主張するには無理がある。さらには―リーブは
誰に囚われているのか? そんなことができる者がいるのか? いたとしてその目的は何なのか?
―時間を稼ぐにしても、いたずらに人々の不安や憶測を煽るのが好ましいとは言えないし、
WROにとって醜聞にでもなれば今後の活動や組織運営にまで影響を及ぼしかねない。今が
異常事態なのは確かだが、混乱は最小限に留めるべきで、もう少し言い様があったのではない
だろうか。
 ケット・シーの自主性に委ねた自分の選択を悔やみながら、ヴェルドは首を振り、いっそう深く
なった眉間のしわに手を当てて俯いた。今さら嘆いたところで始まらないのだと、分かってはいる
が頭を切り替えられずにいた。
 そんなヴェルドの元に戻ってきたマリンが下の状況を伝える。
「外の街灯もついたし、ちゃんと電気も復旧してるみたいです。それと、下の戸締まりも確認して
きました」
 ここにいるマリン達以外の住民にしてみれば、なんの前触れもなく突然あたり一帯が停電した
のだから驚くのも無理はない。その直後にケット・シーの放送が流れたのだから、混乱した人々
が情報を求めてセブンスヘブンに殺到するのも予想はつく。
「外にいる大勢の人達を一度におもてなしするのは、ちょっと難しいですから……」
 ちょっと困ったような表情で言ってから、マリンが微笑んだ。
 自分などよりもよほど冷静な少女の対応ぶりを目の当たりにして我に返ると、ヴェルドは再び
顔を上げる。彼女は、ケット・シーの言葉を聞いた直後から事態に対応するべく行動を起こして
いた。侮っているつもりはなかったが、彼女の機転には相当に救われていた。
 現役を退いてから久しい事も踏まえて、ヴェルドは自身の老いを感じずにはいられなかった。
(……とうとう頭にまで焼きが回ったか?)

85:ラストダンジョン (403)   ◆Lv.1/MrrYw
11/03/26 01:48:06.67 dQ4YkDz20
 いくら何でもこれでは元部下達に合わせる顔がないと、自嘲せずにはいられなかった。
「すまない。助かった」
 ところが、話の先を続けるマリンの表情はなぜか沈んでいた「でも……」。
 部屋の外に向けられたマリンの視線を追ったヴェルドが、階下にあった電話の姿を捉えると、
鳴り出したコール音とマリンの言葉が重なった「こればっかりは……仕方がないですよね」。
 殺到する人々を阻むには門戸を閉ざせばいい。しかし電話となるとそうも行かない。回線を
遮断することも考えたが、それは好ましくないとヴェルドは判断する。
「耳障りかも知れないが、しばらくは我慢するしかないな」
「もうちょっと可愛い音で鳴ってくれたら良かったんですが」
 マリンが覚えているのはバレット、ティファ、クラウドの携帯電話番号だけで、こちらからアクセス
できる人物は限られているうえ、状況が状況だけに今は通話もままならない。逆に、向こうから
エッジへアクセスするためには、ここの電話回線しか無い。
 彼らに繋がる最後の道を、自らの手で断つわけにはいかなかった。

                    ***

 エッジでの一連の遣り取りをケット・シー経由で垣間見たシェルクは、今し方思いついた提案を
口にする。
「端末を特定できるのであれば、“ここ”を経由して双方向の通信を確立してみては?」
『なんやて?』
 先ほど全帯域に対して一方的な送信しか行わなかったのは、カバーする帯域が広すぎて他
からの応答を反映させる余裕と、それらの処理を賄うだけのエネルギーが無かったからだった。
しかし、送受信する端末を指定できれば必然的に通信帯域も限定される。
「要するに、ここを仮想の中継局にすれば良いという事です。転送の負荷を考えれば音声通信が
限度になりますが、対象の各端末とここを直通通信で結べば、ほぼリアルタイムでの入力に
対応できます。出力までのタイムラグを極力減らす為に、符号化したデータには手を加えず
受信側に復号処理を……」
 シェルクの講釈が長くなりそうだったので、ケット・シーが慌てて口を挟む。
『わ、わわわわ分かった! とにかくここはボクらの出番、っちゅー事やね!』
「そうです。復号処理プログラムを導入する為にも、いちど各端末とここを直通通信を結ぶ必要が
ありますが……」
 端末さえ特定できれば、いざとなれば力業でとシェルクは言う。
『……ほな、その辺の小難しい話はシェルクはんにお任せしますわ』ケット・シーはいつものよう
に戯けながら、シェルクに向けて手を伸ばすとこう続けた『指定する端末情報、ボクが殆ど記録
してますんで。さっきみたくボクのライブラリ覗いてくれたらエエですよ?』
「……あ、はい。ではその際、こちらからもフィールド作成の手順などをお渡ししておきます」

86:ラストダンジョン (404)   ◆Lv.1/MrrYw
11/03/26 01:51:44.99 dQ4YkDz20
 そうしてふたりは手を繋ぐ。
 かつて旅路を共にした仲間達や、エッジにある端末や操作主であるリーブの端末情報は
ケット・シーが。一緒にいるタークスや姉シャルアの端末情報はシェルクが持っている。手を
繋いだ瞬間に、彼らの持つ記憶と記録は情報として瞬時に交換される。
『こんなして実感する日が来るとは思わんかったけど、これホンマに便利やなぁ~』
 原理さえ理解できれば、機能を持たせたフィールドの組み上げにそう時間は掛からない。
ものの数分でフィールドを組み上げると、シェルクから渡されたコードを組み込んでネットワーク上
に仮装中継局ができあがった。あとは、呼び出した端末にプログラムを送って直通通信を確立
すれば良い。コードの受取にはいったん各端末との通信が必須条件になるが、少なくとも現時点
で呼び出しに応じられる端末は、すべてを繋いで双方向の通話が可能になったと言うことだ。

