10/07/10 21:00:38 Sav21tG00
ま
151:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/12 11:05:28 XxQGZs+s0
り
152:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/15 05:41:17 7N5ODRnf0
も
153:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/16 19:44:11 yHkEEmDZ0
っ
154:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/19 04:18:02 Uj6Uu+Ss0
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155:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/20 00:21:24 F7nO2FMa0
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156:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/22 03:21:40 KHs5s2oT0
ほ
157:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/23 20:49:41 407Rert50
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158:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/27 00:23:05 DROR6R3G0
ま
159:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/29 05:52:07 g2xJ+qRY0
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160:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/07/31 05:10:55 84pNaNrx0
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10/08/02 02:37:54 B7G2ISTM0
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162:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/04 04:02:37 A1BXoHS90
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163:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/04 18:24:14 eWbuk0zp0
ま
164:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/06 03:07:32 SZWADp8l0
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165:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/06 15:24:47 hV0FIMbb0
ー
166:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/09 04:23:11 /K8P2kPt0
ん
167:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/10 07:25:24 wvZkJ+VI0
も
168:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/10 11:38:10 Tb7AamBw0
ち
169:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/10 22:20:31 Tb7AamBw0
流れぶった切って非っ常~に申し訳ないのですが……
ここってまだ書ききっていない中編、長編のFF二次創作モノもおkでしょうか
170:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/11 08:23:09 6KKbB/HQ0
テカテカと正座しながら、連載お待ちしています。
連載しながら書き上げる、完成させる事は、もしかしたら経験値になるかもしれません。
基本的な書き方はテンプレのどこか(>>3の記述の一般的な決まり)にある気がするので、
よろしければ参考にしてみてください。
171:169
10/08/11 14:47:03 R09dB2jP0
>>170
ありがとうございます。ガイドライン熟読します。
あまりテカテカ期待されるのも恥ずかしいのですけど。
男は度胸、なんでも見せて(ry的な精神で発表できたらいいなと思っております。
172:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/13 01:46:52 e81ey5Xh0
僭越+遅レスもいいとこですが…。
>>137-140
遅ればせながら乙です。これが巷で噂のひこn(ry
ちょっと装飾過多な印象を受けたのですが、それを除けば全体的に硬派な戦士のイメージが
うまく演出されている様に感じました。FF1(DFF内のFF1主人公含め)は未プレイ・未クリアですが、
個人的にシリアス物好きです。
遅まきながら次回投稿時の参考にいちど>>3-4をご覧下さい、有益な情報があると思います。
>>169
・ここで投下はじめたら、なるべくここで完結。(ここ以外に載せてる物ならそこで完結。)
・1回の投下は適度な区切りが大切(だと思う、これも掲示板特有かも?)。
・投下の前に>>1-4
書き手として最低限それは心得てもらいたいかな、という希望。
読み手側からすると、読んでる最中に放置されると非常に切なくなるモンです。
とは言え、書くのも読むのも自由だし、未完投下の場合は書いてる途中でレス読んで軌道修正
できるのも掲示板投稿の醍醐味(というか利点)だったりするんですよね。
他の人の解釈とか(書き手読み手を問わず)知ると、自分の理解も変わりますし、より一層原作が好きになるという。
ただ、長編はモチベーションと環境を保つのが大変だとは思いますが…投下楽しみにしてます。
…あれ、おかしいな。書いているウチに耳が痛くなって来たぞ?
173:ラストダンジョン (369) ◆Lv.1/MrrYw
10/08/13 01:52:55 e81ey5Xh0
前話:>>98-102
※Part8 542-546から続く場面です
----------
無惨に積み上げられた残骸だけを映し出していたモニタを、これ以上眺めていても仕方がない。
けれどユフィの視線は動かなかった。
こうして1階での遣り取りの一部始終を見届けたユフィは、次にどうすればいいのか分からずに、
無言のままでその場に立ち尽くしていた。
頭の中で考えている事はたくさんあるのに、いつものように言葉が出てこなかった。自分の行動を
「過去から逃げるために前を向いている」と言ったリーブが正しいとはどうしても思えなかったし、反論
だってしたかった。実際そうしようと何度も口を開きかけたが、結局なにも浮かばずに口を閉ざした。
知っているありったけの言葉を使って抗弁したところで、自分の正しさを証明することはできないと
思った。かといって行動で示そうにも、どうしたらいいのかが分からなかった。だから黙って立っていた、
そうすることしかできなかった。
あるいは、そうすることしかできないと無意識のうちに思い込もうとしていたのかも知れない。
こんな風に黙っている事しかできないユフィを、リーブは否定も肯定もしないでいてくれた。その事に
ユフィは心のどこかで安堵しているのにも気がついていた。そんな自分が余計に腹立たしかった。
どうすることもできないまま、モニタに向かうリーブの背中を見つめているだけの時間が過ぎていった。
長い長い沈黙は、リーブが手元のパネルを操作する音で呆気なく終わりを迎えた。
それまで目の前に並んでいたモニタには、建物の内外を問わず様々な場所が映し出されていたが、
パネル操作によって全てのモニタの映像が建物外の風景に切り替わった。並んだモニタが全体で1つの
大きな窓を作り上げ、そこから森の彼方に沈みゆく太陽が作り出した美しい夕景を望むことができた。
画面右下の隅には現在時刻を示す数字が並び、休むことなく時を刻んでいる。
映し出される景色も、表示される時刻も、この地に訪れる日没まで間がないことを知らせている。
「少し……」言いながら振り返ると、リーブは柔らかな口調で告げる「意地悪をしてしまいましたね」。
「え?」
「人が前を向けば、必然的に背は後ろに来ますからね。どこにも間違いはないんです」
ちょうど今みたいに。
174:ラストダンジョン (370) ◆Lv.1/MrrYw
10/08/13 01:56:36 e81ey5Xh0
「ちょっ……」
「誰がどの場所から見るかによって、物事の捉え方というのは大きく変わるものです。ところが、どれも
間違いではありません。間違いではない以上、誰にも否定はできません」
抗議の声を上げようとしたユフィを制して、リーブが画面の一角を指さした「ご覧ください」。
画面が中央寄りにズームしたかと思えば映像が瞬時に切り替わり、今度はうっそうとした森の中を
映し出した。
「なんだよ?」
完全にリーブのペースに乗せられていると思いながらも、ユフィは示された画面上を注視した。生い
茂る木々が夕陽を遮っているせいで森の中は既に薄暗く、風にそよぐ枝葉の影はさらに色を濃くして
いた。映し出されているのは何の変哲もない森の様子で、大した異変を見つけることはできなかった。
「これは森の中に設置した観測機からの映像です」
リーブが言い終わるよりも早く画面内の森の景色が歪み、さらに視界が大きく回転したことで夕焼け
色に染まる空が覗いた。枝葉の作り出した影の上にオレンジ色の光の帯が幾重にも走り、不規則な
軌跡をモニタに焼き付けていった。しかしモニタが光の帯に満たされるよりも前に映像は乱れノイズが
走り、やがて何も映し出さなくなった。
画像が途切れる直前、ノイズの向こうに枝葉とは明らかに異なる影を見出した。見覚えのある四つ足
の影に、ユフィは思わず声を上げる。
「ちょっと待って、今のって?!」
我が意を得たりと頷いたリーブは話を続ける。「残念ながら可視画像ではこれが限界なんですが……」
そう言ってパネルに向き直っていくつかの操作をすると、モニタ全体の映像が先ほどの夕景に切り替わり、
さらに画面下の一部の表示が替わった。黒っぽい画面の端の方に沢山の光点が点滅している、レーダー
みたいな物だろうとユフィは思った。
「どうやらモンスターの群れがこちらに向かっている様です」先ほどの映像も、モンスターの群れによって
観測機の設置してあった木がなぎ倒された為に起きたのだろうと説明する。
「まっ、まさかこれ全部?!」本当だとしたらとんでもない数だ。これだけ大量のモンスターがしかも大挙
して押し寄せてくるなんて、どうしても考えられない「冗談、だよね?」。
リーブは首を横に振り、それを否定した。
「残念ながらモンスターの群れはここを目指しています」
「なんで?!」言っては何だが、こんな何もない場所へモンスターの群れが向かってくるのかがユフィには
理解できなかった「どうしておっちゃんがそう言い切れるのさ?!」。
175:ラストダンジョン (371) ◆Lv.1/MrrYw
10/08/13 02:04:54 e81ey5Xh0
顔を上げて視線をユフィに向けたリーブは、簡潔に答えを口にした。
「先ほどご説明した『インスパイアが星にとって害をなす存在』というのは、こういう意味だからです」
「え……?」
関連性がよく分からないと頭を振るユフィの疑問には答えずに、リーブは話の先を続けた。
「ユフィさん、これは私からの最後の依頼になります。モンスターからここを守ってください」
「ちょっと待っておっちゃん! アタシは……」
「先ほどの飛空艇師団への空爆要請は、収拾が付かなくなった際の最終手段です」上空にいる彼らも、
間もなくこの事態に気づくでしょう。考えられる最悪の状況に陥ったとき彼らが判断を躊躇う要素を取り
除くために先手を打ったのだと意図を明かした上で、ユフィに告げる「そうならない為に、ユフィさんの
力を貸してください」。
そう言ってリーブはマテリアを差し出した。マテリアを目にしたユフィは反射的に手を伸ばす、見た
ところ攻撃や回復に用いるマテリアでは無さそうだ。
「これは?」
ユフィに見上げられたリーブは慌てて言葉を付け加える「残念ながら差し上げる事はできませんよ?
もともと私の物ではありませんから」。
「ちょっと! アタシをなんだと思ってるのさ!」
「やや詰めの甘いマテリアハンター」
リーブに即答されて、ユフィはがっくりと肩を落とした。
「あー、あのさおっちゃん? 今さり気な~くアタシの事バカにした?」
「いいえ、とんでもない!」慌てた口調で言いながら、顔の前で手を振る「マテリアの扱いに長けている、
と言う意味ですよ」。詰めの甘い、という部分については言及しなかった。その事を指摘される前に
ユフィにマテリアを手渡すと、ついでに話もすり替える。
「実はそのマテリア、忘れ物なんですよ。この一件が落ち着いたら、それを本来の持ち主に返して
頂けませんか?」
リーブの話によれば2年前、治療を終えて本部施設を出たシェルクが置き忘れていった物だと言う。
「……自分で返せばいいじゃん」
気まずそうに視線を逸らしたユフィに、諭すようにリーブが告げる。
「シェルクさんは表現が不器用なだけで、本当はとても素直な良い子ですよ」
だから仲良くしてあげてくださいねと言われたものだから、ユフィは「別に仲が悪いってわけじゃない」と
抗議したものの、そう言えば3年前のオメガ戦役以来シェルクと顔を合わせていない事に気がついた。
それどころか連絡すら取っていない気がする。だけど連絡を取り合って特別なにか話すこともないしと
考え直すが、結論は変わらなかった。
(あれ? それってもしかして仲悪いって事なのかな?)
嫌ったりとかそう言うことはないけれど、確かに起伏の少ないシェルクのような性格は、どちらかと
言えば苦手かも知れないと考えて、ようやくリーブの指摘が的を射たものだった事を理解する。
「なーんかさ、物言いがすっかり保護者だよね」
はぐらかすようにしてユフィが言う。
「そう言うつもりはありませんが、少なからず私にも」そこまで言うと、今度はリーブが視線を逸らした
「責任の一端はありますからね」。
それからモニタに映し出された夕景を見つめ、言葉の先を続けた。
「それに、私から直接シェルクさんにお返しする機会は無さそうですので」
176:ラストダンジョン (372) ◆Lv.1/MrrYw
10/08/13 02:17:22 e81ey5Xh0
その言葉を聞いたユフィは目を見開くと勢い良く顔を上げた。その先には表情の失われたリーブの
横顔と、モニタに映る夕景があった。
淡々と語られた言葉に含まれた意味がどれほど残酷な内容であるかを、ユフィは一瞬のうちに理解
した。込み上げる怒りにまかせて言葉を吐き出す。
「いい加減にしてよおっちゃん! どんな事情があるのかは分かんないけど、そーいう話聞かされる
アタシ達が気分良いとでも思ってるの? 勝手すぎるよ! これもアンタが返せばいいだろ!?」
言い捨ててから、先ほど手渡されたマテリアを投げて返した。
マテリアが腕に当たってから、鈍い音を立てて床に落ちる音を聞くとリーブは視線を落とす。足下に
転がったマテリアを見つめながら、気のない相づちを返した。
「……おっしゃる通り、勝手かも知れませんね」
尚も淡々と返ってくる言葉に、両手に拳を作ったユフィが食ってかかった。
「そうやって『自分は平気』ってカオしてるけどさ、聞かされる方の気持ちはなんも考えてないわけ!?」
句を繋ぐうちに、ユフィは自分が苛立っている本当の理由に気づき始めた「澄ましたカオしてそんな
こと言われると腹立つよ! だって……」。
いつしか苛立ちは歯がゆさに変わり、全身から力が抜けていく。
「だってアタシ達……仲間、じゃん?」
そう思っているのは自分だけなのだろうか? 歯がゆさの正体に思い至って言葉が及んだ時、彼女の
口調はすっかり勢いを失っていた。
「なんで? なんでおっちゃんはそんな事を平気で言えるのさ」
自分を見上げるユフィの視線から、今度は目を逸らさずにリーブが答える。
「そう見えるように振る舞っているだけで、なにも平気と言うわけではありません」
そこまで言い終えると、屈んで足下に転がったマテリアを拾い上げてからユフィの正面に立った。
それからユフィの右手を取ってその上にマテリアを載せると、続く言葉を口にする。
「こちらも本音を言えば心苦しいです。ですが皆さんでなければ―」言いかけて、ひとつ首を振る
「信頼している皆さんだからこそ、なんです」
身勝手は承知の上での我が儘ですが、どうか聞いてやって下さい。そんな風に依然として柔らかな
口調で話し続けるリーブの表情からは、感情を読み取ることはできなかった。
「どうかこの建物と、中にいる皆さんを守ってください。……お願いします」
177:ラストダンジョン (373) ◆Lv.1/MrrYw
10/08/13 02:20:10 e81ey5Xh0
あなたにならそれができると、そう言ってリーブは頷いた。それでも躊躇うユフィを諭すように続ける
「私にできなかった事も、あなたにならできますよ」。
「何が言いたいのか分かんないよ」
ふてくされた口調でユフィが返す。時折―この日は特に―リーブは回りくどい表現をする事が
あった。そうする意図がどうであれ、ハッキリしない物言いをされるのは好きではない。からかわれて
いる気がして気分は良くなかった。
そんなユフィの心中を察したのか、リーブは断言した。
「あなたは私と同じ轍は踏まない。と言う意味ですよ」
「!!」
予想外の言葉にこわばった表情のユフィを前にして、リーブはさらりと言葉の先を続ける「さあユフィさん、
これでやるべき事は分かった筈です」。やがてリーブは添えていた手を離した。
「やるべき事がある以上、その間は決して後ろを向いてはいけません」そう言って背を押し、ユフィを
部屋の外まで送り出す。
名残惜しそうに向けられたユフィの視線にも動じることなく、リーブは彼女の背中を見えなくなるまで
見送った。
----------
・すっかり忘れた頃にやって来るラストダンジョンです。ご無沙汰してます。
諸般の事情(九分九厘ロクでもない内容w)から、ちょっと遠ざかっておりました。
お待たせして(る人がいたらの話ですがw)すみません。そりゃ耳も痛くなる。
・久々にDCFF7起動してみたら、初プレイ時より狙撃が輪を掛けてヘタになってた感じで、文章も(ry
・作者にとって、ユフィとシェルクの間柄についてはDCビンタイベントが尾を引いているのは間違いありません。
・以前このスレでも書かれてましたが、ユフィとシェルクって性質としては斥候だし、年齢も同じだしで
シチュエーションさえあれば色々面白そうなんですけどね。
178:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/14 03:15:46 xxYdTR9VO
GJ!
179:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/17 06:49:43 hKvBkSDrP
乙!
180:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/20 02:29:33 0XDtDUrd0
乙です!
181:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/22 09:24:13 19Yw4Dn80
乙
182:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/24 18:34:31 TzszV8ZX0
ほ
183:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/24 23:44:07 C085NKwZ0
こないだの>>169です。
ただでさえ遅筆なうえに私生活で諸々あってなかなか進められなかったのですが、私的なタイミングとしても頃合いなので、少しずつ投下させて頂こうとおもいます。
原作を気にしすぎるせいか、本来二次創作が苦手なのですが、原作を気にしすぎてもいけないというアドバイスを貰い、自分なりにやりたいようにやってみました。
内容的にはよくある話なのですが、その中で自分なりの面白さを表現できればいいなと思っております。
挨拶が長く&堅苦しくなってしまいましたが、読んでいただければ幸いです。
Final Fantasy Different Destiny
序章 ~邂逅~
十一月も半ばを過ぎると、外では早くも聖夜を意識した装いになってくる。
イルミネートされていく街路樹や商店、どこからともなく流れてくるクリスマスソング、そして強がりと共に血の涙を垂れ流す独り身族。
いや、最後のは置いといて。
人々はたった一夜のイベントを、イコール冬と捕らえているようで、作り物の非現実を目一杯楽しもうとしていることは確かだ。
かく言う俺、柿崎透も、そんな冬のイベントを少なからず楽しみにしていたわけですが。
……目の前で恐々とお茶を啜っている女の存在が、そんな非現実を、より強い非現実で塗りつぶしてしまったわけである。
「あ、おいしい─」
口にした日本茶が気に入ったのか、女は二口目をためらいなく啜りに行く。
背中まで伸びたブロンドの髪、意思の強そうな少し冷ややかな蒼い目、使い込まれていそうな白いマント、そして何よりも破廉恥な……もとい動きやすそうな緑色のレオタードに身を包んだ女性。傍らには本物の剣が置かれている。
年は俺とそう変わらないと思うのだが、顔つきが大人びているので断言はできない。
さて、なぜ俺がこんなコスプレ紛いの女の人と並んでお茶を啜っているのか。
話は本日、十一月二十六日の朝に遡るわけだが……。
喧しい目覚ましをKOして居間に降りると、姉貴が来ていた。
「ああ、おはよう透」
「おはよう。今日来る日だったっけ?」
「今日からまた父さん達出張でしょ。あんたの面倒見るように頼まれてんのよ」
「うわ何そのガキ扱い。そんなのいらないって」
「はいはい、自分からそう言ってるウチはまだガキなんだって事を自覚しなさい」
この柿崎真澄は俺の姉貴で、現在一人暮らし。……の筈なんだけど、近所に住んでいるうえに頻繁に帰ってくるから、一人暮らしと言えるのかは少々疑問だ。
ウチの父親は貿易関係の仕事をしているために出張が多く、今回は少し長い間外国に滞在するそうだから、母もついていくらしい。
……後になって思ったわけだけど、これって本当にご都合主義というか、お約束なんだよな。
この街は住宅街を少し離れると、途端に装いが変わる。
街を縦に割るように鎮座している大道に沿う様に商店が立ち並び、近くを通る国道に入れば、小さなビル等が立ち並ぶオフィス街になる。
一ヶ月前に迫ったクリスマスの準備で忙しいのか、道行く人たちは多く、朝っぱらからせかせかと歩いている。あと数日で師走だ。
そんなわけで、冴えない顔のサラリーマン風の男が、緑色の妙な服を纏った少女と共にすれ違った事など、視界の隅の景色の一欠けでしかなく、コンマ五秒後には綺麗さっぱり忘れていた。
学校にたどり着いて教室へと向かう。
クラスメイトに挨拶をしながら自分の席に向かうと、必ず目にするのが一人の女生徒だ。
184:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/24 23:48:07 C085NKwZ0
「おはよう」
声をかけるとぴくりと反応して、少し小さめの声で「お、おはよう」と返してくる。いつものことだ。
名前は高橋美奈都。大人しい性格で、別に虐められている訳ではないが、クラスでは少し浮いた存在。人見知りなのか友達がいる様子もない。
彼女について知っているのはこれくらいのもので、教室の扉から自分の席までの道のりに彼女の席がなければ、こうやって挨拶を交わす事もなかったかもしれない。
今朝のホームルームが済み、午前中の授業をいつも通り消化して、いつも通りの昼休みを過ごして、また午後の授業を消化して。
そうやって何事もなく一日の学生生活が終わる。
「なあ柿崎、今日暇か?」
清掃の時間に、友人の一人が話しかけてきた。
「急なんだけどよ、今日これから飛び入りでバイトやらねえ?」
「これから?……また随分急だな?」
「いやー俺がバイトしてる所で、年に一回倉庫整理するんだけどさ。今回あんまり人が集まらなかったらしくて、ヘルプ来れるやつ連れて来いって店長から電話が」
バイト代はちゃんと出るから、けっこうおいしいから、と彼は拝み倒してくる。バイト先での体裁もあるんだろうが、人数が少ないとキツい仕事なんだろう。月末で俺も小遣いが心許ないし、日給でもらえるのならやりがいもある。
そんなわけで、思いがけずにバイトをする事になり、キツい作業を終えて帰る時間になると、もうすっかり暗くなっていた。
「つかれたー……」
どこか物寂しい道を歩きながら、そんな言葉を吐き出す。
この街は割と都会のくせに、夜になるとめっきり人の気配が激減する。気の早いイルミネーションがきらきらとしていて、街灯も多く点灯しているはずなのに、人間が少ないというだけで嫌にに不気味だ。
もちろん駅やスーパー、商店街の方までいけばそんな事はないのだが、道一本を隔てただけのこの小さなビルが立ち並ぶオフィス街は、人々から忘れられたようにしんとしている。
そんな中を歩いていると、近くのビルの屋上で、何かがちかちかとしているのが眼に止まった。
クリスマスのイルミネーションかと思ったが、それにしては不自然な光方をしている。
「─何だろ」
よせばいいのに、ふと気になってしまった俺は、そのビルまで近寄ってみる。
間違いなく、何かがちかちかとしている。
ビルに入ってエレベーターで最上階まで昇る。八階建てのちょっと古いビル。
何かのイベントでもやってるのだろうか。いや、ここは単なる個人や中小企業向けのオフィスビルだ。
階段を上って屋上へと続く扉に近づく。
気のせいだろうか。何か重いものが激しくぶつかり合うような、擦れ合う様な音が、不規則に、しかし絶え間なく聞こえてくる。
何かの工事でもしているのかと思いながら、音を立てないようにゆっくりと屋上への扉を開けてみる。
185:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/24 23:49:56 C085NKwZ0
そこで、全身が凍りついた。
がらんとした屋上、寒空の下。そんな中で、手に凶器を持った二人の人間が殺し合っていた。
「あ─」
信じられない光景が広がっている。あまりの出来事に口の隙間から間の抜けた声が漏れた。
衝突しあう鉄と鉄、刃物と刃物、凶器と凶器。
漫画やゲームの中以外ではそうそうお目にかかれない、文字通りの『武器』を振るっている二人がそこにいた。
片方はブロンドの長髪の女、もう片方は黒ずくめの男。
男が握っているそれは人の丈ほどもある大剣であり、それを棒切れでも振るかのように軽々と扱っている。対する女は、そんな獲物を持った男の猛攻を、小さな剣で凌いでいた。
コスプレや演劇の練習といった言葉が脳裏を過ぎるが、目の前の光景はそんなものではない。わずかな隙間から伝わってくる刃物のような殺気が、眼球を通り、全身を通って脳に到達する。脳や神経は刃物に引き裂かれてズタズタになり、思考することも動く事もできなくなった。
逃げろ。
心ではなく、先に体のほうが本能で絶叫している。
心臓はけたたましく鳴り響き、脚は信じられないほどに震えていた。
逃げろ。
しかし体は動かない。脳や神経が本当に切り刻まれたのか、自分の意思では指一本動かすことも許されない。
動いてはいけない。今動けば絶対に見つかってしまうと、どこかで理解していた。
「っ─!?」
一際大きな音が鳴り響くと、状況が変わっていた。
切りあっていた男女は大きく距離を離し、女は片膝をついている。
女はこちらに背を向ける形で、肩で息をしているのが見て取れた。
対して男の様子はこちらからは遠くてよく伺えない。
「はは─あはっ、あはははははっ!どうだ女! これが実力の差ってヤツさ!!」
屋上に響く若い男の声。しかし女と向き合う男の口は動いていない。
声の発生源は丁度自分の真上、階段室の搭屋の扉の上からだった。
「ほらほらどうしたんだ、もう立って動けねえのか? 情けないね、せっかくこっちに来たってのにもうリタイヤなんて。さあザックス、止めをさしてやれ」
その声はどこかで聞いたことがあるような気がする。しかしそんなことを考える前に、ザックスと呼ばれた男は、その巨大な剣を下ろして構えを解いた。
「ん?どうしたんだザックス」
「……今は倒さない」
186:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/24 23:50:49 C085NKwZ0
そう言ってザックスは剣を背中に背負った。
「ああ、そうだな。せっかくの女なんだ。どうせなら楽しんでから始末するのがいいよね。何だ、涼しげな顔してちゃんと分かってるじゃないか」
「そうじゃねぇよ、引き上げるのさ」
「はぁ?」
若い男は塔屋から飛び降りると、ザックスの下へ走りよる。
「どういうことだよ、せっかくのチャンスじゃないか。さっさと殺して次に」
「ギャラリーがいる。人目についちゃいけないのなら、これ以上はルール違反だ」
「おまえ……!」
背を向けて去ろうとするザックスの前に立ちはだかる若い男は、俺と同じ学校の制服を着ていた。
「ふざけんなよザックス! それなら覗き見してるヤツも一緒に始末すればいいだけだろう! さあ早くしろ! このオレが命令してるんだから従うのが当たり前だってのがわかんないのかテメェ!!」
「リュウジ、無関係の人間を手にかけるのもルール違反だし、俺は頼まれたってそんなことはしない。第一俺たちは別に主従関係を結んでるワケじゃないんだから、あんたに"命令"される筋合いもない。何なら今ここで関係を切ったっていいんだぜ」
「ぐ─っ!」
激昂する若い男に向けられた声は飄々としていて、つい先ほどまで殺し合いをしていた人間のものとは思えない。ザックスはこちらとは反対側の出入り口に向かって歩き出した。
「命拾いしたな。次会う時までに、そのケガ治しとけよ」
「……」
最後に女に声をかけて、ザックスと男は屋上を立ち去っていった。
屋上に取り残された女は、剣を杖代わりに立ち上がろうとするが、力がほとんど入っていない。
気がつけば、心も体ももう悲鳴をあげてはいない、頭の中も別に切り裂かれてはいなかった。
扉を開けて屋上に出ると、おそるおそる女に声をかける。
「お、おい、大丈夫か……?」
振り返った女を見て俺は思わず息を飲んだ。
大きな傷ではないが全身に切り傷が散見される。表情は見るからに疲弊していて、今にも倒れそうな顔をしていた。しかし、それ以上に目を奪われたのは、彼女の容姿だ。
愛らしさを残した丹精な顔立ちは、その現実離れした出で立ちと相まって、銀幕(ファンタジー)の向こう側からでてきたようである。
「─見たの?」
搾り出すように出した声に、首を立てに振った。見た所、日本人ではないようだが、流暢な日本語だった。
「そう……」
ぐらりと傾く女の体。咄嗟に受け止めようと走るも、間に合わずに地面に倒れてしまう。
「おい、しっかりしろ!」
目を閉じて荒い息を繰り返す女。
冬に差し掛かった夜。
これが彼女、セリス・シェールとの出会いであり、これからはじまる一連の不可思議な事件の幕開けだったのである。
187:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/25 00:01:24 sOBfMFId0
とりあえず本日はここまでです。
188:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/26 18:21:32 qrJ1frF30
節子それ二次創作やない、俺×キャラや
文章上手いのに惜しいな…本来批判をするスレではないが、これは海外で発表したとしても歓迎されない
セリスを助けた透もまずいが、リュウジはザックスと対等で将軍を倒してしまっているのでもっとまずい
現代が舞台だったり、オリジナルキャラクターが出ること自体はいいんだ
だけどそれが最強のキャラになったり、ゲームキャラに賞賛されたり恋愛になるのはアウト
オリキャラ全員ここでチェックしてみて、該当してしまうようだったら出せないと思った方がいい
URLリンク(iwatam-server.sakura.ne.jp)
オリジナルキャラクターのみ登場する架空のゲームを創作するか、ごく普通の人としてゲーム世界に迷い込むか、
モブとしてゲームキャラに助けられるか、通りすがりにゲームキャラに倒されるなら問題ない
189:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/26 18:49:20 MsRnSUT40
>>188
レスありがとうございます。
今後の創作の参考にさせていただきます。
今回はすでにプロットをある程度組み上げて書いているので、ラストまでは書かせて頂こうと思っております。
厳しいご意見も文章の賞賛も有難く頂戴しました。
出来れば今後もここで発表させて頂こうと思っておりますので、よろしければまたご感想のほど、よろしくお願いします。
190:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/27 05:26:53 OWujS7qi0
メアリースーはだめでしょ
191:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/08/28 09:48:49 zXGVClIK0
詳細な一次設定ありそうだし、一次創作として仕切り直して欲しいな
ここだとスレ違いだけど、オリジナルSSとしてならどこかで読みたい
192:みかづき ◆bkg5P8jr0A
10/08/28 20:01:09 KicuwV740
ありがとうございます。
個人的に一度書き始めたものは最後まで書きたいので、今後は自分のところのみで載せようと思います。
真摯なご意見ありがとうございました。
お騒がせしてしまった事を深くお詫びいたします。
193:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/02 07:48:21 3rCk2t0F0
乙でした
194:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/02 19:08:17 oCwWH2f30
終わった事をとやかく言うのはアレだけど
>>リュウジはザックスと対等で将軍を倒してしまっているのでもっとまずい
読む限りじゃリュウジは何にもしてないのでは?
