09/10/05 01:13:45 Qt+8teQu
「そうか、恋次、お前卍解まで…お前は本当にすごいな。私は…」
そう言ったルキアの顔は、祝福や賞賛よりも、以前見た置き去りにされた子供のようだった。
前の俺は、それを見ないフリをして、笑顔をつくり、どうでもいい言葉で取り繕って、そして沢山のものを失った。
今の俺は、…やはりそれを見ないフリをして、笑顔をつくって、どうでもいい言葉を吐く。
「おう、もっと褒めろ、あがめろ、スゲェだろうが!」
ルキアはほんの一瞬面食らった顔をして、そして笑った。
「すごいな、いやすごいが何だその毛皮は…一護もだが、卍解で装束が変わるのはどういった仕組みなのだ兄さまは変わらないが」
すごいと褒められているのに、他の男の名前が出るのは気に入らない
こいつが笑えるのなら世界が崩壊してもいいと思えるのに…
ルキアの小さな手が頬に触れた
「恋次、お前は本当にすごい。」
「おお、スゲェだろ」
お前のためにそうなったって言うのは言わない。一生いわない。
ルキアは子供の頃みたいに、無邪気な顔で毛皮に手を伸ばす
でも、俺もルキアも分かっている。二人とも子供ではない事を。
雨よけの蓑程度にしか思っていなかった毛皮の端をつかむと、俺の意思を汲んだのかそれはゆったりと丈をのばした
皮も毛質もやわらかく、こいつを受け止めるにふさわしいやわらかさで
「ふっかふかだぜ?あったけーだろ」
身をかがめて抱きとめたルキアの耳元につぶやく
言いたいことは違うのに、俺のバカな口からはそれが精一杯だった。
小さい体を、腕と体全体でおおってもまだ足りない。満たされない。
そんな俺のバカな口に、ルキアの唇が重ねられた
「暖かくないぞ恋次…とても…熱い。」