10/12/13 02:14:34 0
>>224
「くそッ、どうやって俺の居場所が解ったッ!?」
男から返ってきた第一声はその言葉だった。
かなり動揺しているようだ。見るからにうろたえている。
菊乃はフッと笑い言葉を返した。
「アンタにそれを教える理由があるのかい?アタシには分からないんだが」
男は暫く黙っていたが、やがて口を開いた。
「…あいにく、俺の能力は正々堂々と戦えないような代物なんでねェ。この体を見ても解るだろォ、とてもまともに戦って生き残れる人間じゃァねェのさ。」
先程までとは打って変わり、大仰なしぐさで会話を再会する男。
「その点じゃ、アンタは生き残れる可能性が高そうだなァ。どうやって2階の窓から飛び込んで来たんだィ?
ッたく、騒々しいったらありゃァしねェ。アンタのお陰でこっちの位置が気付かれたじゃァねェか…」
男の顔に動揺の色は見られない。しかし―
(よく喋る男だねぇ。でも、逆にその所為で心の中が丸見えだよ。
余裕のフリをしてるんだろうが…完全に逆効果だな。
最初にアタシが現れた時に動揺したのが失敗の原因だ。
動揺した後にペラペラ喋る奴は、大概動揺を隠しながら次の手を、打開策を考えている)
菊乃は男の心中を見抜いていた。
研究所から出た後各地を放浪していた菊乃は、様々な人間と出会い、会話し、戦ってきた。
中にはこの手の人間も少なからずいた。
(さて、別に逃げられてもいいんだけど、折角だしやってやるか。
見たところ武器は持ってない。何か体も弱そうだな…。
さっきのコイツの言葉を信じるなら、何かを創り出すか操る能力ってところか)
相手の能力を仮定した菊乃だが、構える様子はない。
「アタシはペラペラ喋る奴は嫌いでねぇ。少し黙ってもらおうか」
そう言うと跪き、床に左手を当て、更に右腕を振り上げて静止する。
「ま、この程度で死ぬなよ?―『重力の戦槌』―」
振り上げた右腕を床に叩きつける。
重力の込められたその一撃は床を容易く打ち抜き、更には家屋全体に衝撃を伝える。
元々ボロかったその建物がその一撃に耐え切れるはずもなく、あっけなく崩れ落ちた。
菊乃は崩れ落ちる寸前に入ってきた窓から外に飛び出していた為、崩落に巻き込まれることはなかった。
「さて、向こうはどうなったかねぇ。死んでなきゃいいんだけど」
瓦礫の山を見つめて、一息つく為に煙草を取り出して火をつける。
(流石にこう瓦礫が多いと退かす気にもならねえ。出てくるのを待つか。…生きてたら、の話だがな。
そういや海部ヶ崎達の気配が遠くなってるな。一緒にいた奴と逃げたのか?
ま、後で追いかければいいか。そこまで遠くには行ってないみたいだからな)
紫煙を吐き出しながらあれこれ考える菊乃であった。
【神宮 菊乃:天木と自分のいた民家を破壊。天木の動向を探る】