10/01/11 01:35:59 OYXbovA10
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
※sage推奨。
※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
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前スレ
FFの恋する小説スレPart9
スレリンク(ff板)
記述の資料、関連スレ等は>>2-5にあるんじゃないかと思います。
2:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/11 01:37:47 OYXbovA10
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
スレリンク(ff板)
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart2
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart3
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart4
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart5
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart6
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart7
スレリンク(ff板)
FFの恋する小説スレPart8
スレリンク(ff板)
【FF・DQ板内文章系スレ】
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら15泊目
スレリンク(ff板)
3:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/11 01:39:03 OYXbovA10
【お約束】
※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。
初心者の館別館 URLリンク(m-ragon.cool.ne.jp)
◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ)
FFDQ板の官能小説の取扱い URLリンク(yotsuba.saiin.net)
記述の一般的な決まり URLリンク(yotsuba.saiin.net)
◇関連保管サイト
FF・DQ千一夜 URLリンク(www3.to)
◇関連スレ
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の3
スレリンク(ff板)
◇21禁板
FFシリーズ総合エロパロスレ 6
yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1258013531/
FFDQカッコイイ男キャラコンテスト~小説専用板~
jbbs.livedoor.jp/game//3012/
【補足】
トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
どうしても議論や研鑽したい方は URLリンク(love6.2ch.net)
挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ URLリンク(ponta.s19.xrea.com)
4:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/11 01:39:54 OYXbovA10
【参考】
FFDQ板での設定
URLリンク(schiphol.2ch.net)
1回の書き込み容量上限:3072バイト(=1500文字程度?)
1回の書き込み行数上限:60行
名前欄の文字数上限 :24文字
書き込み間隔 :20秒以上※
(書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
連続投稿規制 :5回まで※
(板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
1スレの容量制限 :512kbまで※
(500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)
5:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/11 01:42:15 OYXbovA10
このスレでも沢山のSSが読めますように。
6:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/11 16:42:11 9Vd3pU7d0
>>1
乙!!!
7:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/12 18:32:08 CK1VbNac0
乙
8:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/14 21:10:32 tqt5X/eX0
いちおつ
9:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/17 13:19:13 66tlQOtV0
乙ります
10:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/19 02:42:00 Ij0L1OfV0
では、ちょいと保守をば。
11:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/21 02:31:24 VWSWtS9g0
ほす
12:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/23 01:35:41 P7WeeFLF0
ほ
13:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/24 23:57:59 vOPbkUdX0
保守。
13とかも待ってる。
14:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/27 00:30:59 Cwhx00N40
ぼ
15:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/29 21:07:23 u0Lg8lUh0
ま
16:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/01/31 22:03:48 fA5mfPDYO
り
17:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/01 20:42:44 jN2V61GZ0
も
18:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/02 19:12:06 c9SKVGrQ0
前スレの続きです。
19:読書尚友 1/2
10/02/02 19:14:43 c9SKVGrQ0
ダゲレオの水が、静かに本を守っている。
決して本を腐らせず、痛めることもない不思議な水。
書架に眠る数々の本。あるものは精緻な装丁に彩られ、
またあるものは冒険の炎に炙られた跡を残す。
肉筆による写本もあれば、細やかな銅版や石版画に満ちた本もある。
一葉一葉の版画は、それ自体がたっぷりと物語を綴り、紐解く。
クリスタルの伝承。失われた技術の足跡。町の人々の歌声。
様々な事柄が、ダゲレオに記録されていた。
それは世界の記憶であり、知恵であった。
ダゲレオの重厚な本棚に、優しい灯りが照り返す。
その元に立つ、じたばたした二つの人影。
「また呼び出されたクポ! ぷふぇっ!」
「モグオは大変クポ」
「アレクサンドリアが大騒ぎで、何度も何度も呼び出されるクポー」
「即位は大切な事クポ。またここに、新しい歴史書が増えるクポ」
「モゲレオはモゲレオで、仕事があるクポね……」
モゲレオは本当に嬉しそうに、本の甘い香りを吸い込む。
そして顎に手を当て、フフフって感じで呟いた。
「ジタンがずっとお城にいたから、もしやと思ったクポ」
「また色々戦ってるクポよ。だから呼び出されるクポ!!」
モグオはまた、じたばたクポクポしていた。全力でしていた。
「ジタンなら大丈夫クポ。きっと無事にアレクサンドリアに新女王が立つクポ」
20:読書尚友 2/2
10/02/02 19:15:43 c9SKVGrQ0
ふと、モゲレオが首を傾げ、モグオのふかふかな肩に触れる。
「お姫様はどうしてるクポ?」
「ガーネット姫のダガー姫のセーラ姫は、ここにもっと本を増やしたいクポ」
モゲレオが珍しく、大きなポンポンを振り回して叫んだ。
「本を増やすクポ?!」
「そのお知らせに来たクポ。物語はたくさん、たくさん生まれるからクポ」
「なるほどクポ。皆が物語を持ってるからクポね」
ガーネット姫は舞台を愛していた。
てか、舞台の中の人とかと一緒に冒険もした。
めでたしめでたしのその後に、日々は続き、記録は綴られ続けたのだ。
多分、その後の記録はしっぽのある舞台の人込みで。
「工学や医学の本も増やしたいみたいクポ」
「クポ?」
「アレクサンドリアの図書も充実させたいみたいクポ」
「いい女王様になるクポ。ダゲレオは歓迎するクポ!」
過去に実在したアレクサンドリア。そこに大図書館があった。
そこにあったものは、国家を挙げた知識の集積。
今日も産声を上げるであろう、新しい本。
あなたが持つその物語を、モーグリ達はいつでも待っている。
おわるよ
21:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/03 01:28:41 MdCRzUEu0
500kbで書き込み弾かれるんですよね…。
>>19-20
GJ! …んで、そのモーグリのボンボン、さ…さわりたい…!
相変わらず雰囲気に合った言葉の選び方と並べ方が麗しい文章なのに
くすりとさせる辺りはさすがというか。…とにかくそのボンボン触らせry
あたかも目の前にいるような、モーグリの可愛らしさだけでなく質感まで伝わる文章だけにボンボン触ry
(すいません感想がオカシイですw)
よし、モーグリ達に混じってこちらも新作待ちsage。
22:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/06 17:57:26 0I38TFtC0
ほ
23:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:36:20 GIqbBKw80
FFTA2+FFナンバリングシリーズ小説
『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第2回目です
(あらすじ)クリア後のお話。アデルはルッソに会いたくて、異世界に旅立つ決意を固めたのでした
前回の書き込みからえらい待たせてしまってスイマセン
実を言うともう4話分ぐらい溜まってるんですが。
いっそHPのほう見てもらったほうが早いかもしれない(笑)
とりあえず前スレ第1話・プロローグの続きです。
----------------------------------------------------
「ほんとうに、大丈夫クポ~?」
ハーディが心配そうに、見送りに来てくれた。
「大丈夫、大丈夫。あたしを誰だと思ってんのよ?」
ホントは、ちょっぴり不安だったけど。
何も言わず、ただ送り出してくれたシドに感謝しながら。
さりげなくハーディに見送らせてくれた優しさを噛み締めていた。
「ククポ…ルッソに会ったら、よろしく伝えて欲しいクポ!」
「うん、いいわよ。なんて?」
「きっとまた、一緒に冒険しようクポ!!」
「分かった、きっと伝えるわ。…そうそう、何かお土産でも持っていってやろうかしら?」
「それなら、これなんかどうクポ?」
ハーディは懐から小さな木の実のようなものを取り出した。
「なぁに、それ?」
あたしは見慣れない木の実に目を丸くした。
「これは、『クポの実』だクポ!モーグリの大好物で、貴重なものだクポ!」
そう言って、目を輝かせるハーディ。
彼には悪いけど、あいつは喜びそうにないなあ。
だって、モーグリの好物だもんね。
あたしは苦笑して、首を振った。
「そんな大事なもの、あいつにあげるの勿体無いわよ。それより、ハーディ。楽譜の写しとかどうかしら」
「クポ?そんなのでよければ、いくらでもあるクポ!」
それは、ハーディが、あいつとの別れのときに弾いた、あの曲。
楽譜の贈り物っていうのも、なんだかロマンチックでいいわよね。
あたしはハーディから、楽譜の写しを受け取り、ポーチにしまいこんだ。
うん、あいつと会ったら…一緒にこの曲を歌おう。
そう心に決めると、ハーディにも別れを告げる。
「ありがと、ハーディ。じゃあ、行ってくるわ」
「気をつけるクポ~~~!絶対、絶対戻ってくるクポ!ルッソも良ければ、また来て欲しいクポ~~~」
ひらひらと手を振り、あたしはラザフォードさんの家へ向かった。
24:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:38:28 GIqbBKw80
「…やあ、来たね」
「お久しぶり。元気そうで何よりだわ」
ラザフォードさんは、相変わらずの調子だった。
この人、ホント不死身なんじゃないの?
「で、グリモアは?」
「ここにある。決心はついたのだね」
「でなきゃ、ここへは来ていないわよ」
ラザフォードさんは優しく微笑むと、グリモアをあたしに手渡してくれた。
懐かしい感触。
あいつの持ってた手帳と、本当にそっくりだ。
「ねえ、これ何処で手に入れたの?興味あるんだけど」
「…ある日突然、私の蔵書に加わっていたのだよ。
全ての蔵書について把握していたつもりだったが…いやはや、不思議な事もあるものだ」
「さすが、グリモアね」
あたしはその偶然に思わず感謝した。
そして、否応なしに高まる緊張。
あたし、これから異世界に旅立つんだ…
ドキドキしてきた。
なんだろ。
ヌーキアと戦った時だって、こんな気持ちにはならなかった。
やっぱり、あいつがいたから?
…なんて、あたしらしくないわよね。
大丈夫。
あたしは独りじゃないもの。
旅立ちは独りでも、帰るべき場所がある。
そして、会いたい人がいる。
「…準備はいいかね?」
ラザフォードさんが、あたしの決心を見抜いたように呟く。
あたしは緊張を押し殺すため、多少強がりを込めて切り返した。
「ええ、勿論。
…何も心配は要らないわ。何たって、あたしは『優れし者』なんだから」
そして、そんなあたしに最後の言葉。
「そう。君は『優れし者』。だが、グリモアにとって大事なのは何か…分かるね?」
あたしは、あいつのことを思い出した。
目を瞑り、あのときの言葉を思い出し、見開く。
そして笑顔でこう答えた。
「ええ。物事を楽しむ気持ちでしょ?大丈夫よ」
ラザフォードさんはコクリとうなずき、厳かに締めくくった。
「忘れてはいけない。大切な事は、力ではなく、心なのだということを」
それが、あたしがイヴァリースで聞いた最後の言葉だった。
25:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:39:39 GIqbBKw80
****************************************************************************
(物語の空白を埋めるもの…その名は、アデル)
あたしは手帳…グリモアにそう書き込んだ。
すると、グリモアは途端に不思議な光を湛え…
―――あたしは、飛んだ。
****************************************************************************
…地面がある。
地に足が着いた感触。その感触に安心したあたしは、
ずっと瞑っていた目をようやくのことで開いた。
いつの間にかグリモアの光は消え、あたしの足に引っ掛けてある手帳入れにすっぽりと収まっていた。
そして、あたしは周りを見渡して――愕然とした。
気がつくと、あたしはどこかの孤島にいた。
ざざぁ… ざざぁ…
「ここ…どこ?」
ちょっと驚きだった。
あいつ、『町育ち』って言ってたし。
こんな孤島のどっかにいるなんてこと…ないわよね。
もしかしてグリモア、あたしをワケわかんないとこに飛ばしたんじゃないの?
