11/01/08 06:29:33 zoxZW9Jb0
つづき
珍しく子供のようにはしゃぐ妻の巴に袖を引っ張られながら
剣心も一緒に露店巡りをはじめました。
芝居見物や奉納でやっている獅子舞を一緒に見物したり
甘酒やお祝いのお団子を口にしたり
鏡開きで配られた餅の入った白味噌仕立ての甘い雑煮を分けて貰い一緒に食したりします。
巴 「(上品に口に運んで)………白いお雑煮なんて私はじめてです。
………思ったよりも、ずっと甘い…のですね。」
江戸風のおすまし仕立ての雑煮しか食したことのない巴が
もの珍しそうに京風の白味噌仕立ての上品で甘い丸餅の入ったお雑煮を口へ運んでいます。
よく煮込んだ小芋や餅が溶け、とてもドロドロとした甘い食感でした。
剣心 「餅が溶けてドロドロしてて、これは温まる…な。
………でも俺は、家で食べたやつの方がもっと好きかな―(ズズーッ)」
お昼過ぎになってようやく食した新年一番の雑煮の味を思い出しながら剣心が答えます。
※注:なぜお昼過ぎだったの?などという野暮な事は今は考えてはいけません(キリッ
巴 「(クスッ)………まぁ、あなたったら
………でも、そんなこと言ってもらっても何も出ませんよ?」
剣心 「あ、いや、べつに、そんなつもりじゃ。(ポリポリ)」
巴 「(クスッ)………はいはい。
………それでは家に帰りましたら、またお雑煮をご用意しますね。
少し多めに作っておいて、よかった…です。(ポッ)」
剣心 「そ、そうか、それは良かった。
………これも美味しいけれど、やっぱり巴の作ったのが一番、だ。(キッパリ)」
まるで当然のように剣心自身が巴の前でキッパリと言い切ります。
巴 「も、もう………また、そのような事をおっしゃって。(ポッ)」
剣心 「(コホン)………べつに嘘を言ったつもりはない。
………巴は料理が上手だし
俺は巴の作った物なら何でも満足だし、今まで不満を感じたこともない。」
巴 「………あ、ありがとうございます。(ポッ)」
堂々と言い切ってしまう剣心に
巴も顔を赤らめながら素直に応じるしかありませんでした。
剣心 「(最後の汁をすすって)………うん、ご馳走様。
………思ったより美味しかった。すまないが巴、これを頼めるかな?」
巴 「(受け取って)………はい。」
意外に食べごたえのあった雑煮をようやく食べ終わった剣心が
食べ終えて空になったお椀を横にいる巴に渡します
巴 「おかげ様でとても温まりました。――ご馳走様でした。」
剣心からお椀を受け取った巴が
人ごみを書き分けながら自分の分と一緒に目の前にある元の場所へと返しに行きました。
そんな妻の巴の後ろ姿を見ていると
剣心もなぜか無性に心までホクホク温かくなってくるのでした。
――つづく
946:201
11/01/08 06:30:16 zoxZW9Jb0
つづき
やがて、お椀を返してきた巴がまたいそいそと夫の剣心のもとへと帰ってきました
巴 「お待たせしました。
………つぎは何処へまいりましょうか。」
剣心 「もう少しいろいろ見てみたい。
………それと、さっきの約束も忘れないで。
巴の作った雑煮もちゃんと食べ比べてみたいと正確な優劣が付けられない――」
巴 「(クスッ)………まぁ?
………先ほどは私のが一番美味しいと褒めてくださいましたのに。(プイッ)」
小憎らしいことを言う夫に巴が少し拗ねたようにつんとそっぽを向きます。
一方、意外な成り行きに思わず慌ててしまったのは剣心です。
剣心 「あ、いや!? だ、だから、その!?(焦っ)」
巴 「(コホン)………そうですか。
………つまり、あなたは私のお料理がお気に召さないのですね。(つん)」
剣心 「あ、い、い、いや!?