                    ***

 持ち主を示すアルファベットと割り当てられた呼出番号、その通信状態を示すリストがイリーナ
の目の前のディスプレイに現れた。シェルクは経緯を説明し、念のためこちらのモニタリングも
依頼した。
 一通りの話を聞き終えたイリーナは振り返ると、後ろに立つツォンにいったん携帯での通話を
終了するよう伝えた。ツォンがそれに従い終話するとすぐさま着信があった。普段とは違い画面
には、発信元の番号ではなくコードが表示されている。その指示通りにキーを入力することで、
直通通信に必要なプログラムを受け取ることができる。導入作業終了後に改めて認証コードを
入力すると、直通通信で仮想中継局に繋がるという具合だ。
 これ自体はシェルクが3年前にヴィンセントの端末に対して直接行った操作を遠隔で実施した
ものだったが、遠隔操作の場合は対象の端末が通信圏内にある状態で、しかも初回は持ち主
自身がプログラム導入の為に認証コードの入力をしなければならないと言う欠点があった。ちな
みにヴィンセントの認証コードは#VINだ。キー入力さえすれば、3年前にプログラムは
インストール済みなのですぐにでも起動できる。とは言っても、呼び出しても繋がらない現状では
無意味だったが。

                    ***

 イリーナが見ているのと同じリストはエッジの端末にも表示されていた。ケット・シーからリスト
が示す意味と手順を聞いたヴェルドもまた、ツォンと同じく導入作業を行い、特に苦もなく認証
コードを入力する。
 するとケット・シーの声は、ヴェルドの携帯端末からも聞こえるようになった。
『ディスプレイの表示、変わってますやろ?』その言葉に、ヴェルドはケット・シーの横に置かれた
ディスプレイ表示に目をやった。リストに並んでいた灰色の文字列のうち、自分の名を示す
アルファベットから始まる一行が、水色に変わっている。
『これでここと繋がったっちゅー事ですわ。そっちもふつうに喋ったら、繋がってる端末同士で
会話できる様になってます』
 目の前にいるケット・シー本体、それからケット・シーと繋がった端末のスピーカー。そして手に
持っている携帯端末から声が聞こえてくる。ここだけ無駄にサラウンド効果が得られたのと同時
に、通信で生じる時間差がほとんど無いことに気が付いた。

87:ラストダンジョン (405)   ◆Lv.1/MrrYw
11/03/26 01:57:46.70 dQ4YkDz20
「リスト上の水色で示された人物と、こうして会話ができると言う事だな」
『その様です。……水色で示された端末の持ち主に限られますが、複数名が同時に会話できる
というのは便利ですね』スピーカーと、手にしていた携帯端末の受話口を通して聞こえてきたの
は元部下の声だ。なんだか不思議な感じがする。
『その声はヴェルド主任!? え、えっと……ご、ご無沙汰しています……』
 後に続いたのはイリーナの声だった。なるほど、彼女の姉のものとよく似ている。ご無沙汰と
言われると、ヴェルドとしてはいささか返答に窮するところだが、聞こえてきた彼女の声からは
緊張がうかがえた。
「ああ。そちらも元気そうで何よりだ」
 少しでも緊張を和らげようと、意識的に穏やかな口調で声をかけてみたが、残念ながら期待
したような効果は得られなかった。



----------
・直通通信はDCFF7の7章で出てくるアレです。アプリのDLみたいな要領だと言う勝手解釈w
・色々書いてますが、端的に言うと「電話会議したい」って話(夢の無い書き方ですがw使った事は
 ありません)
・どことなく中途半端になってしまいましたイリーナの心中描写(Part7 154-158=まとめ5-2から
 地味に続いてます)。技量足らずですが妹組のこの二人が組んでも面白そうだなーと思い。
・エネルギー問題と常に隣り合わせの脆弱な基盤に成り立つ利便性。
 その上に、互いが依存し合い片足立ちで立っているような不安定な社会構造。
 FF7の世界観を要約するとそんな感じだと、個人的にはとらえています。
・FF7世界に生きる人々が好きなのは、それが幻想への憧れではなくて
 現実にもお人好しの方が多い、という親近感からなんだと信じたい。

88:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/26 18:23:09.06 hcgPiaeb0
GJ!

89:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/29 15:59:20.52 GyREStnv0
乙!

90:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/03/31 21:39:30.51 7VtDlhOl0
乙!

91:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/02 19:32:25.34 B40hHIZh0
乙です!

92:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/05 13:31:55.54 t91ILnZX0


93:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/08 17:19:01.72 8mTtUnkR0


94:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/10 19:00:12.44 MQB3hfX60


95:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/12 20:20:27.76 MghGRSg40


96:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/16 23:06:55.72 Xm0ZY/uC0


97:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/19 03:46:45.13 MT1PiHvi0


98:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/19 07:40:34.35 2UlJlP0j0
ディシディアの012組に萌えつつ保守

99:ラストダンジョン (406)   ◆Lv.1/MrrYw
11/04/21 15:28:37.84 JVBBVeEp0
前話:>>83-87
----------

 あまりにも唐突で、何が起きたのか分かりませんでした。

 ―「それでは……、さん。……お願いします」

 はじまりは不鮮明な男性の声でした。その声には聞き覚えがありません。
 どうやらこれは視聴覚記憶として保管されているもののようですが、その所有者は判然としま
せん。少なくとも自分の物でない事だけは分かります。
 そこで、6年前に埋め込まれたルクレツィアの断片ファイルが再び干渉したのだと疑いました。
けれど彼女の残した物とは共通項がありません。

 ―「……その姿は……亡き母の、あるいは亡き兄のものでした。
    それぞれに、過去の幻影を見せるのです」

 応じるようにして聞こえてきたのは、落ち着いた女性の声でした。
 いまひとつ話が噛み合っていない様に感じられるのは、記憶の一部が欠損しているせいでしょう。
この記憶の持ち主にとっては「朧気な記憶」になってしまうほど風化したものと言えます。

 ―「いったい何者なのですか? まるで見当が付かないのですが」

 そこでようやく音声以外の情報を得ることができました。
 困惑したように問う白衣姿の男性に背を向け、女性の長い髪が揺れていました。顔に手を当て、
声を詰まらせながらも彼女はこう答えます。