メアリー・スーと決めるのはいささか早計な気も
まあでも本人がもうここには来ないと言っている以上言ってもしかたないよな
みかづき氏見てたら続き読みたいのでアドレス教えてくれ
195:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/03 01:46:53 ARgOXT4C0
>>183-186
ザックスとリュウジはどういう契約(…か、どうかは分かりませんが)で一緒にいるのか?
彼らの言う「ルール」とは何か?(ここまで読んで連想したのは、たとえばゲームの世界から
キャラクターを召喚した、とかそんな感じで)その「ルール」が及ぼす影響がこのお話の軸っぽい?
そう言った意味では面白そうな展開だと思います。
とは言え、主観になりますが(そもそもここがFF・DQ好きな人が集う場所なので)この板・スレで書く
となると、少しでも原作軽視の傾向があるネタは分が悪い気はします。
(軽視というのは、作者が意図していなくても取り扱いに偏りがあった場合、読み手に与える印象が
相対的に変化する事を含みます。そもそもキャラクター自体が架空世界に成り立つ存在なので、
その外に出て個性を維持するのは難しいと。その辺が混作の難しさだと感じますが)
ただ、それを逆手にとって思いがけない展開が繰り広げられたら読み手は一気に引き込まれます。
>>194
横合いからすみません。意図は定かじゃないですが>>188は
「リュウジはザックスと対等」の部分と、「将軍を倒してしまっている」の部分について触れてるのかな?
(なので、この関係性の根拠になる物が必要=その根拠が話の軸。つまりこの根拠の示し方によって
この先どうにでも転ぶ。この部分を不安と取るか、機体と取るかは読み手次第だと思いますが)。
あくまで読んだ時点での感想なので、188も間違ってはいないと思います。
(それに恐らく書き手はそれを踏まえて書くでしょうから、そこは気にしないで良いと思いますよ。敢えて
ミスリードさせるという手もあるでしょうし。なにせ掲示板、書き手も読み手もそれが醍醐味ですw)
長レス失礼しました。
196:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/08 08:56:00 c+c4QqnH0
ほ
197:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/10 06:36:11 8i/R4Dt40
ぼ
198:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/12 17:54:22 yzNwt0CM0
ま
199:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/14 15:18:12 lG+2Opr50
り
200:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/16 17:54:19 Yvh4ADmX0
も
201:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/18 02:01:16 1zbX+i+Y0
も
202:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/20 12:39:24 XWDbit+X0
も
203:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/23 10:40:05 d5IPjTNe0
ん
204:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/25 19:42:03 1isI6bfz0
が
205:ラストダンジョン (374) ◆Lv.1/MrrYw
10/09/27 02:14:30 nqYGLRPF0
前話:>>173-177
----------
あの場からユフィが動けずにいた時間は、彼女の体力回復という点において無駄にはならな
かった。部屋を出たユフィはいつもの軽快な身のこなしで亀裂だらけのフロアを駆け抜け、強固な
隔壁の下の僅かな隙間をくぐり抜けてエレベーターホールへと向かった。
1枚目の隔壁を抜けたユフィは立ち上がると、しまっておいた小瓶を取り出してそれを見つめた。
(この調子なら、さっきおっちゃんにもらった回復薬も使わずに済みそうだ)
リーブがここへ戻ってきたユフィに渡したのはエリクサーだった。エリクサーは今でも稀少品
だったが、だからといって重宝する時代ではなくなった。使うとしても場面はごく限られるし、もともと
店に売ったところで儲けを期待できるような代物でもない。昔も今もちょうだいと寄ってくるのは
せいぜいマジックポットぐらいだ。それでも6年前のユフィなら魅力的な対価を目当てに、今なら
半ば不要品処分といった感覚で、マジックポットの要求に快く応じたことだろう。
けれどこの時のユフィにとって、いま手元にあるエリクサーだけは誰に頼まれたとしても譲る
気にはなれなかった。
無意識のうちに、エリクサーを持つ手に力がこもった。
(これ以上おっちゃんの思い通りにはさせない。……こんな物、アタシには必要ないんだから)
ここまでの経緯を思い返すと、どう考えてもリーブの計略にまんまと振り回されている気がした。
そしてユフィの認識と現実は残念ながら一致している。渡されたエリクサーを使わずにいたのは、
まるで事態を見透かしたようなリーブに対する小さな反抗意識からだったが、今やこの状況を打破
するための切り札のような存在にも思えたのだ。
ユフィにとって手放したくないほどの価値はエリクサーその物ではなく、それを手元に残しておく
ことにあった。
確認するようにして手にした小瓶を見つめて頷くと、再びエリクサーをしまってエレベーターホール
を目指し走り出した。
2枚目の隔壁下から這い出たユフィは立ち上がって後ろを振り返った。ここからでは壁に阻まれ、
先程までいた部屋はもう見えない。
(……モンスターからここを守って)
それからまた前に向き直って3枚目の隔壁の下をくぐり抜ける。
(ここにいるみんなを守って)
同じ要領で4枚目。
(もちろん、空爆なんて絶対させない)
そして、最後の隔壁に向かう。
(見てろよ~)
こうして文字通りに自分が切り開いた道を戻りきったユフィはエレベーターホールまで辿り着くと、
扉横のボタンを押した。
206:ラストダンジョン (375) ◆Lv.1/MrrYw
10/09/27 02:18:07 nqYGLRPF0
ところが、ドアが開くまでにかなりの間があった。物音ひとつしない薄暗いフロアに一人でいると、
ついつい考えだけが先走ってしまう。
(……だけどさ、やっぱり意味分かんないよ)
―「ここはインスパイア能力そのものを安置しています。我々は、それを守るために配備された
人形なのです。」
あそこにいたリーブは自らのことを人形だと言い、存在している理由をそう語った。
(おっちゃんは自分のことを『星に害をなす』って言ったけど、じゃあどうやって?)
具体的にリーブがどんな方法で星に害を与えるのだろう? ユフィは思いつく限りの状況を想定
してみた。
(街中にケット・シーがうじゃうじゃいる、とか?)これは喧しい。が、いくら数に物を言わせたところで、
相手がケット・シーならそれを惑星規模の危機だと嘆くのは大げさ過ぎる。
(じゃあ、デブモーグリが道を塞いじゃう、とか?)主要な幹線道路上にデブモーグリがいたら確かに
邪魔だし、戦闘能力と言う面でもケット・シーより深刻になる必要はあるかも知れない。とは言え
モンスター相手に戦えるWROが各地にいるなら問題ない。
(ん~、『星に害をなす』って言うには、どれもいまいちインパクトに欠けるよなぁ)
星にとっての脅威と言われて真っ先に思い浮かぶのは、6年前の空に禍々しく輝いていたメテオと、
北の大空洞で見たセフィロスの姿だった。自分ひとりの力では打倒どころか、抗う事すらできない
存在―この星に危害を加えようとするなら、あれぐらいの規模と力量差がなければ説得力がない。
逆に、自分ひとりで打倒できる相手が“星にとっての脅威”となるなら、つまり“ユフィ自身”も星に
害を与えられる事になってしまう。
そんなことできるわけがない。
(どう考えたって、おっちゃんには無理そうなんだよね。……なら、どうして?)
リーブの言葉を思い出そうと、ユフィは意識を集中させる。
―「先ほどご説明した『インスパイアが星にとって害をなす存在』というのは、
こういう意味だからです。」
モニタを見つめていたリーブの横顔と共に、その言葉が浮かんだ。
(おっちゃんは、モンスターを召喚するマテリアかなんか持ってるって事なのかな? だいたい
『インスパイア』って何なのさ?)
『あやつる』のマテリアならともかく、インスパイアなんてマテリアは聞いたことがない。そもそも
マテリアじゃないのかも知れない、それにしたって耳慣れない言葉だった。モンスターが大挙して
押し寄せてくるのは何故なのか、結局分からず終いだ。
207:ラストダンジョン (376) ◆Lv.1/MrrYw
10/09/27 02:25:18 nqYGLRPF0
(……アタシは)
放っておくと迷走する思考を追い出そうと、ユフィは一度おおきく頭を振った。
(アタシには、みんなを守れる。おっちゃんはそう言ってくれた。アタシだってそうしたい)
みんなを守りたい。その「みんな」の中には当然リーブも含まれている。
(だけど欲張ったって結局なにもできない。さっきみたいに、どうやって動けばいいか分からなくなる)
今だってそうだ。いくら考えたって分からない。
(変に考えたって立ち止まっちゃうだけってんなら、そんなの意味ないよね)
その時ポン、と軽妙 な機械音と共にエレベーターの扉が開いた。考えることに集中していたユフィ
は、この時ようやくここに来た本来の目的を思い出した。
(アタシのできることをやるんだ)
決意して顔を上げたユフィは次の瞬間、驚きに目を見開いた。
「……って、クラウド!?」
エレベーターの扉が開くと同時に現れたのはクラウドの背中だった。混乱する頭の中とは裏腹に、
とっさに差し出した両手で倒れるクラウドの背中を支える。この様子だと本人の足で立っていたので
はなく、エレベーターの扉に凭り掛かってようやく立てていたのだろう。しかしそうなる状況がユフィに
は想像できなかった。
ひとまずその場に横たえさせると、ユフィはクラウドの横合いに回った。これならエレベーターの扉
も勝手に閉まることはない。
クラウド自身に目立った外傷はなく、右手にしっかりと握られていた大剣にも戦闘の痕跡は見られ
なかった。ただ、ここへ来る直前のクラウドが大剣を振るう状況にいた事は間違いなさそうだ。しかも
一時的にでも意識を失うほど、気力体力ともに激しく消耗するほどの事態―それがクラウドにとって
あまり良くない状況だったであろう事は、ユフィにも容易に想像できた。
頬を叩きながら呼びかける「ねえちょっと、大丈夫?!」。
その声にようやく反応したクラウドに、ユフィは迷わずエリクサーを取り出した。
「起きれる?」
かすかに頷くクラウドに肩を貸し、エレベーターの扉に背を凭れさせる格好で上半身を起こしてから
取り出した回復薬を施した。それから平静を取り戻すまでにそう時間は掛からなかった。
「……大丈夫?」クラウドの顔を覗き込んでユフィが尋ねると、クラウドは小さく頷いて答える。
日頃から口数が多い方ではないから、この反応も自然と言えば自然だった。けれど普段とは異なり
表情が硬かった。そこに加えて、ユフィにはどうしても不思議に思える事があった。
「っていうかクラウド、どうしてここに? 他のみんなは?」
ティファ、ヴィンセントと一緒に3人で地下に向かったはずだった。なのにクラウドだけが何故ここに
いるのだろう?
