11/08/02 22:24:53.01 rq4hZ67zO
巴マミのマンションにて。
外は台風による強風と大雨。吹き荒ぶ、という表現が正に似付かわしい。
そういった混沌から完全に遮断されたリビング。
その窓から、ほむらは外界を見下ろし、物思いに耽る。
―決して忘れることのない、強い決意の籠もった『あの娘』の眼差し―
「いつにも増して暗い顔してるわね」
マミの呼び掛けに応えるべきか。
……でも、こんな私が、何を言えばいい?
無理に作った笑顔など、マミには決して通用しない。
「つまらないことは、考えるだけ損よ」
無責任さを伴ったマミの声。
「巴さんに何が分かるの?」
「分からないわ。私には、分からない」
私の暗い感情が伝染したかのようなマミの声色。急に沸き立つ罪悪感。
「……ごめんなさい、巴さん」
「失礼を受けた覚えはないけど……」
不自然な、沈黙。マミの方を見ると、彼女は目に涙を溜めていた。
「ちょっ、巴さん?」
「……頼ってもらえないのって、寂しい、かな」
それだけ言って、マミは俯いてしまった。
ほむらは慌てて、言葉を探す。
「違うの、そうじゃないのよ? あの……えっと……」
「……ふふっ、暁美さんは浮気できないタイプね」
顔を上げたマミは、完全に普段通りの様子である。まあ、つまりは、嘘泣きだ。
「……そういう精神攻撃は止めて」
「先輩の素敵な心遣いなんだから、有り難く受け取りなさい?」
「『女の涙は暴力だ』という至言があるけど」
「知らないわ。私は、知らない」
マミは楽しそうである。……いい気なものだ。ほむらはマミから視線を外し、窓の方へ向き直る。
気付くと、ほむらの左手はマミの右手に握られていた。……暖かくて、柔らかいマミの手。
ふと、頭をよぎる、遠くない―
「痛っ! と、巴さん?」
「また余計なこと考えてるでしょ?」
こちらを見ずにマミは言う。握る手の力は弛まっていた。
「暁美さん」
「……今度はなに?」
ほむらの目を見て、マミは言った。
「……暁美さんのソウルジェム、見せてもらえる?」