 ―「その者は親しげな顔でセトラに近づき、欺き、そして……
    ウィルスを、ウィルスを与えたのです!」

 彼女の言う『セトラ』とは何なのか、私にはそれすらも見当が付きません。
 そもそもこの記憶自体に接続した覚えはなく、何の脈絡も前触れも無くいきなり再生されてい
るものでした。

 ―「ウィルスに侵されたセトラ達は心を失い、
    やがてモンスターと化しました」

 そう語る女性の声は震えていました。
 怖れか悲しみか、あるいは怒りなのか。彼女の胸に去来するものの正体までは分かりません。
ただ、彼女に怯えている様子はありません。むしろ質問者に対して協力的に答えている様でした。

100:ラストダンジョン (407)   ◆Lv.1/MrrYw
11/04/21 15:33:51.93 JVBBVeEp0
 太古の昔、この星に住む人々に感染したウィルスは猛威をふるい、感染者はモンスターへと
姿を変え破壊を繰り返した。また別の感染者は同族を欺くために擬態を施し、勢力を拡大して
いった―記録の要約として、記憶者が理解した概要を閲覧しているのが今の私だという関係性
も、把握することができました。
 記憶には所々に不鮮明―欠損している部分があるものの、どうやら口述記録の様でした。
形式から見て恐らくオリジナルデータがどこかに存在する筈ですが、ここには無い様です。

(……彼らが見たという亡き者の幻影……。もしも、その記憶が幻だとしたら?)

 彼女の言うウィルスは「幻影を見せる」のではなく、「記憶そのものを書き換える」ものだとした
ら?
 それは欠損部分を補うよりも、興味を惹いたものでした。


 人もシステムも、層構造を持っているという点では同じだ。顔の表情や声、発する言葉―
直接的に他者との関わりを司る表層。その下にあるのが本音や心象などの心層。更にその奥に
は、記憶や本能によって形成された深奥層がある。対象がネットワークにさえ繋がっていれば、
シェルクはその領域にも自身を投影し潜行することができる。しかし元は異なる存在なのだから、
この時にかかる負荷は両者とも大きくなる。肉体に備わる免疫機能と同じように、精神にも防衛
機制があるせいだ。
 今回の場合だと、ここへ来る前にシェルクが通ってきた『集落』と『迷路』がそれに当たる。
 こうして他者との境界を超えたのは今回が初めてではなかった。むしろ6年前まで過ごして
いたディープグラウンドでは日常ですらあった。
 ディープグラウンド時代にシェルクが行ってきたのは、SNDを利用した他者の操作、具体的
には被験者の記憶の改ざん作業だった。
 多少の個体差はあるものの、被験者の全員に共通していたのは第一次接触─つまりSNDで
最初に意識へ潜入─の際、自分とは異なる存在に対し拒絶反応を示す点だった。シェルクに
とっての負担はこの時が一番大きいが、一度でも侵入に成功してしまえば、その後は自身の
記憶を対象に上書き・改ざんすればいい。
 こうすることで時には居もしない妹の夢を見せたり、ありもしない記憶を再現して、被験者の
感情を煽り立て自発的な行動を促す。
 その為、SNDを使った対象の操作と言っても、間接的な方法で時間も掛かった。
 しかも最終的には負荷に耐えきれず、対象の脳は機能障害を起こすに至る。こちらが意図する
行動を取っていられる期間は短く、掛ける時間とリスクの割には合わない。

101:ラストダンジョン (408)   ◆Lv.1/MrrYw
11/04/21 15:34:25.25 JVBBVeEp0
 こうなった対象はまるでウィルスに感染した肉体、あるいはプログラムのように隔離され、実験
データ回収後に打ち棄てられた。もっとも、この段階まで耐えられるのは本当にごく僅かで、多くは
その前段階―SNDでの初接続時の拒絶反応によって身体機能のどこかに異常を来し、廃棄
処分扱いになる。
 遅かれ早かれ、どの被験者も行き着く場所は変わらなかった。
 自ら望んで行った事ではないにせよ、彼らの末路が紛れもなく自身の所業だった事をシェルクは
理解している。けれど自分が生き残る為にはそうするより他になかったのだと言い聞かせ他人の
記憶を覗き、都合良く書き換え、挙げ句の果てには対象にとって致命的な行為と知りながらも感情
を煽った。


(私がSNDで潜った相手は、そうして全員が死にました)
 それはまるで。

 ―「ウィルスに侵されたセトラ達は心を失い、
    やがてモンスターと化しました」

(私が……やっていた、事……?)
 ディープグラウンドへ連れてこられた当時、まだ幼かった私は考えもしなかった。
 そもそも、なぜSNDという技術が研究されるようになったのか?
 長年にわたって大規模な地下施設で秘密裏に行われていた研究と、繰り返されてきた実験。
 そうまでして、神羅が欲しがった理由があったはず。
 その答えが、この先にあるのだとしたら?
(私が、……やった……)
 この中に埋もれている記憶情報の中に、その手掛かりがあるのだとしたら。
(……私、の)

 どんな事をしてでも、それを手に入れたい。
 どうしても知りたい。

(わたし……)

 幼い子どもの持っている純粋な好奇心にも似た、ゆえに獰猛な狂気をはらんだ情動が、
シェルクの意識の中に広がっていく。
 情動は衝動を呼び起こし、衝動は心を支配する。
 それに抗う術は無かった。

