10/10/02 00:26:16 0
いつの間にか路地裏の会合に紛れ込んでいた秋葉系バンダナ男。
ひとみが二時間ドラマの端役の顔を思い出すような努力の果てに男の顔を認識したというのに
彼はこちらを覚えている様子がない。
考えてみれば当然。あの決戦の最中、戦闘力の無いひとみは殆どの時間身を隠して行動していたのだから。
全面核戦争後の世界で生存者に出会ったかのようなテンションでハシャギ回るこの男を、
ひとみは冷ややかな視線で眺めていた。
(何こいつ…?ウザさ通り越してるわ…面倒くさぁ…)
思わず口から正直な感想が零れそうになるが、堪えて視線を彼のスタンドに向ける。
歯車を意匠にした機械的なスタンド。
しかし今は能力への興味より先に、否応無くスタンドの抱える『人面果実』に目を奪われる。
秋葉男はギャラリーの視線に気づいてか――唐突に突拍子もない行動に出た。
事態を生暖かく見守る場の面子一人ひとりに、その奇妙な『実』を配り始めたのだ。
やけに手際の良い分配。男は拒む間も与えず一同に数個ずつ『実』を押し付けていく。
>「この実をここにお集まりいただいた皆様方にもれなくプレゼントしよう。食べて良し、使って良し、飾って良しの優良物件だ。
>ルックスもイケメンだぞっ―それでこいつを手土産に、俺の望みを聞いて貰いたい。なに、そこまで難しいことじゃないさ」
>「―暇なので構ってくれ」
想定を越える出来事に、ひとみは暫し呆然と両手に乗せられた気味の悪い実を見つめていた。
掌に伝わる生温かさと脈動……
――沈黙の刹那を越えて…―現場に響き渡る女の悲鳴。続く怒声――
「なッ……!!!
何よ!!これッ………!要らないわよッ…こんなものッ!!
よくもこんなキモいモノの触らせてくれたわねッッ!!!この屑男ッ!!
キモメン谷だかハム太郎だか知らないけど
あんたなんて10万貰っても絶対構う気にならないわ!!
この実で『願いが叶う』ですって?寝言いってんじゃないわよ!
あんたとあんたの背後が言ってるだけでしょ!説得力皆無ッ!
こんなもの手渡されて、誰が『ハイ、そーでスか、スゴイですネー』ってお礼言うと思うのッ?
何?!あの人面フルーツ!!信じられない!!もう手を洗わなきゃ一秒だっていられないッ!
もう――私帰るッ!!」