10/12/19 08:34:23 pvry2XT9
>>246
…はい、こうして年表にすれば何かが"見えて"来たのではないでしょうか。
'00年代を多い尽くす途方も無い量の作品群。これらが手にした、それまでの時代に無い"進歩"もあります。
それは"技術"でしょう。デジタル移行による省力化と作画スタッフのテクニック向上で、それまでの時代
とは比べ物にならない程の高品位な描写力は身に付きました。「絵に描かれた娯楽作」という意味では世界
一ではないかと思います。しかし…同時に、この時代が無くしてしまった物も多くあるでしょう。それは
何でしょう?そして、この時代を多い尽くした感のある「オタク向け商品」に共通した特質とは何でしょう。
それは"夢"ではないかと思います。"夢"の構造の変質。
ある日突然、醜いアヒルの子が王子様になってしまうシンデレラ・ストーリー。こういった夢のような話
は、例えば戦前のドイツ映画「会議は踊る」とかからもありました。しかしこの作品では、それは「美しい、
一時の幻想だったのだ」というオチが付きます。この時代はまだ"夢"は現実からたった一時だけ飛び立て
る仮初めの翼にしか過ぎませんでした。SF・ファンタジー設定は理屈やアイデアによって、これらの
特殊な状況を恒久化します。金田正太郎や兜甲児は、開発者の子であるというだけで鉄人やマジンガーの
操縦者となり、スーパーパワーを手に入れる。ドラえもんは、のび太があまりにもダメなので未来から
やって来る。「会議は踊る」の基調に即すれば、ドラえもんはいつか去って行かなければなりません。
しかし子供達の切なる願いとテレ朝の策略によって(笑)彼は戻って来てしまった。今も、そこに居ます。
私は、「少年の元に、ある日"船"が迎えにやって来る…素晴らしき異世界への旅立ち」というイメージが
大好きです。「銀河鉄道999」は、そういった「少年の旅立ち」モノの傑作です。「天空の城ラピュタ」も
そうですね。ある日突然、少年は999やタイガーモス号へ搭乗する権利を与えられる。しかしその先に
待ち構えているものは困難と冒険の旅路であり、少年はそれを乗り越えて"男"になってゆき…そして最後
には鉄郎もパズーも、彼等が子供なら見なくて済んだ"真実"に相対します。「機動戦士ガンダム」(初代)も、
この構造は変わりません。連れて行かれるのは"地獄"ですが。旅立ちを迎えるのが"少年"であれば、"夢"
は理不尽に与えられてしまって構わないんです。それは「少年の日の旅立ち」だから。いつか少年は大地を
蹴り、懐かしい故郷を捨てて夜明けの空へと駆け昇って行くものだから。これらの作品は、少年に"特権"
を与える代わりに、何か"素晴らしいもの"を描いておりました。観客の子供達のワガママでゴーマンな
夢(笑)をかなえてあげる一方で、ふり掛かる苦難と"責任"も描いておりました。この構造は、実は「新世
紀エヴァンゲリオン」まで変わりません。
いつの頃からか、この「子供の夢を理不尽にかなえる」という構造こそが「夢の魅力、アニメの特性」なのだ
と勘違いする輩が現れた。「うる星やつら」辺りが契機でしょうか?あの作品は、主人公諸星あたるが稀に
見る凶相の持ち主という設定で、あらゆる異星人や妖怪の美女達が寄って来ます。でもそれは"シャレ"。
主人公の「人類史上最悪の浮気性」という与えられた性質で、その望みは絶対に上手く行きません(笑)。
しかし…そんな"夢"を観客に与える以上、絶対に持っていなければならなかった不文律…「プロの矜持」や
「作家として成すべきこと」、そんなモノを意にも介さぬ商売人どもが、"結果"だけを先取りしてヨコシマ
な玩具を観客に与えるようになりました。一方でワガママでゴーマンな子供達(笑)も、心はそのまま図体
だけ大きくなり、異性を求めるようになり…この両者が、グルを組んだ。それが、この現代を覆い尽くす、
身の毛もよだつ"オナニー器具商品の横溢"…その正体ではないか、と思っています。
コミックマーケットから発信された様々な欲望や変態衝動の奔流(笑)。それが影響を与えたのは否めませ
ん。しかし決して、それが彼らの"本懐"である訳ではありません。それはあくまで彼等が"素人"だから、
多くの読み手をギャッと言わせる(笑)ような題材が、彼らの手にはそれしか無かった、というだけの事。