102:ラストダンジョン (409)   ◆Lv.1/MrrYw
11/04/21 15:43:22.88 JVBBVeEp0

                    ***

「ところで……ケット・シー?」躊躇いがちなシェルクの声は、仮想空間にいるケット・シーだけに
向けられていた。
「どないしました? ボクの組んだフィールド、どっか穴でもあいてますか?」
 ケット・シーはきょろきょろと首を振る。直通通信で繋がった端末どうしの中継地点となる“経由
地(フィールド)”とその“交信(ルート)”を制御するプログラムを配した、言ってみれば「箱」の中にいる
彼らの声は、そのままでは外部には聞こえない。
「いえ、あの。そうではなくて……」
 歯切れの悪いシェルクの様子は気に掛かったが、そこには触れずにケット・シーはにこやかに
告げた。
「なんやシェルクはん水臭いですな~、こうしてボクとライブラリを共有するほどの仲やないです
か! 遠慮せんと、なんでも言ったってください」
 果たして「ライブラリを共有する仲」と言うのは、親密さの尺度として用いる場合にどの程度の
説得力があるのかは未知数だった。ただ、こうして接続できる相手はそう多くない。境遇という
意味で捉えるならケット・シーの言い分も的外れではないような気がして、シェルクはなんとなく
頷いた。
 さんざん考えた挙げ句、ここは素直にケット・シーの厚意に甘えることにした。
「すみません。実は、あなたのライブラリの中に気になる項目があるんですが……」
 一方で、こうして繋がれると言うことは本来であれば見ることのない対象の本音の部分まで
見えてしまうという事だった。性質上、過去の記憶や感情を互換可能なデータとして蓄積している
ケット・シーと、そこへ接続できる能力を持ったシェルク。何の因果か、シェルクはそこでSNDに
関連のありそうな記録を見つけたのだと告げた。
「ちなみにこの記録は、一体どこで?」
 あの口述記録のオリジナルデータの所在が分かるかも知れないと、期待を込めてシェルクは
尋ねた。
「あれ? 何やろこれ。ボクのとは別モノっぽいですけど……」ケット・シーは身に覚えが無いと
言った「でもホラ、ボクって他にも何体かおったから」。もしかしたら3年前にいた別のケット・シー
のモノかも知れないと、そんなことを言った。
 中を見ても構わないか? と尋ねられ、ケット・シーは快諾する。

103:ラストダンジョン (410)   ◆Lv.1/MrrYw
11/04/21 15:45:51.88 JVBBVeEp0
 持ち主の承諾を得てシェルクは目的のフォルダ―そこは人の視覚で直接認識することの
できない記憶という名の保管庫―を開いた。本来であれば記憶の持ち主以外は立ち入れない
場所に、彼女はこうして足を踏み入れた。
 その中は一見すると無造作に、それでいて時系列を崩さず、しかも分類毎に整然と並べられた
記憶の数々があった。しかし先程の記憶情報はどこにも見当たらない。シェルクはひとまず
手近にあったファイルに触れると、それは自動的に再生を開始した。

 その正体が抑圧された記憶ファイル―本来、それは再生されないよう厳重にしまわれている
筈のもの―であることに気付いたのは、シェルクがフォルダを開いた後の事だった。ケット・シーが
必死になって呼びかけるが、たとえ記憶の持ち主であっても、いったん再生をはじめた記憶ファイルは、
全て終えるまで止めることはできない。


----------
・冒頭の台詞はFF7Disc2アイシクルロッジで見られるイファルナの記録より。
・シェルクの体験は、DCオンライン版より。
・イファルナの記録からSND技術の開発に取り組んだと考えても不自然ではないかも?という
 お話です。(FF7本編で22歳。3年後のDCで25歳=エアリスとDG生まれのロッソがほぼ同い年)
・そう考えると、ジェノバ(細胞自体の変異=擬態)とSND(認識機構の操作)で、やっていることは
 真逆だけど、同じ結果を生む事になります。むしろ同じ結果を生むためにやろうとした事だったら、
 恐ろしい実験ですよね。…こういう繋げ方でFF7後日談を作って欲しかったな~と言うのは、
 いちユーザーの希望としてw

104:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/22 14:16:15.44 x3foeDN+0
GJ!

105:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/23 20:47:13.60 P2sg4VJ00


106: 忍法帖【Lv=21,xxxPT】
11/04/26 13:18:12.83 iqChVw950
test

107:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/04/28 02:03:28.29 TdPnx5sK0
>>99
乙!

108:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/01 15:34:04.42 N6bbFHov0


109:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/02 12:17:40.96 h0rvl1M7I
ほほほ

110:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/02 18:07:36.16 T1Ac2d+uI
ほほほほほほ

111:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/05 10:03:57.85 53SOSf+10
ほぼ

112: ◆oUqQ6NLG0o
11/05/05 17:26:28.43 1I2E6L++0
ほほほほほほほ

113:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/05 20:55:31.78 YPxS1NUK0
URLリンク(www20.atpages.jp)

114:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/08 02:07:46.02 w2JKjABX0


115:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/08 10:18:01.61 ixwvoYQbI
ま?

116:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/08 10:19:38.65 ixwvoYQbI
ままままま

117: 忍法帖【Lv=2,xxxP】
11/05/09 03:58:09.60 j8SALG1g0
!ninja

118:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/11 22:39:30.98 cE9FODZT0


119:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/14 10:51:36.76 WlwvK1Vk0


120:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/14 13:13:29.92 QP89JNXL0
URLリンク(ux.getuploader.com)

121:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/16 17:09:10.06 2/8Hjoly0


122:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/18 17:06:28.81 nio5C2cb0


123:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/22 00:50:22.07 KmoMEhVU0


124:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/22 04:44:23.57 IdxtmsBAI


125:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/23 17:12:34.22 KuKWEepz0


126:Hohe Minne 1/5  ◆SIRO/4.i8M
11/05/25 01:22:55.53 1Hn32FRr0
ネタバレ妄想注意報です。
--------------------------------------------------------------------キリトリ------

 それは温かい場所だった。世界は明るく、溢れんばかりの自然が城を囲む。
村人は勇者を尊崇し、預言者もまた勇者に祈りを捧げた。
騎士達がその神殿―時を超え、二千年前の神殿に訪れし際。
 なんでかおんも出れなかった。光の戦士達は二頭身でちっちゃくて、なんで出られないのか、
スーパーモンクオブライトにも、赤魔オブライトにも、白魔オブライトにもよく分かんなかった。
騎士だけどウォーリア・オブ・ライトさんだけは、相変わらずぶれない顔で事情を察していた。
 