「……分からない」
クラウドの視線は動かない。僅かに動いた唇から頼りなげな言葉が零れた。
「クラウド、ホントに大丈夫?」
もう一度小さく頷く。それでも尚、ユフィと視線を合わせようとはしなかった。ここへ来てどうやら
クラウドが混乱しているらしいと見当が付いた。
208:ラストダンジョン (377) ◆Lv.1/MrrYw
10/09/27 02:30:33 nqYGLRPF0
「下で……なんかあった?」
ユフィの問いにクラウドは無言で首を振った。
「もしかして……覚えてない、とか?」
可能性として口に出された言葉に答えようと、クラウドは顔を上げ硬い表情をユフィに向けた。
「覚えてない、わけじゃない。……」
どうにも歯切れの悪いクラウドの様子を、ユフィはもどかしい思いで見つめていた。
「ただ……」
何も言わず、ユフィは辛抱強く言葉の先を待った。
「理由は分からない、でも……ここは……」
歯切れが悪いだけではなく、声が小さく震えていた。クラウドが混乱だけではなく、緊張している
のだとユフィは知った。
その理由を、クラウドは短く告げる。
「ここにいるリーブは、人間じゃない」
そう言ってクラウドは再び俯いてしまう。
それを聞いて安心したようにユフィは相づちを打つ「アタシも見たよ。確かに自分のことを『人形』
だって言ってるし、ひとりは本当に人形だった」。
「……そうじゃ、ない」小さな声で、だがはっきりと否定したクラウドは、首を横に振った。
「なにが違うってのさ? ここにいるおっちゃんが、人形でも、人間でもないって言うなら、
一体なんだってのよ?」
僅かな苛立ちを含んだ声でユフィが問うと、俯いていたクラウドは手元の一点だけを見つめたまま
で答えた。
「……あいつは、モンスターだ」
----------
・マジックポットには大変お世話になりました。
・「街中に溢れるケット・シー? 最高じゃないか!」…と言ってみる(個人的に)。
209:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/28 11:32:06 qnqp182W0
GJ!
210:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/09/30 20:25:54 Xf3Jn6iL0
GJ!
211:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/02 18:27:02 WdDhY0z70
乙!
212:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/05 11:27:41 yJevKiKu0
乙です
213:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/08 11:54:34 mJZ/9UZB0
ほ
214:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/12 00:57:20 mcVZxZUC0
ぼ
215:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/13 08:19:41 dSG72oIN0
ま
216:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/15 10:45:49 OlAPrO/00
り
217:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/18 20:52:58 TwGS7XYf0
も
218:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/20 23:08:26 mWOVI50W0
ん
219:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/22 18:11:11 rbyuy72S0
ん
220:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/24 20:56:05 qUeRirwH0
ん
221:ラストダンジョン (378) ◆Lv.1/MrrYw
10/10/25 23:33:28 Z3E9w06r0
前話:>>205-208
----------
その言葉を聞いてから、ユフィが反応するまでにはかなりの間があった。
「クラウド……? なに、言って……」
とても冗談を言っている顔には見えないし、冗談を言ってられる様な状況でない事も分かって
いる。けれど、この時はクラウドの言葉を冗談だと思いたかった。
「おっちゃんがモンスターなワケないじゃん! 下で何があったか知らないけどさ、そんな言い方
あんまりだよ!」
亡霊の次はモンスター、しかもそれを口にしたのはクラウドだった。冗談はおろか揶揄などする
ような性格ではない彼が、なぜそんな物言いをしたのか? 事情を考えるよりも感情が先に立った
結果、ユフィの言葉は非難めいたものになった。
ユフィにしてみても、今日ここで出会ったリーブと彼らに聞かされた話はどれも理解しがたい
ものだった。だからといって、敵と割り切れるような存在ではないと―6年前の困難な旅路を
共にした“仲間”だと―その思いだけは揺るがない。仮にリーブの方が割り切っていたのだと
しても関係ない。自分に向けて「平気と言うわけではない」と言ったリーブを最後まで信じたかった。
信じようと決めたばかりだった。
なのに。
「ケット・シーは仲間だったよね? 確かにあの時おっちゃんは遠くで操作してただけかも知れない
けどさ、仲間に違いないじゃんか!」
クラウドの言葉を聞いて不安になった。これ以上迷いたくないし信じたい、だけど晴れることの
ない疑いは、まだ確かに心の片隅にあった。だから不安に駆られる。その事をユフィは理解して
いた。
だからこそ不安を吹き飛ばそうと勢い任せに声を張り上げた。そんなユフィを見上げ、クラウドは
頷いた。
「……分かってる。いつも見えないところから、俺たちを助けてくれた」今度はユフィをしっかりと
見据えて言った「大切な、仲間だ」。
「じゃあ!」尚も問い質そうとしたユフィは、改めて見たクラウドの表情に言葉を失う。ソルジャーの
証たる魔晄色の瞳が、深い悲哀を帯びながら僅かに揺れていた。
「……ごめん」
222:ラストダンジョン (379) ◆Lv.1/MrrYw
10/10/25 23:36:23 Z3E9w06r0
先程までの発言が軽率だったとユフィは心の底から後悔した。言葉には出なくともその目を
見れば、クラウドが自分以上に憤り戸惑っているのだと言うことが分かったからだ。
「これじゃ押しつけだよね」
―いっつも自分の事ばっか、昔からユフィはちっとも変わってないね。
6年前に旅を終えてウータイに戻った時、幼馴染みにそう言われた事を思い出した。星を救った
英雄どころか、謎の病気の媒介者という濡れ衣を着せられた挙げ句に隔離までされた当時の
ユフィにとって、どうしても自分の無実を主張したかったのは仕方がないと思っていた。誰だって
そう思うだろう。現に、そう指摘した幼馴染みだって同じだったのだから。
けれど時間が経つにつれてこの言葉の重みが増していった。
不思議と、6年前は顔を思い出すのにも苦労していたはずなのに、今では彼の言葉と後悔とが
ない交ぜになって心に引っ掛かっている。いなくなってから思い出に残り続けるなんて、皮肉な
ものだと思った。
「アタシいっつも自分の事ばっかしゃべって、自分の感情を押しつけてる……って、ホントそうだ
よね。ごめんねクラウド」
人差し指で頬の辺りを掻く仕草をしながら、気まずそうに視線を逸らすユフィを見ていた
クラウドは、首を横に振った。
「気にしてない。それと、そう言う方がユフィらしくて良いじゃないか」そこまで言ってから、堪え
きれずに小さく笑う「だいたい、変にしおらしくされても気味が悪い」。
「ちょっと、気味悪いってなにさ!」
もうちょっと言い方があるじゃないか、と勢い良く振り向いたユフィの口から猛烈な抗議が始まる
のを遮るにはちょうど良いタイミングで、クラウドが言葉の先を続ける。
「それに、どんな形であっても自分の感情を優先するのは人として自然な事だと、俺は思う。
少なくとも、それを間違いだと責めることはできないよ」
「……えっ?」
視線の先のクラウドから笑みは消えている。
「俺たちは、良くも悪くも自分の感情に従って生きている」そう言って、いちど傍に置かれた大剣に
視線を落とす「怒りや悲しみ、憎しみ……それは時として、信じられない力を生み出す」
ふだんは箍として機能する理性が、内在する“力”を抑制している。何らかの形でその箍が外れ、
感情がある種の臨界点を超えたときに発生する現象を『限界突破(リミットブレイク)』と呼んでいた。
それは各人で異なる性質を示すが、共通しているのはマテリアを介さずにそれと同等の威力や
効果を得られるという点だった。未だに発生原理の全容は解明されていない。ただその“力”は、
これまでに幾度となく彼ら自身を救ってくれた。
クラウドの言う事は、ユフィにもよく分かる。そうやって道を切り開き、あるいは目の前の敵を
倒して生き延びてこられたのだ。
223:ラストダンジョン (380) ◆Lv.1/MrrYw
10/10/25 23:40:46 Z3E9w06r0
「でも……」クラウドは再び顔を上げる「その力に呑み込まれてしまうのも、逆にそれを捨てようと
するのも、どちらにしても“人ではない存在”になってしまう気がするんだ」形は人でも中身が人
ではない存在、それがモンスターだとクラウドは言う。
表情こそ変わらないが、心なしか声を落とすとこう続けた「……俺たちが知るリーブは、恐らく
ここにはいない」。
「クラウド?」
その変化が何を意味しているのかを計りかねてユフィが問うが、クラウドは答えずに話を進める。
「あいつは俺に『リーブを殺せ』と言った。でも、俺たちの知るリーブはとっくにいないんだ。少なく
とも……ここには、もういない」
そう言って目を伏せたクラウドは、ここへ来るまでの経緯を手短に説明した。1階エレベーター
ホールでユフィ達と別れた後、3人の乗ったエレベーターは途中の階で停まった。半ば強制的に
降ろされたフロアで彼らを出迎えたのは、無数の射撃装置とそれを従えたリーブだった。自らを
人形だと告げた以外にはたいした説明も無いまま銃口は3人に向けられ、成り行きで交戦。この
混乱に乗じてティファ、ヴィンセントとはぐれたクラウドは、さらにその先でもう一体の「リーブ」と
対峙することになった。
そこでどんな遣り取りがあったのか、具体的な話をしようとはしなかった。だからユフィもそれ
以上聞こうとはしなかった。クラウドの言う「あいつ」が、そこで対峙したリーブの事を指していた
のだと分かれば、それで充分だったからだ。
「仲間を守る力……俺はそう思って剣を振るってきた。だけど、今となっては破壊でしか役に立た
ない」そこでいったん言葉を切ると、首を小さく横に振った。「いいや、都合良く『守る』と、そんな
ものは言い訳なんだ。今も昔も、結局やってることは同じだった」
言い終えた後、俯いたクラウドの肩が小さく震えた。笑っているらしい。その様子が恐ろしくなっ
て、ユフィは窘めるように声を掛ける。
「ちょっとクラウド、さっきからどうしたん……」
ユフィの心配をよそに、クラウドは話を続ける。
「否定できないなら、ありのままを受け容れるしかないよな」そう言って無理やりに作った笑顔を
向ける「外見がどうだろうが、あいつはリーブなんかじゃないんだ。でなきゃ『これを壊せ』なんて
俺たちに平然と言える訳がない」なんの躊躇もなく、そこに仲間などと言う感情も遠慮もない。
だからあんな物がリーブである筈がない。
「ちょっと待って、それは違う! おっちゃんは……おっちゃんは……!!」
クラウドの身に何が起きたのかは分からない。ただ、今のユフィには彼の心情が理解できた。
少し前までの自分と同じだったからだ。だからこそ反論した。
―「そう見えるように振る舞っているだけで、なにも平気と言うわけではありません」
「おっちゃんだって平気でそんなことを言ってるんじゃない!」勢いでクラウドの両肩を掴む
「……理由は……よく分かんない。けど! そうしなくちゃならない理由がある。おっちゃんは
自分の感情よりも……」
そこまで言ったユフィの言葉を遮って、溜息混じりにクラウドは相づちを打つ「そう、ユフィの
言う通りなんだ」。まるで呆れたとでも言わんばかりに肩を落とす。
その様子を見て、言っていることと態度に食い違いがあるとユフィは思った。
「クラウド、分かってるなら何……」
224:ラストダンジョン (381) ◆Lv.1/MrrYw
10/10/25 23:43:52 Z3E9w06r0
伏し目がちだったクラウドは、そのままユフィから顔を逸らして先を続ける。
「つまり俺たちがここへ来る前、既にリーブは自分の“感情”を殺している。だから、もうここには、
“俺たちの知っているリーブ”はいない」
目的のために自分の感情を殺す―つまり自身を放棄するのと同じ―事ができると言うな
ら、それはもはや人ではない。
クラウドにとってそれは、過去の記憶に重なって嫌悪感を呼び起こす。
「利用できる物は何でも利用する。自分だろうが他人だろうが、そいつにとっては道具なんだ……」
―お前は、人形だ。
自分がかつてそう呼ばれたのを思い出す。
「人形には感情なんて無い……」そう言って首を振る「操り主にとっては、感情なんて無い方が
都合が良いんだ」
だからああも簡単に「壊せ」と言えたのだろう。
「同じだ。アイツと同じなんだ……」
耳鳴りがして反射的に顔をしかめる。6年前の忘らるる都―あの時の記憶が、まさかこんな
形で再燃するとは思ってもいなかった。額に手を当て、押し寄せる苦痛に耐えるようにして目を
閉じ俯いた。
けれど逆効果だった。瞼の裏に蘇るのは、消すことのできない忌まわしい記憶。
―悲しむふりはやめろ。怒りにふるえる演技も必要ない。
なぜなら、お前は……
そこまで思い出してクラウドははっと目を見開いた。
あれが言っていた通り、あの時の自分は演技をしていたのだろうか?