ちょっとだけ、焦る。
でも、そんな気はちょっとしてた。
都合よくあいつの家に辿り着ける気は、あまりなかった。
まあ、それにしたって孤島は予想外だけど。
ぐるっと見渡した感じ、多分直径にして50Kmもないわね、この島。
かなり開けてて、山なんて殆ど見当たらない。湿地と草原とちょっとの森が広がる平坦な島だ。
「まいったなぁ。イカダでも作ろうかしら?…結構、大変そう。
最低限、人が居るところに出たかったわね」
あたしは軽く愚痴りながらも呑気に構えていたが、よくよく考えたら結構ピンチかも。
まあ、何とかなるだろうけど。なんたって、あたしは『優れし者』なんだから。
そうそう命の危機なんてものに晒されても動じたりはしない。
不安と、不思議な安心感が共存する中、あたしは人の声を聞きつけた。
『キャット・アデル』の名は伊達じゃない。
『優れし者』の聴覚は、並の人間の数倍はあるのだ。
「誰かしら…」
26:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:40:23 GIqbBKw80
あたしはそうっと聞き耳を立てる。
どうやら、何かの相談をしているようだ。
「あっちかな」
あたしは声のするほうへ向かった。
森を抜けた奥、開けた湿地の真ん中あたりに、その人たちはいた。
3人の男女。
一人は茶髪のボサボサ頭で碧眼。青い服に赤いマント。
一人はピンク色の髪にエメラルドグリーンの瞳。薄いオレンジのドレス。
一人は青紫色の髪に、同じくエメラルドグリーンの瞳。青のジャケット。
会話内容から察するに、彼らも遭難者(?)のようだ。
「ねえ、テントで休まない?さすがに、闇雲に歩いていても体力の消耗になるだけだし」
「レナの言うとおりだぜ、バッツ。どうやら孤島に飛ばされたみたいだし、せめてイカダでも作って大陸を目指さないと」
「しょうがないな…じゃあ、今夜はあっちの森で野宿するか。ここのモンスターがテントを落としてくれたし…」
レナと呼ばれた女性が憔悴した様子で、バッツと呼ばれた男性に休息を取るよう提案していたらしい。
どうも、敵意もなさそうだし、同じ遭難者なら何か情報を得られるかもしれない。
あたしはそう踏んで、3人の男女に近づく事にした。
「じゃあ、ファリスは火を熾しておいてくれ。おれは、テントの用意をするから。レナは、休んでるといい」
「ごめんね、慣れない土地のせいかちょっと気分が優れなくて」
「気にするな。力仕事はバッツに任せときゃいいんだから」
「ひでぇなぁ。ファリスだって力強いんだから、後で手伝ってくれよ?」
「お前なあ、仮にも女相手に言う台詞か?それ」
「都合のいいときだけ女ぶるなよ!…ったく!」
「ふふふ、姉さんったら。バッツも、ほんとに仲いいなぁ」
『どこが!?』
そんなやり取りを、あたしは傍で見ながらクスクスと笑っていた。
なんだろう、この空気。すごい楽しい。和むなあ。
特にあのバッツって人、なんかルッソと似たような感じがする。
27:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:41:56 GIqbBKw80
「!誰だ?」
あたしの笑い声にバッツと呼ばれた男性が気づいたのか、警戒する。
「あ、すみません。怪しい者じゃないですよ」
あたしはすんなりと物陰から出て行く。
「…女の子?何でこんなところに」
バッツと呼ばれた男性は、あたしを怪訝な目で見た。
「あたし、遭難したんです。多分」
「多分~?」
バッツと呼ばれた男性は、更に不審な目であたしを見る。
だが、敵意はない。そう判断したのか、やや警戒心は薄れているようだ。
「あなた、何処から?」
レナと呼ばれた女性はあたしに向かって聞いた。
この人は、なんだか物腰が柔らかくて、安心するなあ。
まるでどこかのお姫様みたいだ。
「あたし、イヴァリースから来たんです。知ってます?イヴァリース」
「知らねえな…この世界の地名なのか?」
ファリスと呼ばれた女性(?)が、あたしに尋ねた。
「いえ、多分違います。ここ、きっとあたしの世界じゃないから」
「君も異世界から、ここへ?」
バッツと呼ばれた男性はあたしに尋ねた。
「え、あなたもですか?」
互いに不思議そうな顔で見詰め合った。
「取り敢えず、落ち着いて話そうぜ。別に、敵じゃないみたいだしな」
ファリスと呼ばれた女性(?)がそう言うと、バッツもレナも同意した。
「そうだな。じゃ、まずは自己紹介からするか」
そうして、互いの自己紹介が始まった。
「おれはバッツ。元々はこの世界の住人じゃないんだけど、ガラフ…仲間を助けるために
こっちの世界に飛んできた」
「私はレナ。バッツと同じ理由でこちらの世界に来たの。よろしくね」
「おれはファリスだ。レナと同じく。よろしくな」
「よろしく、皆さん。私はアデル。イヴァリースから、…友達に会いに異世界に来ました」
『よろしく、アデル』
バッツ、レナ、ファリスの声が揃う。
28:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:42:59 GIqbBKw80
「で、アデルの友達はこの世界の何処にいるか分かってるのか?」
バッツがあたしに尋ねる。
「いえ、残念ながら。そもそも、この世界で正しいのかどうかも分かりませんけど」
あたしは正直に答えた。そう。大体、この世界にホントにルッソがいるのかしら?
まず、そこが怪しい気がする。なんか、この人たちの雰囲気…
普通にあたしたちと同じ世界の空気を纏ってる。
「随分、大雑把なワープ装置を使ったんだなあ」
ファリスが苦笑するように言った。
「わーぷそうち?いえ、グリモアっていう…魔法の本なんですけど」
あたしは反応を試してみた。
『わーぷそうち』って言葉の意味は良く分からないけど
魔法という言葉が通じるなら、きっと同じ世界の人なのだろう。
「グリモア…そんな魔法の本があったのね」
レナが反応した。
どうも、魔法に対しては自然な反応を示すようだ。
こりゃ、ミスったわね。
「ああ…皆さん、普通に魔法の存在する世界からこの異世界に?」
「?どういう意味?」
バッツが怪訝な顔をする。
さも当たり前だろう、というような感じだ。
「ええと…あたしの友達、魔法のない世界からあたし達の世界…イヴァリースに、
グリモアの力で飛んできたんです。そこで、色々あって…あたし、そいつに会いたくて
あたしたちの世界からあいつの世界に飛ぼうとして、このグリモア…魔法書を使ったんです」
こんな説明で大丈夫かしら?
一抹の不安を覚えながら、あたしは説明した。
29:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:43:58 GIqbBKw80
「なるほどなー。おれたちと一緒じゃないか」
バッツは、そう言って納得した。
「え?」
あたしは、意味を図りかねて尋ねてしまった。
「だって、そうだろ?俺たちはガラフ…仲間を助けるために異世界に来た。君は、友達に会いたくて
異世界に来た。同じようなものだなって」
「…そうですね」
あたしは、なんとなく嬉しかった。
なんだろう。
すごく当たり前のことを、他人に『立場が同じ』と言われただけなのに。
あたしは、やっぱり。
どこかでこういう『人との触れ合い』が少なかったんだろうなあ。
そして、どこかルッソと似ているバッツを見ると、なんだか安心した。
この人のそばに居ると、ルッソと会えないかもってちょっと思ってた自分が
どこかに飛んでいったような気分になった。
いつか会える。きっと会えるって気持ちになった。
30:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:44:47 GIqbBKw80
「それで、アデルの友達は…魔法のない世界にいるってわけだな」
「ええ」
「じゃあ、少なくともこの世界は違う。おれたちは、邪悪な魔道士を倒すため…
独りで戦おうとしているガラフを助けに来たんだ」
「魔道士…」
あたしはふと、ラザフォードさんを思い出した。
しかし、邪悪な、ってところで全然違うわね、と思った。
「暗黒魔道士エクスデス」
レナが呟いた。
「私たちのお父様の仇よ」
優しそうに見えたその目は、強い光を湛えていた。
怒りと、そして憎しみ。
「ああ、ヤツは絶対に許せない」
ファリスも同じように、強く決心していた。
「…色々あったんですね」
あたしは、その気持ちを推し量るように呟く。
「まあ、アデルとは関係ない事だからさ。あんまり気にしないでくれ」
バッツが場を和ませようとそう言った。
「そうね。ごめんなさい」「ああ、悪い」
レナもファリスも、そんなつもりはなかったというように謝る。
ああ。
この人たち、本当に。
あいつと一緒に居るときと同じだ。
この空気。
あたしは居心地のいい場所を、また一つ見つけられたのかも知れない。
そう思うと、自然と口が動いた。
31:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:46:37 GIqbBKw80
「よかったら、あたし少しは協力しますよ」
『ええっ!?』
「だって、今みなさんはガラフさんが抜けて…4人の戦力が3人に減っちゃってるんでしょう?
ガラフさんと合流するまででも、あたしが力になれるかもしれないですし」
「で、でも君には関係のないことだしさ。危険な目に遭わせる訳には」
バッツがそう言って遠慮するが、あたしは食い下がった。
「だーいじょうぶ!なんたって、あたし…イヴァリースでは名の知れたハンターなんですから!」
バッツが困ったようにレナとファリスに向き合った。
レナ、ファリスが口々に答えた。
「いいんじゃないかしら。本当に危なければバッツが守ってあげれば」
「だよな、頑張れよ、バッツ!」
…何故か、若干の怒気をはらんで。
「おいおい!」
クスクスと笑うあたし。
ああ、この2人はきっとバッツのことが好きなんだな。お互い。
あたしが入った事で、なんかそういうややこしい事になってるみたいだ。
面白いなあ。
「じゃあ、よろしくお願いしますね!ナイトのバッツさん」
あたしはワザと悪戯っぽく腕を絡ませてみた。
レナとファリスの反応が予想通りすぎて、笑えた。
「しょうがないなあ…」
バッツは照れつつ苦笑し、頭をかいた。
32:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/02/07 16:50:39 GIqbBKw80
はい、というわけで今回はここまでです。
バッツらとの合流は『第2世界冒頭』にしました。
前回、古代図書館って予想してくれてた人が居ましたが
残念ながらその辺の発想はなかったですw
一応、HPのほうでは結構話が進んじゃってますので今後の展開予想とか要望は
最新版以降に反映されるかも知れません。
そちらで読みたい方は以下リンクへどうぞ(随時更新です)
URLリンク(www8.plala.or.jp)
33:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/10 12:06:05 cOtRQgqz0
ほ
34:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/14 00:30:05 RXkNRQog0
ぼ
35:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/16 22:46:20 AxIu4qmV0
ま
36:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/18 19:31:11 X9fJ3zgb0
り
37:1.名前が無い@文字数が足りないようだ
10/02/19 23:56:39 3jE/tjCT0
※ご注意※
以下は時機外れも甚だしいネタです。保守のお供に。
(真面目な文章ばかり書いていると唐突にこういう衝動に駆られる)
1.慣れないとは言え、作者はギャグを書いている(つもり)。
2.文中で取り扱うゲームがまちまちですが、その全てが大好きである。 ←ここ超重要
3.主人公はリーブとケット・シー(作者にとってもはや既定値)
以上、了解できる方のみ流し読み推奨。
読んだ後はログと共に水に流してやって下さいw
----------
既にクリアしている同僚から「面白いですよ」と勧められたのですが、時期的な忙しさもあって手が
回りません。とは言っても興味が無いわけではないので、こういう場合は諺にもある通り“猫の手を
借りて”みようと思います。
……と言うわけで、ケット・シーがドラクエ9を始めたようです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ところがプレイ開始後5分と経たないうちに、ケット・シーが言いました。
『大変や! 名前が決まらへん!!』
「それは困りましたね。ですが悩む必要はありません。自分の名前を入れればいいですよ」
ドラクエには予め決められた主人公の名前がありません。これはシリーズを通して、プレイヤーが
物語の主人公を演じるという“RPG”を一貫している特徴でもあります。
『それが入らへんのや!』
「どうしてです?」カーソルを動かして決定ボタンを押す、あるいはペンでタッチするだけの操作ですから、
ケット・シーの動作範囲だとは確信があるのですが、どうやら彼が言いたいのは違う事のようです。
『5文字までしか入らへんねん。“ケット・シー”だと1文字足らんのや!!』
そう言われてふと、濁音符や半濁符すら1文字にカウントされていた頃を懐かしく思い出しました。
もちろん、誤ってこんなことを口走ろうものなら、間違いなく年寄り扱いされるので口が裂けても言え
ませんけどね。ええ、シリーズ1作目発売当時から現役ですよ私。まだ当時は神羅カンパニーが
無かった時代ですからね。
「“ケットシー”なら丁度5文字です」
『そらアカン、ケットとシーの間の“・”は重要なんや』
こうして出した代案はあっさり却下されてしまいました。
「……分かりました、好きにして下さい」
この先が思いやられます。
ただ、まあ。ケット・シーの主張する“・”の重要性については、何となく同意できてしまう自分が少し
悲しいような気がしてきます。こういうの、『ひいき目』と言うんでしょうね。「ケットシー」と表記されて
いるのを見ると、心なしか切なくなります。
38:2.髪の毛が無い@配慮が足りないようだ
10/02/20 00:02:40 WE3Nfugy0
その後2時間ほどは職務に集中する事ができたんですが、またケット・シーが機械を持ってやって
来ました。
『や~っと主人公、決まってん』
どうやら彼は、あれから2時間ほど悩んでいた様です。やれやれと吐きたくなった溜息を呑み込んで、
話を聞いてみることにしました(そうしないと、後が厄介ですからね)。
「それで? 名前はどうしたんです?」
『ボクの名前やと文字数足らんかったから』そう言って笑顔で『“リーブ”にしといたで~。エライ物騒な
名前やけど、人生どっかで妥協せなアカン時もあるっちゅー事や』
「……物騒……ですか」
名前に物騒も何もあるのかと思いますが、「主人公に自分の名前」を付けるという点で言えば、基本に
忠実だったので敢えて追求する事はしませんでした(そうでもしないと、後が長そうですからね)。
にしても、主人公の名前を決めるのに2時間と言うのは些か長すぎる気がしたんです。こちらの心中を
察してくれた様子で、ケット・シーは画面を見せて嬉しそうに説明を始めてくれました。
『今回な、決めるんは名前だけと違うねん。背格好や髪型、表情もプレイヤーの意向が反映される様に
なっとるねん』
そう言ってなぜか自慢げに画面を向けると、並んだ2枚のパネル上側には、主人公の全身像が映し出
されています。
性別を選べたり、質問から性格が設定できたりというシステムは過去にもありましたけど、今はここまで
できるんですねぇ、と思わず感心したりしたんですが。
「……ところでケット・シー」
『ん?』
「敢えてこの髪型を選んだ理由を教えて頂けますか?」
しかもご丁寧に、わざわざ私に見せに来たのですから、それがどういう意図なのか推し量るまでも
ありません。
『いやぁ。髪の毛の色とか設定するの面倒やったから』
「…………」
『ほ、ホラ! この主人公の師匠っつー人と同じ髪型にしたんや! 取説からストーリーを考慮したんやって!』
主人公の師匠の名前はイザヤール、確かに彼は取扱説明書の最初のページに登場しています。
ゲームの序盤で聞ける周囲の話によると「生真面目な性格」との事です。上司(?)からの信頼も厚く、
実力もある頼もしい師匠という役回りです。
しかし髪の毛がありません、一本たりとも。天は二物を与えずと言いますが、天に住まう天使にも適用
されるものなのでしょうか。
「一応断っておきますけど、レベルが21になったからと言って、私のところに報告しに来なくても結構です
からね」
『ははは、そら考えすぎやて……』
とぼとぼと部屋を出て行くケット・シーの背中が少し寂しそうに見えたのは、気のせいではないはずです。
個人の名誉のために念のため申し上げますが、決して私が操作している訳ではありませんよ?
