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少年の精神に入り込み、記憶の断片を読み取る佐藤ひとみ。
――見えてきたのは奇妙な造りの狭い部屋…壁も柱もアルミ製、無機質で殺風景な部屋だ。
頑丈な鋼鉄製のドアの小窓には鉄格子が嵌っている。
「何だ?!何が起こったんだァ?毒ガスか?ウイルスか?!」
バタバタと近づいてくる大勢の足音。扉の鍵を開ける音。
顔をガスマスクで覆い武装した男達が部屋に踏み込んで来る。
「ダメだこっちの囚人もやられてる!!これで22人…!ワーストの連中全滅か。」
……男の声を最後に薄れていく意識。
記憶の場面は転換し魚の骨を頭に乗せた骸骨男が目の前に現れる。
>『―“愚者” “魔術師” “女教皇” “女帝” “皇帝” “教皇”“ 恋人”
>“戦車” “正義” “隠者” “運命の輪” “力” “吊された男”
>“死神” “節制” “悪魔” “塔” “星” “月” “太陽” “審判”“世界”…
>…ついでに記憶Discも合わせて…よし44枚!ハッ』
骸骨の腕から枝分かれした細長い指の骨がディスクを弾く。
ディスクの両面にはアルファベットで名前のようなものが表記されている。
魚の放ったディスクが額に吸い込まれ数秒後…起動音と共にクリアになる意識。
>『気に入っていただけたかな?…中にはご要望に添えなかった方もいるようだけど…支度はできた。
>本当に久しぶりだな諸君!その間、多くのことが変わったし、変わらないもの多くある。絶対的価値は不変さ。
>これまでの時間はちょっとした遅れに過ぎない。かねてよりの必然が遂に結実するのだよ」
魚の骨が漏らす不気味な反響を伴った声。
――そこでヴィジョンは途切れた。
「この記憶…交差点で人を殺しまくってた頭のおかしい女子高生の記憶と同じだわ。
そしてこのディスク…!カラスの死骸から生まれた物も同じ…!」
精神干渉を解除したひとみはバッグから携帯電話と名刺を取り出し灰島に電話をかける。
「灰島さん?今すぐここに来てくれない?
あなたの所に来たタレコミの手紙…"刑務所"とか"死刑囚"ってキーワードがあったわよね?
追っかけてるオカルトまがいの事件の情報が得られるかもしれないわよ。
場所はあなたの目の前に出てきたシートの地図に従って。
その位置からだと3分もあれば来れるでしょう?それ以上は待たないわよ。」
通話しながら目に見えぬほど微細にした触手を少年の耳から体内に侵入させていく。
触手の目指す先は脳内麻薬を分泌させる脳下垂体前葉。
10秒しか持たない精神干渉より麻薬を使った尋問の方が効果的。
これから始まる"尋問"の準備を整え灰島の到着を待つ。
【マイソン君の名前間違えてたァーッ!マイソン君の脳内に見えない触手を侵入させて尋問の準備中。
灰島さんの携帯に電話して呼びつけてます。よかったら布良さんも現場に来てください】