「違う!」
考えるまでもない、答えは明白だ。
耳鳴りが遠ざかっていく中で、別の声が聞こえた様な気がした。それは4年前にミッドガルで
対峙した少年だった。
―「どうせ僕は操り人形。昔のアンタと……同じだ!」
握りしめた拳と、怒りに打ち震える少年の姿。当時はそれと知らず、感情を利用して行動を
操作されていたのだ。昔の自分と同じだと言った少年が、まさにそうだった。だとしたら。
「……どうして、どうして気付かなかった……!」
叫ぶようにして言うとクラウドは立ち上がる。
「感情がなければ人形は操れない。……だから操り主にとってみたら、感情は必要不可欠な
ものなんだ」
突然の出来事にクラウドを見上げていたユフィは、今し方リーブから聞いた言葉を口にする。
「おっちゃんも似たようなこと言ってたよ。『今バレットの前にいるのは、ミッドガルの都市開発
責任者としての思いをもっとも強く受け継いでいる』とかなんとか。だから同じ人形でも、みんな
ちょっとずつ違うんだ。……とかなんとか」
それを耳にしたクラウドは驚いた様子でユフィに向き直る。
225:ラストダンジョン (382) ◆Lv.1/MrrYw
10/10/25 23:47:41 Z3E9w06r0
「……それを、リーブが?」
「うん。もうちょっと難しい事も言ってたけど、アタシじゃ理解できな……」言っている間にも、
クラウドの顔から血の気が引いていくのが分かった「どうした?」。
クラウドは呆然と立ち尽くし、自身の右手を見つめながらぽつりと呟いた。
「だとしたら、俺が……」
そこで声は途切れてしまう。
首を傾げてクラウドを見上げていたユフィには、その先にどんな言葉が続いたのかを知ること
はできなかった。しかし唖然としたその表情を見れば、彼がどんな事を考えていたのか、ある
程度の想像がついた。
(俺が壊した物は、まさか)
下で会った「人形」が、実は人形でなかったとしたら―想像するだけでもおぞましい、最悪の
事態が脳裏を過ぎる。
「……あのさ、クラウド」
殊更明るい声で名を呼ばれ、我に返ってクラウドは顔を向ける。視線の先には、満面に笑みを
浮かべるユフィがいた。
「おっちゃんに会ってみない?」
立てた親指が指す方向に目をやると、亀裂どころかボロボロになったフロアタイルが目に入った。
「アタシにはよく分かんないけど。今、クラウドが想像してる事って間違ってると思うんだ」跳ねる
ようにして立ち上がると、クラウドの前に進み出た。
「この先にいるおっちゃんなら、きっと教えてくれると思うから」
----------
・小説ユフィ編を誤解していたら申し訳ない。
・リユニオンの解釈自体を誤解(ry
・リミット技の解釈を誤(ry
・色々とすまない。
226:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/26 20:55:55 g+RgT92Q0
GJ!
227:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/28 20:57:38 gCbGFHjQ0
>>223
おもしろくなってきた
228:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/10/29 16:57:07 N4iCR+4I0
乙!
229:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/01 21:59:46 c9BfxzR00
ほ
230:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/03 09:06:32 Qk0qYdxz0
ぼ
231:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/05 16:18:23 b/pnVv1g0
ま
232:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/07 12:12:43 XpGZoR1x0
り
233:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/09 17:26:14 mqD9FuNG0
も
234:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/12 06:19:44 QhNn0/Vu0
も
235:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/15 00:32:27 FephlOJa0
ん
236:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/17 11:17:31 Vx3Nm/PG0
が
237:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/19 00:59:10 mX0rzRoj0
ー
238:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/21 20:44:51 FSOBD5gQ0
ら
239:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/24 00:44:43 6C+hGeiW0
ん
240:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/27 20:24:03 71gzfcWP0
ど
241:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/11/29 21:49:36 eJdn1VR80
ら
242:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/02 02:50:30 gkzCfSfA0
ご
243:ラストダンジョン (383) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/03 01:40:58 YH+jCqWP0
前話:>>221-225
----------
そう言ってクラウドに背を向けると、ユフィは躊躇わずに一歩を踏み出そうとした。きっとこの先に
いるリーブに会うのが、今のクラウドにとっては最良の選択だろうと思ったからだ。
しかしそれを全力で否定したのはクラウド本人だった。彼は無言でユフィの腕を掴むと、彼女の
前進を妨げた。
「ちょっと! いきなり何……」言いながら振り向くのと同時に、今度は腕を思い切り引っ張られた
ものだから、ユフィの体は放り投げられる形でエレベーターに押し戻された。頭部に走る衝撃に
思わず瞼を閉じれば、耳鳴りと共にきらきらと小さな光の粒が視界を横切った。
それから数秒も経たないうちに、エレベーター内の側壁にぶつけた後頭部を押さえながらユフィ
が薄く瞼を開く。視界の中央には、伸ばした手で操作パネルのボタンを押しながら宙を舞うクラウド
の姿と、扉の向こうに走る閃光が見えた。その光景を目の当たりにしたユフィは一瞬だけ、まるで
良くできた映画みたいだと、どこか他人事のように考えていた。
間一髪のところでエレベーターにクラウドが飛び込むと、扉は閉まった。それから息を吐く間も
なく、轟音と共にエレベーター内は激しく振動した。
「なっ、なんだってのさ!」尻餅をついた格好で踏ん張りながらユフィが叫ぶ。突然の出来事に、
状況が呑み込めずにいた。
「あのまま行ってたら、爆発に巻き込まれてた」
前につんのめる形で体勢を崩してはいたものの、クラウドの声は冷静だった。
「爆……?!」
「どうも、あそこから先には進ませたくなかったみたいだ」
言いながら、揺れが小さくなったのを確認したクラウドは大剣を支えにしながらゆっくりと立ち
上がり、パネルの前に立つと操作をはじめた。しかしどこを押しても扉は反応しなかった。どう
やら自分達は爆発の衝撃で傾いたままのエレベーター内に閉じこめられたのだろう、と言う状況を
把握した。
「面倒な事になったな……」
「ねえクラウド、『アタシ達を先に進ませたくなかった』ってどういう事?」
操作パネルと向き合うクラウドの背にユフィが問う。意識せずに立ち上がった勢いでエレベーター
内が大きく揺れ、再びユフィは側壁に後頭部をぶつけた。深刻な内容の会話にあって、その鈍い
音はいっそう際立った。
244:ラストダンジョン (384) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/03 01:50:23 YH+jCqWP0
しかしクラウドは意に介した様子もなく、ユフィの問いに答えた。
「爆発のタイミングから見て、俺たちがあの先に進むのを妨害する為の仕掛けだと思えたんだ」
見方によっては罠という言い様もあったが、クラウドは意識的にそうすることを避けていた。
言い終えたところで、パネル操作を諦めたクラウドは天井を見上げた。換気口があれば、そこ
から外に出られるだろうと考えた。
「って事は、おっちゃんが?」
「そこまでは分からない。時限式かセンサーかそれとも遠隔操作か、やり方は色々ある。だけど
装置を作動させるための仕組みによっては、ユフィの予想が正しい事になるな」
「なんで……?」気の抜けた声でユフィがつぶやいた、どうしてこんな状況になったのかが分か
らなかったのだ。
「ところでユフィ」支えにしていた大剣を右手に持ち替え、両足を開いて態勢を整えると視線を
真上の換気口に向けながら問いかける「ここへ来る前にリーブと会った、って言ったよな?」。
「うん」
「なにか言われなかったか?」
「えっ?」
どうやら質問するクラウドには心当たりがある様子だったが、聞かれているユフィ当人には思い
当たるところがない「ええっと、色々聞いた気がするけど……」。急転を繰り返す事態について
行けず、思うように考えがまとまらなかった。
その間もクラウドが大剣で天井の換気口を壊そうとする度に、エレベーター内が大きく揺れた。
神羅ビルのそれとは違い、ここはずいぶん頑丈に作られているみたいだと、妙なところに感心する。
マテリアを携行しなくなって久しい今では、魔法は使えない。つまり脱出のための選択肢は
限られていた。しかもクラウドの剣技は狭い空間、とりわけ密室となったエレベーター内で使用
するには向いていない。それというのも扱う剣その物の大きさもあって、大型の敵や広域攻撃を
担う技が多かった為だ。仮にここで発動すれば乗っているエレベーターを壊せたとしても、ユフィや
自分自身も巻き込んでしまう危険があった。
さらに問題なのは、先程の爆発の影響でバランスを失い非常に不安定なエレベーター内では、
動く度に籠が大きく揺れる事だった。乗り物酔いという弱点を持つふたりにとっては、もっとも危惧
すべき事態だった。
「……ち、ちょっと待ってクラウド。……なんか……気持ち悪くなってきた」こんなに揺れるんなら
飛空艇の方がよっぽどマシだと、口元に手を当てながらユフィは思う。
閉塞された空間では、風景などで気を紛らわす事もできない。その上ひどく揺れるものだから
三半規管は半ば混乱状態だ。クラウド自身、この状況下に長時間いるのは避けたかった。一刻も
早く打開策を見出したかったが、焦れば焦るほど状況は悪くなる一方で、まさにジレンマだった。
(確かにユフィの言うとおりだ。これじゃあ潜水艦の方がまだ……)
245:ラストダンジョン (385) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/03 01:55:35 YH+jCqWP0
考えたくないという意識はむしろ忘れかけていた記憶を呼び起こすカギになる。次々といやな
要素が脳裏に浮かんで、クラウドは思わず眉間にしわを寄せた。これ以上ここにいると、それだけ
で心身共に参ってしまいそうだ。となれば多少の無理をしてでも、ここは強行突破しかない。
「……踏ん張れユフィ!」
「えつ!?」
覚悟を決めたクラウドは大剣を構えて腰を落とすと、狙いを換気口に定めた。未だ不安定に
揺れる床と跳躍のタイミングを合わせると、全身を使って跳躍し勢い良く大剣を突き上げた。
金属が擦れ合う耳障りな音と共に、クラウドは大剣をねじ込むようにして持ち手を変えた。換気口
を覆っていた金網はさらに不快な音を立てると、抉れて形を変えた。
もう少しで壊せると手応えを感じたクラウドだったが、直後にエレベーター内がひときわ大きく
振動すると、がくんと小さく落下する様な衝撃が走った。バランスが崩れ、大剣はクラウドの手に
押し戻される。
「く、クラウド!?」
ぎいと軋んだ音を立てながら、エレベーターは傾斜したままでゆらゆらと揺れている。先程よりも
明らかに不安定になっているのが分かった。
「これってさ……もしかして」
「支えになるワイヤーの片方が切れたんだろうな」
応じるクラウドの声は、自分でも驚くほど冷静だった。
「ねえ、エレベーターを支えてるワイヤーって、そんなに簡単に切れちゃったりするモンなのかな?」
「いくらなんでもそれは無いんじゃないか? それなりの強度はある」と信じたかった。
「……だよ、ね? 簡単に切れちゃったりするハズ……無いよね?」
まさかねー、とユフィは乾いた声で笑ったが、すぐに笑顔は引っ込んでしまう。
「…………」
「…………」
それから互いに顔を見合わせるが、なにも言葉が出てこなかった。
なぜだかは分からない。ただこの時点でふたりは、このエレベーターを支えるワイヤーが、「あと
数十秒ほどしたら簡単に切れてしまうのではないか?」と言う、とてつもなく現実味を帯びた
予感を抱いていた。
その直後に、ふたりの予感を確信に変えさらに実現してしまった事を告げたのは、けたたましく
響いた金属の摩擦音だった。同時にエレベーター内は照明と安定を完全に失い、ふたりを乗せた
まま落下をはじめた。
そんなほんの一瞬の間に、クラウドの脳裏ではまるで走馬灯のように記憶が再生され、ここへ
来る直前に対峙したリーブの言葉がよみがえった。
***
「神羅カンパニーの支配体制をいっそう盤石な物とするために、当時は裏で様々な能力開発を
行っていた様です。その中のひとつに『未来予知』なんてものもあったそうです」
またしても自らを人形だと名乗っていたものの、クラウドの前に現れたのは姿形や声のなにも
かもがリーブだった。
「もちろん、私にそんな能力はありません。ですが予知能力が無くても確実に未来を知る方法が
あるんです。何だかお分かりになりますか?」
目の前に立ったリーブは淡々と話を続ける。クラウドが分からないと首を振ると、こう続けた。
「自分の描いたシナリオ通りに事を運ぶんです。そうすれば、予知などする必要はありません。
予めレールを敷設してその上に列車を走らせるのと同じです」
246:ラストダンジョン (386) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/03 02:03:10 YH+jCqWP0
「『敷かれたレールには逆らえない』、そう言いたいのか?」
静かに問い返すクラウドの声には僅かばかりの嫌気がこもる。
それを受けてリーブは口元を綻ばせると「少し違います」と答えた。
「正確には、その上を走ることを嫌い彼らがレールから外れる事まで想定に含めるんです」
「……あんたのシナリオでは、それが俺達だと?」
うんざりした表情でクラウドが言うと、またもリーブは同じ反応を返す「少し違います」。
「あなたは本来とても強い人です。しかしその反面で脆くもある。ですから、こうご説明した上で
『本体の破壊』を依頼したとしても、それを快諾して頂けない事は分かっています。ですから、私は
あなたを利用しようと考えました」
話し方こそ事務的だが、内容はどこか挑戦的にも聞こえた。
「俺達は盤面に置かれた駒じゃない、あんたの思い通りに動かせるとは限らない」
明らかな嫌気を含んだ声で、クラウドが反発する。それがリーブの思惑通りだったとしても、
言わずにはいられなかった。
「動きますよ」リーブは断言した「直に分かります。そして我々は駒ではなく、“人形”なのですから」
***
なぜあの時、リーブはあんな事をわざわざ話したのだろう? 心のどこかで何かが引っ掛かって
いた。けれどそれも、今なら納得がいく。
(こうなるまで俺が真意に気付けない、と言うのも見通されてたって事か)
俺はあそこで、あんたに打ちのめされた。その直後に、都合良く回復薬を差し出すユフィが現れ
た。なるほど、それもすべて用意してあった“シナリオ”通りというわけだ。
クラウドは思わず笑みを浮かべた。
(……『何もできなかった自分の弱さに腹が立った』……あんたもそうだったんだろう? リーブ)
俺は正直、あんたを少しだけ苦手だと思ってる。口が達者で柔和な裏に知略を巡らす切れ者。
こう言ってはなんだが、その意味ではルーファウスよりもタチが悪い。
6年前までは神羅という巨大企業に属し、ミッドガルと魔晄文明を築き上げ支配の側に身を置い
た一人。それでも最後は俺達に手を貸した。考えてみればあの時ケット・シーを操っていたあんた
自身、自分がレールの上を走らされていたと思っていたんじゃないのか?
