11/11/12 22:00:33.12 59ZDK2Zo0
途中で案の定唯がゲロを吐いたが、何とか平地の近くまでたどり着いた。
唯が駄々をこねても体格のいい警察官がおぶってあげようと言わなかったのはひとえに唯が池沼だからだろう。
「あの先が平らになってて、そこで、その…」
「そうか。とにかく行ってみよう」
「はい…」
坂道を上がりきると、視界が開けた。
両親はたしかにそこにいた。
「ああ…こりゃあえらいこった…」
父と母は二人並んで仲良く木からぶら下がっていた。
お互いの手を固く握りしめながら。
「お父さん、お母さん…」
憂の脚から力が抜け、膝を折ってうなだれた。
「お嬢ちゃん、見ちゃいかん!」
この光景は逃げ出したときから頭のどこかにあった。
憂を打ちのめしたのは、首を吊った両親の表情だった。
「んふ、おとーさ、おもらししてるでつよ(^Q^)ぶぶぶーくちゃいくちゃい(^q^)…あう!(゚ q゚)おかーさもぶぶぶーでつ!んひっおとーさおかーさわるいこ、おしおきでつ(^q^)キャッキャ」
父と母は、憂が見たことが無いほど穏やかで優しい表情をしていた。
首つり死体は醜いというが、そんなことは少なくとも顔には表れていない。
例え自らの意思で死ぬにしたって、身体は苦しいと訴えるものではないのか?
両親の表情は、まるで死の苦しみ以上の苦痛から解放されたとでも言いたげだった。
父の言葉が蘇る。
「お前たちは生まれてきちゃいけなかったんだよ」
唯が他の人とは違うことはもう知っていた。
ウンチや池沼汁を垂れ流し、豚のような体形で、不細工でマヌケな池沼面の唯は外を歩くだけで嘲笑と侮蔑を浴びた。
唯の奇行は大騒動を巻き起こし、嘲笑と侮蔑は憂たち家族をも巻き込む。
団地に住みながら平沢一家に近所付き合いはなかった。いつからか買い物は離れた街に行ってするようになった。
なかよし学級から一般教室に迷いこんだ唯が憂の名を呼びながら暴れ回りウンチをまき散らした事件の後、憂に友人はいなくなった。
それでも、家族の絆さえあれば大丈夫と憂は思っていた。
世界中から呪われても、家族の篝火があれば生きていけると。
だが、両親さえも憂たちを呪う側だったのだ。
私には、お姉ちゃんしかいないのか―
「うーい、うーい!おとーさ、おかーさ、ぶぶぶーでつ!(^q^)ゆい、おしおきしまちた!ゆいえらい(^Q^) んひっ(×q×)」
唯を強く強く抱きしめた。今は唯の身体に染みついた池沼臭が狂おしいほど愛おしい。
世界が私たちを呪うなら、私は全力でお姉ちゃんを愛してやる。
それが私の、この世界への復讐だ。
つづく (かもしれない)