11/06/20 18:46:07.20 Nj/ZlEac0
彼はくちゃくちゃぺちゃぺちゃと口を動かしながら、顎を吹っ飛ばされた女の前に立つ。
「……おーおー、おしゃぶり上手なツラになりやがって」
ビクッと、顔の下半分が消えた女がこちらを見る。
今、自分がどんな顔をしているか、一方通行には想像もつかない。
「どのツラ下げて生きてンだァ! ふざけンじゃねェぞコラ!!」
ともあれ、床を這っている女の腹を蹴飛ばす事にした。
ドンゴンガギッ!! という鈍い音が連続する。五回蹴って一〇回蹴って一五回蹴って二〇回蹴って、としている内に、不意に女の体が暗闇にフッと消えた。
見ると、そこは金属加工用のプレス機のようだった。
崖のようになっていて、ここからベルトコンベアを通じて鉄製品などを落としていき、プレスして固めるらしい、深さは三メートル程度、広さは一〇メートル四方といった所だった。
すでに空き缶やスチール製の棒などが山積みにされている事を考えると、実際にはもっと深さがあるのかもしれない。
女は三メートル下でもがいていた。
両腕を傷つけられ、顔の下半分を吹っ飛ばされた無様な人間。
それを見ても、|一方通行《アクセラレータ》は哀れみを感じなかった。
チラリとプレス機投入口の隅へと視線を投げる。ほとんどの設備はコントロールルームで制御しているはずだが、一応手動の設備もあるらしい。|壁際《かべぎわ》には、いかにもそれらしい大きなボタンがあった。
両腕を傷つけられ、顔の下半分を吹っ飛ばされた無様な人間。
それを見ても、一方通行は哀れみを感じなかった。
チラリとプレス機投入口の隅へと視線を投げる。ほとんどの設備はコントロールルームで制御しているはずだが、一応手動の設備もあるらしい。
壁際には、いかにもそれらしい大きなボタンがあった。
女も、一方通行が何を観察しているのかを理解したらしい。
頭上の投入口を見上げながら、何かを懇願している。
「あふぇ、あふへ、ふぁらはへ……」
「悪りィなァ」
一方通行は遮るように一言謝って、
「誰ェ敵に回したか分かってンのかオマエ」
ダン!! と。
掌を壁に叩きつけるように、大きなスイッチを押した。
そこには一切の容赦がない。
こうん、という鈍い鈍いモーターの作動音が、施設中に響き渡っていく。
「さアって……」
一方通行は、もはやそちらを眺めずに、熱い吐息を漏らしながら排徊を再開する。
「次のエモノは、どこで迷子になってンのかなァ……」
口元には、ぱっくりと左右に引き裂かれた笑みだけがあった。
(とある魔術の禁書目録 13巻より抜粋)