自分をスパイだと明かせば俺達に疎まれる事は目に見えていたのに、図々しくも堂々と同行する
と宣言されて、当時は状況が状況だけに好感なんて持てそうになかった。だけど、今なら何となく
分かる様な気がするよ。
247:ラストダンジョン (387) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/03 02:04:16 YH+jCqWP0
分かったところで、あんたと同じ事が俺にできる気はしないけどな。
たとえ感情は殺せても、最後まで理想は捨てない―俺から言わせれば、そんな事ができる
ヤツの方がよっぽど強いんだ。
(そしてここの仕掛けに気付いても、俺の力ではどうしようもない。……あんたはそこまで分かって
いた。だから種明かしをしたんだな)
手にした大剣を強く握り、クラウドは目を閉じた。着地の衝撃に備え、できる限り身を低くして
四肢に力を入れた。
(だが生憎と俺はあきらめが悪いんだ。あんたの思い通りにはさせないさ。それに)
遠くにユフィの叫び声を聞いた直後、クラウドの全身に衝撃が走った。
(何もしないならそれこそただの“人形”だ。……そうだろう?)
----------
・FF7本編を意識しすぎて不自然になった感は否めない。前回から続いてるのに
絞り切れていない話の焦点といい、読み苦しい点が多くてすんません。
・んでもって、やっぱりコミカルな表現は苦手です…。
248:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/03 20:25:11 xKzLiN/20
GJ!
249:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/06 05:36:13 uD/t6lUT0
GJ!
250:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/10 06:15:22 arBQQQo50
ほ
251:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/13 10:50:08 wDjU1/vNP
乙!
252:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/16 18:46:54 cnpobrGz0
ぼ
253:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/20 22:54:11 kvw/lQlpP
ま
254:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/23 19:37:11 K4jXQhOe0
>>243
乙です!乗り物酔いw
255:月水
10/12/24 22:45:17 fKqrecyK0
※BCFF7でクリスマスネタな捏造SS。
------------------------------------------------
『Happy Christmas for you.』
暗闇の中を、音を立てないようにして進む。慣れた場所で、しかも前職柄(?)、この様な事は造作ない。
ただ、目的が目的なだけに内心穏やかでいられなかった。
袖と裾に毛のついた紅い衣装を着、昼間梱包した物を片手に部屋の前に立つ。
いつもなら、ここでノックする所だが、今夜は出来ない。
ノブにゆっくり手をかけ、そっと引いて開く。室内に薄明かりが出来た。
足場がゆったりとある床に爪先から踵へと慎重に体重を移動させ、前進する。
ふと、首元がひやりと感じた。
振り向かなくても、何が起こったのかが想像ついてしまった。
「こんな夜中に他人の部屋に入るとは」
何が悲しくて娘に刃物を突き付けられるのだろう。しかも、本人は寝ぼけているらしく、誰に刀を向けているのか
分かっていないようだった。俺は思わず、両手を挙げる。
「父さん」
何とも情けない状況だった。しかし、ここでばれるわけにはいかない。
「“父さん”じゃない、サンタさんだ」
取り繕う。
「では、その“さんたさん”とやらが、私に何の用だ」
振り向くと、彼女の眼が、すわっていた。
怖。
「いや、その、プレゼントを届けに」
観念するしかなさそうだ。
「何故?」
詰問されるなんて。
「今日、く、クリス、マス」
「くりすます」
手元が、漸く緩んで刀が離れた。そして、彼女は朧げな思考回路を回転させているようだった。
頭の中にある自分の辞書から該当する単語を懸命に引こうとしているが、中々見つからないらしい。
「め、メリークリスマス」
動きが止まった、今が好機。
裏返ったような声で言った後、プレゼントを渡し、逃げるようにして娘の部屋を出る。これ以上、奇妙な重圧に耐えられそうになかった。
「おはよう、父さん」
「あ、ああ。おはよう、フェリシア」
あれから、寝るに寝られず、結局リビングで一夜明かした。
娘は、昨夜の事は覚えていないようだ。
「これ、何かな」
朝起きたら持っていたという、夜俺が渡した包みだった。
「開けてみたらどうだ」
「開けていいのかな」
自分のものか疑わしくて開けられないと言った。
大丈夫だ。そう言って開くように促す。
黄色のリボンを解き、柊の模様が入った季節感ある包装紙を丁寧に広げていく。
数時間前の一騒動で、端が少し凹んでしまった細い箱を取り出した。
「これは」
不慣れな宝飾店で偶然見つけた、娘と同じ名を持つ花をモチーフにしたネックレス。小さめだが、花弁の部分にはブルーダイヤが使われている。
娘に対する、初めての贈り物だった。
ふわり、と身体が包まれる。
「ありがとう、父さん」
腕をそっと回した。
サンタには、なりきれなかった。でも、これで良かったのだ。
幸せな時が過ごせるのだから。
<fin>
----------------------------
・親馬鹿スキルがありそうに見えて仕方がない、そんなヴェルド氏に頑張ってもらいました。
256:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/26 00:03:50 ZxY6mWk9O
乙!
257:フリオ×ライトニング(1) ◆WzxIUYlVKU
10/12/29 02:00:02 OBY5H/Ne0
※DDdFFの最新トレーラーのフリオとライト義姉さんのシーンを見たら色々滾ってきて勢いで書きました。
※フリオニールとライトニングのカップリング物です。ぬるいですが恋愛要素を含みます。苦手な方はスルーして下さい。
※内容はほとんどが投稿人の勝手な妄想です。完全なるフライング小話です。ゲーム本作の内容とは異なります。(当たり前ですが)
フリオニールはものすごく困っていた。
仲間四人で野営をしていたら、その内の二人が急に見張りに行くと言い出して。
残ったのはライトニングと名乗る女戦士だけだ。
男だろうが女だろうが、仲間である事に変わりはない。だが、少し前に彼女と言葉を交わした。彼女が自分の大切にしている夢に関心を持ってくれてそれ以来、彼女の事が気になって仕方がないのだ。
席を外した二人を恨めしく思いながら、隣に座る変わった服装の女性を横目でそっと盗み見た。
たき火の炎に照らされた横顔が美しく、柔らかそうな髪は彼の好きな花を思わせる甘い色をしている。すっと通った鼻筋、伏せられた眼を縁取る長いまつ毛が落とす影、思わず見とれてしまう。
さすがに不躾だろうと慌てて目を反らしたが、その仕草が逆に隣に座る女戦士に気取られる結果となってしまう。
「なんだ?」
どうしてこの女性は男の様な話し方をするのだろう。
男勝りな女性は仲間にも居たが、それでも、そのまんま男の様な話し方をしたりしなかった。
「ライトニングは、その…どうしてそんな話し方をするんだ?」
ライトニングは怪訝な表情でフリオニールをじっと見つめる。フリオニールの顔が瞬く間に赤くなる。よく日焼けした彼の顔がたき火の炎に照らされていても、それでも分かるくらいに。
ライトニングにも男女の機微には疎い方だが、彼が少なからず自分に好意を持っていることくらいは分かる。
以前の自分はそんな感情を疎ましく思っていたのだろう。でも、この男だけは何故か違った。
何故だろう、この男と一緒に居ると心が安らいだ。良く言えば何を言っても受け入れてくれる、悪く言えば何を言っても許してくれるような、そんな感じだ。
博物館から抜け出て来た様な鎧姿に武器、堂々たる体躯にも関わらず口をついて出てくる言葉は少年の様にあどけない。今だって、ライトニングの男勝りの言動を咎めているのではないのが分かる。
「おまえは何故そんな格好をしているのだ?」
フリオニールはライトニングが言っている意味が良く分からず、首を傾げる。
「俺の…この、格好の事か?」
フリオニールは落ち着きなく、自分の鎧に触れ、
「どこか…変…か?」
「いや…そうじゃない…」
慌てる初心な反応がなんだか可愛い。
「お前の居た世界ではそれが当たり前なんだろう?」
「そうだな…兵士は大体こんな感じだ。もっとも、俺みたいに歩く武器屋みたいな奴は居ないけどな。」
ライトニングに怒っている様子はない。お互いの話が出来るのがうれしくて、フリオニールは勇気を出して言葉を続けた。
「俺の仲間にも女の戦士が居た…と思う。でも、ライトニングの様な喋り方はしなかった。だから不思議に思ったんだ。」
こんなに美しい人が、と言いかけてフリオニールは慌てて口を噤んだ。
「ライトで良い。」
相変わらず男の様な言い方だが、声が優しい。
258:フリオ×ライトニング(2) ◆WzxIUYlVKU
10/12/29 02:02:40 OBY5H/Ne0
「悪かったな。お前の姿がおかしいんじゃなくて…私の居た世界でもお前やセシルの様な格好をした人達が居た。だがそれは遥かな昔の話で、今はもう物語の中でしか見られない。」
「俺たちの世界では古い戦記を口述で伝える。それくらい古い、という事か?」
やはりフリオニールには分かりにくいのだろう。まるで過去から来た人間と話しているみたいだ。
「そうだな。」
その伝承とやらがどれくらい古いのかは分からないが、これ以上フリオニール混乱させないように、そして少しでも緊張を解いてやろうとライトニングは否定はしないでおいた。
「お前の世界では女性はみんな裾の長いドレスを着るのか?飾りがヒラヒラ付いた…」
「高貴な女性はそうだな。皆、華やかで美しいと…思っていた…」
「どうした?お姫様にフラれたか?」
からかう様な口調にフリオニールは気色ばんだ。
「そんなんじゃない!」
その剣幕にライトニングは驚いてフリオニールを見た。膝を立てて今にもライトニングにつかみ掛からんばかりだ。
以前誰かがフリオニールがお姫様にひどい目にあった事がある、と言っていたのを小耳に挟んだだのを思い出し、
(少しひやかそうと思ったのだが…)
どう詫びようかと考えを巡らせていると、いきなり両肩を掴まれた。痛みに顔を上げると目の前にフリオニールの顔があった。
「俺は…っ!ゴテゴテ着飾った女よりもあなたのような…」
掴まれた肩も向けられる視線も熱くて、ライトニングは目を反らす事が出来ない。
フリオニールは吸い込まれそうな青い瞳に見つめられ、赤い顔を更に赤くして顔を背けた。そのくせ、ライトニングの肩から手を離さない。
「私は…」
フリオニールの言葉の続きがなんとなく分かって、不思議と心が浮き立った。真っすぐな気持ちがうれしい。
「何かを守りたくて、軍人になった…と思う。周りの…他の奴らに負けたくなかったから…」
この男になら話しても良い、そう思った。肩を掴んでいた指から力が抜けたのが分かった。
「俺も…そうだった…」
長い長い沈黙の後、フリオニールがやっと口を開いた。
「仲間と一緒に…野ばらの咲く世界…でも、今は…そこに…あなたが居てくれたら……と思う」
ごくり、と唾を飲み込んで、なんとか言葉を絞り出す。
「守りたいんだ。」
最後の方は聞き取れない程小さな声だった。
259:フリオ×ライトニング(3) ◆WzxIUYlVKU
10/12/29 02:04:18 OBY5H/Ne0
ライトニングは既視感を覚えた。
以前にも誰かにもそんな事を言われた事があったような気がする。このひたむきさとか。
だからこの男に心を許してしまうのかと、ライトニングは漸く気が付いた。
「残念だな。」
崖から飛び降りる気持ちで伝えた言葉をあっさりと否定され、フリオニールは言葉を失う。
だが、ライトニングはにやりと笑ってみせると、
「生憎と大人しく待っている性分ではなくてな。どうせなら、共に肩を並べて戦う方が良い。」
フリオニールは思い出した。この女性の美しさだけではなく、彼女の言う「性分」にも惹かれていた事を。
(この人は強い…)
気圧されて何も言えなくなったフリオニールにライトニングは尚も畳み掛ける。
「抱いてくれないのか?」
「え…!?」
ライトニングの言葉にフリオニールは飛び上がらんばかりに驚いた。
「こっ、ここでか…?」
「ばか。考え過ぎだ。」
「そ…そうか…」
そういう意味か…と口の中でもごもごと言い訳をしつつ、フリオニールは大きく深呼吸をした。
肩に置いた手をそっとライトニングの背に回す。ライトニングも素直に身体を預ける。
女性の身体はもっと柔らかいものだと思っていたが、良く鍛えられたライトニングの背中には無駄な肉が一切付いていない。だが、手のひらに感じる筋肉はやはり男性のそれとは違う。
そして、自分の胸に押し付けられる彼女の柔らかい胸。
頭がくらくらして、周囲の光景が回転しているのではないかと思う程だ。
だが、胸の中のライトニングを見ると、安心しきった表情でフリオニールにもたれかかっている。
その表情はフリオニールの胸をしめつけた。
(…今だけは…)
先の事は何も考えないでおこう…そう思って、フリオニールは抱きしめる腕に力を込めた。
おわり。
260:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/30 01:19:40 q6y8Dfmk0
>>257
乙!
席を外した奴らは気をきかせたのかw
261:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/30 23:11:49 h5hJNUBL0
X3登場に同意&便乗。
会敵>>141→内部侵入~要塞崩壊>>139-140の経緯で
辛くも大陸上空に現れた母船は退けたものの、その後進路を日本に(これが3-53)。
と言うことで、最後に「幸運を祈る!」の無線通信で締めくくってくれたら叫ぶw
(母船って36まで日本→37欧州→42~48北米侵攻→53日本で良いのかな?)
3のラストは受け取る側だけど、「幸運を祈る」を言った側をやってみたいという妄想の賜ですね分かry
お前ら良いお年を。
262:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/31 03:48:16 7o139is00
>>255
互いに不器用だけど、失われた親子の時間を取り戻そうと前向きな様子が良いな~。
ヴェルドさんならやってくれる!だって任務は必ず成功させるタークスだし!
クリスマスネタか~(FF7には教会があるからクリスマスって風習は一般的なのかな?)
