FFの恋する小説スレPart10at FF
FFの恋する小説スレPart10 - 暇つぶし2ch205:ラストダンジョン (374)   ◆Lv.1/MrrYw
10/09/27 02:14:30 nqYGLRPF0
前話:>>173-177
----------

 あの場からユフィが動けずにいた時間は、彼女の体力回復という点において無駄にはならな
かった。部屋を出たユフィはいつもの軽快な身のこなしで亀裂だらけのフロアを駆け抜け、強固な
隔壁の下の僅かな隙間をくぐり抜けてエレベーターホールへと向かった。
 1枚目の隔壁を抜けたユフィは立ち上がると、しまっておいた小瓶を取り出してそれを見つめた。
(この調子なら、さっきおっちゃんにもらった回復薬も使わずに済みそうだ)
 リーブがここへ戻ってきたユフィに渡したのはエリクサーだった。エリクサーは今でも稀少品
だったが、だからといって重宝する時代ではなくなった。使うとしても場面はごく限られるし、もともと
店に売ったところで儲けを期待できるような代物でもない。昔も今もちょうだいと寄ってくるのは
せいぜいマジックポットぐらいだ。それでも6年前のユフィなら魅力的な対価を目当てに、今なら
半ば不要品処分といった感覚で、マジックポットの要求に快く応じたことだろう。
 けれどこの時のユフィにとって、いま手元にあるエリクサーだけは誰に頼まれたとしても譲る
気にはなれなかった。
 無意識のうちに、エリクサーを持つ手に力がこもった。
(これ以上おっちゃんの思い通りにはさせない。……こんな物、アタシには必要ないんだから)
 ここまでの経緯を思い返すと、どう考えてもリーブの計略にまんまと振り回されている気がした。
そしてユフィの認識と現実は残念ながら一致している。渡されたエリクサーを使わずにいたのは、
まるで事態を見透かしたようなリーブに対する小さな反抗意識からだったが、今やこの状況を打破
するための切り札のような存在にも思えたのだ。
 ユフィにとって手放したくないほどの価値はエリクサーその物ではなく、それを手元に残しておく
ことにあった。
 確認するようにして手にした小瓶を見つめて頷くと、再びエリクサーをしまってエレベーターホール
を目指し走り出した。
 2枚目の隔壁下から這い出たユフィは立ち上がって後ろを振り返った。ここからでは壁に阻まれ、
先程までいた部屋はもう見えない。
(……モンスターからここを守って)
 それからまた前に向き直って3枚目の隔壁の下をくぐり抜ける。
(ここにいるみんなを守って)
 同じ要領で4枚目。
(もちろん、空爆なんて絶対させない)
 そして、最後の隔壁に向かう。
(見てろよ~)
 こうして文字通りに自分が切り開いた道を戻りきったユフィはエレベーターホールまで辿り着くと、
扉横のボタンを押した。


次ページ
続きを表示
1を表示
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch