■ダークファンタジーTRPGスレ 6 【第二期】■ at CHARANETA2
■ダークファンタジーTRPGスレ 6 【第二期】■ - 暇つぶし2ch31:オリン ◆NIX5bttrtc
10/10/11 18:30:39 0
>「……何を視てきた?」

フィオナに向けて放たれたその言葉
それが何を意味するのか自身に理解は出来ないが、門の居場所を今し方どこかで得たような口ぶりだ
今は詮索をするべきでないと思考を切り替えたギルバートは、神戒円環についての説明をする

帝都交通のSPIN。"門"が持つ膨大な魔力。
それらを語るギルバート。だが、神戒円環にとって最も重要なもの、3人の生贄は含まれていなかった
敢えてか、それとも必要が無いから省いたのか
概要を語る上ではわざわざ言う必要もない、との判断をしたのだろう

>「ただ、こいつは発動するまでにそれなりの時間が必要だ。
 その間ルキフェルの相手をする者が必要ってわけだ。
 そこで問題になるのがヤツの得意とする時間停止。まともに喰らおうものならそれこそ秒殺だが……
 それの対抗手段はさっき見せただろう?」

不敵に口端を吊り上げ、ギルバートは視線を猟犬へと向けた
猟犬の反応を待つことなく、オリンは自身の考えを伝える

「一つ気になることがある。進入経路についてはどうするつもりだ。そして、この大所帯で行動するには目立ち過ぎる。
メンバーを選別して、分かれて行動した方が賢明だろう。それに─」

軽く俯き、一つ間を置いてから

「先刻調べた情報で、気になるところがある。俺はそれを単独で調査したい。」

32:アイン ◆mSiyXEjAgk
10/10/13 16:07:59 0
>「もう分かってるでしょう先生。誰にも頼れないのなら、いつか誰かに頼れるようにいくらでもやり方はあります。
> ―例えば、たくさんの人を救うとか。正義の味方に、彼はきっと協力を惜しみませんよ。そういう男です」

「……臆面も無く小恥ずかしい台詞を吐くな。その内思い出して恥ずかしい思いをするぞ」

目を瞑り溜息を零して、アインは二人が発する淡い灯火の雰囲気を吹き飛ばす。
水を差すのは無粋だと流石の彼も理解していたが、状況が状況なのだ。
明るい話は窮地を脱してからでいい。

「何より、事が終わる前から明るい話をする奴は大抵の場合、最後の最後で死ぬのがお決まりと言うものだ。
 やめておけ。……ともあれ、だ。ソイツには聞くべき事がある。それは白髪も同じ事……」

>「先せ―
>「人間て言うのは、本当に脆弱だな。」

状況の打破に関る話を始めようとした、矢先の出来事だった。
瞬きの内に、ミカエラの頭が仰け反った。
不可視の鎚に殴打されたかの如く。

何が起きたのか分からず、ただアインは目を見開き、反射的に身構える。

ミカエラが床に倒れ落ち、一度小さく跳ねて動かなくなる。
そこで初めてアインは、何が起きたのかを認識した。
つい一瞬前までミカエラがいた場所に立つ、ハスタの姿を。

「……まあ、さもありなん、だな」

警戒心を露にするが、動じはしない。
元々、ハスタ―より正しくはハスタの姿をした何者かは、怪し過ぎた。
わざわざ姿を偽り、ろくな情報も明かさず、これで『信頼』出来る筈もない。
ミカエラと相対するに当たっては戦力として一応の『信用』をしたが、それも終わりだ。
アインの方から仮初の信用の終わりを突きつけるか、ハスタの方から本性を表すか。
元々、その程度の違いだったのだ。


33:アイン ◆mSiyXEjAgk
10/10/13 16:08:42 0
「だが……分からんな。何故わざわざ、ミカエラ・マルブランケとの戦いに力を貸した?
 こんな真似をするなら、端(はな)から僕らに手を貸さなければ良かった。それを一度助けた上で、何故だ?」

>「……なかなか面白い劇だったよ。学者君の方は薄々気付いていたようだけどね。
> なぜこんな回りくどい事をしたんだ、というような顔をしているね。
> ……これはゲームさ。人間を使った、愉快で、激しくて、壮大なゲームなんだよ」

一瞬、ハスタではない姿を垣間見せた相手の言葉に、アインは沈黙。
両眼を細く研磨して、白髪の男を睨め付ける。

「ゲーム、か。……馬鹿馬鹿しい。ついさっき人間は脆弱で、如何にも劣る存在と嘯いた奴が人間に娯楽を求めるか?
 まあ、作り物の……用途に沿って完璧に作られたお前には分からないんだろうな。目的や、楽しみと言うものが。
 人は脆弱だからその人生に目的を見出し、楽しめるんだ。それが出来ないから、お前は人間に娯楽を求めざるを得ない」

そして痛烈に、苛烈に皮肉を吐き掛けた。
直後に、彼はセシリアの手によってハスタの殺傷範囲から離脱する。

「悪いがな、僕達は忙しいんだよ。為すべき事しかないお前と違って、成し遂げたい事があるんだ」

更に毒舌を振るい、同時に咄嗟の事態にも手放さずにいた鞄を開く。
鞄そのものに内臓された魔力と術式を起動して、浮遊させた。
いちいち床に鞄を置いて中を漁る暇は、これから先は無いと予想してだ。

そして彼が手に取ったのは、『手砲』と『爆薬』の詰められた小瓶。

>「容赦なく押し通るよ。―邪魔だからっ!」

「そう言う事だな。娯楽に乏しいなら絵本でも読んでいれば良かったんだ。僕の道を阻むんじゃない」

『爆薬』入りの小瓶をハスタ目掛けて放り、アインはそれを『手砲』で打ち抜いた。


【忙しいので、或いはハスタが目的に関連しない完全な邪魔なので容赦なし。爆発攻撃です】

34:クラウチ・E・ソトスの手記 ◆OPp67eYivY
10/10/13 23:10:07 O
“C・E・Sの手記.CES2A000230”

「知らないな」
隊長はその家畜の質問に答えた。
「元より、全てのものは空より来た。ルキフェルもまた、例外ではない……。
貴様の言う場所には心当たりがある。案内しよう」
隊長はガタス副隊長に「ンカイを連れて他の奴等と合流しろ」と命令した。
私は隊長に同行を願い出て、そして喜ばしい事に、それは受け入れられた。
イグザム修道院跡は、今の家畜達の生まれた場所だ。ここから遥か地下に有る、“古
きものども”の信仰していた宗教の成れの果てだ。
その聖域へは滅多な事では足を踏み入れられない。私も初めての経験だ。
心が踊る。


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

“C・E・Sの手記.CES2A000233”

『あの悪魔のような鼠どもがやったのだ。学者たちには足音の聞き取れない鼠どもの仕業なのだ。
鼠どもだ、壁のなかの鼠どもの仕業なのだ。』

小さな気配が、意識の外側を擦る。
鼠。
壁の中を、一匹の鼠が駆けた。家畜の耳にも聞こえただろう。己の内に僅かに眠る彼らと同じ血がそれを教える。
深淵を歩く。深い闇の中、隊長の持つランプの頼りない明かりは、両脇の岩肌に触れる事すら叶わない。
広い通路だった。声はよく響き、後ろに続く足音は反射を繰り返して喧しい。だが、その喧しさすら、その空間
の広大さを語る物でしかない。少しずつ、その通路は下に傾いていて、ある箇所で、不吉なものを避けるかの様
に急激に折れ曲がり、更に下へ、下へと。
イグザム修道院跡への道程は、大体がこの様な物だった。
「貴様らは自分達を何者だと考える?」
隊長の不意の質問に、その家畜達は“ヒト”だと答えた。勿論、そこには様々な言葉が付け加えられていたが、
結局のところ、要約するとその五文字になる。
「そうか、それではその前提が間違っていたら、どうする?」
壁の中を鼠が駆ける。
その音がする。


【クラウチ・エンド・ソトス『B.C.765(743?)~』
今では正当な教科書にも名前が載るが、長い間伝説としてしか語られなかった存在である。
その理由は、彼には洗礼名が存在する事で、しかし、彼は明らかに異教を信仰していたため、それは甚だ不自然
な所であった。彼を巡る幾つかの伝説とも合わさり、彼は歴史学者達に長い間正当な歴史家であることを疑われ
続けた。
この手記にある「イグザム修道院跡」や異教神話の一部である「壁の中の鼠」の引用から、HPLによってその信憑
性が認められ、紀元前800~400頃の資料の最も価値のある物の書き手として今にその名を残している。
彼のその不自然な名前の理由は、一説には正教(当時最大の規模を誇ったを主神とする一神教)の弾圧から逃れ
るために、仮の名前として付けたのではないかと考えられているが、一風変わった地域名であるとの考え方も持
たれている。結局の所その理由は明かされていない。
彼の書く手記には魔法や竜などの架空の存在が多分に登場し、また彼自身も時折そのような存在であることを示
唆するため、正確な読解は困難を極める。当時の正教の弾圧から逃れるために、隠語としてそのような物を用い
たと推測されている】


35:ルーリエ ◆OPp67eYivY
10/10/13 23:12:16 O
従士隊第三騎竜部隊の騎竜宿舎に三人の騎士達が押し掛けたのは、丁度避難民を地下倉庫に誘導し終え、魔物の
侵攻に備えてバリケードを築いている最中だった。
「騎竜を上げろ?」
何を馬鹿なことを、と取り繕うことなく第三騎竜部隊の隊長は吐き捨てた。周りの隊員もバイザー越しに騎士達
を睨む。とはいえ、それは怯えを含んだ、酷く追い詰められた睨み方だったが。
「糞が、おら、空を見てみろ騎士様よ。何が見えるか言ってみろ畜生めが」
「空が暗い。厚い雲だ。雨が降りそうですな」
「雨?それは下らねえ詩的な表現って奴か?糞が」
「貴公の貧相な語彙の話なぞしておらん。問題なのは、あの厚い雲のせいで軍に対して救難信号が届かないとい
うことでありましてな」
騎士の言葉に残飯を守る犬のような表情を見せた第三騎竜隊隊長は、窓の外、空に溢れ帰った魔物の群れを睨み
付け。絞り出すように呟いた。
「死ねって言ってんのか?」
「或いは、何かを救うためには何かを犠牲にしなくてはならない事もございます」
「……あんたらをここで始末すれば、そんな命令は無かったことになる。ありがてえ事に外には魔物がうじゃう
じゃいる。
ここに来る途中であんたらが死んだことにすれば……」
じりり、と第三騎竜隊隊長の言葉に周りの隊員が短刀を抜く。その目はバイザーに隠れて伺い知る事はできない。
それを一瞥した騎士は酷く落ち着いた口調で彼らに話しかけた。
「これはそんな内々で済む話ではないのです。残念ながら。
私はこの第五騎士団の装備部の書記です。ええ、詩的、と言うのはそのせいかもわかりません」
「大した役職だな、俺たちの格はその程度ってか」
「いいえ、ここにたどり着くまでに私以上の役職が亡くなってしまった次第で……わかりますかな?第一ハード
ルから第四ハードルまで来るだけで、たったそれだけで三十人の部隊が三人になってしまいました。
まるでもう、地獄です。終末です。天使がラッパを吹きに来ても可笑しくない。
わかりますかな?軍を動かさなければ、この都はお仕舞いです。私は貴公に頭を下げているのです。騎士として、
一人の人として」
その騎士は兜を外し、彼らに跪いた。他の二人もそれに習う。
「頭を上げろよ糞野郎」
「大切な仲間を亡くしました。貴公らに同じことを強いるのは、酷な事かと思います。ですが、こればかりは譲
れません、喩え神が外道だと罵ろうが」
「おい、宿舎の連中に騎竜を暖めてこいと言っておけ。俺が上がる」
ゆっくりと顔を上げた騎士に向けて、従士隊第三騎竜部隊隊長は吐き捨てた。
「信号弾の色は何だ、人でなし」



36: ◆NIX5bttrtc
10/10/15 19:42:11 0
蹴り上げられ、宙に浮くミカエラを視認したセシリアに一切の迷いは無かった
術式を紡ぎ、後方へと跳躍─。ハスタとの距離を取った彼女は、憤りを瞳に宿し、振り下ろした魔導杖から三つの火球を放った