・トナカイの代わりにフェンリルを駆ってプレゼント届けようとするストライフデリバリーサービス、とか。
・「どうせならこの服も着て」とサンタクロースな格好させられてみるストライフデリ(ry、とか。
・それでもバレットに「あくまでも忙しいサンタさんの代わりにクラウドが走ってるんだ」と言われて
はいはいと頷くマリンとか。
…よし、思いついたけど書くのは無理だw
>>257-259
これ読んで新トレーラー来てたことに気がついたw楽しみですね~。(DFFの前の話?)
スレ違いですが、シャドウ出ない?(戦闘のバリエーション的にアサシンいいと思うのよ)
ストーリー的にも名前的にもシャドウいいじゃないか~と言ってみる。無理やりか?w
やばい、予定無かったのに楽しみになってきたw長レスすんませんw
263:ラストダンジョン (388) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/31 04:22:17 7o139is00
前話:>>243-247
----------
文字通りに天と地が何度もひっくり返り、不規則で耳障りな音と全身を伝う衝撃が収まったの
を見計らって、クラウドは指先から順番にゆっくりと体を動かしてみた。ところが、どこにも痛み
や異常は無く、それどころか殆どダメージを受けていない様だった。それからゆっくりと瞼を開く
と、その理由はすぐに分かった。
「……防盾魔法?」
自身の周囲をうっすらと光の壁が包み込んでいる、これが衝撃を吸収してくれたのだと言う
こと、その正体がシールドマテリアの作り出す防御壁だと言うことは、経験からすぐに察しが
付いた。
「はぁ~、我ながらギリギリ間に合って良かったよ」
声の方に顔を向けると、座り込んでいたユフィと目が合う。彼女の右手には、まだうっすらと
光を纏ったマテリアがあった。あの状況下で魔法の発動を間に合わせたのはさすがだと感心
する一方で、マテリアの出所が気に掛かった。少なくとも6年前の旅で得た物でない事は確かだ。
「それは?」
「ああコレ? さっきおっちゃんから預かったの。ホントはシェルクのなんだけどね」
お陰で助かったよと嬉しそうに続けるユフィとは対照的に、返答を聞いたクラウドは肩を落とす。
(……ここまでは用意されたシナリオ通り、と言う訳か)
思わず溜息を吐いたクラウドを見て、ユフィは首を傾げた「どうしたの?」。
「いや……」返答を濁して周囲を見回すと、頭上には大きく変形したエレベーターの扉が、片や
先程までは天井だった場所が横合いに見えた。換気口を覆っていた金網は歪んだままだった
が、その向こうから僅かだが外の光が漏れ入っていることに気がつくと、クラウドは躊躇なく
金網を蹴破った。
こうして二人は無事、エレベーターの外に出る事ができた。
「ちょっと、これって……」
ようやく解放されて安堵したのも束の間、目の前に広がる光景を見たユフィは呆気にとられて
言葉を失う。それもそのはずで、これこそ先程モニタ越しに見せられた風景―つまり建物の
外―だったからだ。
後ろを振り返ると、白い壁面の新本部施設が見えた。少し顔を上げたところに小さな亀裂を
確認できたが、見る間にそれは塞がっていった。どれをとっても状況が理解できない。
264:ラストダンジョン (389) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/31 04:27:39 7o139is00
「アタシ達、なんでいきなり外に放り出されてる訳?!」
どういう事なのさー?! と、誰にともなく叫びまくっているユフィの混乱も分からなくはない。
クラウド自身、支えを失ったエレベーターがシャフト内を落下したのだとばかり思っていた―と
言うよりも、それ以外に起こりようがない―からだ。しかしクラウドにしてみれば、目を覚ました
ら突然ユフィが目の前にいたという状況でこの“瞬間移動”を経験していたから、今回の出来事
にそこまで動揺する事はなかった。言ってみれば、相手が手品師だと分かれば心構えができる
から、何が起きてもその場でいちいち驚くことは無くなる。確かに仕掛けは気になるが、今は
それを気にしている場合ではない。
クラウドにとって問題なのは、ここまでの出来事がどんな理屈で起きた現象なのかではなく、
今のところどれもリーブの描いたシナリオ通りに進んでいて、その結末が考え得る中で最悪だと
言う事だった。
顔を上げたクラウドの目を引いたのは、自分達を取り囲むようにして上空にあった無数の機影だ。
「飛空艇師団? ……にしても、どうしてこんなに」
ここへ来たときには、自分達が乗っていた飛空艇以外にはいなかったはずなのに、今や編隊を
成して上空を飛んでいる。この短時間にどこから集まってきたのだろうと、クラウドが首を傾げる
のも無理はない。
「ああ、そっか」振り向いたユフィが思い出したように答える「クラウド達は聞いてないんだよね。
おっちゃんの呼びかけで集まったんだよ、ここの空爆待機の為にこの辺に留まってるんだと思う」
「空爆!?」さらりと物騒なことを語るものだから、思わずクラウドが聞き返す。
「心配は要らないよ。上にはシドも戻ったし……」言いかけてユフィがあっと声を上げた「そう、
アタシ達が頑張れば、空爆なんてしなくて済むんだ!」
***
ちょうど同じ頃、シドの乗った飛空艇内のレーダー要員は我が目を疑っていた。不自然なほど
頻繁にまばたきを繰り返し自分の目に異常がないと分かると、次に計器の故障を疑った。整備
班には絶対の信頼を置いているが、今回ばかりは計器の故障であって欲しいと願わずには
いられない。
しかし目の前の表示は変わらなかった。意を決してレーダー要員は声を上げた「レーダーに
反応です!」。
彼は索敵用広域レーダーから対象までの距離と方位を読み上げた後、にわかには信じがたい
状況を報告する「捕捉データによるとモンスターの大群の様です。しかも真っ直ぐこちらに向かって
きます!」。
「なんだってぇ?!」
シドが叫ぶのと同時に、メインのモニタにはレーダー画面が映し出され報告内容が誤りでない
ことを示した。
「おい冗談だろ? 大体どっからこんな数のモンスターが湧いて出てくるってんだ!」そう言った
後、シドはあることに思い至って口元を歪めると、吐き捨てるようにして言った「ケッ、好都合って
もんだぜ!」。
シド達をはじめとした各飛空艇はあの空爆要請を受けて以来、待機飛行のため新本部施設を
中心にした円周上に航路をとっていた。レーダーによると本部施設から見て北側から迫ってくる
モンスターの大群に対して、周回軌道をとる彼らは間隔を空けずに攻撃をする事ができた。シド
の言う都合とは、こちらへ向かってくるモンスターの足止めについてだ。
265:ラストダンジョン (390) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/31 04:30:52 7o139is00
『おう艇長、良かったじゃねぇか!』スピーカーからは豪快な笑い声と共に、事の次第を聞いて
いた燃料担当が言った『腹ん中にどっさり積んできたモンが無駄にならずに済みそうだな!』。
その言葉に通信担当のクルーは頷くと、穏やかな声で続けた。
「不謹慎ですけど、モンスターが来てくれて良かったとさえ思いますよ。……理由が何であれ、
局長やみなさんのいる場所に爆弾を落とすなんて、やっぱり嫌ですからね」。
「……どう言ったらいいか分からないが」年輩の航法士は苦笑混じりに言った「空爆待機とは
言え、結果的にこのルートで待機していたのが幸いしたのは間違いないな」。
その言葉にはっとして、シドが振り返る。
(あの野郎、まさか最初からこれが狙いだったんじゃ……)
もし仮に、こうなる事をリーブが事前に予想していたのだとしたら、何故それを素直に言わな
かったのか? 「モンスターの襲撃に備えて本部上空で待機しろ」と、そう言えば済む話では
ないか。確信が無かったにしても、わざわざあんな言い回しで伝える必要は無い。むしろ誤解を
招いていたずらに不安を煽るだけだ。そうすることでリーブが得るメリットを思いつかない。
(ちくしょう、こう言うのはいっくら考えたってオレ様にゃ分かりそうもねぇや!)
とにかくこの事を他の連中にも伝えなければ、そう考えてシドはしまってあった携帯電話を
取り出すと電源を入れた。すると、ちょうど同じタイミングで電話が鳴動をはじめた。ディスプレイ
には発信者の名前が表示されている。2コール目が鳴る前に、シドは通話ボタンを押した。
「おーグッドタイミングだ! クラウド、状況がちぃとばかし変わった」
『こっちもその件で頼み事がある。シド、すぐに俺のバイクを降ろしてくれ。モンスターの大群を
相手にするには“足”が要る』
あまりにもスムーズに話が進むものだから、思わずシドが聞き返す。
「おいちょっと待ってくれ。お前、その事をどこで?」
『話は今さっきユフィから聞いた』ユフィはリーブに話を聞かされたと言うことと、自分達がここに
来るまでの経過を簡単に補足してから、クラウドは先を続ける『確かに機動力で言えば、足止め
は俺とユフィが適任だ』。
「他の連中は?」
『まだ中にいる、でも今は戻ってこのことを知らせる時間が惜しい。ここからなら、戻るより
モンスターを迎えに行った方が手っ取り早い』
クラウドの言っている通り、たしかに時間は無い。
「……分かった。すぐ降ろしてやるから待ってろ」
合流地点を告げてから通話を終えると、シドは眉間にしわを寄せた。
「艇長、どうしました?」様子に気付いた通信担当のクルーが心配そうな視線を向ける。電話の
相手がクラウドだと言うことは、シドの話からも分かった。けれどなぜ不満げな表情をするのか
が分からなかった。
「別に……」それ以上シドは答えようとしなかった。
266:ラストダンジョン (391) ◆Lv.1/MrrYw
10/12/31 04:42:48 7o139is00
***
クラウドがシドと通話している間、ユフィも携帯電話を手にしていた「クラウドは無事! こっちと
合流したよ」。
彼女の言葉から電話の相手がティファかヴィンセントあたりとだろうと見当をつけつつ、クラウド
はシドとの会話を続けた。先程ユフィに飛空艇師団の事を聞かされた時にようやく気付いた事だ
ったが、分断された自分達がそれぞれの状況や情報を共有できていないというのは、こちらに
とって不利に働いている。
「……うん、こっちは大丈夫。シドは飛空艇に戻ってる。万が一に備えて空爆待機してる。でも
大丈夫、そうならないようにアタシ達がいるから安心して。それで、そっちはどう?」
ティファの話を聞いているらしく、通話の途中ユフィは何度か驚いたり、頷いたりを繰り返して
いた。クラウドがシドとの通話を終えてから、少し遅れてユフィも電話を切った。
すると開口一番、ユフィはこう言った。
「ティファから伝言『私は大したケガもしてないから心配しないで』だって」
「……良かった」クラウドは今までになく安堵したような表情を浮かべた。
それからユフィは、ティファがシャルアに助けられた事。今はヴィンセントと合流した3名で行動
していること。それ以外には特に進展が無い事を伝えた。
「下に向かったバレットも含めて、今のところみんな無事みたいだね」ユフィは自分が見た情報も
含めて、ここまでの経緯と状況をまとめた。
直接話のできていないバレットを除けば、これで今のところは情報を共有できた事になる。しかし
この先もこう上手く行くのだろうかと考えて、クラウドは不安を覚えた。
----------
・今年も1年間ありがとうございました。明日からの1年がいい年になることを祈念しつつ
…ちょっと落ち着こうか自分。
・ウォール(バリアのマテリア)とシールド(シールドマテリア)って何が違うのかちょっと忘れてる
ので、違ってたらすみません。(物理ダメージの軽減と完全無効の差だと思ったんですが)
267:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/12/31 17:51:44 K7Ny+A7q0
乙!
268:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/01 05:00:45 rmAFztS00
>>263
乙!
緊迫した場面でユフィの明るさが救いです。続きを楽しみにしています。
269:ヴァン×パンネロ【1】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/01 05:06:32 rmAFztS00
※FF12本編終了後に預かったシュトラールで旅をしているヴァンとパンネロのお話です。
※ヴァンとパンネロのカップリング物です。ぬるいですが恋愛要素を含みます。苦手な方はスルーして下さい。
※ヴァンの日本語がところどころおかしいですが仕様です。
---------------------------------------------
パンネロは夕焼けがあまり好きではない。
明るい日差しの下だと全てが明らかで、悲しいもの、寂しいもの、そんなものはこの世には存在しない、そんな気持ちになる。
辛い過去などとっくに消えてしまって、今この時と明日の事だけ考えていれば良いと思える。
(だけど、夕焼けは嫌い…)
マシントラブルでモスフォーラ山地の窪みに辛うじて不時着したヴァンとパンネロ。
パンネロはコックピットの窓から夕焼けを眺めていた。
理屈ではないのだ。美しすぎる夕焼けは全ての感情を露にする。
パンネロが涙を流し歯を食いしばりながら蓋をした悲しい思い出、居なくなった人達、行方が分からない人達、そして決して居なくなる事はないラバナスタの街の孤児達、そういった者達が蓋を蹴破って飛び出して来るからだ。
油断すると涙が溢れそうになる。パンネロは奥歯を噛み締めた。
「パンネロ!スパナ取ってくれ。」
声に振り返ると、操縦席の下に潜って操縦系統のシステムの不調を調べているヴァンが手だけ出している。
パンネロは景色に背を向けると工具箱からスパナを取ってヴァンに手渡し、そのまま操縦席に膝を抱えて座りこんだ。
ラバナスタに戻るには燃料がギリギリだった。
そんな時にシステムの不調で不時着。
たとえ直ったとしても離陸にどうしても燃料を喰う。果たして今日中に戻れるだろうか。
運悪くガス欠で砂漠に不時着でも、野宿すれば良いだけの事だ。
夜が明けたら近くの村でチョコボを調達して燃料を運んで…
そこまで考えて、パンネロは財布の中身を思い出してため息を吐いた。
バルフレアとフランから預かったシュトラールを、ちゃんとドックまで連れて帰る事が出来るのだろうか。
それよりもあれ以来行方の分からないバルフレアとフランは本当に帰って来るのだろうか。
心細くて泣きたくなって、ヴァンに声を掛けた。
「ねぇ…帰れるのかな、私達。」
本当に聞きたいのは帰られるかどうかじゃないのだけど。
「大丈夫だ。」
「本当?」
「山地は明け方に気温が上がると上昇気流が生まれる。それに乗って出来るだけ高く上るんだ。
後は少しずつ下降しながら帰る。そうすれば余裕さ。」
パンネロは驚いてヴァンを見る。
「いつの間に…」
「そりゃ、俺だって守りたい者があるからな。」
手を休めず答えるヴァンがとても頼もしく思えて、パンネロはうれしくなる。
「うん、そうだね。シュトラールはバルフレアさんとフランとの約束だもんね。」
不意にヴァンの手が止まった。
「どうしたの…?」
ヴァンは縦席の下から顔を出し、驚いて自分を見ているパンネロに気付くと、不機嫌そうにまた操縦席の下に潜ってしまった。
パンネロは驚いた。
自分でも言ったように、シュトラールはパンネロにとってバルフレアとフランが戻ってくるための約束であり、お守りだった。
(ヴァンは違うのかな?)