 神殿の外は崩壊していたのだ。世界は重い雲に覆われ、冷たい雪と雨が瓦礫を削っていた。

 ムチムチプリンプリンセスな女神様と、角おっ欠けて羽ボロボロのデカオくんが居る次元。
倒しても倒しても戦士は浄化されて復活、連戦でデスぺラード・カオスことデカオくんは満身創痍だ。
そんで宝箱からミミック的登場してたデカオくんも仲間に入れて、かつての仲間達はわいわいしてた。

 集いし戦士の一人、ジタンが口を開いた。
「コスモスは美人だよな」
ウォーリア・オブ・ライトことWoLが、少しきょとんとして返した。
「アレクサンドリアの姫も美しいと聞いたが」
「うん。プリッシュやティファみたいな綺麗な髪だった」
人懐こい目でジタンに笑いかけられ、女性二人が頬を染める。
「そうなの? 嬉しい」
と、ティファが頷くと、プリッシュが元気な声で
「なんか照れるぞ!」
ってジタンをどついた。結果、ちょっとジタンが吹っ飛んだ。
「大丈夫かい? コスモスに回復して貰おうか?」

127:Hohe Minne 2/5
11/05/25 01:24:06.31 1Hn32FRr0
 そしたらなんか、闖入者がガチャガチャ鎧鳴らしてやって来た。
「あれは大いなる意思の妻。女神はその写し身よ。ふははは! 貴婦人への不倫は騎士の伝統だ!」
「なっ。なんちゅー事言うんだガーランド!」
ジタンが尻尾を振り上げ全力で反論する。あとWoLがすげえ怖い顔してる。
「嫌ですねえ。NTRが伝統! エローい騎士様のナンパ相手はひ・と・づ・ま!」
「我が主を愚弄する気か」
茶々を入れるケフカが、ヤバげで険悪な空気を作る。そこでヴァンがひょいっと返した。
「未亡人に不倫とか、ある訳ないだろ」
アーシェ殿下は一応独身なので『バルフレアー!!』しようとそれは自由なはずだった。
ねぎ坊主、じゃなかった、オニオンナイトもガーランドに振り向いた。
「サラ姫は独身だよ?」
「王女のロマンスねえ……ロマンス?」
フラグクラッシャーことバッツも顎に手を当て、首を捻った。
「おいおい、ウチの大事なお姫様は愛娘だぞ」
と、陽気なラグナも反撃した。
「二人に、やましい点は何もないクポ」
シd、大いなr、じゃなくて。さっくりモーグリも答えた。そこまでは良かった。のだが。

 ティナの脳裏に、かの超イケメンな王様、エドガーが浮かんだ。
スコールも内心、ぎにゃああ! なサイファーを回想した。
フリオニールは不意に『君のお父さんになっていいかな?』と口走るリチャードを思い出した。
クラウドもアルフリードを思い浮かべたが、相手は王様と悪竜王だったので黙った。
ティーダははっきりと「シーモアの事っスか?」と言った。
何よりもカインが「……フッ」としか言わなかった。
そして、言いだしっぺのガーランドがセーラ姫に横恋慕なので、皆困った。

 ややソープオペラくさい微妙な騎士話になりつつある時、オニオンナイトが叫んだ。
「そんな騎士道は嫌だ!」
「そうだね……」
セシルがよろよろの笑顔を浮かべながら、全身で困り果てていた。

128:Hohe Minne 3/5
11/05/25 01:25:51.40 1Hn32FRr0
 バッツがギルガメッシュに質問する。
「なあ、武士道はどうなんだ?」
全身全霊で歌舞伎っぽくポーズを取りながら、ギルガメッシュが解説した。
「想いを香に込め、花鳥風月に重ね、歌に詠むのだ! 風流なものよ」
「素敵ですね」
「なかなかのロマンチストだな」
ユウナが優しい声でギルガメッシュに返す。ライトニングも感心したように頷いた。
綺麗なお姉さんに囲まれて、ギルガメッシュは感涙と共に武者震いした。しかしそこに。
「不義密通は、姦夫姦婦を重ねて四つに斬る」
囁くような低音で、セフィロスがドロドロした事を口走った。
ややメロドラマっぽい武士話にされた事で、ギルガメッシュも困惑していた。
全身に鳥肌を立てながら、オニオンナイトがかぶりを振る。
「そんな武士道も嫌だ!」

 するとゴルベーザが、静かに答える。
「騎士も姦通は焚刑もの。それほど甘くは無い」
「それも大変だな」
ヴァンが何となくガリの肩を叩いた。カインが言葉を続けた。
「本来は、高齢の王侯達が若き妃を迎えたが故の悲恋だ。口付けも交わさぬ純愛でもある」
セシルが高齢に該当するかどうかはさておき、騎士道はそれなり純情なようだった。

「アレよ。俺達に色恋沙汰があるとすりゃ、精々チューぐらいのもんだ。なあティーダ」
「んー。ウチもはぐはぐ以上の事はないなあ。そうだろ、スコールくん」
「なっ……」
「何言ってんだよ、オヤジ!」
世界一ピュアじゃないPTA発言に、スコールは超高速で長文の反論を考えていた。
「宜しいんじゃございませんこと? 下駄箱のチョコまで、目くじら立てる必要もありませんしね」
「汚い、流石大人汚い」
「俺の世界で最も進んでたのは、チョコボだ。孫もひ孫も産まれていた」
バッツの脳裏で、大量に雛を孵して増殖したボコが草原を行進し、
ライトニングは一瞬、アフロを埋め尽くす雛チョコボを想像して陶然とした。

129:Hohe Minne 4/5
11/05/25 01:27:16.25 1Hn32FRr0
 もはやコスモスもカオスも境界グダグダな中で、皇帝陛下がお出ましした。
「姫を守るなぞ笑止。野薔薇の紋章は散らせてこそ意味がある……フッフッフッ」
「貴様、ヒルダ王女に何をした!」
フリオニールが怒った。それはもう超怒った。
―行け、ブラッドソード。正義は僕らの味方だ。皇帝の野望を打ち砕け! って位怒ってた。
いや、ミンウ返せ。スコット返せ。ヨーゼフ返せ。リチャード返せ。シド返せ! って位怒ってた。
「これは。もはや純愛と言う次元では無かろう」
「少々、CEROレーティングを越えているのではないですか?」
「背徳の皇帝マティウスか。そうか。そっちの背徳なのか」
そんな喧騒の中で。ユウナが指笛を鳴らし、そして叫んだ。
「おまわりさん、こっちです!」