>「どういうつもりか、とは訊かないよ。セルピエロ君の指摘が現実になったというただそれだけのことだからね」

>「ゲーム、か。……馬鹿馬鹿しい。ついさっき人間は脆弱で、如何にも劣る存在と嘯いた奴が人間に娯楽を求めるか?
 まあ、作り物の……用途に沿って完璧に作られたお前には分からないんだろうな。目的や、楽しみと言うものが。
 人は脆弱だからその人生に目的を見出し、楽しめるんだ。それが出来ないから、お前は人間に娯楽を求めざるを得ない」

「脆弱で下等だからこそ、遊び道具になるんだよ。君の言う娯楽にね。
人間の弱さや脆さを語るの勝手だけど、そんなことはどうでも良いんだよ。」

魔力を帯びた右腕で飛来する火球を、横一線に薙ぎ払った
ハスタの右手には、無色の片手サイズの戦槌が握られていた。形状を小型化することにより、形成させる時間を短縮させたのだ

更に追撃するようにして投げつけられた小瓶
そして、アインが放った手砲の弾丸がそれを打ち貫いた

「……そう急くことはない。これでも一応、皇帝陛下の命でここまで出向いているんだ。
簡単にここから出す訳にはいかない。ましてや、その程度で殺れるとでも思っているのか?」

ハスタ目掛けて投擲された位置には、すでに彼の姿は無い
一瞬にしてアインの背後付近へと移動し、嘲笑するような笑みを浮かべていた
手にした槍で刺せる距離にもかかわらず、ハスタは行動を起こさない。なぜならば、アインの発した皮肉通りだから
与えられた命令をこなすだけの人形。"成すべき事しか成さない"。意志を持たない忠実な人形だからだ
皇帝から与えられた命令。彼は"人間と戯れて来い"という言葉を実行しているに過ぎない

「もう一度、夢でも見てきたらどうだ?悪夢をな。」

そして、左手に持った紅槍を石畳へ向けて振り下ろす。深々と突き刺さった鮮血の槍は怪しげな光を放つ
柄に刻まれた魔界の刻印が赤黒く染まると、瘴気が煙のように噴射する
ミカエラの"眠りの森"を吸収したそれは高濃度の瘴気となり、強烈な邪気を内包している

「足掻いて見せろ。脆弱な人間らしく……な。」

【火球を弾き、砲撃を回避。四凶から瘴気を発生させる】

37: ◆N/wTSkX0q6
10/10/17 03:43:33 0
【燃え盛る帝都にて・その3】

「なんだよ……なんなんだよっあの化物はっ!」

とある従士は使い物にならなくなった探査針を壁に叩きつけ吐き捨てる。
2番ハードルで生き残った従士達をかき集めて編成された遊撃班は、市街地での作戦行動中に魔物の襲撃を受けた。

家一つ丸呑みにする鈍竜型の魔獣。短い手足と、寸詰まりな胴体と、同僚の血に染まった巨大な口腔。
軍も用いる陸戦ゴーレムでなければ対抗できない第一種大型魔獣に従士達の携行装備ではまるで歯が立たなかった。
放棄された貴族邸に逃げ込みどうにか全滅は免れたが、部隊としての機能は最早崩壊し、ただの死にぞこないの集まりと化していた。

「何人死んだ、今のでっ!」

「損耗率は6割です、班長」

「人数で言え。元が何人だったかもわからねえ」

「死亡が13名、『身体の2割残った者』が2名、4割が5名、8割が7名です」

「……生きてるのは」

「15名、そのうち軽傷なのは班長と自分だけです」

「もう助からねえ奴に、止めが必要なら刺してやれ。動ける奴はそのあと集合」

邸宅は結界がまだ生きていたが、そもそも帝都の設計は魔物が中枢まで入り込むことを想定していない。
外周結界と上空を哨戒する箒隊だけで、街の平和は保たれていた。それゆえの、不意。

「ハードル毎の隔壁結界はなんで発動しねえ。こういうときの為の路面呪詛だろ」

「起動施設を抑えられているんでしょう。あそこは高純度魔力が集中してますからね、真っ先に魔物の標的ですよ」

「他の遊撃班との連絡は?」

「第3、第7とだけ繋がりました。6班はついさっきまで繋がってたんですが―」

「あれか」

邸宅の二階から、街の様子が一望できた。
市街の一角で従士隊の一班が大型魔獣と交戦している。
魔導砲や魔導杖による中距離からの射撃をこれでもかとばかりに浴びせるが、弾幕を突破してきた魔獣の牙の餌食となる。

「……第6班の全滅を目視」

「クソが。あんなのが侵入してきてるなんて聞いてねえぞ。完全に軍部の管轄じゃねえか」

多くの同僚が果敢に向かっていき、そして死んでいった。
アルフレッドは首から上を食われ、マックは薙ぎ払われた尻尾の巻き添えになって死んだ。
ジルバは頭から股まで牙を通され、ソニは腕をもがれ狂いながら自決し、ニッパは魔獣の足跡から潰れた柘榴のようになって出てきた。

「大砲でもありゃ、奴の顔面に一撃くれてやれるんだがな」

「一撃くれてやってどうするんです?」

「そりゃお前、―スカっとするだろ」

「ご尤もですね」


38:セシリア ◆N/wTSkX0q6
10/10/17 03:45:09 0
破滅的な会話を垂れ流す班長と副官の元へ、伝令の従士が走ってきた。片目が血染めの包帯で隠れている。

「班長!屋敷内に入り込んだ魔物の掃討が完了しました!」

「ご苦労。さてどうするよ、これから」

班長は生き残った15人を俯瞰する。

誰も彼もが身体の随所に包帯を巻き、手当ての足りない箇所からは今も赤々とした血を浮かべている。
打ち捨てられた邸宅内には満足な補給物資もなく、各自が携行する最低限の治療具だけが頼りだった。

