11/08/01 07:48:47.30 GD+ANkh8O
「……そういうことして、楽しい?」
「ええ、とっても」
余裕ぶってマミは言うけれど、自身の鼓動はいつになく速い。
……暁美さんだって、気づいてるはず。
尚も料理を続けようとするほむらを、是が非でも振り向かせたくなって、マミは追い討ちをかけた。
熱い吐息、ぎりぎりの小声に、ありったけの気持ちを込めて、ほむらの耳元で。
「―ほむら」
言うと同時に、ほむらが大きく一度震え、動きが止まる。どうかしたのだろうか?
「暁美さん?」
返事がない。
「どうしたの?」
「指、切った……」
せっかく積み上げた、甘い空気は簡単に吹き飛んだ。
自分でもどうかと思うくらい、マミは『ごめん』を繰り返し、救急箱を用意する。
思いの外、深く切りつけてしまったようで、ほむらの左人差し指から流れる血はなかなか止まらなかった。
こういった細かな傷を、魔力で無かったことにするのは、ほむらの信条に反するそうで。
だが、そのおかげで、マミはとっておきのリカバーを試すことが出来た。
「巴さん、恥ずかしい」
「むぅー、ひーかりゃ」
「……流石に、人の指をくわえたまま喋るのは感心しないわ」
マミは忠告を聞き入れ、なんとか自分の指を引き抜こうとするほむらを片手で制した。
暁美さんの血の味が口の中に行き渡る。興奮したりはしない。良かった、吸血鬼になってはいないみたい、私。
「もういいわ」
「…………りゃめ」
「だから!」
顔を真っ赤にして、ほむらが怒る。暁美さん、可愛いわ、暁美さん。
マミは知らず知らず、笑みを浮かべていた。
「だらしない顔してるわよ?」
「ふぉお?」
「もう、いいわ……」
呆れ顔で視線を逸らすほむらを見て、マミは止め時と判断し、口から人差し指を離す。
ほむらは自分の左手首を右手で掴んで、俯いている。
暁美さん、怒ってる? だが、そこからのほむらは、マミの予測の斜め上を行った。
ほむらはマミの唾液が付いたままの、自分の人差し指を舌で舐め始めた。それはそれは丁寧に、ぺろぺろと。
……マミは目が離せなかった。唾を飲み込んだかもしれない。
最後に派手に音を立てて指先にキスをし、妖しく笑んだほむらが言う。
「……悪いのは全部貴女よ、マミ」