10/08/07 23:32:58 0
>>29
目的はあれど行く当てがないというのは、実は割りと人の心を磨耗させる。
その事実に布良が気がついたのは、歩き始めてからほんの数分の事だった。
コンビニでアイスでも買って帰ろうかナァ、と早くも決めた意志が折れ曲がりかけながら、交差点を歩く。
(…………!)
瞬間、ゾクリ、と冷たい何かが背筋を走った。
「……んに?」
だがその感触は、ぽに、とした、訪れた感覚からは程遠いほどのどかなものだった。
小学校の時に体育の授業で使った、やわらかいゴムボールが一番近いだろうか。
振り返ると同時に、男の手が布良の頭に触れた。
>「君…かわいいね。よしよし」
(…………)
その声と仕草を受けて、妙な嫌悪感が体を走る。
即座に思いついた三つの選択肢から、どれを選ぶか彼女の脳は既に吟味を始めていた。
1:大声で「痴漢だぁぁぁーっ!」と叫ぶ
2:無言で睾丸に蹴りを叩き込む
3:「うふふ、ありがとうございます」と偽りの笑顔でこの場をやり過ごす
よぉし二番にしよう、と足を軽く浮かせた所で、体が止まる。
(私は今、ある程度の警戒をしていた……のに)
(何をされたかまったくわからなかったし、何時近寄られたのかもわからなかった……んだよね)
それは単純に、実戦経験の差として現れたものなのかもしれない。
男はそのまま去ろうと行く……しかし。
「…………んー、何か気になるなぁ、気になるよ」
勘違いかもしれないが、特にやる事もない。
ならば、試してみる価値はあるのかもしれない。
どうせ相手は年頃の婦女子の頭に勝手に手を置く変態だ、何をしても構わないだろう。
失礼な思考のまま、布良はその男の後姿を追うことを決めた。
【ジョージさんを追跡開始】
【わかりやすく着いていくのでスタンド使うとばれるかも】