11/09/24 09:03:33.40
紙片を手にした私は、それが禍々しい本のしおりではなく、
封印に類するものであると気がついた。
気がついたのは、亡き祖母から伝えられた「おまじない」を思い出したためで、
その「おまじない」は恐ろしいものを近づけない魔除けのおまじないとして
一族に伝わるものだった。
今や異常な熱気に包まれた母屋からは、繰り返し意味不明の叫びが聞こえてくる。
「おまじない」同様に聞き慣れない言語であるそれは、
「おまじない」とは逆に、恐ろしいものを「呼び寄せる」叫びだった。
今や母屋だけではなく、家中が異常な喧噪に包まれ、
誰も彼もが家中を駆け回り、叫び続けている。
紙片を握っていたために支配から逃れられていた私は、
心の中で「おまじない」を一心不乱に繰り返し続けた。
969:NPCさん
11/09/24 09:08:24.61
「おまじない」を繰り返すうち、私は次第に忘我状態に陥った。
体が水平に浮き上がり、雨戸へと吸い込まれるように近づいていくが、
体は雨戸にぶつかることなくそのまま通り抜け、往来へ出る。
しかし体全体が雨戸を通り抜けることなく、
常に雨戸を「突き抜けた」状態で出入りを繰り返す。
家中を走り回る親族の熱狂的なトランス状態とは相反して、
冷たくクリアなトランス状態に陥った私が理解したのは、
「おまじない」は下位の「良くないもの」を退ける効果の言葉だったが、
上位の「良くないもの」には効果がなく、
上位の「良くないもの」は開いた窓から入ってくるので、
窓を開かせないことで良くないものから逃れようと、
私自身が窓を突き抜けることで、かけがねとなっていることだった。
970:NPCさん
11/09/24 09:10:41.52
母屋の喧噪と混乱は最高潮に達する。
「良くないもの」が降臨し、家族が一人また一人と、
想像を絶する禍々しいやり方で「喰われて」いくのが
トランス状態の私に伝わってきた。
幼い弟が「喰われた」とき、私は理解した。
「良くないもの」が、最後の一人である私のもとへとやってくる。
あの本を媒介にして呼び寄せられた「良くないもの」は、
おまじないによって退けられていた「良くないもの」ではなく、
「閉じた窓」からやってくる、別の「良くないもの」だったのだった。
971:NPCさん
11/09/24 09:15:30.80
「私」が喰われた後、視点は往来にうつる。
「私」の家に「良くないもの」が現れた頃、
周囲には下位の「良くないもの」が数多く現れ、
「私」の住む町は阿鼻叫喚の混乱に陥っていた。
「良くないもの」たちは「閉じた窓」から現れるため、
窓が開いていれば危険はないのだが、
誰もが恐ろしさのため家に駆け込み窓を閉じ、
次々と現れる「良くないもの」の犠牲になっていく。
「喰われた」者たちは皆、「狂気のもの」となった。
生きているのかそうでないのかは解らない。
人間の姿をした、元人間だったものたちが、
名状しがたい叫びをあげ、異常に体をよじりながら、
「見えない扉」の方へ異常な流れを作って行く。
972:NPCさん
11/09/24 09:20:55.80
「私」の家の正面には、小学校のグラウンドがある。
今や「狂気のもの」たちであふれかえるその場で、
たった一人「良くないもの」たちの支配を逃れている者がいた。
町に住んでいた、元から狂っていた娘だった。
「私」の一族に伝わる「おまじない」と同じ系譜の「何か」を
言葉ではなく血の中に継いだその娘は、生まれつき気が触れていたが、
この喧噪の中、ただならぬトランス状態に陥り、
文字通り気が狂ったように踊り続けていた。
トランス状態の娘が、血の呼び声に従って踏むステップと刻むリズムが、
本能的に「狂気のもの」たちを退ける結果となり、
紙片を握っていた「私」が親族に認識されなかったように、
「狂気のもの」たちに認識されない場所を歩いていたのだった。
狂気のものたちが叫び、踊り狂い、「見えない扉」へ流れていく中、
たった一人「正気で」踊り続ける「狂った」娘と意識を共有して、夢は終わった。
973:チラ裏クトゥルフ
11/09/24 09:25:09.71
途中、書き落とした点を捕捉。
「閉じた扉」からやってくる「良くないもの」が私を認識し得たのは、
私を認識していた幼い弟を「喰った」ことで、
弟の視点を通じて私を「視た」ためだった。
名前欄NGしてくれと言っておいて、途中名前欄入れ忘れてごめん。
SAN値直葬ものの明晰夢をとっとと指先から輩出してしまおうとして、
夢の残滓の混乱も手伝って打ち忘れた。
次スレは970だったろうか、980だったろうか。
970なら今夜中にも立てておきます。
チラ裏終わり。
974:NPCさん
11/09/24 19:01:42.33
とりあえず正気度を失ってるっていうことだけはよくわかった
975:NPCさん
11/09/25 00:00:16.64
オチは句読点なしor文章の途中で途切れだと思ったのにー
976:NPCさん
11/09/25 00:57:03.33
明晰夢なのに、夢をコントロールしなかったのか。
977:ダガー+<情セキュ>
11/09/25 02:33:54.37 w4BWXyh9
SAN値直葬乙!
