11/04/24 22:18:27.78 EggSYvzg0
次の日。
「はい、みんな席についてー」
「あ、唯先生! 元気になったんだね」
「うん。もう元気いっぱいだよ!」
ふんす! と唯先輩が強く意気込んで腕を振り上げて見せた。
「梓先生の愛の看護が効いたんだね」
「あ、愛!?」
クラス中がひゅーひゅー! なんてはやし立ててお幸せに! なんて声も聞こえてくる。
「な、何言っているの。私と唯先生とは何もありません!」
「昨日唯先生の家に行っていちゃいちゃしていたそうじゃん」
「いちゃいちゃなんてしていません!」
「服脱がせていたって聞いたんですけどー?」
「あれは下着を変えてあげようと……」
「下着まで変えてあげたの!? きゃー!」
「いや、だから唯先生が大変そうだったから手伝ってあげただけで……」
必死に説明しようとするけど、もう聞く耳を持っていない。
「家の鍵なんて渡しあっていたりしてねー!」
「なっ!? 何でそれを……」
「えっ!? 2人ともそんな関係まで行ったの!?」
し、しまった! 私の言葉を聞いてクラスがまた一層とうるさくなってしまった。
「冗談で言ったのに本当だったんだ!」
「通い妻ですね、先生!」
「先生! 結婚式には呼んでくださーい!」
あぁ、喋れば喋るほど墓穴を掘っていく……。
このまま穴を掘って入りたいよ……。
「はいはい! みんな静かに! 私と梓先生はそんな浮ついた関係じゃないです」
唯先輩が何とか助け船を出してくれて、クラスみんながぶーぶー文句を言いながらもテンションは下がり始めた。
よかった。何とか収まりそうだ。
「私は梓先生と、真剣にお付き合いを考えています!」
「えっ!?」
……と思った矢先、唯先輩がこんな爆弾発言をするものだから私も含めてみんなが驚いた顔で固まってしまった。
「……なんてね?」
てへっ! なんて言ってごまかすと、唯先輩はホームルームを終わらせた。
「はぁ……。まさかあんなに広まっているとは」
「ごめんね、私のせいで」
「いいえ。もともと鍵をかけ忘れた私がいけないんですから」
でも、しばらくこれでからかわれるのは覚悟しておいた方がいいかもなぁ。
「でもね、梓先生」
「はい?」
先を歩いていた唯先輩が立ち止まると、くるっと私の方に振り向いた。
「その気があるのなら、またあの鍵で来てほしいな」
「……へ?」
「……待ってるよ」
そう言い残すと、唯先輩は頬を赤く染めて足早に去って行った。
そんなことを言われた私はどうしていいかわからず、唯先輩と同じように頬を赤く染めることしかできなかった。
また、この数年後に生徒にやっぱり2人の結婚式に呼んでくれたねってからかわれるのはまた別の話。