ケット・シーが自律的にプレイしてるんです。
39:3.板違い通信~天使とタンスだぜ?(1)
10/02/20 00:15:26 WE3Nfugy0
『リーブはん! リーブはん!!』
猫の手も借りたいほどの忙しさ―とは言え、諺どおり実際に猫の手を借りても不効率なだけなの
ではないだろうか?―今さらながら、そんな結論を見出して堪えきれずついに溜息を吐いて振り返る
と、ケット・シーが何かを言いたそうにこちらををじっと見つめている。私が主人公なら、ここは間違いなく
「仲間にしない」と選択したくなる場面だ。
どうも気乗りしないんですが、声を掛けないとずっとこの状態が続くと思いますので、とりあえず声を
掛けておきます。ゲームで言うところのフラグ処理という訳ではありませんが、放っておいても「そんな
ひどい」の無限ループよりたちが悪い事は分かっていますから。
「……どうしました?」
『リーブはん。もしかしてお腹痛いんと違うか?』
もちろん質問の意味は理解できます。ですが、意図が理解できません。
「お陰様で至って健康です」
意図どころか、脈絡が全くありません。
『そうですか……。ならエエんですわ』
少し冷たく当たりすぎたでしょうか? 目に見えて落ち込むケット・シーが可哀想になってしまって、
慌てて彼を呼び止めます。
「ところで今、どの辺まで進んだんです? 見せてもらっていいですか?」
そう言って画面を見せてもらったのですが、ステータス画面を目にした途端、口にした質問とは別の
ところが気になってしまいました。
「……主人公以外は全員、魔法使いなんですか?」
一般的には主人公以外を、直接攻撃の要となる戦士系(戦士・武闘家・盗賊)、回復を担う僧侶、間接
攻撃・補助役の魔法使いという編成にするのがバランスとしては丁度良いとされている気もしますが。
いえ、昔やったゲームでの話ですけどね。
40:3.板違い通信~天使とタンスだぜ?(2)
10/02/20 00:25:18 WE3Nfugy0
魔法使いは全体攻撃など便利な反面、体力的な不安もありますので編成が魔法使い一辺倒というのは
バランスが悪いでしょう。何らかの制限を設けているのなら分かりますが、そうではないはずです。
『せや、全員サイドワインダー装備や! これ作るん苦労し……』
「We cannot authorize a retreat. Intercept them.」
ここが敢えて英語なのは、タイトルから察してください。サイドワインダーと聞くとまったく別の、それこそ
物騒なあれを思い浮かべるのは仕方が無いんです。
『オイオイ、どこの美声やと思たら。マトモな事しか言わんのも張り合いあらへんなぁ』
「……ケット・シー。無駄口を叩く前にゲームを進めなさい」
『やっぱアレか? “良ェ整髪料”やってるせいなんやろか』
―注意、冷たい視線を浴びている。―
「ここまで言っておいて何ですけど、スレというより板違いですよね」
『(ネタとして)はなっから場違いや!』
「機体の愛称が猫でも良いが、コイツを後ろに乗っけて飛ぶのは勘弁だ」とは、シドの弁。それは私も
同感です。ケット・シーを乗せるぐらいなら、後部座席には誰もいなくていいと思います。誰ですか猫耳
戦闘機って言った人? あれはむしろ七面鳥です。
わざわざ雄猫と愛称を付けるより、私ならケット・シーを飛ばせる仕様にしたいところですけどね。ミサ
イルなんて物騒な代物は持てないので、きっと平和的に全面戦争ができると思います。
そうですね、ここはひとつ魔術師編成で手を打つとしましょう。ただし、口が裂けても「天使とダンス」な
んて言わない方が無難です。なにせ本当に天使と踊っちゃった人がいますからね。え? 興味ないです
か、そうですか。
バレット 「なんだかんだ言ってもアバランチって憎めない奴らだよな」
ケット・シー 「お前が言うな」
フレディ 「そうだな、褒められると照れて帰りづらくなっちゃうもんな!」
ケット・シー 「アンタは帰(投)れ!」
41:4.スレ違い通信~それは女神の贈り物
10/02/20 00:36:09 WE3Nfugy0
お陰様でここ数日の間は仕事が大変捗っています。が、ケット・シーがゲームの進行具合を逐一
報告に来るものですから、些か疲労というのがありまして。彼の話をボタン連打で読み飛ばせたら
どれほど負担が減ることでしょう。
しかし今日のケット・シーは機嫌が悪い様子です。進行上やむを得ないので声は掛けますが、
気乗りがしないのは変わりません。おかしいですね、昔はケット・シーこんなに鬱陶しくなかったん
ですが。中に不具合でもあったのでしょうか?
「どうしました?」
『……このトカゲ、なんやエライ腹立つねん。トカゲのくせに』
そう答えるケット・シーからは、トカゲに対する明らかな敵意が感じられます。
「そうは言っても、あなたはぬいぐるみなんですけどね」
『せやかてボク、お腹痛ないで?』
またお腹の話題ですか? どうにも話の意図が掴めないのですが。
「そもそも、ぬいぐるみが腹痛を起こす要因がありませんよ」言いかけて思い当たりました。もしかして
ケット・シー、私に隠れてコスモキャニオンで本当に夕ご飯を食べましたね? メンテナンス大変なん
ですから、あまり変な行動はしないでください。
「……っと、そんなことより前回からどうしてお腹に拘るんです?」
ケット・シーが言うには。
前回は拾い食いしたお人形が実体化。今回は拾い食いしたトカゲが巨大化してさらに関西弁を
しゃべり出すというストーリーなのだそうで。
「それが腹痛と何か関係……」
『拾い食いしたのは落ちてる果物だったらしいで? 輝く果実』
それはまさに“命はぐくむ 女神の贈り物”。
「いざ語り継がん、君の犠牲……」
『ちょちょ待って~な! 勝手にボクを亡き者にせんといて下さい』
「こうでもしないと、落ち着かないでしょう?」
と、言うわけで話のオチがつきそうにないので、この辺で。
……続きはありませんよ。道に迷った訳じゃありません、血迷っただけです。
ところでインスパイア能力の正体が、拾い食いして食中りしたショックで身についたものだったりしたら、
それはそれで切ない話ですよね。
<終わり>
----------
・中の人ネタまである始末。(今さらですがDQ1のCMが、リーブの中の人だった事を知って驚いたw)
・お粗末様でしたw
42:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/20 21:20:02 mcz+biw70
乙!
43:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/22 18:53:10 fZskUxyV0
GJ!
44:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/25 20:31:27 kUOBILNp0
乙!
45:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/02/27 16:25:45 U+0MYkeH0
昔ここで書いてたことを思い出した
相変わらず平均レベル高いな
46:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/03 22:10:33 8XqQFNvI0
>>45
いつかまた書いてください
待ってます
47:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/05 21:29:54 ++KJlA0d0
ほ
48:月水
10/03/05 22:58:26 3vqCpdRm0
※全三回構成です。
※舞台はFF7。
時間軸はBC終了時の暗殺事件のその後の“大”捏造話です。
―――――
『Tomorrow never knows.』(1‐3)
朧げな意識の中で、担がれた後
やや乱暴に狭い場所に投げ込まれたのが解った。
暗闇が動き出して、暫く揺られ続けている。
麻酔で痺れた身体は動きが極端に制限され、腕を上げる事すら難しい。
隣からくぐもった声が聞こえた。
ああ、そうだ。
私は一人じゃない。
やっと巡り逢えた家族と一緒にいた。
そして、同じように横たわっている。
私達はつい先程“死んだ”。
その“死体”を何処かに棄てる為に車に乗せられた。
眼を閉じる。
頼りない布の屋根にぽつぽつと何かが当たりだす。
決して居心地良いと言えない荷台の揺れが大きく感じられた。
すっかり弱った体力が更に削られていくようだ。
停車して、外へ引きずり出される。
雨が染み込んだ剥き出しの地面に落ちた。
泥が跳ね、雨粒が服に滲み出す。
横腹を蹴られ、仰向けになった。
忌ま忌ましそうに睨みつける兵士がいた。
唾を吐き捨てられる。
兵士が立ち去り、何処かも解らない荒れ地に“三人”が残った。
「生き延びてください」
自分を“殺した”黒髪の男が力強く言った。
あなた方には幸福になって頂きたいのです、と
告げるとその場から気配が消えた。
何かを掴もうと硬くなった手を伸ばすと、その先に人の手があった。
ぎこちなく握られる。
温かい。
失っていたものが、今この手の中にある。
ぼやけた視界に顔が写る。
皺と傷が刻まれた父親の顔だった。
その時に見た微笑みはきっと忘れられないだろう。
49:月水
10/03/05 23:03:17 3vqCpdRm0
Tomorrow never knows.』(2‐3)
あの雨の日から、月日が随分経った。
目覚めてから数ヶ月の内に星が再び危機に曝され、大きな傷跡を遺した。
それから二、三年の間に奇妙な病が流行り、更には大乱も起きた。
日々は常に動いている。
だが。
「気分は、どうだ。今日は天気が良いな」
ベッドに寝かされている娘に声を掛けた。
返事が返ってこない事は解りきっていても、ずっとそうしている。
あれ以来、未だに意識が戻っていない。
ルーファウス個人の計らいで設備の整った医療室と
コレルの牢獄から連れて来た闇医者によって治療が施されているが、
容態は一向に良くならないままだった。
身体にいくつもの管が通され、
その先にある大型の機材が規則正しく働いて生命を保っている。
高い音に合わせてモニターに映し出された線が一定の山を作り、
人工的に機能している呼吸音が室内の静寂を破っていた。
肩までしかなかった髪は肘の辺りまで伸び、
それだけが長い時間を感じさせる。
瞳を閉じた表情は穏やかで、初めて見た時はひどく驚いたものだ。
ただ、こんな日だけではない。
突然発作が起きる日もある。
原因は体内に残留している魔晄かもしれないと医者が見解を述べた。
かつてある実験によって手に埋め込まれた異物。
不完全なそれから溢れ出した魔晄が
ある種の中毒症状を引き起こしている可能性を示唆された。
強い自責にかられ、暫く顔を合わせられない時期も過ごした。
父さん。
そう呼ばれた気がした。
慌てて手を握る。
俺はここだ、傍に居るぞ。
必死に込めた。
相変わらず、微笑んでいるかのような安らいだ顔を見せている。
聞き間違えたのか。
そうは思いたくない。
もう一度呼んでくれ。
願った。
「父、さん」
また聞こえた。
今度ははっきりと解った。
僅かながら口元が動いている。
「フェリシア」
祈るように娘の手を両手できつく掴んだ。
うっすらと瞼が開かれていく。
「ただ、いま」
「ああ、おかえり」
ずっと待っていた。
声が上擦ってうまく出ない。
手を握り返される。
それ自体は弱々しいものだったが、確かに返された。
「いつも、居て、くれた」
ありがとう。
礼と共に見た、柔らかな笑顔が眼に焼き付いた。
50:月水
10/03/05 23:11:05 3vqCpdRm0
『Tomorrow never knows.』(3‐3)
随分身体が楽になった。
しかし、年月は思った以上に過ぎ去っていて、
取り残されたような気分になる。
コレルの魔晄炉で大きな発作を起こして以来、
約七年もまともに動けていなかったから、
仕方がないといえばそれまでかもしれない。
そうやって半ば子どものように拗ねるのを見られては、からかわれた。
「明日退院したら少しずつ外を見て回ろう」
見舞いに来ていたシアーズが優しく言った。
「いい大人が二人して道に迷うのはごめんだが」
「大丈夫だ、多分」
冗談めかしているが、彼もまた時の流れに置いていかれた一人である。
あの日、別の場所でシアーズは決死の行動を起こしていた。
そして表舞台から降りて、尚生きながらえていた。
私が昏睡している間に、発見され暫くは隣で治療を受けていたらしい。
眼が覚めたらウ゛ェルドに睨まれていた、と笑いながら話した事があった。
「多分、では心配だな」
間を割って入るように噂していた人物が現れる。
「三人で、なら」
「それは良い。そうするか」
「なにぃ」
提案が即決され、三人家族の旅行みたいで楽しそうだ、と言ったら
何故かシアーズが落ち込んだ。
笑い声が室内を明るく彩る。
ここから、また動き出せばいいのだ。
自分の足で、自分なりの早さで。
〈了〉
―――――
・ここまでお付き合いありがとうございました。
ドキドキ、ビビりつつの初投稿でしたが、楽しんで頂けたら幸いです。
※※ところで、名前の部分にリンクないのってまずいのでしょうか…。
以下、ちょっとした事についての補足です。
■コレルの闇医者
BC本編中でシャルアやシアーズが言っていた
コレルプリズンにいる医者。
■シアーズの事
本編で最期が若干ぼかされてたような気がしたので、
ここは強引に生存説に一票。
是非幸せになってほしい。
51:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/06 02:44:06 UiAU7Ucc0
>>48-50
この三人には是が非でも幸せになって欲しい! と思っている自分には凄く良いお話でした。
誰も知らない明日への出立ですが、心のままに赴けば迷子になることはない、という希望的な
結末で読後の余韻も良かったです。
携帯用という事もあってか、フヒトとシアーズの描写って最後すごく曖昧だったなー。
正直なところ、シアーズが何したのかちょっとよく分からなかったw(すいません)
> ところで、名前の部分にリンクないのってまずいのでしょうか…。
メール欄に sage と入れる(=こうする事で名前にリンクが張られる)のは、簡単に言うと
スレが荒れるリスクを回避する策、とでもお考え下さい。
この辺の詳細については2chの仕様について解説されたスレなどを参照すると良い事がありそう。
ただしsage投稿はあくまで「推奨」です。
…とは言っても、最近は文章系スレってあまり活況じゃないせいか、滅多に荒れる事は無いと思いますが。
長レスご免。
52:月水
10/03/06 23:04:08 P16SKqdC0
>>51
ご指南ありがとうございます。
感想まで頂けて感謝感激でした。
53:ラストダンジョン (356) ◆Lv.1/MrrYw
10/03/09 02:26:55 ZuFp2VcN0
前話:前スレ503-508
----------
「およそ40分前、WRO本部から我々飛空艇師団への最後の通信記録を再生します」
通信担当のクルーの言葉で、シドの意識は現実に引き戻された。
やがてシドの目の前にあったモニタの表示が切り替わると、スピーカーからリーブの声が聞こえて
きた。
『我々WROは、“星に害をなすあらゆるものと戦う”組織である。私はこの組織の設立者として、この
理念に従い通信を経由して飛空艇師団に次の通り正式要請します。
―建造中のWRO本部施設の破壊と、現局長の抹殺。
尚、この作戦への参加は各隊員の自由意思を尊重するものとします』
音声は紛れもなくリーブのそれだったし、この通信帯域に外部から割り込むことは極めて困難であり、
そのものの信憑性は高かった。しかし、新本部施設内での光景を目の当たりにしたシドとしては、この
通信を真に受けることはできない。
なによりも、シド自身がそれを許せるはずがなかった。
(こんな……こんなのが、アイツの言った“夢の続き”なワケ無ぇんだよ)
だから恐らくこれも、“リーブであってリーブではない者”からのメッセージだろうとシドは思い込んで
いた。しかし、それをどう説明すれば分かってもらえるのだろうか? それどころか自分が理解しきれて
いないのだから、説明のしようがない。
だからといって考えている余裕も、躊躇っている時間もなかった。
「通信は可能だったな?」硬い表情で問うシドに、通信担当のクルーは短く返答するとパネルを操作
する。命令を受けるまでもなく、これからシドが何をしようとしているのかは分かっていた。チャンネルを
非常用回線に合わせてそのまま待機する。
やがてシドは通信機を取り上げると、全艇に向けて呼びかけた。今は理解よりも先に行動が必要
だったからだ。
「……飛空艇師団長のシドだ。聞こえるなら応答してくれ」
呼びかけに応じ本部上空へと集まった、あるいは航行中の全艇からの応答が確認できたことを
クルーが告げる。報告を受けてシドは先を続けた。
「遅れてすまねぇが、WRO本部からの最後の通信記録を確認した。が、自由意思ってんなら
オレ様はこの作戦には参加しない。……ついでに」
54:ラストダンジョン (357) ◆Lv.1/MrrYw
10/03/09 02:32:17 ZuFp2VcN0
いったん言葉を切ってから顔を上げるとコントロールルームを見渡した。それから決意したように頷く
と、再びマイクに向けて語り出す。
「WRO本部施設の攻撃に対しては、どこからであろうと躊躇なく迎撃を行う。……これがオレ様の決定だ」
同士討ちも辞さないと言うシドの言葉に、交信中の全艇が沈黙を保っていた。返答は期待していない、
とりあえず今は聞いてさえくれていればいい。飛空艇師団が空爆なんて冗談じゃない。
それからシドは通信担当のクルーに回線を閉じないようにと告げてから、振り返って顔を上げると
搭乗員達に告げた。
「聞いての通りだ。この飛空艇は……局長の要請を無視して独自の作戦を展開する。つってもまあ、
さすがにこんなのは作戦って呼べたモンじゃねぇけどな」
口元を歪めて笑うと、鼻下を擦った。
「オレ様は作戦以外でお前らを拘束するつもりはねぇ。だから賛同できねぇ奴は艇を降りてくれ」
幸い、日没までには僅かだがまだ時間が残されている。どちらに従うかそう簡単に選択できるものでは
ないし、できたとしても後味が悪すぎる。せめてクルー達には余計な負担をかけさせたくないとシドは
考えていた。それは夢の先にある翼を得た自分が負うべき責務だと、最初から覚悟していた事だった。
長く重苦しい沈黙がコントロールルームを満たす中、それでも誰一人として艇を降りようとする者は
いなかった。
やがて沈黙に耐えかねて口を開いたのは、シドのすぐ横にいた通信担当のクルーだった。
「どれほど大きな危険が伴おうと、艇長になんと言われようと、我々は艇を降りる気はありません。
でなければ……」見つめていたパネルから顔を上げると、シドを見てこう言った「何の為にここにいる
のか、分かりませんからね」。
口調こそ穏やかではあるが、その意思が頑なである事はクルーの目を見れば分かった。3年前の
あの日、ディープグラウンドとの交戦を前にした時でさえ飛空艇を降りたいと申し出た者はいない。
少なくはない犠牲の上に、今の彼らがある。クルーの言外に込められた強い思いをシドに否定できる
はずは無かった。
「……そうさなぁ」加勢するようにレーダー担当のクルーが言った「コイツの言ってる通り、船賃を払わずに
乗船してる奴なんざ一人も居やしないぜ?」。
畳み掛けるようにして奥にいた年輩の航法要員が口を開く「俺たちは全員、覚悟という船賃を払って
ここにいるんだ」。彼はかつて、ロケットの発射時にも航法担当として地上に勤務した経歴の持ち主でも
あり、若いクルー達にとってはよき相談相手でもあった。
「だから艇長、今さら艇を降りるか否かというのは愚問じゃないか?」
そう言って年輩クルーは笑った。
『それによぉ艇長』通信担当の目の前にあったスピーカーからは、エンジンルームにいる燃料担当の声
が告げた『艇の動力が変わったところで、俺らは重力に逆らって飛んでるんだ。いちど空に上がったら、
たとえどんな理由だろうが落ちて死んだとしても恨みっこ無し。……そう言うモンだろ?』。
たとえ背後の味方に撃ち落とされたのだとしても―言葉には出さないが彼はそれを覚悟している
『艇に何かあった時、最初に燃えっちまうのはここなんだからよ? 俺らが生半可な覚悟で飛んでると
思われちゃあ、心外ってモンよ!』
55:ラストダンジョン (358) ◆Lv.1/MrrYw
10/03/09 02:37:12 ZuFp2VcN0
スピーカーの向こうで豪快な笑い声を上げる燃料担当に否を唱えるべく、さらに別の声が聞こえて
きた。
『それは聞き捨てならない台詞ね。そうならないように、私達が地上からサポートしてるんじゃない?
……それとも、私達の腕を信用して頂けてないのかしら?』
それは飛空艇師団の本拠地―ロケット村にある地上管制室で、これまでの会話の一部始終を
聞いていたシエラの声だった。
「違いない! アンタの言うとおりだぜ」元地上勤務者として、シエラの言葉に強い共感を示し深く頷き
ながら航法要員が言う。
『しかしそれこそ愚問ってモンだぜシエラさんよ』
通信越しに交わされる威勢の良い遣り取りと、そこに混じる豪快な笑い声が、場の空気を和ませる。
通信担当のクルーはスピーカーを見つめながら小さく笑うと、もう一度シドの顔を見上げてこう言った。
「艇長。……我々が知りたいのは、理由なんです」
シドは黙ったまま何も答えない。クルーは話を続けた。
「理由も分からないまま艇を降りるわけにも、まして空爆なんてするわけにも行きません。他の艇の
クルー達だって同じなんですよ、戸惑ってるんです」
「この状況で『戸惑うな』って方が無理だ。分かるよな? シド」
問われて尚も、シドは何も答えようとしなかった。通信機の向こうから、シエラが訴える。
『先ほどの空爆要請は、こちらでも確認しています。私達だけではありません、この事実はすでに
多くのメディアを通して各地の人々にも知らされています』
各地で混乱、あるいは困惑する人々の状況は、シエラ自身をはじめ村の人達の様子を見ていれば
容易に想像が付いた。
「言っちまったら冗談じゃ済まないって事ぐらい、考えりゃすぐに分かりそうなんだがなぁ。なにやってる
んだ? WROの局長サマは」せめて猫のぬいぐるみが言ってくれてりゃ、笑い飛ばせてやったのに!
と茶化すように言葉を続けたが、ここにレーダー要員の戸惑いが伺える。
『……局長さんが、軽々しくそんなことを口にするとは思えません』通信越しにシエラが反論する。
もちろん、彼の気持ちを汲んでいないのではない。
『ですから恐らく、あちらにも何らかの事情があるのでしょう。だからこそ私達に協力を求めたのでは
ないですか?』混乱を招くというリスクをおかしてでも、自ら要請しなければならないほど切迫した事態
なのかも知れない。
シエラが言うのはもっともな意見だった。
『それを承知の上で、要請を拒んだ理由だってあるはずです。……違いますか? シド』
「……お前の言う通りだよ」
吐き捨てるようにして答えると、シドは視線を逸らした。回線の向こうにいるシエラは、少し笑んだような
口調で言った。
『私達が知りたいのは、その理由です。話して頂けませんか?』
その言葉を聞いた瞬間、シドは手元のパネルに両手を叩きつけると半ば叫ぶようにして応じた。
「あの声の主……あれはリーブじゃねぇんだ、だから従わねぇ。……オレ様に原理だの理屈だのが
分かってんなら、とっくに説明してらぁ! 今はそれができねぇし、確証も持てねぇ」パネルの上に置いた
両手で拳を作ると、ぶつけるように言葉を吐き出しながら先を続けた。
「あいつの理由とか事情とか、そんなのはオレ様の知った事っちゃねぇんだ。だがな、仲間のいる場所に
爆弾落とせだのと、そんなふざけた要請を引き受けられるか!? そんな事のために……」
56:ラストダンジョン (359) ◆Lv.1/MrrYw
10/03/09 02:43:44 ZuFp2VcN0
瞼の裏に過ぎったのは、かつて飛空艇師団の設立に協力を申し出たリーブの姿と、彼の言葉だった。
―「翼を持てる人に協力……率直に申し上げれば、その力をお借りしたいとも考えています」
シドは目を見開いて瞼の裏から過去の記憶を追い出し、さらに真っ向から否定した。
「そんな事のためにオレ様は空を飛んでるんじゃねぇんだ!!」
言い終わると再び沈黙が訪れた。鼓動にも似た機械音が、時計代わりに時を刻んでいるようだった。
シエラの言葉に我を忘れて捲し立てたまではよかったが、言ってしまった後は罪悪感に苛まれていた。
今やこうして飛空艇師団を率いる自分が、感情任せに無責任なことを言えた立場ではないのだと。夢や
理想だけで空を飛べるなんて事はない、せっかく手に入れた翼を維持するために必要な物が、とうてい
自分一人でどうにかなる物でない事も弁えていたはずなのに。
そんなシドの耳に、クルーのひとりが漏らした大きな溜息が聞こえてきた。しかし、その先に続いたのは
呆れ声では無かった。
「誰だって目的地も知らない状態じゃフライトプランは立てられない。そんな状況なら誰だって戸惑うに
決まってる。でも今の言葉ではっきりしたじゃないか、俺らが向かうべき“目的地”がよ」
驚いた表情で振り返ったシドに、航法班の年輩クルーは柔らかな笑みを向ける。
「『そんな事のために空を飛んでるんじゃない』……それだけで、理由としては充分ですよ」
今まで強ばった表情を崩さなかった通信担当も笑顔で言った。
「そうだぜ。啖呵を切って俺たちを降ろしたって自分さえいりゃ飛べる、な~んて勘違いされちゃ困るぜ?」
『ホラ、いつかのアイツも言ってたじゃねーか。……なんだっけ?』
エンジンルームからの声に続けと、心当たりのある者達がそこかしこで一斉に声を上げた。それから
スピーカーを通して唱和する。
“俺たちの乗った飛空艇は、途中で降りられない”ってな!
