11/06/21 20:21:21.13
ものづくりの競争力は、「他に代替できないもの」をつくることによって成り立
つ。同じものがつくれるなら、競争の条件は価格や納期に絞られてしまう。
それゆえどの企業も、研究・開発に汗を流す。設備メーカーと相談し、独自のラ
インを敷設したり、レイアウトを工夫したりする。同じ工作機械を使うにしても、
独自の治具（押さえる機器）や工具を開発して、同業他社との間での差異を付け
る。これは日本の中小企業の優れた技術や技能が発揮されている領域だ。
これに対して経産省は、部品や素材の供給が大震災で滞り、自動車や電機メーカ
ーの生産がストップしたことを受け、部品・素材を共通化する音頭を取り始めた。
いつでもどこでも同じものが手に入るような仕組みを考えるという。
韓国や中国あるいは欧米のメーカーは大喜びするだろう。共通化の過程で、日本
の強みである優れた技術が手に入るからだ。このような「技術・技能を公開せよ」
というに等しい経産省のブランは実現するだろうか。どのメーカーも他社の技術
は知りたがるだろうが、自社の技術は公開しない。当然である。
かつて通産省（経産省の前身）は１９６０年代、中小企業の近代化を進めるとし
て、同業者を一カ所に集めて大工場にすれば能率が上がり、大企業に対抗できる
として、部品・加工メーカーを集めようとした。
しかし、すぐに失敗した。なぜなら、集約化は「自分で会社を経営したい」「自
分のアイデアを生かしたい」といった起業家精神の否定であり、他と一緒になっ
てもよいとする会社はほとんどなかったからだ。机上のブランは繰り返される。
（紙つぶて）
──────────────────
◆この欄は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。