11/08/20 14:43:31.02 HSQUPeV3O
夜 巴家 リビング
「巴さん、そろそろお暇しようと思うのだけど」
「……えー、なんなら、泊まっていけばいいのに……」
普段の、少なくとも、魔法少女としての巴マミを知っている者からすれば、目の前の彼女はまるで別人に見えることだろう。
やや俯き加減で、もじもじする姿は、美樹さやかや、佐倉杏子には見せたことはないだろう、とほむらは推測する。
頼れる先輩であったり、揺らぐことのない信念、を演じきる為に。
「……キュゥべえだって」
「何?」
「キュゥべえだって、最近は暁美さんに夢中で、私、なんか前より放置状態がひどくなってるもの……」
「そう言われてもね……」
ほむらの中で、複雑な想いが増してくる。
マミの抱えている孤独を、私なんかが癒せるのか? そんな資格があるのか? と、まあ、逃げの思考パターン。
それと、決して口にしたくはない、確固たる予感。
気付くと、マミが右隣に寄り添っている。
抜け目のない素早さ。感心半分、呆れ半分。
「……マミ、寂しいの……嫌だな」
「ち、ちょっと」
「?」
「……止めてよ。心臓に悪いから」
「……私は平気よ?」
「私の、よ……」
分かっているくせにそんなことを言うのだから、マミはタチが悪い。
嫌ならさっさと逃げ出せばよいのに、それが出来ない私も同罪だ、とほむらは思う。
「寂しいのは嫌」
同じことを、よりはっきりと言い放つマミ。それを受けて、ほむらの中で弾け飛ぶ、何か。
「私も、嫌」
言うと同時に、ほむらはマミの顔を自分の方へ向ける。出来るだけ、優しく。
あとは、語るのも恥ずかしい。
決して少なくない痛みと、熱と、慈しみが解きほぐせないくらいに絡み合う、長い、長い口づけ―
「……的なのも、ダメよね?」
「……ううん……嫌じゃ、ない」
「!?」