『ま、降りろって言われても無理だけどな!』
こうして艇長シドを取り囲むように聞こえるあたたかな笑い声は、しばらくの間絶えなかった。
----------
・忘れた頃にやってくるラストダンジョン、今回もお付き合い頂けた方ありがとう。
・作者の中で“おっさんは格好良いモン”だと相場が決まってる。…しかしいかんせん文章描写(ry
・シドとシエラ以外は、DC7章シエラ号で聞ける台詞を元にねつ造した人々。っていうか全員ねつ造。
57:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/11 19:20:38 emBnvU9z0
乙!
58:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/14 08:20:48 xSEh+pN90
>>48>>53
GJGJ!
59:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/17 08:34:25 c6PjpYTS0
GJ!
60:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 06:03:37 CTVfLvVO0
お久し振り…というほどでもありませんがちょっとだけ間を置いて投稿いたします。
>>23-32からの続きです。FFTA2二次創作小説『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第3回目です。
うーん、HPじゃ相当進んでるのにこんなゆったり投稿してていいのか…w
まあ、いいかな?w
****************************************************************************
バチッ、パチンッ…
焚き火の弾ける音が夜の森に静かにこだまする。
レナ、ファリスが何かを話している。
「なあ…北の山での事だけどさ…」
「…姉さん、母さんの事覚えてる?」
バッツはぐっすり眠っている。
あたしは、何故か目が冴えていた。
イヤな予感がしていたのだ。
それは、この島に着いたときから、ずっと感じていた。
そしてその予感は確信に変わった。
暗黒魔道士エクスデス…その名を聞いたときに。
あたしたちの世界にも、似たような名前の『審判の霊樹』と呼ばれる存在がいる。
この、島全体…いや、世界全体に漂う邪悪な空気は
きっとそのエクセデス、もといエクスデスが発しているものなのだろう。
警戒を怠ってはいけない。
あたしは、長らく忘れかけていた戦いの勘が
自分の中で確実に取り戻しかけているのを肌で実感していた。
そして。
―――フッ。
焚き火が、消えた。
「?」
レナ、ファリスが一瞬呆けた、そのとき。
バサアッ!!
魔物!
エクスデスの配下にして斥候の『アブダクター』が、バッツらを捕らえるべく襲来した。
61:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 06:04:28 CTVfLvVO0
「な…」
そして、バッツが異変に気づき身を起こして…物言う間もなく、レナとファリスが連れ去られる。
「退がって!」
あたしは素早く、アブダクター(名前は後で知った)に近づき、得意の二刀流で
一気にカタをつける!
魔物は一瞬にして絶命する。
バッツが驚く。
「す、凄い…君は一体…」
「ま、あっちの世界じゃレベルMAXですからね」
あたしはちょっと得意になる。
が、それどころじゃない!
「それより!」
連れ去られたレナとファリスが心配だ。
バッツは空を見上げた。
「くっ…もう、姿が見えない…くそっ!」
夜の闇に隠され、敵の姿はもうバッツには視認できないようだった。
だが。あたしなら。
「…大丈夫、見えます!」
「えっ!?」
あたしはそう言うと、木々を伝って、空へと跳躍した。
62:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 06:05:34 CTVfLvVO0
既に高度20メートルあたりにはいたのだろうが。
なんとか、あたしの手の届く範囲に居てくれた。
それが敵にとっては運の尽きだ。
「甘かったわね。とっとと逃げりゃ助かったんでしょうけど!」
そう言い放つと、アブダクターの放つハリケーンを易々とかわしたあたしは
一刀の元に斬り捨てた。
レナとファリスが敵の手から離れた。
敵に抱きかかえられていた2人は何かのガスを嗅がされ気絶していたようだが…
あたしはなんとか、2人の腕を掴む。
そして。
「バッツさーん!だ・き・と・め・て!!」
レナとファリスを離すまいと必死に自分の体に引き寄せ
そのままバッツに向かって墜落した。
どしーーーーーーん!!!
「いててて…レナ!ファリス!だ、大丈夫なのか!?」
「たた…ええ、大丈夫。ガスか何かで眠らされてるけど、無傷ですよ」
「よ、良かった…!アデル、ありがとう!君も怪我はないか?」
「へっちゃらですよ。バッツさんが受け止めてくれたし」
「はは…」
安心しきったのか、バッツはヨロヨロと倒れた。
63:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 06:07:16 CTVfLvVO0
「お」
と、そこであたしは気づいた。
「どうやら、お土産があるみたいです」
「へ?」
あたしは、敵が落としたであろう宝箱を目ざとく見つけ…
「何が入ってるのかしら?」
パカッ。
「あ、そういうのは多分100%罠…」
バッツが止める間もなく、ガスで眠らされました。
…なんなのよ、もう!!
****************************************************************************
「…う、う~ん…」
「ファファファ…ようこそ、我が城へ!」
特徴的な笑い声。
あたしは目が覚めると同時に、目の前にいる甲冑に驚いた。
「う、うわ!派手なカッコ!…あんた誰?」
と、甲冑のオッサンに話しかけるあたしより前に、3人は目覚めていたらしく。
「アデル!よかった、気づいたか」
「バッツに聞いたよ。助けてくれたんだってな。ありがとな」
「私からも、ありがとう。…でも状況は最悪みたいね」
と、それぞれが口々に言った。
その言葉にあたしは、ピンときてしまった。
「最悪の状況?…じゃ、じゃあ、もしかして、この派手なおっさんが…?」
『エクスデス!』
(えええええええええええ!?)
64:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 06:08:08 CTVfLvVO0
あたしは驚いた。
あたしたちの世界の『エクセデス』とはだいぶイメージが違う。
なんか、すっごい…派手だ。取り敢えず派手すぎる。
何で水色の甲冑?ていうか、マントが若干ピンクっぽいんだけど。
あと、装飾過多!何?仮装パーティですか?
いや、確かに凄い威圧感とか強さは感じるんだけど。
「こ、こいつがエクスデス…」
なんか残念!すごく残念だわ!
悪のラスボスってイメージからは程遠いような!
あたしの主観の問題なのかしら。
まあ、そんなことはいいとして。
どうもあたしたちは、ラスボスの城に捕らえられちゃったらしい。
「すまない、アデル…巻き込むつもりはなかったんだけど」
バッツがそんな事を言う。
「なーに言ってんですか。あたしもこれから、友達探しに貴方たちを巻き込む気満々なんですからね!」
「は!?いや、今そういう状況じゃ…」
エクスデスを目の前にしてこの余裕。
あたしのそんな態度に、さすがのバッツもちょっとうろたえている。
そんなやり取りを無視して、敵さんは何やら緊迫した様子。
65:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 11:43:17 CTVfLvVO0
「エクスデス様!ガラフ達が、ビッグブリッジまで来ているようです!」
「そうか…大鏡を用意せい!」
「はっ!」
なんだ?
何が始まるんだろう。
と、エクスデスの配下の魔物がでっかい鏡を持ってきた。
なにあれ?
「バッツ!見て!」
レナが叫んだ。
「おれたちの姿が、空に!」
ファリスも続く。
「ええっ!?なにこれ!?」
すごい。エクスデス城は吹き抜けだったらしい。
あたしたちの姿、空に映ってるのがこの牢獄からも見え見えだよ。
ていうか、これなら上から逃げられんじゃないの?
そんなあたしの心のツッコミをスルーして、ドラマは展開していく。
「ガラフよさがれ!さがらなければ、この者たちの命はない!」
エクスデスが人質作戦に出ました!
悪のラスボスのくせに器ちっちゃ!
攻め込まれてんだ!追い詰められてんだ、今の状況!
「なんか、色々残念だわ」
あたしは思わず呟いた。
66:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 11:44:07 CTVfLvVO0
「な、何が?」
バッツが聞き返すが、あたしは
「いや、気にしないで…あたしの中のエクスデスってこんな感じじゃなかっただけ」
とだけ返した。
そこで、敵の大ボスがあたしたちのやり取りをさすがに気にしたらしく。
「何をごちゃごちゃ言っている…」
と、エクスデスがこちらに向き直る。
あたしは思わず怒鳴りつけてやった。
「ちょっとあんた!悪の大ボスのくせにやる事なす事いちいち小物くさいのよ!
もっと正々堂々と戦ったらどうなのよ!?」
あたしの啖呵に、バッツもレナもファリスもエクスデスも思わずポカーンとなっていた。
「…ファファファ!面白い小娘だ!」
「あたしは当たり前のこと言ってるだけよ。もったいぶってないで、ガラフさんと真っ向から戦いなさいよね!?」
「…黙れ」
と。
今まであまり恐ろしい印象を与えなかったエクスデスから、
明確な殺意を感じ取った。
67:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 11:44:50 CTVfLvVO0
あたしの全身の細胞が悲鳴を上げた。
(まずい。怒らせすぎちゃった!?)
と、そのとき。
エクスデスが放った光弾をバッツが体で止めた。
ガァン!!
凄まじい音と熱が、バッツを襲った。
「エクスデス!きさまっ!」
バッツは痛みに顔を歪ませながらも、
あたしを護ってくれた。
「ば、バッツ…!」
エクスデスはそんなバッツを相手にもせず、背を向けたまま誰かを呼んだ。
「ギルガメッシュ!」
「はっ!」
すると、武人風の男が現れた。
エクスデスはその男に向かって命令する。
「こいつらを見張れ。たよりにしているぞ」
「お任せ下さい!」
ギルガメッシュと呼ばれた男は、あたしたちの見張りについた。
なんか、こいつも微妙に威厳を感じないけど…強そう。
取り敢えず、さっきみたいな早まった真似はやめよう。
バッツが死にでもしたら、あたし…
「ごめんね、バッツさん。今すぐ回復魔法かけるわ」
「てて…ムチャするなよ、アデル!あいつは恐ろしいヤツなんだ」
「うん。身に沁みて分かった。ホント、ごめん」
そういいながら、あたしはバッツにケアルガをかけた。
う~ん。あたしたちの世界の魔法、どの程度効くのかな?
「ケアルガ…ケアル系最上位の魔法ね。アデルはそんな高等な魔法までマスターしているの?」
レナが驚く。
「まあ、色々マスターしてますから」
あたしは、特に自慢するつもりでもなく、さらっとそう言った。
「すげえな…」
ファリスも感心している。ちょっと嬉しい。
あたしの『優れし者』としての力が活きるなら…
こんな寄り道も、悪くないのかも。
68:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/03/22 11:47:10 CTVfLvVO0
…というわけで今回はここまでです。
5回連続以上の投稿は規制されるんですね…前はなんで平気だったんだろう
そしてちゃんとテンプレ読まないと自分。次回から気をつけます!