 皇帝が、背後の異様な気配に振り向く。
そこには。散々ぱらぱら道場扱いされた挙句、『やだー騎士フケツー』みたいな雰囲気に激怒した、
EXモード姿のジャッジマスターことノア・フォン・ローゼンバーグが、殺る気満々で立っていた。
「失意の荒野を彷徨うがいい! イェア!」
「ウボァアアアアアアアァ!!」
同時に、闇と光を竜の爪牙に驚くのはこれで終わりだの終わりだっ! が、皇帝を包んだ。

 つぶらな瞳のデカオくんが、半死半生よれよれウボァー皇帝を介抱した。
「申し訳……ございません……」
「ウグルルルルルル」
「おや? いばりんぼの皇帝陛下が敬語だな」
「王も神には勝てぬ。じゃが、あの男。以前は魔導師であったとも言っておったな」
「生まれつき王家じゃないのかー!?」
「あれ? WoLもどこかの王様名じゃなかったっけ?」
「アーガス王とダウ王とサーゲイト王にドマ王にジオット王だね……ジオット!?」
「トーイやパフィもあったような……」
「まあ。ひこにゃんはドワーフで宿屋の娘なのですわね」
「何だよ、ちゃんと俺が付けた名前があるんだぞ。ん? そう言えばWoLはどこだ?」
ふと、プリッシュが仲間の不在に気付く。

130:Hohe Minne 5/5
11/05/25 01:28:53.35 1Hn32FRr0
 WoLは、なんかコスモスのとこにいた。ぴたりと主に傅いて。剣を捧げ静かに額づく。
調和の女神はたおやかに騎士を支え、慈愛に満ちた眼差しを浮かべる。

「お、何だ? なんか仲いいな」
「僕達はお邪魔かな?」
「しかし跪き方がなってない。神の前では両膝を付くべきだ」
「出たな、妖怪ムスカめ」
玉座の物陰から皆してあーだーこーだ言ってたら、即座にWoLに見付かった。
「何をしている?」
「!」
 すると。コスモスは満面の笑みで、光と闇の戦士達を迎える。
「ああ、皆、良く来てくれました」
「では10ギルを」
軽快な金属音と共に、WoLが女神に寄付とかしてた。
「何事かと思ったら、募金かよ!」
「やべ、ショップで買い物したばっかりでギルがない」
「金のエンゼルを売るか?」
「そうだねえ。誰かにトレーニングリング・背水の陣・スタンドバイミーを装備させようよ」
「うっかり変な名前付けた、アーティファクト売ればいいんじゃな~い?」
それは、悪夢の世界。けれどその場所は光も闇もなく。戦士達は全て仲間だった。

 冷酷な女神。その女神が優しい感情を取り戻し、我が身を捨てて守り抜いた戦士達。
そのきっかけは。命懸けで女神を守る、光の騎士の姿。

 二千年前のカオス神殿で。WoLはもう一つの世界を思い返す。
天地は暗く荒廃し、しかしそこは賑やかで、様々な戦士が集っていた。
まだ壊れてはいない過去の神殿。その外に、懐かしい友人達がいるのかもしれない。
セーラ姫の困り顔に、かつての女神の面影を重ねながら。
光の戦士は、もう一人の騎士―ガーランドの元へと向かった。


おわるよ

131:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/25 22:43:46.93 SkQ8ZOO90
GJ!
楽しく読ませてもらいました

132:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/28 01:58:23.02 2bihLG8v0


133:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/05/30 15:49:29.15 hw/J53Zd0


134:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/06/02 03:59:18.72 AOi2IUor0


135:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/06/03 01:12:16.15 oSm1yrEz0
>>126-130
なんというカオス(良い意味で)w騎士とゆーか武士とゆーか、みなさん紳士ってやつですね!
(断じて紳士という語に後ろめたい意味は含んでいないんだ。いやそうなると用法的に少し
間違ってる気もしないでもないけど)
背景を考えるとセフィロスの発言は重たすぎるというか、皮肉めいて聞こえた自分に少し後悔。
DFFやってないので本意を汲めてない気がします、すみません。

ところで。
> アフロを埋め尽くす雛チョコボ
そのゲームはいつ発売ですか?

136:ラストダンジョン (411)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 00:45:23.81 Nu6bFi9J0
前話:>>99-103
※細切れ投稿になる事を予めご容赦下さい。
----------


 ―『死んでしまった人にとっては、それが“全部”なんやて……!』

 それと接続した途端、私の中に流れ込んできたのは―恐らく対象がその事柄について
最も優先すべき―“感情”なのだろうとは容易に想像が付きました。
 生きた人間へのSND実施には潜入対象、なにより私自身の負担が大きくなるという欠点が
ありました。それ自体は既に、ディープグラウンドでの度重なる実験を通して確認されている
問題でした。
 さらに目的となる記憶情報に付随する感情―私からしてみれば不要な情報であり、ノイズ
として扱われる物―が大量に含まれるせいで、データをフィルタリングするにも相当な
エネルギーを消費しなければならず、他者からの情報収集の手段としてはおよそ効率的とは
言えない時間と手間を要します。
 けれどケット・シーが“コンピュータを搭載したぬいぐるみ”である以上、生身の人間よりは
感情ノイズの影響を受けているとは考えにくく、彼の中のライブラリ、つまり記憶領域の閲覧に
ついて、ケット・シーが操作主の感情をフィルタリングする媒体になり得る、というのが当初の
目算でした。

137:ラストダンジョン (411)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 00:47:43.65 Nu6bFi9J0
 しかし、どうやらそれは誤りだった様です。


