10/10/31 22:06:20 qE3jjK4v0
「はぁ……」
桜がまた目の前を、ひらりひらりと躍る。
卒業式か……。
唯先輩と同じ年で無いことを何度も悔んでいた時期もあった。けど、恋人になった時、あの人を繋ぎ止めていけると思い安心していた。
しかし、この春の別れのムードのせいなのか、またあの感情がぶり返していた。
「だめだね、私……」
これからも会えるのに。携帯に連絡すればすぐにでも返信が来るのに。求めればキスだって、それ以上だってできるのに。
私、独りになっちゃうのかな……。
「あ、あずにゃん、いた~!」
「ふにゃ!」
声をかけるが先か、抱きつくのが先か、唯先輩が私の後ろから現れた。
「どうしたの~? 髪下ろしちゃって、物思いにふけっちゃって~」
「別にいいじゃないですか。私にも考えることがあるんです」
「ふ~ん。また難しいこと考えてたんでしょ?」
「そんなことないです」
放してくれたと思ったら、唯先輩は信用しきっていない目でにやにやしています。
「な、なんですか、その目は」
「いや、あずにゃんって考えこむことが多いなぁって」
「だめですか?」
「だめじゃないけど……」
「?」
そう言って、唯先輩はそっと抱きついてきました。
「独りで悩んだりしないで? 私がそばにいるから……」
「……」
「ね?」
「はい!」
「じゃあ、そろそろ部室に戻ろうか」
そういって、私達は手をつなぎ部室にもどった。
今日から違う道を歩み始める私達。だけど、また同じ道を歩めると信じることができた。
力強く引いてくれるこの手が、私を導いてくれる。
私は、独りじゃないんだ。
この人がそばにいてくれる。元気をくれる。
そして、私もこの手を引いてあげる。
助けられてばかりじゃなく、自分の出来ることを精一杯するために。
そして、あなたと同じ未来を歩むために……。
END