「おおまかに言って二つ、生き残る為の手段がありますな、班長」

「聞こうか」

「一つはこのまま篭城し、軍が到着するのを待つ。最も安全で、確実なやり方です」

血の臭いを嗅ぎ、吸い、吐く。

「もう一つはあのクソったれ魔獣をぶち殺し、隔壁結界の起動施設を奪還する。少なくともイタチごっこの現状は打破できるでしょう」

「軍の到着を待ってデカブツが死んでから施設奪還ってのは?」

「その頃には結界なんて意味ないぐらい中も外も壊滅でしょうな」

「…………」



39: ◆N/wTSkX0q6
10/10/17 03:46:01 0
屋敷の外から大気が震えた。
大型魔獣の咆哮。それは勝鬨の雄叫びであり、すなわち外の部隊が全滅したことを宣言していた。

「野郎、庭まで入り込んでやがる……!」

「総員、得物の確認。屋敷からありったけの物資をかき集めろ。金庫も全部ぶち壊せ」

躊躇のない指示に班員の一人が跳ね返る。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ班長!まさか、本気であのデカブツとやり合うつもりなんですかい?」

「俺は常日頃から自分には正直でありたいと思ってる。腹ん中煮えたぎってたら、迷わねえよ、もう……!」

「魔獣が鼻先まで来てる状況からここを出て?更に魔物溢れる市街を抜けて施設を奪い返す?15人で!」

「無理だと思うか?」

「当たり前でしょうよ、逃げるだけで何人死んだと思ってんです?こんな状況から生還できたら、そいつは、」

「そいつは?」

班長は班員を見る。その眼は、子供の作る不細工で不揃いな落書きの英雄に似ていた。

「―そいつは最高にスカっとするじゃねえですか」

屋敷内を駈けずり回っていた連中が両腕に物資を抱えて帰ってきた。

「『箒』がありましたよ班長。貴族の道楽用らしくて、すげえ高性能です」

「ばっかお前、空見てみろ。わざわざ喰われに飛ぶつもりか」

「変わらねえだろ、どっちにしろ死ににいくようなもんだからな」

四面楚歌。孤立無援。閉塞戦況。多勢に無勢。
孤軍奮闘する15人の戦士達は、最底辺の戦場で、最低勝率の作戦に身を投じる。

「それでも誰かが生き残って、このくそったれな状況に一矢報いてやれたなら」

「―そうなったら人類、最強だろ」

40:レクスト ◆N/wTSkX0q6
10/10/17 03:46:54 0
【胎動する闇の中で】


ティンダロスの猟犬の隊長格が誘うのは、深い深い闇の深奥。
空間を埋め尽くす黒はランプの灯りに裂かれても尚、果てを見せることがない。

(一体どこまで潜るんだ……もう服が乾いちまったぞ)

装甲服を羽織り直した途端、身体がじんわりと暖かくなった。知らないうちに冷えていたらしい。
日の光も届かない石に囲まれた通路は、体温を根こそぎ奪い取るように寒気の舌を伸ばす。
ときおり壁の中を何かが駆け抜ける音が、辛うじてここが生き物の存在できる場所であることの証左だった。

>「貴様らは自分達を何者だと考える?」

先行し先導する犬兜が、不意に言葉を投げた。
受け取ったレクストは、意味をよく吟味して、返す答えなど一つしかないと結論を出す。

「そりゃお前、人間だろ。ヒトだよヒト。それ以外にあるかよ」

実際のところその言葉は『レクストにとって』真実ではなかったが、質問の本質はあくまで最大公約数的な『貴様ら』だ。
レクスト個人の出自を問うものではなく、また意味のある問いでもなかった。くだらない禅問答だ。
犬兜はレクスト達全員の答えを聞き、少しだけ黙り、そして更に質問を追加した。

>「そうか、それではその前提が間違っていたら、どうする?」

「―ああ?」

言ってる意味がわからなかった。質問の意図がつかめなかった。

「それってつまり、俺達がヒトじゃなかったらどうするかってことか?」

この場でそれを問うということ。
鉄火場で仮定をこね回すことに何か意味があるのかと考え、しかしレクストには皆目見当もつかない。

「どうするもこうするもあるかよ。俺達は別に『ヒトだから』ここにいるってわけじゃねえんだ。
 護りたい何かがあって、護れるだけの力があるなら、それがヒトである必要なんかねえだろ。それはお前らの方が知ってるはずだ」

それに、と言葉を繋げ。

「このご時世、人間であることがそこまで良いってわけでもねえしな」

いつの間にか彼らは果て無き闇の道程を歩き切り、目的地と覚しき場所が見えていた。

「で、一体どこで何をする所なんだよ、ここはっ」


【ルーリエの質問に返答。意味は殆ど分かってない】



41:レクスト ◆N/wTSkX0q6
10/10/17 22:53:28 0
すいません! >>39>>40の間に挿入すべきシーンをコピペし忘れました

↓は>>40より前の時系列です


  *  *  *  *  *  *  *


>「ミアちゃんの捕らえられている場所ですが―」

フィオナが口にするのは、『これから得ようとしていた情報の先取り』。
『神託』や『天啓』に代表される聖術の情報予見であるだろうとレクストは仮定付ける。別行動を取っている間に行使したのだろう。

>「……何を視てきた?」

(……?)

行動を共にしていたはずのギルバートが驚愕していることだけが引っかかったが、すぐに頭を振った。
この男が見通せない程の先であるならば、正しく『神のみぞ知る』領域なのだろうから。

>「こっちが独自に掴んでいる場所もおおよそ変わらん。これで『門』の居場所に大体の目星は付いたか」
>「なら後はこいつが言ったルキフェルを倒す方法を説明しようか。帝都交通の要諦でもあるSPIN。それと『門』の持つ莫大な魔力。
  その二つを使って"神戒円環"を発動させ、ルキフェルをもう一度地獄に叩き返す。簡単にいうとそういう手だ。
  勿論賭けの要素なんぞ微塵も無い。発動すれば最後、間違いなくヤツを再封印出来る代物だ」

「転移術式を直接ぶつける……?よくわかんねえけど、そいつを使えばルキフェルを倒せるわけか」

そんなものがあるなら魔力に自身のある連中を見繕ってさっさと発動すればいいのに。
膨大な魔力が必要とは言うが、それこそ帝都には実力全盛の魔法使いがごまんと集まっているのだから。
あくまで大局を捉えないレクストは、朧気にそんな感想を抱く。

>「ただ、こいつは発動するまでにそれなりの時間が必要だ。その間ルキフェルの相手をする者が必要ってわけだ。
  そこで問題になるのがヤツの得意とする時間停止。まともに喰らおうものならそれこそ秒殺だが……
  それの対抗手段はさっき見せただろう?」