>明晰夢の制御
夢の情報量が多すぎるとなかなか上手く行かないなオレァ。
ただ、「夢の情報量とソレに対する介入度=その分動画の予算が必要になる」みたいなモンで、
(実際には単に脳を働かせすぎて起きてしまうだけなんだが)
自分で情報量を飽和させるコトで打ち切るコトなら簡単だが。
978:NPCさん
11/09/25 10:00:17.01
情報量が少ないということは、その夢が不安定って事で、介入による改変量が多いほど脳の使用量も大きく
世界も大きく壊すから、夢の許容量というか安定度を超えると目が覚めちゃう。
明晰無であるということは夢だと気付いてるわけで、改変しようとしないってことは
そのままでいいって思ったか、下手に触って目が覚めるのが嫌だった(≒先が見たいと思った)ってことだろ?
979:NPCさん
11/09/25 11:43:20.92
「これは夢だ」と分かっているからって自分の思い通りに変えられるとは限らない。
と言うか、私は全然出来ないね。
目を覚ますことすら難しい。
980:NPCさん
11/09/25 11:46:11.09
逆に、「こうだったら嫌だな」という想像が悉く具現化するのではあるまいか
981:NPCさん
11/09/25 11:57:13.50
それはそれで強く意識すれば目が覚めるからいいけどね
982:NPCさん
11/09/25 12:40:14.71
かまいたちの夜の作者に対する杉井光の嫌みの下手さを見ると小太刀すげぇって思う
あ、小太刀組事件があったか
983:NPCさん
11/09/25 12:41:24.76
>>979
それって「これは夢だとわかっているがどうにもできない」と思っている夢なんじゃね?
夢を維持したまま改変するのは難しいけど、悪夢で明晰夢だと自覚したなら
改変か中断しようとするだろうし、改変に失敗しても目は覚めるぞ。
984:SAN値直葬
11/09/25 22:28:26.65
なんか明晰夢ネタの流れになっててワロタ
夢のコントロールの話になってるんでちょっと捕捉
いつもなら明晰夢ならコントロールできるんだが、既に言われてるとおり
情報量が多いと夢が「重く」なってコントロールしづらい。
どういうわけだか明晰夢だと異常に精度の高い演算をしてのける脳なんだが
(夢で二次キャラになった場合、身長から割り出せる視線の高さまで精密に再現する)
今回は五感に加えて通常感覚外のあれこれまで情報として乗ってたんで
死ぬほど重い動画見てる感じで、完全にコントロール不能だった。
カギ括弧多用してるのは、クトゥルフっぽい表現しようとしたんじゃなく、
感じたものを言葉で表現しきれないんでカッコ書きにしたんだわ。
覚醒状態で記憶しておけないだろうと思ったんで起きて即まとめたが、
やっぱり速攻で忘れたわ。記憶してたらトラウマものだからこれでいいんだが。
ところで980超えてるが、次スレ立てなくていいのかみんな。
985:NPCさん
11/09/25 22:32:32.99
手帳スレに次など無い
986:量産型超神ドキューソ
11/09/26 13:12:42.79 dJD3NIiy
次スレ立てていいよね?答えは聞いてない。
スレリンク(cgame板)
987:NPCさん
11/09/27 07:29:04.46
夢と分かっていればコントロールできる、と決め付けてるのが不思議でならん。
988:NPCさん
11/09/27 07:48:05.78
夢と自覚した時点で覚醒状態に近づいていて、この状態で起きていないならかなり干渉は可能。
強く干渉しようと脳を働かせすぎると起きてしまうが、見たくないような悪夢の場合
目が覚めても構わないので、努力しない理由はない。
というか、夢だとわかっているのに全く干渉できないし、どう頑張っても起きる事もできないなら
「夢だとわかっている」という設定の夢を見ているだけな可能性がある。