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学校 図書室
「憂鬱の極み、って感じね」
マミに声を掛けられた。図書室では初めてである。人目につかない場所を選ぶ癖すら、見透かされた気分。
「……そんなに表情に出てましたか?」
流石に敬語を使って答える。
魔法少女など、所詮は影に隠れた存在なのだから、波風は立てないほうが良い。
「それなりに付き合い長いもの。暁美さんって、ポーカーフェイス下手よ?」
「巴さんの揺さぶりが上手いから……」
「『そうやってほむらがお世辞を言うときは、決まって気分の落ち込んでいることが殆どである。
それに気づいているのは、マミ唯一人である、という自惚れ。』」
そんなに面白くはなかったが、クスッときた自分に軽く驚いた。
マミの顔をよく見れば、余裕を湛えた笑み。ずっと眺めていても、きっと、飽きない。
「……黙って見つめられてると、スイッチ入っちゃいそう」
悪戯っぽく、マミが言う。
私も、と言いたい自分。でも、言えない。いや、言わない。
私は、マミに見破られたいのだ、きっと。
「暁美さん……こっちに来て」
「……でも」
「誰もいないから大丈夫」
そう言って、マミは私の手を取り、本棚の奥の方へ。
全くの無人ではないのだから、手を繋ぐこと自体リスキーである。
「ちょ、ちょっと、巴さん?」
「平気よ。この前なんか、○○君が△△△先生に手を引かれて、
保健室に入っていくとこ見ちゃったんだから」
「嘘!?」
「……嘘。暁美ほむら、ムッツリ確定ね」
そう言って、楽しそうにしているマミは、年相応の様子で、騙された憤りも瞬時に消え去った。
そんなこんなで、あっという間に、図書室の最深部。
両脇に本棚がそびえ、窓を背にしたマミが、どんな無理を言おうかと、不敵な笑顔で私を見ている。