 ―『死んでしまった人にとっては、それが“全部”なんやて……!』―私が最初に触れた
それは、強烈な感情。しかもその他に付随する情報が無いか、あるいはその量が多すぎるため
に転送自体に支障を来すものの様です。触れるだけで裂傷を負わせるような、そんな痛みすら
伴う強い感情でした。それほどの感情ともなれば、記憶の持ち主ですら思い返す度に同様の
痛みを覚えているのかも知れません。
(……ずいぶん厄介なものにアクセスしてしまったようですね)
 好奇心に駆られて安易に手を出してしまった事を悔やんだところで後の祭り、いずれにしても
嘆息したくなる状況である事は確かでした。記憶保有者の意図するしないに関わらず、完全に
こちらの目論見が外れたわけですから。
 その先に見えたのは、膨大な数の視覚情報でした。それぞれの場面を切り取った断片。
やがてそれらは時間をさかのぼるようにして整列し、繋がった私自身へと送られて来ます。
 3年前のミッドガル上空、オメガの顕現。旧ミッドガル市街地での大規模な交戦。WRO本部の
襲撃と陥落。ディープグラウンドによるエッジ、カーム急襲……。
 4年前の星痕症候群。エッジ幹線道路や周辺地域での交戦。
 5年前には街の復興風景と、片や蔓延する謎の病“ミッドガル病”に怯える街の人々。

138:ラストダンジョン (412)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 00:50:42.38 Nu6bFi9J0
 6年前のメテオ襲来。北の大空洞での死闘。ミッドガルや各地の避難風景。ビルに据え付け
られた巨大砲身。鋼鉄の要塞都市。荒廃した砂の流刑地……多くが、実際に私自身が目に
したことのない土地でした。けれどそこに付随する情報がきちんと整理されている為に、それらが
いつ、どこで起きた出来事なのかを正確に把握する事ができました。恐らくこれは、この数年間
にケット・シーの辿ってきた記憶なのでしょう。厳密には操作主の記憶なのかも知れませんが、
今の私にとってそれを特定する意味は無いので、追究することはしませんでした。
 それにしても情報の多くが6年前に集中しています。
 特に6年前、ミッドガル地上部の第7プレート支柱破壊の情報と、その直前の壱番魔晄炉爆破
については、かなり詳細な情報も含まれていました。
 この当時ディープグラウンドに収容されていた私が知る由もありませんが、データから知る限り
でも相当の死傷者を出した様です。支柱を破壊され落下したプレートは地上部に暮らす人だけ
ではなく、プレート上に作られた街とそこに暮らす住民もろとも押し潰したのですから、多数の
死傷者が出るのは火を見るよりも明らかです。さすがにディープグラウンド内でも、これだけ
大規模かつ無差別な殲滅作戦、あるいは実験は例がありません。

139:ラストダンジョン (413)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 00:53:16.72 Nu6bFi9J0
 たしか地上では『リミッター』の取付は行われていなかったはずですが、これではそんな物も
必要ないでしょう。
 その意味では、ディープグラウンドの方がいくらかマシと言えるのかも知れません。この街に
暮らしていた人々にとっては皮肉な話ですが。
(…………)
 どうやらその光景を、ケット・シー……あるいは操作主は神羅本社ビルから文字通りに高みの
見物をしていた様です。こうしてアクセスした視覚情報がはっきりと示しています。それを覗いて
いる自分の存在が、少し可笑しく思いました。理由はよく分かりませんでしたが、とにかく可笑し
かったのです。
 記憶データはそこで終わりました。
(これだけ……?)
 転送に支障がある程の量だった割には、ずいぶん呆気ないと思いました。人のみならず生物
が本能的に厭う死という概念。こうしてそれを目の当たりにしているにも関わらず呆気ないと感じ
るのは、そこに痛みが伴っていないせいだと言うのは分かります。

(では、私が最初に触れた鋭利な刃のような“感情”は誰の……?)

 そう疑問を抱いた瞬間、まるでそれが引き金になったかのように、受け取った断片ファイルの
残りが次々と開かれて行きました。先程とは違い、そのほぼ全てが無尽蔵に湧き出る感情の
類で、データの多くを占めていたものの正体にようやく気が付きました。

140:ラストダンジョン (414)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:03:12.02 Nu6bFi9J0
 怒りや悲しみ、失望と落胆の狭間にただよう自責の念。さらにミッドガルを支える躯体が軋んで
轟く金属音に、人々の怒号や悲鳴が入り交じった―目を覆い耳を塞ぎたくなる、それはまさに
地獄のような―光景。戦場ではなく、ある日突然に日常が崩壊する"恐怖"そのものに呑み
込まれ麻痺する思考。これまで大切に育み見守ってきた都市の崩壊に立ち会いながらも、為す
術も無くその様を見ていることしかできない自分自身への憤怒と諦念。それでも尚、守る者を
持つ自身の立場が枷となりこれらの感情を抑え込もうと働く理性……。
 行き場のない膨大な感情は、あっという間に思考領域を埋め尽くしていきます。
 私が見た物を言語データとして取り扱う分には簡単です。しかし、そんな物では収まるはずは
ありません。展開されたひとつひとつの感情は一瞬のうちに膨れあがり精神を圧迫、他の記憶
と競合しさらに膨張を繰り返します。
(これは……感情の源泉?)



 感情の源泉。
 それは人が何かしらの行動を起こす契機、あるいは行動理念。
 シェルクにとっては、ディープグラウンド時代の過酷な日々を耐えるための支えとなった姉への
強い思い。信頼からくる期待と希望。一方で日々増え続ける不安と不満。その鬩ぎ合いを他者に
投影し、SNDによる行動操作の拠としていた。
 妹を救う、あるいは仇を討つ。