次あたりでFF5編は終わりになります。そしていよいよ…
69:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/25 19:07:07 J6p3DVn20
ほ
70:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/29 06:51:29 wh8EJAPz0
ぼ
71:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/03/31 05:07:20 ixELAzHn0
ま
72:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/02 08:03:13 mp98CaHC0
り
73:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/04 13:12:49 91j7A9vV0
も
74:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/07 22:47:07 tVfrK9YIO
ん
75:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/10 10:50:39 vF3Vqqgg0
ば
76:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/12 18:44:08 4PmiS2xpO
な
77:ラストダンジョン (360) ◆Lv.1/MrrYw
10/04/15 15:41:03 uxLvjDEK0
前話:>>53-56
※場面が変わります。
----------
6つもある巨大なタイヤでさんざん荒野を踏み荒らし、背後に泥や土煙を遠慮無く撒き散らしながら
ひた走る1台のトラックがあった。お世辞にもスマートとは呼べない車のハンドルを握っていた男は、
さして楽しくもないドライブをかれこれ2時間近くも続けていた。走っているのが整地されていない悪路
だったうえ、さらに硬いシートが衝撃を体にそのまま伝えてくれるから乗り心地は最悪だった。せめて
気分だけでもと助手席の男に話しかけるが必要以外の返答は無いし、大体にしてドライブなんて男と
したって楽しい事などひとつもないのだ。救いを求めるようにしてつけた車載ラジオから聞こえてくるの
は、アナウンサーが伝える味気ないニュースばかりだった。しかもここしばらくは似たような言葉を繰り
返し、その半分以上はだろう・らしいで聞く方は飽きを通り越して呆れる出来だった。
お陰でハンドルを握りながら「これなら自分が喋ってる方がよっぽどマシだ」と結論するに至り、口数は
増える一方だった。
「おいルード、本当にこの道であってるのか? いい加減もう疲れちまったぞ、と」
「それだけ喋ってれば当然だ」
地図に目を落としたままで助手席の男は短く応じた。ここまで続く緩やかな登り勾配が、地図上の
等高線と一致していること。さらには速度計と自身の腕時計から走行距離を割り出し、地平線に向かう
太陽で方角を確認しながら、可能な限り走りやすい場所を選び誘導するのが彼の役割だった。
「ちょっと待て。運転してるのは俺だぞ、と」
そんな助手席の苦労はお構いなしと言わんばかりに親指を自身の胸に当てるようにして主張するレノ
に、ようやく地図から顔を上げた男は、しかし運転者の主張には取り合わずこう告げた。
「目的地はここから西へ約15キロ。もうすぐだ」
ところが言い終わるよりも早く、進行方向の視界が唐突に開けた。レノはとっさにブレーキを踏み込んで
ハンドルを切ると、バランスを崩した車体が大きく傾きタイヤは悲鳴を上げてようやく停車した。眉間に思い
切りしわを寄せたルードが苦情を述べようとしたが、正面を見据えるレノの真剣な横顔を見て口を閉ざした。
地図上で言うと小高い丘の頂に到着した彼らは、ここで車を降りた。
78:ラストダンジョン (361) ◆Lv.1/MrrYw
10/04/15 15:48:16 uxLvjDEK0
「……おいルード」
呆れたように溜息を吐いたレノの前方には、森の彼方に新本部施設を望む平原が広がっていた。
確かに進路は間違っていなかったし、ルードの言うとおり目的地も目に見える場所まで来ていた。
ところがここで道は完全に断たれてしまった。
「これじゃあ丘じゃなくて崖だぞ、と」
レノは足元を見て呟いた。視線の先にはざっと見積もったところでも幅8メートル落差20メートルは
あろうかという亀裂が走っていた。いくらこの車が頑丈にできているとは言っても、落ちればタダで済む
高さではない。そんなわけで先ほどのハンドル操作を自画自賛したい衝動に駆られるが、口には出さ
なかった。
それにしても見渡せる範囲にはずっと亀裂が続いていて、迂回しようにもかなり時間を取られそうだ。
「すまない。……地図が古かった」
彼らの行く手を阻んでいたのは、どうやら6年前に地上に吹き出したライフストリームの爪痕らしかった。
人里離れたこの地域は地図も書き換えられずに取り残されたまま、当時の姿を留めていた。こうなった
以上、この道は諦めるしかない。
しかし、そもそも彼らの出発地点から陸路でここへ辿り着くことは6年前までなら不可能だった。にも
かかわらず、干潮時を利用して車でも海を渡るルートを示してくれただけでもこの地図の功績は大きく、
それ以上に地形を変貌させたライフストリームの影響は絶大だった。
「なら仕方ないぞ、と」
そう言って見上げれば、夕焼け色に塗り替えられた空には淡いオレンジ色の雲が浮かんでいた。大地
を渡る風は肌に心地よく、それに運ばれて家路を急ぐ野鳥のさえずりなども聞こえてくる。それはレノに
とっては退屈にも思えるほど平和で、のどかな光景だった。
そんな中にあって、星とは違い規則的な点滅を繰り返す翼端灯は地上から見てもひときわ目を引く存在
だった。それが局長声明を受けて集結しつつある飛空艇師団の機影である事は考えるまでもない。
ラジオのニュースが伝えている光景が、まさに目の前に広がっていた。無骨な車体に背を預け、空を仰ぎ
見たレノが苛立たしげに呟いた。
「……まったく、とんだ迷惑だぞ、と」
その後ろでは、ルードが黙々と荷下ろしを始めていた。彼はレノの言葉には応えず、荷台に収められて
いる物騒な代物の組み立てに取りかかる。
「WROの内輪揉めに、どーして俺らが駆り出されるんだぁ? ったく納得いかないぞ、と」
ここへ来た事に対しひたすら文句ばかりを並べながら、視線を下ろすと平原の先にWRO本部が見え
た。正確には、完成すればWROの新本部施設となる予定の建物である。
「なあルード、お前もそう思うだろ?」
振り返りざま、作業を続けるルードに問いかける。
「…………」
呼ばれて一度は顔を上げるも、特に言葉もなく再び作業に取りかかる。呼びかけた方も彼の態度を
特に気にも留めず、視線を前方へと戻した。彼らは長年にわたって仕事を共にしている間柄だが、実に
対照的な個性の持ち主だった。同じ制服でも一方は着崩しているし、一方はきっちりと着込んでネクタイ
まで締めている。知らない者には一見アンバランスだが、互いの持ち味を活かせる最良のパートナーと
いうわけだ。
79:ラストダンジョン (362) ◆Lv.1/MrrYw
10/04/15 15:55:19 uxLvjDEK0
「ルードは相変わらず仕事熱心だよなぁ」
「気乗りはしない」
ルードはそう言いながら、肩に担いだそれに取り付いている望遠レンズを通してレノと同じ方角を見つ
める。中央には新本部施設が映っていた。
「どちらを狙うにしても……同士討ちだ」
そう言って肩を上げ、少し上の方へ視線をずらすと今度は飛空艇が映った。
「『“同士”討ち』ねえ。果たして向こうはそう思ってくれるかな? と」
冗談めかしてレノは言ったが、心のどこかにある不安と言う意味では紛れもない本音だった。
ルードは何も答えず、無言で照準機の絞りを微調整していた。その手が一瞬だけ止まった事が、彼の
返答だった。
もともとタークスは神羅内における日陰の存在、こういった汚れ仕事には慣れている。彼らが愁いで
いるのは、照準に入っているのがいずれも旧神羅カンパニーの関係者、それも星を救おうと奔走した
功労者達だと言う事だった。
皆が同じ道を選べないのは仕方がない。けれどこんな形で交差するなら、いっそ二度と交わることの
ない道を進んでくれれば―特にリーブは、かつてヴェルド主任を救うため社に背いたタークスにも
密かに手を貸してくれた数少ない協力者であり、少なからず恩義があるはずと―ルードの心中に
過ぎる想念が、今日ここへ至った決意と照準を揺らした。
「……これが単なる内輪揉めではないとツォンさんも分かってる。だから俺たちをここへ寄越した」
いったんスコープから目を離すと頭を振ったルードは、まるで自分に言い聞かせるようにして口を開く。
「そうだな。それを阻止するのが俺らの任務だぞ、と」
どんな任務でも必ず成功させる、それがタークスだ。自分達を取り巻く環境がどう変わろうが、これ
だけは変わらない。そう言い聞かせてみても、どうにも気分は晴れなかった。レノは眉を顰めると声には
出さずに呟いた。
(今さら憎まれ役になるのを怖がってる? それもおかしいぞ、と)
WROと飛空艇師団―密やかに神羅の遺産を受け継ぎ、世界を立て直すために表舞台で活動する
組織―ジェノバ戦役の英雄が率いる両組織の決裂がもたらす影響は当人達が思っている以上に大きく、
それを阻止するという重大な任務を負って派遣された精鋭が他ならぬ自分達であると自覚と、それでこそ
タークスだという自負もある。しかしこの任務を達成すると言うのはどちらか一方、あるいは両方を敵に
回す事を意味する。もはや表舞台には立てなくなった『神羅』に代わって“負の遺産”の清算に奔走する
彼らを救うためとは言え、これでは割に合わない。
確かに今までレノはそう思っていた。
(いや違う。……どうもおかしいぞ、と)
ところが、こうして改めて考えてみると何かが違う事に気がついた。あると分かっている蟠りの正体が
掴めずに、レノは苛立った。
ちらりと後ろを見やると、機材や部品のチェックに余念がないルードの姿があった。仕事熱心な相棒に
引け目を感じ、思わず目をそらしたレノはもう一度空を見上げた。何とはなしに向けた自身の頭上はるか
高くには、一番星が孤独に瞬いていた。
(俺はなんで苛立ってるんだ?)
そうやって自分に問いかけてみても答えは返ってこない。レノは苦笑に唇を歪めると瞼を閉じた。聞こえ
てくるのはルードの手元で鳴っている機械音、風が吹く度に遠くの方で擦れ合う枝葉の音や鳥のさえずり。
そして、車載ラジオが発する耳障りなノイズ音だけだった。
「……ん?」
80:ラストダンジョン (363) ◆Lv.1/MrrYw
10/04/15 16:03:23 uxLvjDEK0
異変に気付いたレノははっとして目を開き、急いで運転席に駆け戻った。先程からずっと周波数は
変わっていないし、受信状態もいたって良好だったはずなのに今はノイズ音しか聞こえない。ダイヤル
を回して他を当たってみるが、どこもすべて同じだった。周囲を見回しても障害物になりそうな物など
見当たらない。なのになぜ急に? 今やノイズばかりを垂れ流すスピーカーに向けてレノは首を傾げた。
それからしばらく考え込んでいたが、ふと思いついてレノは助手席の窓から顔を出し、心当たりに視線
を向けた。
「おいルード」
ルードが入念に調整を行っている兵器に積まれた誘導装置の発する電波が、ラジオに干渉している
のではないか? そう思いついたレノは相棒に呼びかける。
「ちょいとそいつの電源を落と……」
ところがルードは既に立ち上がり、レノを見上げてほぼ同時に言った。
「こいつは使い物にならない」
妨碍電波か装置の故障か。いずれにせよ飛ばなければ単なるガラクタだとルードは両手を広げた。
既に装置の電源は切ってあると言う。
それを聞いたレノは呆けた顔をしたが、次の瞬間には口元を笑みに歪めていた。
「ひょっとして―」
根拠に基づいた推論と言うよりは勘に近い閃きだったが、これから起こる異変の前兆だと言うことは
容易に想像が付いた。しかしその異変が何であるかは皆目見当も付かない。
ただし、その異変が自分達にとって何らかの希望になり得るのではないかと、そんな風に考えたのだ。
「俺たちが相手にしなきゃなんねえホンモノの『敵』ってのが、他にいるかもしれないぞ、と」
どことなく嬉しそうな口調でレノが言うと、ルードは無言で頷いた。
----------
・規制を抜きにしても投稿が遅くなってすみません。
・FF7本編でハイウインド搭乗員に言わせるところの「怪電波」が拠。
81:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/16 22:37:37 0b+PbokBP
GJ!
82:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/20 22:17:46 GCRHUQke0
乙!
83:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/22 22:48:51 hy5iN9Zr0
おつー
84:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/24 02:54:53 z0MKgDEw0
乙
85:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/26 16:09:34 SQZaAgaU0
ほ
86:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 02:18:03 Zk9k0YbT0
こんばんは。FFTA2二次創作SS『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第4回目、>>60-67の続きです。
今回でFF5編は終わり…と言いたいところですが無理かも知れません。
****************************************************************************
一方その頃、ビッグブリッジでは。
ガラフ達が、バッツらを助けるべく作戦を考えていた。
「バッツらを助けに行かねば…飛竜は、飛べるか?」
兵士が首を振り、答える。
「傷を負っていて…」
「そうか…」
落胆するガラフ。
だが、ガラフの孫娘クルルは飛竜の声を聞いた。
「飛竜……わかった!1回だけ飛ぶわ!」
「よし!クルル、お前は先に戻っていろ!わしが、バッツらを助けに行く!」
「うん!おじいちゃん、気をつけて!」
そして、単身エクスデスの城に乗り込むガラフに、クルルは手を振るのだった…
****************************************************************************
「あ~あ…参ったなァ」
さっきはちょっとシリアスモードでバッツを助けたけど。
やっぱり何だかんだいって緊迫感のないあたし。
ごめん、バッツ、レナ、ファリス。
あたしにはこういうノリはついてけない。
(多分ガラフさん、きっと助けに来るんだろうな…マズイなぁ。
あたしの居場所、なくなっちゃう。そしたら、どうしよ…)
あたしがこの人たちについてきてるのは、ルッソの手がかりを得るためでもある。
正直に言っちゃうと、その手がかりが得られないなら
このままダラダラとついていくのもあんまりメリットがないっていうか、リスクがあるだけな感じなのだ。
うん。悪いけどあたしの目的と利害からして、
そろそろ一緒に居る意味が微妙だ。
なんとかして、抜け出さなきゃ!
まずはあのギルガメッシュって人をどうにかしないと。
87:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 02:19:09 Zk9k0YbT0
「すいません!ギルガメッシュさん!?」
あたしのテンションにギルガメッシュは
「な、なんだ?」
と驚いたように答える。
うん。この人、きっと悪い人じゃないわ。
「おトイレ行きたいんだけど、ちょっとだけ出してくれないかなァ。
あ、10分ぐらいで戻るから!」
「アホか!誰が人質を10分も放置しておくんだ!」
もっともなツッコミだ。
けど、相手してくれるだけ、この人はつけいるスキがある。
「ですよねー」
あたしはヘラヘラ笑いながらも、ギルガメッシュの気が緩む瞬間を狙う。
(どーせ、牢獄の鍵はあのオッサンが持ってんだろーし)
「じゃ、せめてお話しましょうよー。このままずっと閉じ込められっぱなしじゃ
気が滅入っちゃうったら!」
「ぬ、ぬう…お前、人質としての自覚あるのか?」
とか言いながらも近づいてくれる。いい人だ。
あたしは瞬間、ギルガメッシュの腰に下げられていた鍵をスった。
音すら立てずに、目的の鍵のみを。
『優れし者』であるあたしには朝飯前だ。
バッツやレナやファリスは半ば呆れていて、じっとしていた。
好都合。ここで3人があたしの行動に気づけば、異変が嗅ぎ取られる(かもしれない)。
あたしは果てしなくどーでもいい雑談をギルガメッシュと交わしながら、こっそり、
かすかな金属音も立てずに牢獄の鍵を開けた。
そして…
「あ、そうそう。言い忘れてましたけど――」
「?なんだ?」
88:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 02:19:56 Zk9k0YbT0
「あたしの得意技、スリなのよね!」
あたしはそう言い放つと、一気に牢獄の扉を開き、ギルガメッシュの顔面にぶつけてやる。
ガツンッ!!!