(やべえ、知らないうちにまたしても置いてきぼり喰らってないか俺)

>「一つ気になることがある。進入経路についてはどうするつもりだ。そして、この大所帯で行動するには目立ち過ぎる。
  メンバーを選別して、分かれて行動した方が賢明だろう。それに─」

レクストの憂慮を切って、オリンが言葉を繋ぐ。

>「先刻調べた情報で、気になるところがある。俺はそれを単独で調査したい」

「マジで言ってんのかそれはよ」

こんな得体の知れない場所で一人になるなどそれこそ自殺行為。
このオリンという剣士は出会って日こそ浅いものの強力な魔法と卓越した剣技を持つ優秀なアタッカーだ。
ここで分かれるのは正味の戦力で言ってガタ落ちしかねないので、レクストとしてはあまり賛成はできなかった。

(でも、こいつのいうことも確かだ)

このまま全員で赴いて、『やっぱり罠だった』なんてことになれば目も当てられない。
リスクを分散する意味でも、ここはオリンを行かせるべきだろう。

「わかった。俺はこのまま先へ進むから、アンタとはここで別行動だ。死ぬなよ、必ず日の下でまた会おうぜ」

仄暗い闇に紛れて、オリンの顔はよく見えなかった。


42:セシリア ◆N/wTSkX0q6
10/10/18 00:47:50 0
【折衝】


偏差軌道で放った三発の火炎弾は、一発を躱しても二発目が迫り、二発目を防いでも虎の子の三発目が穿つ寸法。
対人戦闘でこれを受けて生き残るには、圧倒的な防御力か、殺傷圏外への脱出の他に道はない。

>「脆弱で下等だからこそ、遊び道具になるんだよ。君の言う娯楽にね。
 人間の弱さや脆さを語るの勝手だけど、そんなことはどうでも良いんだよ。」

果たしてハスタは、そのどちらでもない第三の活路を拓いた。
高密度の魔力で一閃し、針の穴通す精密さで三つ全ての火炎弾を同時に抉り抜いたのだ。

(疾い―それに、場慣れしてる!)

当然といえば当然だがハスタはハンター、純然たる戦闘職だ。
技術ばかり達者で戦闘経験に乏しいセシリアや、戦闘技術とはそもそも縁遠いアインとでは深く志向を異にしている。

>「……そう急くことはない。これでも一応、皇帝陛下の命でここまで出向いているんだ。
  簡単にここから出す訳にはいかない。ましてや、その程度で殺れるとでも思っているのか?」

「皇帝陛下が……?そんな、私たちの作戦行動が漏れてた?どこから!」

アインの放った瓶が炸裂し、閃光と爆風が駆け抜ける。
既にそこにハスタはいなかった。疾風の如き速さでアインの背後をとり、しかし刃を振るわない。

「もう一度、夢でも見てきたらどうだ?悪夢をな。」

(―来る!)

ハスタが槍を地面に突き立て、それを起点に術式が発動する。
セシリアは反応できた。土壇場でハスタが何をしようとしているか予見し、それは見事に的中した。

瘴気。
天地創造"眠りの森"―ミカエラの錬金術式をこの槍が吸収していたのを覚えている。
覚えているから分かった。分かったから動けた。槍が瘴気を放つ一瞬前に、セシリアは術式を組み上げきった。

「『烈風』―!」

杖先から術式が迸り、それは大気を揺り起こした。
喚起するのは逆巻くつむじ風。捻れた風は竜巻となり、瘴気を取り込み巻き上げる。
ミカエラの術式は完全なる不意打ちだったが、来ることさえ分かっていれば瘴気にも打つ手がある。

あくまで『気体』なのだから、周囲の大気ごと封じ込めれば良いだけだ。
それが不可能なら単に吹き飛ばすだけでも瘴気濃度は降下し幻覚作用も薄くなる。


43:セシリア ◆N/wTSkX0q6
10/10/18 00:50:02 0
「―価値観が安いね。人間を弄んで上に立った気でいるの?
 そんな薄っぺらな全能感で満足できるなら、人形遊びでもしてれば良い。人間より脆くて弱いよ」

挑発返しである。
弁舌豊かに理屈の脆さを突付く傍で、並行して床に魔法陣を書き終わっていた。

「天地創造―『ファランクス』」

床材が隆起し顕現するのは大男二人分の巨躯を持ったゴーレム。

陸戦型に代表されるタイタン級とは比べるべくもないサイズだが、小さい分室内戦に特化した能力を持つ重装歩兵である。
搭乗式の『ミドルファイト』や撹乱目的の『レギオン』と違い、術者の傍に置いて戦うタイプの白兵型ゴーレムだ。

「―人間より重くて硬いけどね」

『ファランクス』が腰の大剣を抜いた。

同じく床材で作ったそれは、叩き潰すことだけを目的とした白亜の剣。
書き込まれた命令通りに、『目の前の敵を叩き潰す』。

《セルピエロ君、ミカエラ先生の保護をお願い―》

魔力伝心をアインに繋ぎ、秘密裏の言葉をやりとりする。

《皇帝陛下が動いたというのが気になる。もしかしたら私達は既に誰かの術中にあるのかもしれないよ。
 とにかくこれだけ派手にやらかしたらいつ人が来てもおかしくないし、一時撤退した方が良いんじゃないかな―》

それは有り体に言って、逃げる算段だった。


【ハスタ(?)相手に苦戦。ゴーレムを練成し3対1の状況へ持ち込む】
【勝つ目がないので撤退をアインに提案】
【『ファランクス』はNPC扱いで適当に料理しちゃって下さい】

44:フィオナ ◆tPyzcD89bA
10/10/18 22:07:21 0
『元より、全てのものは空より来た。ルキフェルもまた、例外ではない……。
貴様の言う場所には心当たりがある。案内しよう』

異装の魔人に誘われた先は更なる深淵。
地下水道から外れ、地下へと延々に続く通路を歩いていく。

(本当に此方で良いのでしょうか……)

