10/12/25 23:55:20 KiKX23ua0
私が男の子だったら良かったのに。
そしたら、私が唯先輩に告白したって何もおかしいことはない。
同性愛に悩むことだって、周囲からいじめを受けることだってないんだ。
ただ、一人の女性を好きになっただけなのに…
たったそれだけのことなのに…何でこんな辛い思いをしなきゃいけないの?
悪いのは、誰?
偏見に満ちたこの世界?
私を女の子に産んだ両親?
それとも、女の子を好きになってしまった私自身……?
分からない、分からないよ……何が正しいのかさえ分からない─
「あずにゃん、どうしたの?」
気付けば唯先輩が、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいる。
「何か…辛いことでもあった?」
その仕草、その表情、その台詞。
全ての言動が、小説の中のあの先輩のイメージとぴったり重なった。
反面教師にしたはずの虚構が、現実となって表面化し私の身に降り注ぐ。
もう耐えられなかった。
「あずにゃんっ!」
「「「梓(ちゃん)!?」」」
振り切るようにしてその場を立ち去る。
ドアを開け、階段を勢いよく下り、昇降口を後にする。
時々学校帰りの生徒にぶつかりながら、必死でアスファルトの続く道を駆け抜けた。
あの忌々しい小説のイメージを払拭するかのように。
「ハァッ、ハァッ……」
いつの間にか私は自宅に辿り着いていた。
空のガレージが目に入り、明後日まで両親が不在であることを思い出す。
玄関を乱暴に開け、階段を駆け上がり、自分の部屋のベッドに飛び込んだ。
枕に顔を押し付けて、ひたすら慟哭の声を上げる。
「ううっ、ひっく……ゆいせんぱい……うっ……!」
「私……もう、どうしたらいいか……ぐすっ……分からないよ……」
「ゆいせんぱい……私……」
もう何時間泣いたのかさえ、分からない。
泣き疲れた私は、現実から逃れるようにしてずぶ濡れの枕へとまどろんでいった─