141:ラストダンジョン (415)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:06:49.05 Nu6bFi9J0
 そうやって感情の源泉さえ与えてやれば人は自らの足で立ち、勝ち目のない戦いにも勇んで
身を投じる。そうして、倒れていった試験体達を何人も見てきた。
 度重なるSNDの副作用で機能障害を起こした脳と、敵の一撃を受け倒れ伏し瞼を閉じる間も
なく息絶えた試験体の目は、シェルクに向けられていた。彼らは最期まで、妹の仇討ちだと信じ
ていた。
「あなたに妹などいませんよ……」
 床に横たわり動かなくなった試験体を見下ろしながら、胸の内に広がる罪悪感を様々な理由で
上書きした。
 シェルクはこうして10年もの間を生き抜いてきた。彼女の行為は、善悪という尺度だけで計る
ことはできないだろう。しかし間違いなく、善の側には属さない。
「お疲れ様でした。ごきげんよう」
 シェルク自身の願望と感情を投影し操った試験体はどれも皆、仇討ちを果たすことなく倒れて
いった。弔いにしては残酷な響きを持ったその言葉は、本当の妹を捜している筈の姉に向けた
皮肉であり、願いだった。
 姉との再会を遂げディープグラウンドから解放された今でさえ、当時の記憶に触れるのは
シェルクにとって容易いことではなかった。




142:ラストダンジョン (416)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:08:59.57 Nu6bFi9J0
 けれどそもそも人は、一瞬と言えるほどごく短時間のうちに、これだけ多くの情報と、それに
付帯する感情を処理する能力を持っていません。それほど多量の情報を取得する機会も、
処理する能力も無いからです。
 人は無意識のうちに入力される情報を選択しています。さらに時間の経過と共に、保管に
都合の良いように書き換えと圧縮を繰り返し、記憶は意識の下層へと送られます。
 ディープグラウンド時代の実験棟でさえ、ここまでの混濁を作り出す事はできませんでした。
 そもそも、繰り返し与えられる恐怖と苦痛によって形成された服従という体制は、システムへの
順応を目的とした操作・拘束の手段であり、逆に言えばそれしかないのです。どれほどの恐怖や
苦痛も、パターンさえ判れば回避する手段を構築できるもので、それこそが人に備わった環境
への適応能力に他なりません。
 しかしこの適応には、相応の時間が必要です。
 瞬時に他者の記憶情報へ接続できるSNDでは、それは致命的な欠陥となりました。
 結果的には、私が3年前ディープグラウンドで試験体にやったことと同じ。
 ならば私が受ける報いとしては、これ以上に相応しいものはありません。

 想定された容量以上の処理を要求されたコンピューターがそうなるように、私自身の脳と心が
機能を停止させるまでに、時間は掛かりませんでした。

143:ラストダンジョン (417)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:13:18.73 Nu6bFi9J0

                    ***

 イリーナが事態の異変に気付いたのは、モニタの隅に表示された控えめなエラーメッセージ
と、小さな警告音だった。その音を聞けば、次にやや面倒な操作を要求されるのだろうと感じる
程度に耳慣れたものだった。
「やだ、エラーって……」
 “接続状況を確認してください”
 表示されているのはそれだけだった。コンピューターに疎いという訳ではないが、仕事以外の
場面で好んで使用するほどではなかった。具体的にどうすればいいのかが分からずに、
イリーナは横たわるシェルクの方へ顔を向ける。
「……どうやらまずい事になっている様だ」
 ツォンの声に振り返ったイリーナは、その視線を追うようにして右側のモニタを見やった。
 その中の『潜行深度』と書かれていた数値が、急激に上昇しているのが分かった。あっという間
に80を超え100に近づいている。
「『潜行深度48で2時間』、それが彼女の示したリミットだ」
 SNDの原理などツォンが知り得たはずがない。その表示がどういう意味を持っているのかも
分からない。ただ、シェルクが事前に教えてくれた指標に従えば、少なくとも現状が好ましくない
状況だというのは分かる。それに深度が増す毎に負荷が掛かるのは、水圧と同じだと考えれば
感覚的な状況理解ぐらいはできそうだ。

144:ラストダンジョン (418)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:16:32.14 Nu6bFi9J0
「シェルク大丈夫?」
 イリーナが呼びかけてみるが反応はない。こうしている間にも、深度を示す数値は100を超え
150にまで迫ろうとしていた。イリーナはとっさに席を立ち、横たわるシェルクの傍に駆け寄ると、
頬を叩いて直接呼びかける。
「シェルク、ねえシェルク聞こえる? お願いだから返事をして!」
 横たわり微動だにしないシェルクの手を取ったイリーナは、その手から体温が急速に奪われ
ていく事に気付いて、血相を変えた。
「シェルク?!」
 気が動転したイリーナは、横たわるシェルクの背後に繋がっていた接続ケーブルを思い切り
引っ張ろうと手を伸ばす。すんでの所でイリーナの腕にツォンの手が届き、手を止めさせる。
「ツォンさん!?」
 言外になぜという抗議を込めて見上げた先では、ツォンは静かに首を振り窘めるように言った。
「落ち着くんだイリーナ。最初にシェルクが言っていたことを思い出すんだ」
 SND実行中の端末の強制終了は避けなければならない。その接続を切る事も、当然できない。
「だけどこのままじゃ……」

145:ラストダンジョン (419)   ◆Lv.1/MrrYw
11/06/04 01:22:13.16 Nu6bFi9J0
「確かに事態は急激に悪化した。今のところ外の我々には原因が分からない以上、打つ手立て
もない。ただ、すべての事象がネットワークの世界で起こっているのなら、最低限その世界を
維持する事に徹するべきだろう」
 事態が好転する可能性を消してはならない、とツォンは言った。


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・“削除できない記憶のお話。”
 ケット・シーの意識下に眠る感情の源泉に触れてしまったシェルク、というのが主題。
・オンライン版のシナリオで行けば、他人の記憶を上書き(思い込ませる)事ができるなら、
 自分の記憶も逆に改変(感化)させられる可能性があるのよねと。
 (DC本編でもルクレツィアデータ云々で触れてる話ですが)
・FF7Disc2飛空艇内で口論の発端となった台詞(「死んだ人~」)は本当に重たい。
 初プレイ時にこの台詞を見た時の衝撃は今でも忘れられない。そう言う事を書きたかったらしい。
・1回あたりの投稿文字数制限614文字(多分)。数えるのしんどいですw読みづらくてすみません。
 「文章で遊べるスレ」にとってこの規制は致命的かも…。


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