………ち、ちがう、違うんだ! 誤解だよ、巴!?」
すっかり狼狽してしまった剣心は
周囲も気にせず本気で慌ててしまっています。
巴 {(クスッ)………あなたったら、何も本気になさらなくとも。」
剣心 「………………………。
……………………え………。」
―そしてしばしの沈黙のあと
巴 「(カァァ)………ご、ごめんなさい。
………ちょっとその、少し拗ねてみたくなっただけ…です。(ポッ)」
慣れないことをしてしまったせいか
顔を赤らめながら済まなさそうに正直に打ち明けてしまう巴。
剣心 「(ホッとして)………な、なんだ、そうだったのか。
………普段、あまりそんなことしないから、思わず引っ掛かってしまった…よ。
はは、これは一本取られてしまった――な。(ポリポリ)」
巴 「(クスッ)………まぁ、あなたったら。」
そうしてしばし見合ったまま、おかしそうにクスクス笑い始めてしまう二人でした。
夏から始まった夫婦としての年月も半年を過ぎ
最近では夫の剣心にこんなことを言って甘えたりもする巴さんです。
一方剣心の方もすっかり相好を崩しつつ心からの屈託のない笑みを見せています。
その仕草や表情はかつて京の都で人斬りをしていた頃の『人斬り抜刀斎』とは
煮ても似つかずとても同一人物と思えません
巴という生涯の伴侶を得て剣心自身もかなり変わってきたのでしょうか
そして巴もまた
かつての思い詰めたような憂いの寂しげな表情は最近では殆ど見せなくなりました
時の流れとともに人の心もまた変わってゆくもの・・・
最初の頃は色々ありましたが
―そんな記憶も少しずつ薄らぎ、現在ではすっかり幸せ気分一杯な二人なのです
【とある一夫婦の一風景:第四章 ~新年を迎えて夫婦愛 (初詣編)中編~】終 by201
947:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 06:31:19 zoxZW9Jb0
追記
ちょっと長くなってしまったので中篇と後編に分けることにしました^^;)
※今度こそ、後編アリマス(来週中に投下の予定です) by201
948:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 07:42:23 zcjGqoFE0
nullpo
949:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 07:53:18 Pk/yZPsi0
>>949
ガッ
950:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 07:54:10 Pk/yZPsi0
×>>949 ○>>948
何やってんだorz
951:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 10:03:35 WfEYwRXn0
>>941-947
待ってました~(´ー`*人)
人目もはばからずチュウを強請る甘えん坊な剣心を赤子をあやすように宥める年上女房の巴たんモエw
巴の手料理が一番と惚気ちゃう剣心モエモエw
幼夫婦の甘々な初々しさがひしひし伝わってきてホッコリしまつた。。。
今度こその後篇も気長に待ってますよノシ
952:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 10:11:46 rZb92lsH0
なんか戊辰戦争がなかった事になりそうな勢いだw
953:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 12:53:51 6JH3ZeGb0
>>943とか台詞とAAが見事にマッチしてて萌ゆる…
954:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 15:41:38 Smy3kjCn0
>>941-947
幼夫婦の露店巡りデートかわいいよぉーー
これぞ新婚ならではの会話、新婚ならではの日常ですねw
実際の二人も半年大津に身を隠している間
こういうささやかな幸せに包まれた毎日を送っていたんだろうなぁと思うだけで…ニヨニヨ(*^^)
本当にいつもお疲れ様です
後篇も期待しております
955:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/08 23:25:16 JG5QgsCF0
>>941-947乙っす!2人の短くも濃厚な密月が凝縮モエ!
デート中も巴を常に気遣い、リードする剣心と、そんな剣心の三歩後ろを付いてくる巴さんが目に浮かんでくるようです。
作者さんのSS好きだよ。いつもスレを和ませてくれてありがとう。
956:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/09 00:44:18 C/yG6Uop0
巴って婚約者の死後すぐに次の男にすがりつく女の醜さや
一人で勝手に突っ走って余計に事態を悪くするような浅はかさがある
それを無口無表情で他人に悟られずに済ましてるわけだから
単に感情がない綾波とは違ってタチが悪いと思う
957:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/09 14:22:41 JOV8nTaFO
巴かわいいな
958:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/09 18:20:06 MyAab95i0
ここのSS読んでたら余計に剣巴が愛おしく感じてきた
959:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/10 09:45:24 ZBbMNPOd0
剣巴SSはスバラシイ
るろ剣ファンになってよかった!
960:名無しさん@お腹いっぱい。
11/01/10 09:49:02 ZBbMNPOd0
>>959に同意
巴叩きに熱心な教団はるろ剣ファンどころか人間失格だよね