道案内を頼んだ手前、そうは思っても口には出せない。
神託の中で視たミアが囚われている場所。そこはてっきり天帝城の中だと思っていたのだが。

同行する猟犬は二頭。
一人はティンダロスの首魁。もう一人は不意打ちの際に弓を構えていた者だろう。
先頭を行く猟犬が持つランプの光も通路の両端を顕にすることは適わない。
話に聞く"地獄"に通じる道がこのような物なのかもしれないと錯覚しそうになるが、時折聞こえる鼠の駆ける音がそれは杞憂だと告げている様でさえあった。

『貴様らは自分達を何者だと考える?』

『そりゃお前、人間だろ。ヒトだよヒト。それ以外にあるかよ』

唐突に投げかけられる猟犬の問いかけと、それに応じるレクストの返答。
フィオナもやはり同様の答えを口にする。
帝国人。ヴァフティア生まれ。ルグスの神殿騎士。自身を表す呼び名は数あれど、そんな肩書きを聞いているわけではあるまい。
ならば結局"人間"ということに尽きてしまう。

『そうか、それではその前提が間違っていたら、どうする?』

しばしの沈黙の後、再び猟犬の口から紡がれる問い。
先の質問もそうだがこの男が伝えたいことはどういった意味を持つのだろうか。

『それってつまり、俺達がヒトじゃなかったらどうするかってことか?』

前提が違う。ということはつまりレクストの言葉通りの意味を指すのだろう。
人間で無いのならば一体何だというのだろうか。

『どうするもこうするもあるかよ。俺達は別に『ヒトだから』ここにいるってわけじゃねえんだ―』

護りたい何かがあって、護れるだけの力がある。ならばそこに種族は関係ない。
そうレクストは締めくくった。
当たり前のことを当たり前に口に出来る。だからこそ同じ目的の下集った者達の誰もが、レクストをこそリーダーとして認めているのだろう。
そこに技量や知識は関係ないのだ。

「そうですね。かつての私達が何と呼ばれていたのかは知りませんが、だからといって姿や在り方が変わる訳ではありません。
 ならばそれは、やはり「ヒト」なのではないですか?
 もっともそれは傲慢な考えだと言われればそれまでですけどね。」

フィオナも自身の考えを猟犬に伝える。
だが、これだけでは質問に答えただけだ。その裏にある意図まで汲み取ったわけではない。
ゆえに続けて問いかける。その意図を探るために。

「ですが……此処に来てそれを聞くということは、この先にあるのですか?その答えとなるものが。」

45:フィオナ ◆tPyzcD89bA
10/10/18 22:11:44 0
『で、一体どこで何をする所なんだよ、ここはっ』

深い闇に包まれた通路を踏破し、目的の場所に着く。
第一声を切ったのはレクスト。
最後尾ではギルバートが「ほう……」と感慨深そうに呟いている。

ティンダロウスの猟犬が掲げる光に照らされたそこには、すでに朽ちて久しい建造物があった。
フィオナも短剣に灯した明かりを頼りに外壁の細部を見る。

(え?これって)

帝国でも見られるものから、僻地にでも赴かないことには残っていないもの、書物の中にのみ存在するもの。
果てはまるで見たことの無いものまで、様々な様式が入り混じった折衷様式の建造物。

現在の建築様式からは酷く逸脱したものではあるのだが、この建物の持つ存在理由はフィオナにとって身近な物の様に思えるのだ。

「これは……もしかして修道院跡、ではないですか?」

放つ雰囲気こそ眉を顰める物ではあるのだが、それはたしかにフィオナの人生に於いて大多数を占めるであろう物に酷似していた。
刻まれる奇怪な紋様は祀られる神を讃えた聖句なのだろうし、朽ち果てているためはっきりとはしないが聖堂や修室らしきものも見てとれる。

(だけど……だとしたら一体何を……)

自身の宗派だけでなく他宗派の聖印も神官の端くれとして覚えているフィオナだが、この建物に刻印されるそれは見たことすらない。
太古に栄えた宗派の一柱を模したものなのだろうか。
いくら頭を捻ったところで無から有は生まれない。ならば聞いてみるしかないだろう。

「此処は一体……何と言う神を信奉する場所なのです?」

何処か歪つな、その修道院の放つ雰囲気に気圧されながら、フィオナは猟犬へ問いかけた。

46:アイン ◆mSiyXEjAgk
10/10/21 23:07:37 0
>「脆弱で下等だからこそ、遊び道具になるんだよ。君の言う娯楽にね。
 人間の弱さや脆さを語るの勝手だけど、そんなことはどうでも良いんだよ。」

ハスタの言葉に、アインは両眼を険で研ぎ、眉を顰める。
再び皮肉の毒を塗りたくった口舌の刃を振るおうとして、しかしそれは叶わなかった。

>「……そう急くことはない。これでも一応、皇帝陛下の命でここまで出向いているんだ。
  簡単にここから出す訳にはいかない。ましてや、その程度で殺れるとでも思っているのか?」

ハスタが視界から消えて一瞬、背後から不遜な声色が響いた。
息を呑む切迫に弾かれてアインが振り返る。
振り返りざま二本目の手砲を構え、突き付け、ハスタはただ嘲笑を面に貼り付けていた。

全てが、文字通り致命的に遅かった。
アインは戦士や格闘家ではない。
戦闘に対する信念など持ち合わせていないからこそ、この現状にただ戦慄を覚える。
相手がその気であれば自分は命を落としていたと言う現状に。

そして、しかし―戦闘への思い入れがないからこそ、彼の思考は心から滲む焦燥に侵されず、冷静だった。

>「皇帝陛下が……?そんな、私たちの作戦行動が漏れてた?どこから!」

「……銀貨の連中がいたんだ。似たような奴らが僕らを見ていたとしても、不思議じゃない」

或いは目の前の男こそがそうだったのかもしれない。
如何なる術式かは分からないが変装の技能を持つこの男なら、容易い事だろう。
酒場でも、城外の駅や門でも、何処であろうと監視が出来た筈だ。
だがアインの思考はそこまでで中断を余儀なくされる。

>「もう一度、夢でも見てきたらどうだ?悪夢をな。」

床に槍が突き立てられた。
何かが来る。アインに分かったのはそこまでだ。
魔力の流れが読めないアインには予想は出来ても、予測が出来ない。
何よりも、対処が出来ない。
それでも出来る事は、ある。