狼狽するギルガメッシュ。
「なにィ!!?」
『!!!』
「ほら!ボサッとしてないで!」
あたしは3人を促す。
「よ、よし!」
残念な事に3人は『クリスタルのかけら』とやらを奪われていて
ジョブの力を発揮できないが、運の良い事に、このタイミングで…
「バッツ!レナ!ファリス!」
『ガラフ!!』
カッコイイおじいちゃんが、助けに来てくれました。
「やりっ!」
あたしは思わず飛び上がり、4人は一瞬にしてギルガメッシュをノした。
劣勢に立たされたギルガメッシュは、わざとらしい演技と捨て台詞を残して去っていった。
「うっ!用事を思い出したぜ!必ず戻ってくるからな!
覚えとけよ!ぺっ!」
「あはは、三流悪役~!」
あたしは腹を抱えて笑わせてもらった。
そんなあたしを横目で見ながら、4人は再会の感動と結束を新たにしていた。
「ガラフ…ありがとう!」
「ええい、礼は後じゃ!まずは脱出するぞい!」
「おう!」
「ええ!」
「よーし、脱出よー!」
「…誰じゃ、この娘は?」
『いやまあ、色々あってさ…』
89:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 02:23:18 Zk9k0YbT0
****************************************************************************
「異世界から、友人を探しに…か」
「ええ、心当たりありませんか?ガラフさん」
「確かに、隕石を使ったワープ技術がこの世界にあるのは事実じゃが…ううむ」
駄目か。
どうも、この世界からルッソの世界に行く術はなさそうだ。
うーん、それじゃあしょうがないな。
「じゃあ、あたしはこれで。丁度4人が揃ったことだし、もういいですよね。
短い間だったけど、ありがとう!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
ガラフさんがあたしを引き止める。
なんだろう?
「いや、ものは相談じゃが…おぬしが友人の世界に飛ぶ協力をする代わりに、
我々の戦いに加わってはくれんか?」
「ええー…でも、あたしには…」
そんな事してる暇ないんだけどなあ。
「ガラフ、ムチャ言うなよ。これまで協力してくれただけでも充分だ!」
「それはそうじゃが・・・」
「ありがとうアデル。ここからは私たちだけで戦うわ。貴女は貴女のやるべきことをするのよ」
「ああ、ホントに助かったぜ!バッツなんかより随分頼りになったしな!」
「おい、それは言いすぎだろ!…いやまあ、確かに頼りになったけどさ…」
ああ。
いいなあ、この空気…
確かに、もう少しこのパーティに加わるのも悪くないかも。
でも、あたしの目的はあくまで『ルッソの世界に行く事』だ。
別の世界のファンタジーやバトルに巻き込まれるのは、不本意。
ここは、気持ちを切り替えていこう。
「ええ、ごめんなさい。もう少しぐらいなら協力してもいいけど…
あたしは、友達を探すのが優先なので!」
「そうか。しょうがないのう。じゃあ、せめて安全なところまでは一緒に行くかのう?」
「はい!」
というわけで、ガラフさんの居城であるバル城までは、
あたしも同行する事になった。
90:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 02:29:31 Zk9k0YbT0
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そしてあたしたちは、ビッグブリッジに辿り着いた。
「ここが、ビッグブリッジ?」
「うむ。ここから先は魔物の巣窟じゃ!気をつけていけ!」
「まっかせといて!あたし、先行きますから!」
「ちょ、ちょっと!…もう!危なっかしいったら!」
「すげえな、この切り込み隊長っぷり。どっかのヘタレ男にも見習わせたいぜ」
「ファリスさん、その発言はおれの心を激しく傷つけるんですが。勘弁してくれませんかねえ!」
クスクス。
あたしはみんなのやり取りを聞きながら、敵を蹴散らす。
楽しいなあ。
いつ振りだろう、こんな充足感。
あいつが居なくなってから、ホント、久し振りに楽しい。
そして、ビッグブリッジも中盤に差し掛かる頃。
あたしは、勢いよく扉を開けた。
ばーん!!
「ぐはっ!!」
「え?」
どうやら、扉の向こう側に居た人の顔に思いっきりぶつけてしまったらしい。
「ご、ごめんなさ…ってアンタ、ギルガメッシュじゃん!」
「ま、またお前か…と!この扉の向こうでずっと待ってたぜ!
来なかったらどうしようかと思ってたところだ!」
「なんで待つ必要があるのよ…そっちからかかってくりゃいいじゃん」
「う、うるさいな!!行くぞ!」
「あー、悪いけどあたし、あんたのコントに付き合ってらんないの。
とっとと退場してくれる?」
「な…」
91:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/27 04:56:54 Zk9k0YbT0
そういうと、あたしは目にも留まらぬ速さで
ギルガメッシュの武器を破壊する。
「…」
唖然とするギルガメッシュ。
だが、武器を破壊されてはどうにもなるまい。
「じゃ、お先に♪」
「お、俺の最大の見せ場が…」
ギルガメッシュが何事か呟いていたが、知ったこっちゃない。
どうせ「俺が悪かった~」とか言ってフイ打ちでもする気だったんだろうし。
そんな彼を尻目に、バッツたちも追いつく。
「一瞬で倒したのか?」
「まーね。あんな雑魚に構ってらんないでしょう」
「…は、はは」
バッツが苦笑する。
ガラフも思わず笑う。
だが、笑いはそこまでだった。
クルルが、目の前で待っていた。
「おじいちゃん!急いで!!バリアが!!」
「え」
「な、なにっ!?」
あたしは驚愕する。
真っ赤なドームが、エクスデス城を中心に広がっていく。
あ、あれってバリアっていうの?
なんかもう攻撃魔法とかそういう感じじゃない?
「きゃあああっ!!」
レナが、バリアの圧力で吹き飛ばされる。
「うわああー!!」
続いてファリス、バッツが飛ばされていく。
「レナ!ファリス!バッツー!!!」
最後に、ガラフが…
無常にも、クルルだけが避難できた状態で…
「いやぁっーーー!!」
あたしたちは、吹っ飛ばされた。
****************************************************************************
…というわけで、若干投稿規制から足が出ちゃいましたが今回はここまでです。
FF5編は以上で終了、次からは…
92:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/29 02:42:13 98MKzwd00
>>『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
…作者さんに悪気は無いって前提での感想です。
荒らす意図はないですし、作者さんを愚弄する意味で書いてるワケではありません。気に食わなければ
スルーして下さい。(読み手の取り方の1つだと思って頂きたいのですが)
まず、既にサイトで公開中の作品をわざわざ掲示板に投稿する意図がいまひとつ理解できない事。
次に、今のところ混作の悪い部分(混作の難しさだと個人的には思います)が目立っている印象を受けて
しまう事。この2つの要素から、あまり作品に対して好感(続きへの期待)を持てません。
前者は単にマルチポストと似たような印象だからという理由。
後者は、>>64の様に世界観の外から見たエクスデス(衣装や行動)への指摘なんかは、混作の醍醐味
と言える面白さがあります。(余談ですがエクスデスの元が樹なので、植物の特性に準えて「派手な衣装」
の件を考えると、彼の衣装は、自らの在処を主張する花弁の役割に見立てているのかな? なんて邪推も
できそうです)
ところが、一方的な偏り(この場合は『優れし者』の圧倒的すぎる強さ)が顕著だと、他方の作品を軽んじて
いる様に受け取れてしまうので、二次創作もそうですが、混作の場合は特にそこに注意を払う必要があると思います。
DFFなんて良い例がありますが、あれもバランスをかなり考えて作ってありますよね。システム面はもちろん、
キャラクターの持ち味という意味でも。(どの作品のキャラクター(個性)も“殺さない”バランスを保って
いるという意味です。
全作知る人・一部のみを知る人・DFFからの入門者…と言った具合に、どの立場のプレイヤーにも偏らない
作りを心がけている事は、やっていてもある程度は汲めます)
今後の展開にもよりますが、現段階だと「優れし者(TA2)が各作品世界を渡り歩いて蹂躙する」という
風にしか読めず、これでは優れし者ではなく単なる破壊者であって、この先にあまり期待が持てません。
(それを逆手にとる展開なら別です。この感想が早計だったという事になります)
元作品のTA2を知らないので、この辺に認識の誤りがあったらすみません。
長くなっちゃいましたが、要するに勿体ないなぁと言いたかったって事です。2つの意味での見せ方さえ
直せば、面白い作品だと思います。
93:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/29 03:37:55 9ll7gVHR0
作者です。
サイトで公開中の~について言うと、まぁ凄く単純に感想がまったくなかったりするから、なのですが
やっぱり良くないですかねえ…すいません。
あと、アデルの持ち上げっぷりについては本当、自分でも結構
『やりすぎだな、こりゃw』とツッコミが入るぐらいだったので
至極尤もな意見だと思います。そのまま校正せず載せたのは軽率だったかなぁ。
一応弁解しときますと。
他作品を軽んじる意味は全くなく、単純にFFTA2クリア後のアデルなら
あの辺の敵は楽勝になるんだろうなぁ、というゲーム的な意図と
『あくまでもアデルはルッソの世界に辿り着く為の通過点として
たまたま他のFF世界を渡り歩いてるに過ぎない』ので
出来るだけあっさりイベントをクリアしていく(特に戦闘は)のが
痛快で楽しい。異世界を旅するにあたって彼女が
『色々と苦労しつつも、ルッソのように楽しく』過ごせたら、という意図があったりします。
まあこの辺は正直『TA2を全て理解しつつ、5や6や7が好き』って人じゃないと
ハードル高いかな、と書き始めた当初から思ってはいました。
中々両作品の良さを両立するのが難しいですね…
感想ありがとうございました。取り敢えず、投稿はお終いにして
サイトでの公開のほうを続けていきたいと思います。
お付き合い頂いた方々ありがとうございました。
94:『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
10/04/29 03:54:08 9ll7gVHR0
あ、それと蛇足的ですが自分はFFだと5,7,9が一番好きだったりします。
TA2は久々に自分の中でクリティカルヒットしたゲームだったので
SS書こうと思ったんですが、『クリア後』『異世界へ旅する』という発想の段階で
『他FFも絡めたいな』があってこういう形に。
TA2自体、知る人も少ないようなので…一度、TA2のみに焦点を絞ったSSを書いたほうが
良いでしょうかね?(ここへの投稿用、という意味では)
また性懲りもなくお邪魔するかも知れませんが、生暖かい目で見てやってくれると嬉しいですw
ではでは。
95:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/04/30 02:49:32 Sn0xzvR90
個人的には未プレイのTA2、その魅力がぎっしり詰まった作品を楽しみに待ってますよ!
96:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/05/02 11:34:37 D48s9upw0
保守
97:名前が無い@ただの名無しのようだ
10/05/03 19:57:35 8kZuUViq0
ほ
98:ラストダンジョン (364) ◆Lv.1/MrrYw
10/05/04 01:56:09 O6HUDhoT0
前話:>>77-80(場面はダナ視点Part9 169-170からの続き)
※Part9 344-347(ナナキ編)をご覧頂いた上で見てもらえると良いかも。
----------
目を覚ましたダナを出迎えたのは、ナナキだった。
「……だいじょうぶ?」
意識を取り戻したばかりの相手をできるだけ驚かせないようにと、ナナキは細心の注意を払い、
かける言葉を選びながらダナと向き合っていた。
「あなたは……ナナキ?」
その声にナナキは首を縦に振って答えた。
翳んでいた視界が徐々にはっきりしてくると、暗がりを照らし出していたのがナナキの尾に灯った炎
だった事に気がついた。周囲に見える岩肌があたたかな色に染められ、ゆらゆらと揺らめく影が映し
出されていた。
「こっ、ここは?!」
ダナはようやく自身の置かれている状況を認識し、飛び起きようとしたところを頭上にせり出した岩盤に
阻まれ、再び身を横たえた。今し方取り戻したばかりの視界が眩く発光し、その中を飛ぶいくつもの
流れ星を見た気がした。
「窮屈な思いをさせてごめんね。もうちょっとの辛抱だから」ナナキはそう言うと、外の様子を覗おうと、
振り返って洞窟の出口を見つめた。
「どうなっているの?」左手で額を抑えながら、右手で地面に触れる。目を開けてもまだ景色の輪郭が
はっきりしない。ただ、ここが先程まで乗っていたシャドウ・フォックスの中で無いことは確かだった。
「ガードハウンドの群れに向かって、君たちの乗った車が近づいてきたのが分かったんだ。だから急いで
知らせに行こうとしたけど、一足遅くて……」
話を聞いたダナは、意識を失う直前に見た銃撃戦のことを思い出して血相を変えた。その様子に気が
ついてナナキが早口で付け加える「心配は要らないよ。他の人達は大丈夫、大きなケガをした人もいない」。
ダナは安堵の表情を浮かべた。それを見てナナキもホッと息を吐いてから先を続ける。「でも車が故障
したみたいで動けないんだって。だから今は応急の修理と本部への連絡に追われているよ」あんな無茶
な運転をしていたら無理もないよ、と笑った。
「それよりも皆、外に放り出された君を心配していたよ。だからオイラが来たんだ、みんなよりはこういう
場所に慣れているからね」
「そうだったの。……ありがとう」感謝を述べつつも、最初にガードハウンドの群れを率いていたのがナナキ
だと勘違いしていた事を思うと、何となく気まずくて視線を逸らした。
「どうしたの? どこか痛い?」
その様子を取り違えたナナキが、心配そうにダナを覗き込む。ますます気まずくなって肩をすくめる。
「ち、違うの。私、てっきりあなたが……」
崖の上に立っているナナキを見て、ガードハウンドの群れを率いているものと勘違いしてしまった事を
白状すると、ナナキは思わず声を上げて笑った。
「もしかしてオイラ、クリムゾンハウンドにでも見間違えられたかな?」
「ご、ごめんなさい」
図星を指されて居たたまれない心地になったダナに、ナナキは柔らかな口調でこう言った。
99:ラストダンジョン (365) ◆Lv.1/MrrYw
10/05/04 02:02:17 O6HUDhoT0
「いいんだ、モンスターに間違われるのには慣れてるから」
「…………」
今度こそダナは言葉を失う。
「ええと……ごめん」皮肉のつもりで言ったのではない。でも、結果的にダナにはそう聞こえてしまった
ようだ。その誤解は解いておきたいと、ナナキは話を続ける。
「それにオイラ、ガードハウンドの群れを追っていたんだ。だから行く手を先回りしたところを見たなら
間違えられても仕方ないよ」
「群れを追って?」
どうして? と尋ねようとしたところで、ダナはふと思い至る。そう言えばあんなに沢山のガードハウンド
が群れを成して一斉に行動しているのは今まで見たことがない。ダナの知る限り、殺戮や破壊衝動
以外の意思を持たないモンスターには協調性など無く、人間の前に複数で現れる場合も行きずりである
事が殆どだ。しかし先ほど見たガードハウンドの群れは明らかにどこか、あるいは何かを目指している。
「……確かに、モンスターがあれだけの大群で一斉に行動しているのは珍しいけれど……」
「君もそう思う?」ナナキの声色が変わった。
片肘をついて、頭上に注意しながら慎重に上半身を起こすとダナは頷く「昔、ミッドガル周辺をモンスター
の群れが襲った事はあったけれど、群れていてもせいぜい4~5頭が限度。遭遇数が異常に多いことも
あったけど、それでもあれほどの大群ではなかったわ」。
洞窟内は高い所でもダナが膝立ちになると頭を天井にぶつけてしまう程の高さしかなく、幅も2メートル
程度、大きさからすると洞窟と言うよりは岩場にできた隙間だった。どうやら外に放り出されたダナを発見
したナナキが、しばらく安全な場所にとここへ匿ってくれた様だ。
ナナキに先導されて洞窟を抜けると、曇天の下に広がる荒野に出た。
「みんなの所まで少し距離があるんだけど、歩ける? それともここで待つ?」
「問題ないわ」
その後もナナキが先導する形で荒野を歩いた。どちらとも無く、先ほどの話の続きが始まる。
「モンスターが群れを成して行動する事は無い。オイラもそう聞いてきたし、実際に見てきたモンスターも
そうだった」それは6年前から始まった旅の間に、多くの地域を巡り様々な種類のモンスターに出会った
経験からの言葉だった。
「大挙して襲ってきたらさすがに太刀打ちできない。その意味では、彼らに協調性がないことを感謝した
いとすら思ってしまうわ」
最初は冗談のつもりで口に出した言葉だった。けれど言い終てからダナは改めて考える。逆を言えば
他者と協力したり道具を作り出す事で、人はモンスターをはじめとした脅威に対抗する術を持った。
先人達の知恵と知識が技術を生みだし、技術が社会を育み世界を形作った。諍いの果てに犯した過
ちでさえ新たな知識の源となり、後世の人々に受け継がれて行く。マテリアが無くても、人は過去の
知識や記憶を引き出し、あるいは未来に託す術をずっと昔から持っていた。魔法が無くても、自分達を
脅かす脅威に対抗する手段を持っていた。
―魔晄エネルギーが無くても、豊かな生活を営もうと試行錯誤を繰り返して来た。
ひとりでに肩が震えた。前を歩いていたナナキがどんどん遠ざかっていく。
もうずいぶん以前から分かっていた事だとしても、否定された過去と向き合うのは簡単ではなかった。
その過去が、自らの心血を注いだものであれば尚更だ。
100:ラストダンジョン (366) ◆Lv.1/MrrYw
10/05/04 02:07:59 O6HUDhoT0
「……私達の行為やあの都市も、過ちとして後世に伝えられるのかしら」
ぽつりと零したダナの言葉に、ナナキが振り返って問い直す。
「どうしたの?」
「ごめんなさい。ちょっと昔の事を思……」そうだ、とダナは足を止める。本来モンスターは群れを成さな
い。しかし、今日ほど大きな規模ではないにしろ、過去にもモンスターの群れに足止めされソルジャー
部隊の派遣を要請した事があった「……そう、ミッドガル建造中!」
思考過程の断片だけを拾った言葉を聞いていたナナキには、ダナが何のことを言っているのか分から
なかった。少し先を歩いていたナナキも足を止めて振り返ると、もの凄い勢いでダナが駆け寄って来た。
「ねえあなた、ガードハウンドの群れを追っていたと言ったわね?」
「う、うん」ダナの勢いに圧倒され仰け反るような格好でナナキは答える。
「群れが向かった方角、教えてくれるかしら?」
それからダナはポケットをまさぐった。いつもあるはずの携帯電話が手元にないことに気付くと、あの
とき落としたままだった携帯電話も自分と一緒に車から放り出されてしまったのだと知る。
仕方なくダナは転がっていた石を使って地面に略地図を書いた。エッジを出た後、シャドウ・フォックス
が取っていた進路を矢印で書き込むと、さらにナナキが合流した地点を憶測し×印も加えた。
「ガードハウンドはどっちに向かっていたのかしら?」
「ええと、……こんな感じかな」
ナナキは前脚を使ってガードハウンドの群れが進んでいた方角を書き足した。
「南南西? 本当にこれで間違いない?」
確認の問いに頷くナナキを見て、ダナは期待が外れたという口ぶりで言った。「そう。……てっきりコン
ドルフォートに向かったと思ったのだけど、違ったのね」ここからコンドルフォートへ向かうには大陸を
南東方向へ進む必要があったが、ナナキが指した方角は違っていた。
「どうして?」
ナナキが尋ねると、ダナは先ほど思い出した「昔の話」を聞かせた。
それはミッドガル建造中のある日、神羅が手配した資材運搬車両が次々とモンスターに襲われた。
それ自体は珍しいことではなかったが、その遭遇数が異常に多かったために運搬が捗らず、後日
ソルジャー部隊に大規模な掃討依頼を出したという出来事だった。
「それが、ちょうどミッドガル魔晄炉の試験稼働の時期と前後するの。それだけじゃないわ、地方の
魔晄炉勤務者が集団で失踪するという事件も、最終的にはモンスターの仕業だったと言う話も聞いたわ。
それで、魔晄炉とモンスターには何か関連性があるものと思ったのだけど……」
そもそもコンドルフォート魔晄炉も、6年前から稼働していない事をすっかり忘れていた。ダナは自分の
早とちりに気がついて、照れ隠しの笑顔を浮かべた。
ところが、話を聞いたナナキは意外な反応を示した。
「……そうか、ニオイだ!」
「え?」
「たぶんニオイのせいだと思う。ええと……魔晄炉の、って言えばいいのかな?」
101:ラストダンジョン (367) ◆Lv.1/MrrYw
10/05/04 02:15:48 O6HUDhoT0
「魔晄炉の……におい?」そんな物があっただろうかと、ダナは首を傾げた。
ナナキは言葉を選びながら、人間であるダナにも理解してもらえるように説明を試みた。
「オイラ達はみんなよりも嗅覚が発達している……と思う。それで、魔晄炉のニオイ……みたいな物が
分かる」正確にはニオイとは異なるもので、草花や動物の発する匂いの様に嗅覚で感じるのではなく、
もっと体感的な物なのだとナナキ自身は考えていたが、敢えてニオイと表現したのは、それがもっとも
近い言葉だと思ったからだ。
「だからモンスターの群れはニオイに引き寄せられているんじゃないかな? 団体行動は苦手だけど、
それぞれが魔晄のニオイを目指した結果なんだと思う。オイラ自身も群れを追っていたと言うよりは、
ニオイに引かれていたようなものだから」
「じゃあ、昔この魔晄炉の上に陣取った母鳥もそのニオイに?」
ダナの言う母鳥の件は、かつてこの魔晄炉の頂に卵を産んだコンドルの事を指している。それは母鳥
と卵を守ろうとした村人と、彼らもろとも排除しようと攻め入った神羅軍との戦いでもあり、ジェノバ戦役の
陰に隠れ世間ではあまり知られていない出来事だった。
「分からない。でも、あのコンドルもオイラ達と同じようにそれを感じていたと思うよ」
どちらにせよ今のコンドルフォートには何もないし、群れの行き先でもない。つまり、これ以上この話を
続けても得られる物はなかった。
ナナキは改めて地面に描かれた地図を見つめる。コンドルフォートとは反対側―ガードハウンドの
向かっていった方角に、さらに前脚を乗せて到達地点を予測する。
「でもこの先は海だ……」
いくら大群とはいえ、ガードハウンドでは海を越えられない。ナナキは項垂れると足踏みをした。確かに
ガードハウンドの向かった先も、ニオイの方角にも間違いはない。だとしたら、この海の向こうに何か―
これまでの話の流れからすると魔晄炉という事になるが―がある。
「仮に海を越えたとしても、この先には何も無いはずよ」
ダナがさらに海より南側の大陸を書き足す。6年前、ライフストリームが多少地形を変えている事は
あっても、略地図としては充分だ。
「ここからジュノンに向かっているのだとしたらまるで見当違いだし」大陸南西部には入り組んだ海岸線が
作り出す海峡と、そこに浮かぶいくつかの小さな島々があり、海峡を越えたさらに南西には大森林を抱え
る無人島があった。
「それに、あの島には村どころか人も住んでいないはずよ」
ダナの説明に違和感を覚えながら、けれどもそれが何と指摘する事ができずにナナキは地面に書か
れた地図を注視している。
(そう、この島には大きな森があったんだ。だけどここって……)
ちょうどその時、ナナキが見つめる地面の上にぽつりと雨粒が落ちて来た。
「ここもとうとう降ってきたわね」
曇天を仰ぎながらダナが呟く。ナナキも顔を上げてダナを見ると、決心したように頷いてから声を掛け
た「ねえ、君?」。
「ごめんなさい、まだ名乗ってなかったわね。私はダナ」そう言ってナナキに笑顔を向ける。
102:ラストダンジョン (368) ◆Lv.1/MrrYw
10/05/04 02:21:41 O6HUDhoT0
ナナキは頷くと、何の躊躇いもなくダナに尋ねた「ダナって重さどのぐらい?」。
「…………」
まったく予想外の質問に、目を丸くしたまましばらく固まっていたダナを見て、ナナキが首を傾げる。
「あれ、聞こえなかった?」
「聞こえてるわよ」明らかな怒気を吹くんだ声に、ナナキはさらに首を傾げる。
「どうしたの?」
「……『どうしたの?』じゃなくてね」両膝に手をついて、ナナキに視線を合わせると、ダナは引き攣った
笑みを浮かべて先を続けた「女性に聞いちゃいけない事が2つあるの。それが、年齢と体重」
「どうして?」
「どうして? って……」こうして面と向かって聞かれると、根拠として述べる言葉がとっさに思い浮かば
ず声を詰まらせた「……マナーよ。そうね、覚えておいて損はないわ」。
ふーんと呟くナナキだったが、どうも納得している様子は無かった。
「言いたくないならいいや。多分ダナぐらいだったら運べそうだから、オイラの背中に乗って」
「ちょ、ちょっと! 荷物扱い?!」
「違うよ」首だけを後ろに向けてナナキが続ける「オイラの方が走るの速いから、本降りになる前にみんな
の所に戻れるって事。そしたらオイラも安心して群を追える」。
ナナキの提案は合理的だった。しかしその方法がよろしくなかった。
「いくらあなたが世界を救った英雄の一人だって言ったって、もう少しデリカシーってものを持ってても
良いんじゃないかしら?」
「なんだよデリカシーって」ナナキにしてみれば、ダナはよく分からないことで真剣に怒っている。でもそれは
自分が知らないだけで、やっぱり世界にはまだまだ分からない事が沢山あるんだと、ダナの意図しないと
ころで前向きな気持ちになっていた。
「もう、乗らないならオイラ先に行くよ?」
「あ、ちょっと待ちなさいってば!」
なんやかんやと悶着の末、ナナキはダナを背に乗せて走り出した。走っている間もあーだこーだと騒ぐ
ダナの声を背中で聞きながら。
(でもこの人、ケット・シーよりはまだ大人しいかな?)
と、前向きではあるのだけれどちょっと愚痴っぽい感想を持つのだった。
----------
・ここでの魔晄エネルギーは、あくまでも都市開発部門視点での認識です。
(魔晄を実験に使う科学部門とはちょっと見方が違います。この辺はまた後ほど)
・コンドルフォートのイベント関連にこじつけたかったけど、ちょっと無理があった。
・3年で1歳(人間換算)で加齢するって事で、ナナキも体格良くなったんだと都合解釈。