てっきり自分と同じだと思っていたのに。
(ヴァンの大事な物って…?)
270:ヴァン×パンネロ【2】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/01 05:10:02 rmAFztS00
パンネロは考えてみた。
ラバナスタの街で面倒を見ている子供たち、かつて旅をした仲間達…どれもヴァンにとっては大事な物に違いない。
だが、今の不機嫌さにそれらは関係ないような気もする。
考えてもどうしても分からない。ただ、パンネロはヴァンの守りた存在が、
(…私だったら良いのにな。)
そう思った。
そう思うと、さっき堪えていた涙が溢れて来て、パンネロの頬を伝って床に落ちた。
パンネロが黙り込んだので、さっきの自分の態度のせいで気分を害したのかと、ヴァンがおそるおそる操縦席の下から顔を出した。
「ヴァン…」
ヴァンは身構えた。またお小言かと思ったからだ。
「私を……もう、一人にしないでね。」
突然の言葉にヴァンはうろたえ、そして耳まで赤くなった。
「な…なんだよ、急に?パンネロらしくねーぞ?」
パンネロは頭を振る。
「ずっと続くんだと思ってたのに、でも、突然、壊れちゃうから。もうそんなの、嫌だよ。
アーシェもバッシュ小父さまもラーサー様も居るんだから、もうそんな事ないって分かってるんだけど、
それでも突然不安になるの。また…皆居なくなっちゃったらって。
私…弱虫だよ。皆言うけど違うの。しっかりなんかしてない。」
ヴァンの守りたい者は言うまでもなくパンネロだ。
パンネロを守りたい。誰よりも好きだ。そう伝えたいけど、幼なじみという距離の近さが障害になってしまう。
気持ちを告げた所で「何を言ってるの?」と笑われたら?
いや、笑われるくらいなら構わない。パンネロに距離を置かれてしまったら?
どうすれば良いか分からず、気持ちをひた隠しにしてパンネロを見ていた。
誰よりも近くに居て、ずっと見守って来たのだ。
危ない目や心細い思いはさせたくないから一生懸命航空学や地理や気象の勉強をした。
どうか気付いて欲しいと祈る様な気持ちだった。
(「一人にしないで。」てことは、パンネロも同じ気持ちでいてくれたという事で…)
そう気付いてヴァンは急に逆上せたかの様に一気に頭に血が上った。
ここの所ずっと二人きりで気持ちを抑えるのが辛くて切なくて。
そこから一気に解放されたのだ。
立ち上がって、パンネロに何か言おうとして口を開いた所で、パンネロの泣き顔が目に飛び込んで来た。
「パンネロ…」
今まで自分は何をしていたんだろう、とヴァンは腹立たしく思った。
気付いて欲しいと思ってばかりで、守りたいと思っていたパンネロの不安に気付きもしなかった。
パンネロの不安を取り除きたい。その為には何を言ってあげれば良いのだろう?
「俺…」
舌が鉛のようだ。
「俺…さ、逃げるんじゃなくて本当に空賊になりたいって思ったんだ。
あの旅で…戦いで、本当に悪いのは誰だって考えた。でも、考えれば考える程分からなくなった…」
パンネロは時折、すん、と鼻を鳴らしながら、ヴァンの話に聴き入る。
「だから、何にも…関係なしにさ、色んな…世界とか、人とか見たい。
そうすれば答えが見つかるかも…ってさ。それで…」
また言葉に詰まる。喉の奥が締め付けられるようだ。
「色々…探して、見てみたいけど、それは俺一人じゃダメなんだ。そのっ……パンネロと一緒じゃなきゃ。」
ここまでなんとか話した所でヴァンはしまった!と一人焦る。
271:ヴァン×パンネロ【3】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/01 05:12:56 rmAFztS00
パンネロの不安を取り除くどころか、
(これじゃあ男と男の友情みたいじゃないか…!)
ちゃんと言葉にしなければ。今、言わなければ…でも、焦れば焦る程何故だか息が苦しくて。
「だから……つまりっ…」
「私を一人にしない?」
言いかけたヴァンを、不意にパンネロが遮った。
「一人にしない?」
パンネロは尚も畳み掛ける。ぎゅっと唇を噛み締めて、祈る様な表情でヴァンを見つめている。
真剣な眼差しに気圧されたヴァンだが、
「しない。」
パンネロを真っすぐに見つめて答えた。
「パンネロ、俺…置いていかれた寂しさを知ってるから。だから、もし何かあってもパンネロの所に戻って来る。
飛空艇もチョコボもなくても、自分の足で這ってでも、パンネロの所に戻って来る。だから、心配せずに待ってろ。な?」
パンネロはヴァンの胸に飛び込んだ。ぎゅっとしがみついて来る。
ヴァンは心臓が口から飛び出すのではないかと思う程驚いた。
しかしパンネロがもう泣いていないと分かり、ホッとして、それからおずおずとパンネロを抱きしめた。
「…ヴァン?」
「ん?」
「そう言えば最近ケンカしてないね、私達。」
いつも些細な事で言い合いになったり、喧嘩になったりしていたのに。
でも、そんな子供みたいなじゃれあいは卒業しなくては、とヴァンが心に決めたからだ。
パンネロが気付いてくれていたんだとヴァンはうれしくなる。
「パンネロがずっと大事だ。ガキの頃よりも今の方がずっと。」
さっきはあんなに言葉に詰まっていたのに、今度は自然と口から言葉が溢れた。
「ヴァン、ずっと大人だね。小さい時よりも。」
二人は顔を見合わせ、そうして同時に大きな口を開けて笑った。
気まずさとうれしさがないまぜになって、幸せでくすぐったい。
さっきパンネロの気持ちを沈ませた張本人である夕陽まで笑っているように思える。
もう大丈夫だ、とパンネロは思う。
「ね!早く直しちゃお!」
この続きの展開にものすごく期待をしていたヴァン、あっさりと裏切られてしまう。
さっきまで泣いていたパンネロが突然元気になったのに釈然としない気持ちになったのだが、
「ああ、朝までに間に合わせないとな。」
と、強がってみせる。パンネロが微笑んで頷いた。
その笑顔にヴァンの心臓がまた跳ねる。なんだかパンネロが急にきれいに見えたからだ。
(やっぱ…大丈夫…じゃないかも。)
気持ちは通じたのだ。そうなるとつい考える事は一つで。
仮眠用のベッドがあるけど、そこはやっぱりヤバいよな…やっぱりラバナスタに戻ってから…
でも我慢出来るか自信がない…そんな不埒な事を考えていて気が付いた。
272:ヴァン×パンネロ【4】 ◆WzxIUYlVKU
11/01/01 05:14:59 rmAFztS00
(俺!風呂!入ってね~!三日も!)
さすがにこれでは今晩は無理だろうと絶望的な気分になる。
ヴァンのヨコシマな気持ちなど知るはずもないパンネロ。
ご機嫌で、ヴァンの腕からするりと抜け出すと、
「じゃあ、私、お夜食作ってくるね!」
そう言ってパタパタと駈けて行ってしまった。と、思うとひょい、と顔だけを出し、頬を赤らめて、
「ずっと…一緒だよね。」
そうしてすぐに顔を引っ込めると、足音だけを残して夕食の支度に行ってしまった。
その仕草がまた可愛かった。
無事に帰ったら一晩中抱きしめようとヴァンは心に固く誓う。
そうしてパンネロの好きな所をちゃんと言うのだ。今なら言える。いくつでも言える。
(ずっと…一緒だもんな。)
守ると決めたのに浮かれているだけじゃだめだ、と自分に言い聞かせてヴァンは再び操縦席の下に潜って作業を再開した。
まずはパンネロを無事に連れて帰ってやる事なのだ。
それでも作業をしながら、操縦席の横でナビをしてくれたり、パンネロの歌を思い出してとても幸せな気持ちになった。
もっとも、この後栄誉ある召還が待っているので彼の期待がお預けになるのはお約束なのだが。
おわり。
=================================================
※ヴァンのDFF012出演記念です。毎朝レモンスライス持たせて朝練に送り出していた弟がまさかの甲子園出場!みたいな気持ちです。本当に良かった。
※>>257シャドウが気になる…アサシンというジョブ的にも、またカオスに属しつつも、根っからの悪人ではない…みたいなストーリー的にも参戦するとおもしろそうですね。
273:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/01 14:49:28 bkc3vjuy0
t
274: 【大吉】 【891円】
11/01/01 20:44:12 Fx09HYiF0
t
275:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/04 00:29:07 l911DRXI0
>>269-272
いい話だ…と思ったらおいこらwヴァンwwなんだかんだで期待を裏切らない君が好きだ!w
毎度思いますが、ヴァンこんなに可愛らしいキャラだったなんて…!DdFF(略称って何だろ?)
ヴァン参戦おめでとう。甲子園のたとえが分かり易すぎてw
今年も沢山のSSが読めますように。
276:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/05 00:03:34 v/7oyPn80
277:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/05 22:29:10 ub+QhOF+0
あけおめ&乙です
俺も書きたいとは思うけど、プロット立てるたびに原作の面影がなくなってしまう
○○の200年後とか需要あるんだろうか
278:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/06 00:14:51 ifJkgFOl0
二次創作は、あくまでも原作の延長上なので“原作をどう活かすか”がカギじゃないかなと
(少なくとも自分は)考えてます。
まず二次創作を求めるのが、出典となるゲーム本作を相当以上に好んでいる層である事。
そこを考えると作品の「需要」についてもある程度の答えが見えてくると思います。
なので手っ取り早い方法としては、本編中のイベントの隙間を縫う(補完する)という作品が
(読む・書く双方にとって)分かり易さもあって取っつきやすいのではないかなと思います。
拡大解釈かも知れませんが、二次創作も「ゲームの楽しみ方」の1つなんじゃないでしょうか。
(やり込み、制限などのプレイスタイルがある様に。文字を使ってゲーム世界を楽しんでる…
と言えばいいのかな)
仮に原作から数世代後の世界を舞台にする場合、作品の何にテーマを持たせるかによって
需要は変化するんじゃないかなと思います。ゲーム本編から時間が経つにつれ、どうしても
原作の要素は薄くなりますから、テーマを軸として作らないとなかなか読み手を引き込むのは
難しいと思います。
たとえば>>277で言えば、作品を見た読み手から「なぜ“200年後”を話の舞台にする必要がある
のか」が問われます。単にオリジナリティを持たせたいから、と言う理由で安易に時代設定した
だけと言うなら、多くの場合、そうと分かった時点で作品への興味は薄れてしまうのではないで
しょうか?(これは主観ですが)
ただ、その「200年」というところにカラクリがあるなら別です。(転生や封印といった要素が連想し
やすいですが、これも使い古されているという感は否めません。また、作品によってはその概念すら
馴染まない場合もあります)
作りたいという気持ちを持つって事は、方向性はどうあれその「ゲーム(原作)が好き」ってのは
間違いないでしょうから、“自分がなぜそのゲームが好きなのか?”ってあたりを突き詰めていくと
自然と書きたい話が組み上がったりするんじゃないかな?と思ってみたりみなかったり。
※こう書いてますが、個人的には二次創作=考察の延長という観点にいるので、
たとえばキャラクター面の追求を主とした作品などは、この限りじゃないと思います。
その辺については言及できないので…(他力本願)。
書きたいと思う気持ちが先に立つと言うより、そのゲームが好きだから書くという手段に出ちゃった、
その結果がここなんだと思いますw
過去ログ含め、どれも作者の好きが作品からはみ出てると言うか、滲み出てるというか。
…と、保守がてらたまには粋がって熱く語ってみるのも良いかなと思ったら長かったwすんません。
279:名前が無い@ただの名無しのようだ
11/01/06 17:23:05 dj1H6xsc0
>プロット立てるたびに原作の面影がなくなってしまう。
ここの読者さんは原作とそのキャラクター達が好きで、その後(と、言ってもエンディング後からそう離れていない期間内)や補完が読みたい人が多いのでは?と、いう印象です。
あと、キャラクターAは好きだけどキャラクターBは嫌い、とかそういった人でも楽しめるようなバランス感覚も必要ではと思います。
ですので、>>278氏が言われるように「なぜ“200年後”を話の舞台にする必要があるのか」がポイントになるのではないでしょうか?
どの作品の200年後か、どういった登場人物の話なんでしょう?
個人的にちょっと気になります。