「エクステリア、頼んだぞ」

頼る事だ。不完全で未完成だからこそ、出来ない事を他人に委ねられる。
そしてセシリアはアインには出来ない事を、魔力の風を以って瘴気を払い除けた。
更に彼には担えない攻め手をも彼女は創造する。
ならば次は、アインが出来る事を、すべき事をする時だ。

>《セルピエロ君、ミカエラ先生の保護をお願い―》

頼まれた、とアインは返す。
同時に鞄からフラスコ瓶と小瓶をそれぞれ二本取り出した。
内容物は『酔いどれガマの吐瀉物』と『爆薬』。

「眠るのは……お前の方だ!」

挑発的な言葉の後を追わせて、瓶をハスタの足元付近に叩き付ける。
事と場合によっては、彼の行為は敵に武器を与える事に他ならない。
しかし、試しておきたい事があったのだ。

試行すべきは二つ。
第一に、『ハスタは魔力を有さないが毒性である気体を吸引出来るのか』。
次に『もしも出来るのならば、その際に同時に散布した爆薬はどうなるのか』。

47:アイン ◆mSiyXEjAgk
10/10/21 23:08:20 0
(真っ向勝負の正攻法では、奴には到底叶わない。なら何か他の手が必要だ。
 第三の戦力を期待するか……或いは)

絡め手を用い、戦局に毒を仕込むか。
相手に悟られぬままに致命的な何かを忍ばせて、命を奪う。
彼が撒いた気体と爆薬はその何かを見極める為の判断基準だ。

>《皇帝陛下が動いたというのが気になる。もしかしたら私達は既に誰かの術中にあるのかもしれないよ。
> とにかくこれだけ派手にやらかしたらいつ人が来てもおかしくないし、一時撤退した方が良いんじゃないかな―》

仮にそれらが通用しなかったとしても最低限、今この場において牽制にはなる。
『酔いどれガマの吐瀉物』を返されたとしても、セシリアならば対処出来る。

故に彼は床を蹴った。
卓越したとは言い難い脚力を最大限用い、ミカエラの元へ跳ぶ。
そして浮遊する鞄を手繰り寄せ、彼女に勢い良く被せた。
内部拡張の術式を秘めた鞄は、抵抗なくミカエラの全身を飲み込み、隠す。

矢継ぎ早に、アインは鞄のダイヤルを指で弾く。
ダイヤルの役目は、錠ではない。主の登録ならば魔術が担った方が効率的だ。
三桁の自在な数字が担うのは、鞄の中の位相変更。取得物の選択。
取り出されたのは、薄い椀型の陶器を二つ貼り付けて出来た球体だった。

「こいつもオマケだ。くれてやる」

アインはそれを先程を再現する動きで床に落とす。
内容物は炭と爆薬、黒煙を生み出す為の混合物。

陶器が割れて、陶器自体に練り込まれた鉱物が火花を生み、爆薬に着火した。
くぐもった破裂音と共に、暗幕が広げられる。

生じた黒煙をハスタがどう処理するのかも見ておきたいが、欲張れない。
彼我の実力差は絶大だ。逃げ切れなければ、終わりもあり得る。
一度は見逃されたが、次もそうしてもらえる確証はない。
次を得る事に全力を注ぐべきだからこそ、アインは余所見をしない。

「行けるぞエクステリア」

先んじてセシリアの隣を駆け抜け、アインはすれ違いざまに声を残す。
待つ必要はない筈だ。
彼女ならばものの一息で彼に追いつき、襟首を引っ掴んでくれるだろう。

「だが……僕らはまだ何も肝心な物を手にしていない。
 それを踏まえた上で、何処へ、どうやって逃げる?」

【魔力の無い毒性気体と、同時に散布された爆薬がどう処理されるかを検証
 撤退に賛同しつつ、まだ必要な物がある筈だと提示】


48:オリン ◆NIX5bttrtc
10/10/23 22:48:27 O
猟犬の駐屯地から天帝城へと駆け上がり、地図に刻まれた印を目指して突き進む
場内は不自然なほどの静けさに満ちており、何者の気配も感じることは無かった
目指す、というより半ば導かれるように足が自然と複雑な城内部を進み、石畳に足音を反響させる


窓の外からは悲鳴、怒声、打撃・斬撃音などの喧騒が聞こえてくる
配布された赤眼の降魔に抗える者はいないだろう。手にした者の大半は戦闘能力の無い一般市民だ
それらを計算した上での策。人間側が数で勝るとしても、魔族一体に幾つの人員が必要か


「……。」


思考とは裏腹に一切の感情が沸くことは無く、機械的に状況を整理していた
床を踏み拉く足は歩みを止め、辺りは静けさを取り戻した。正面には一見、他と変わらない装飾が施された壁
どうやら此処が地図に記された場所のようだ。罠である事は十分に考えられたが、何も起きる気配は無い


─突如、ペンダントに淡い光が灯る
正面の壁に刻印が浮かび上がり、鳴動と共に亀裂が走る。人間一人分ほどの正方形を形作ると、隠し扉が現れる
掌に持っているペンダントが浮遊し、中央の窪みに填め込まれた
塵や埃を四散しながら、徐々に開かれてゆく扉
その先には闇が広がり、奥まで視認することは出来ない


(……この先に俺の過去が、記憶が全てある。解る、この身体がそう訴えている。)


深淵から風が靡く。何処か懐かしい匂いを嗅覚が捉えた
形容し難いものだったが、心に一つの光景が浮かぶ。宿で倒れた際に見た、林立した自然に囲まれた村
五感が、本能が、深層意識が、その一枚絵の様な風景を知っている。いや、覚えている


何故此処まで来たのか。これは自分の意志か。それとも、何者かの意に依るものか
目覚めてから現在に至るまでの軌跡は、"自分"であったのか
過去の自分か。記憶を失ってからの自分か


(……覚悟を決めろ。受け入れろ……自分を。本当の俺を。)


ペンダントを窪みから取り外し、目を瞑った
宿で見た幻視、現実世界へと引き戻されたときに、自身の手に握られていた血塗られたペンダント
ヴェイトとの会合。戦闘後に床に置かれていた、この天帝城の地図─
あまりにも出来過ぎている。都合良く。誰かの掌で踊らされていると感じるほどに
軽く頭を左右に振ると、迷いを断ち切るように前を見つめ、深淵の奥へと足を踏み入れた


