【けいおん!】唯×梓スレ 16at ANICHARA2
【けいおん!】唯×梓スレ 16 - 暇つぶし2ch145:名無しさん@お腹いっぱい。
10/12/25 11:59:30 KxB0N8Jz0
私は駆け出す。
その赤い後姿に向かって。
全力で。一秒だって惜しむ勢いで、ただ、速く。
一刻でも早く、空いてしまったこの距離を埋められるようにと。
私と先輩に一番ふさわしい距離へと位置へと私と、そして先輩を戻せるように。

唯先輩。
あと数歩、呼びかけた私の声に、先輩はびくっと体を震わせて、振り返る。
ふわりとその手から傘が舞い落ち、地面にとんと軽い音を響かせる。
そうして振り返った先輩は、本当に、私が想像したとおりの顔をしていたから。
だから私は何も言わず、ただそのままの勢いで、強く強く抱きしめた。

なんであずにゃんがここにいるの、と唯先輩は震える声で尋ねてくるから。
走ってきたからですよ、と私は答えてあげる。
じゃあねって言ったのに、と続けるから。
そういったのは先輩だけです、と返してあげる。
見られたくなかったのに、とあなたは呟くから。
見せて欲しかったんですよ、と私は囁く。
その耳元で優しく、ようやく見つけられたその姿をもう離さないように。
あなたの笑顔が大好きだから。
何度も何度も私はそれに救われてきたから。
だから、私にその笑顔を守らせてください。
あなたの一番傍にいさせてください。

ゆっくりとと、私の背中に腕が回る。
ぎゅっと、私の体が抱きしめられる。
小柄な私の胸に顔をうずめられた、数年ぶりに聞くその先輩の声が鼓膜に響く。
声を上げて、小さな私の胸に顔をうずめたまま、唯先輩は泣く。
その痛みに私の胸も同じだけ痛んでくれればいいと、その分だけ優しくなれればいいと、私は願う。
だから、私は小さく微笑んで、今まで言えなかった言葉を小さく囁いて、その体を抱きしめた。
この距離が私たちにふさわしい距離なんですよと、あなたに、そして自分に教えるように。
優しく、そしてひたすらに強く、抱きしめた。

(おしまい)


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