11/08/01 07:43:56.90 GD+ANkh8O
巴家のキッチンに立つ、ほむらの後ろ姿を見て、マミはニヤニヤを抑えられない。
『どちらがより多くの魔獣を狩れるか』
この賭けに乗ったほむらは、マミがあそこまで多くのマスケット銃を、一度に召喚できることは知らなかったに違いない。
魔獣の群れが吹き飛んだ直後、ほむらがマミに向かって見せた、
呆れたような、困ったような表情を思い出すと、それだけでマミは笑い出しそうになる。
トントンと何かを刻む音。マミは上機嫌でほむらに声を掛ける。
「何を作ってくれるのかしら?」
「キュウリとトマトのサラダ、キュウリとパプリカの冷たいスープ、素麺のキュウリ添え」
振り向かずに、ほむらが返事をした。
明らかに不機嫌そうな声。
そんなほむらの様子も、今のマミには効き目はない。
「暁美さんの貴重なエプロン姿、ケータイで撮りたいんだけど」
「そんなことしたら、逆折りからトイレのコンボをするわよ」
振り向かず、また不機嫌な返事。
でも、素直に負けた代償を支払おうとするほむらのことを、可愛い、とマミは思う。
そんな可愛い暁美さんに、悪戯を。
ほむらの後ろにマミはそっと忍び寄り、両腕をほむらの前へまわして、ゆっくりと抱き付く。
胸を押し当てるときに、少しだけマミの身体に電流のようなものが走った。
それは、ほむらにも伝わったかもしれない。
しかし、ほむらは身を堅くするようなことはなかった。立派なものだ。
―マミと比べて、ほむらの体温は、『涼しい』。
「巴さん、暑い」
「エアコン入れたんだから、文句言わないの」
マミの方からは、ほむらの表情は窺えない。
そして相変わらず、規則的に包丁が動いている。
この程度で動揺などするか、という、ほむらの気概を感じる。
「暁美さん、ちょっと緊張してない?」
「誰かさんが邪魔するからよ」
「ふふっ、実はね、これって抱きついてるほうも、ちょっと気持ちいいの」
「……訊いてないし、出来れば聞きたくなかったわ」
トントンという音のリズムが若干、淀む。
ほむらの表情まではわからないが、頬に赤みがさしているような。
もう一押し、してみようか。
マミはほむらの右耳に軽くキスをした。
ほむらの全身がぴくっと震える。