奥へと歩む彼の後姿を、鋭利な視線で捉える一つの人影がいた
完全に闇に溶け込み姿を消したオリンを確認すると、その人影は扉の前へと姿を現した


「やっぱり何かありましたね、あの人。水中花の勘は伊達じゃないわね。」


そう呟いたのは、皇帝直下独立隠密衆"30枚の銀貨"の一人、傀儡椿だった
彼女は周囲に気配が無いことを確認すると、眼前に広がる闇へと音も無く駆けていった

49:オリン ◆NIX5bttrtc
10/10/23 22:50:53 O
到達したところは、中庭を連想させるような小さな空間だった
優美で荘厳。王族の様な気品に満ちたその空間は、重苦しい天帝城に在るとは創造し難いほど、暖かな場所だった
目に付いたのは、中央に佇む巨大な円形の檻。バラが格子に絡み付き、天から注ぐ魔力の陽に照らされていた
その光景は、一枚の絵画のようだった
そして檻の周囲には棺の様な台座が三つ、それぞれの上には目を閉じた男が横たわっていた

視線を戻し檻へと近づくと、鈍い音を立てて格子の扉がゆっくりと開いた
床一面に敷き詰められた花。中央には目を閉じた女性。栗色の髪だ
それを目にした瞬間─心の臓は動きを早め、口は渇き、黒く熱い衝動が身体中を巡った

─村で栗色の髪の女性との談笑する光景

─幽かな煙が立ち昇る、焼失した村

─物と化した骸の山

─磔に括られ、串刺しにされた女達

「─……。」

過去になにがあったのか。瞳の裏に映る記憶。紡がれる事実
何をしてきたか、どんな選択をしてきたのか。数多く甦る過去に、自身の思考が追い付かない
そんな状況下に、此処にたどり着くまで幾度か聞いた声が、再びオリンの脳へと響いてきた。今までよりも鮮明に

下らない情は必要無い。お前は、ただ"修羅"で在ればいい─

「……修羅。」

─思い出せ。忘れることは許されない。宿せ、憎しみを─

「……俺の、憎しみ……。」

"剣帝"の力を持つものは貴方だけじゃない。私以外にも同様に持つものが存在する。

「……そうだ、俺は─。」

オリンの双眸に暗い光が宿り、殺意と憎悪が侵食してゆく
同時に毛先が白金へと変色し、髪色は完全な白金に染まった
負の全てを背負ったかのようなその瞳で、眼前の女性に視線を向けた。瞳には僅かに悲愴の色が混じる

何故、ジェイド・アレリイを始めて視認したときに、彼が"反魂の術"を受けた者だと理解したのか
そう、いま目の前に居るこの女性が、"反魂の術"の被験者だったからだ

約10年前に起きた、小さな村が滅ぼされた事件。自分は、その当事者だ
駆け付けたときは既に遅く、何もかもが蹂躙された後だった。彼女を弔っていたとき、自分の前に現れたのが、ルキフェルだった
以降、男は人を憎み、魔道へと堕ちた。ただ、生命を破壊するだけの"修羅"と化し、ルキフェルの"剣"として名を馳せた
それが彼女のためであり、剣である自分のためであり、この世への生きる意志そのものであった
魔族側に付いたこの男は"剣帝"としての力を揮い、圧倒的な強さを見せ付けた
だが、7年前のゲート争奪戦において重傷を負った。剣を握るの事すら出来ず、遠のいてゆく意識
そして彼が目覚めた場所は戦場ではなく、何処かの研究施設のようだった

50:オリン ◆NIX5bttrtc
10/10/23 22:53:02 O
ある錬金術師の実験……いや、趣味か娯楽か性癖か、研究の結果として与えられた力。それがこの波動の力だ
例の黒甲冑を元に魔法を無力化し、打ち砕く力を植え付けられた。身体の修復は、そのついでだったのだろう
闘気をベースに作られた波動は、肉体強化に特化した補助能力
未だ完成形では無いにしろ、実戦で扱うには十分なものと言えるだろう

その錬金術師は、人格こそ常軌を逸したものではあったが、頭脳は常人を超越するほどのものだった
皇帝管下の元、"執行者"計画にも携わり、気紛れで人狼の生体実験を行っていたとも言われている

─過去を知るべきだったか。それとも知らない方が良かったか
誰の声か、数刻前の自分の声か。不意に過ぎる問いかけは、すでに何の意味も成さないものだ

「……人は愚にも付かない存在であり、抹消すべき生き物だ。"あの日"から俺は……それだけを糧にして此処まで辿り着いた。
オリンで在ったのは、何も持たない中身の無い人形だ。今の俺が、本当の自分自身だ。」

>「随分遅い目覚めだったな、"オリアス"。」

背後に響く声。振り返ると、空間が歪み亀裂が入る。闇が溢れ、人を形成した
姿を晒したのは深紅のドレスを纏った長身の美しい女性。ルキフェルと肩を並べる力を持つ魔族─バルバだ

「……やり方が回りくどい。執行者を当て付ける必要はあったのか?」

>「……ヴェイトの件か。ナヘルも一応は、我らの仲間だ。私は反対したのだがな。だが、結果は得られた。」

「……此処に眠る彼女、そして棺に眠る男。神の影─"ファルヴァルシ"は失敗に終わったのか。」

>「お前がいる。すでに必要は無くなった。長居は無用だ、ルキフェルが待っている。」

彼らの会話を庭園の入り口付近で影に身を潜め、探る者が一人
傀儡椿と名乗った少女─チタンだ。帝都での一件から、オリンに位置探知の術式を仕込ませていたのだ

「ああ。だが、その前に─。」

チタンが一つ瞬きをすると、オリンの姿は在らず
気配を察知したときには、すでに遅かった。背後から振り下ろされた当身により、彼女の意識は現実世界から乖離した
オリンがそれを肩に担ぎ上げると、バルバの創り出した闇へと姿を消していった

【記憶を取り戻し、尾行していたチタンを気絶させる。バルバと共にルキフェルの所へ移動。】

51:名無しになりきれ
10/10/24 22:19:58 0
保守


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