型月のキャラがルイズに召喚されましたpart7at ANICHARA
型月のキャラがルイズに召喚されましたpart7 - 暇つぶし2ch800:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:16:09.85 eLlJWkxP

 「熱いって、そんなポットに入れていたらすぐ冷めちゃうんじゃないの?」
 キュルケが尋ねると、ギーシュが答えた。
 「ふふふふ、そう思うだろう。 だが、このポットは僕が開発した大発明品なのだよ」
 
 本当は、士郎が設計してコルベールを製作したものに一部改良を施しただけだった。
 内部のガラスを補強のため、ギーシュが錬金で銅を覆ったのだ。
 これが以外にも冷めにくくなるという利点を発揮。(輻射熱の放射を抑えるため)

 ふふん、と鼻を高くするギーシュをよそに、士郎は皆にポットの中身を注いで回る。

 「あ、おいしい」 ルイズがまず反応する。
 コクコクとタバサが頷く。 かなり気に入ったようだ。すかさずおかわりを要求する。
 タバサにおかわりを注いだ後、他の人間にも注ぐ士郎。

 くつろぐルイズ一行。休憩を終えると、ルイズはワルドのグリフォンへ騎乗。
 かわりにギーシュがタバサの竜へ乗り込む。
 「じゃあ、このままアルビオンへ向けて一気に飛ぶけど、おひげのおじさま、用意はよろしくて?」
 「ラ・ロシェールに寄るのではないのか?」
 キュルケの言葉に疑問をさしはさむワルド。

 ラ・ロシェールはアルビオン行きの船が発着している港町である。
 もちろん普通はアルビオンまでは船に乗っていくのだが、士郎が早く行き帰り出来るように
 わざわざタバサに頼んで竜に乗せてもらっている。直接向かえるならそれにこしたことはない。

 アルビオンは浮遊大陸なので、同じ場所に居るわけではない。次回の最接近は一週間は先だ。
 それなので、一気にアルビオンまで行くのは、一般的には無謀の極みであるが、
 タバサの竜なら問題が無かった。

801:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:17:59.52 eLlJWkxP

 「いや、私のグリフォンならそれくらいなら飛べるはずだが…。
  一気といっても、小休止くらいはとるのだろう?」
 「まぁ、時々はね。大丈夫のようでしたら早速出発しますわよ」

 ………

 アルビオンへ向かう空の上。ワルドはルイズを乗せてグリフォンを操っていた。

 「……」
 いざ、ルイズに使い魔の事を聞こうと思ったが、どう切り出すか悩むワルド。
 すでに色々予定が狂ってきているので、心の整理が必要だった。
 「あ~、ルイズ。君は使い魔は連れてきて居ないのかい?」
 とりあえず無難に質問してみた。

 「……、他の使い魔に食べられちゃったの……」
 うつむき加減で応えるルイズ。 ぱっと見、悲しくて俯いているようにも見える。
 その実、こんなことを言わされて不機嫌な顔を隠しているのだが。
 「そ、そうか……。残念だったね」
 話が途切れてあわてるワルド。
 「あ、そうそう、君の従者くんはどこらへんの貴族なのかな?」
 (え!?)とあせるルイズ。その設定は聞いてなかった。ロバ・アル・カイリエというのも
 おかしい気がする。
 「え、ええと……。聞いてない……の。あとでシロ…シェロに聞いてみるわ」
 いつぼろが出るか気が気じゃない。なるべく黙っておこうとルイズは思った。

 ………


802:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:18:51.04 eLlJWkxP
 ルイズの反応が急に無くなって、ワルドは手が打てなくなってきた。
 予定では、ルイズに使い魔の話を訊いて、そのあと婚約の話を切り出すつもりだったのだが。

 とりあえずワルドは現状を再確認する。

 ルイズが人間を召喚したという話は裏づけがまだ取れない。今聴いた話が事実なら、
 普通の使い魔を召喚したということだろうか…? 要再確認。

 ルイズは魔法を一度も使えなかったことは知っているが、今もそうなのだろうか?
 これも本人に確かめておかねばなるまい。

 以上2つの事柄により、今後のルイズとの接し方も変わる。
 ルイズが伝説の人物と同じ(虚無の使い手)ならば、できうる限り大切に扱わなければなるまいし、
 そうでなければ、他の任務を優先して動かねばならないだろう。
 そう、アンリエッタの手紙の奪取とアルビオン皇太子の暗殺である。

 今は様子見ということで、兎に角アルビオンの大陸を目指すことを最優先にしよう。

 ワルドのグリフォンは優秀といっても、タバサの操る竜ほどでスタミナがあるわけではない。
 グリフォンにはかなり負担をかけることになってしまう……
 祖国や知人を裏切るようなワルドでも、自分の愛馬(?)はやはりかわいいものなのだ。
 アルビオンへ着いたら、用意できる最高の餌と水を用意してやろうと決めたワルドである。

 ………

803:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:20:34.01 eLlJWkxP

 士郎はアルビオンが浮遊大陸であるということは聞いている。
 だから離陸前のキュルケとワルドのやり取りは大体理解していた。

 それでも実感していたわけではない。脳内の想像だけである。

 だから、こうして少しずつその風景が見えてきたとき、士郎の口は開きっぱなしになっていた。

 「で、でかい………………」

 島の下部は雲に覆われているが、全体の巨大な影は決して見逃せるものではない。

 島が浮いているのではなく、大陸が浮いている光景。こんなものが空を飛んでいる世界。
 地上に住んでいる人間は、おちおち生活していられないのではないかと思うのだが、
 この世界の住人には慣れっこになっているのか、あまり気にしていないようだ。

 「あれが、一定の軌道を周っているんだよな?」
 「あぁ、そうさ。僕も最初見たときは、かなり驚いたものだよ。」
 「ハルケギニアの大陸の上は通らないのか?」
 「たしかに近づくことはあるけど、上に来ることは無いみたいさ。
  そんなことになったら、普通に暮らしてなんか居られないよ」

 まぁ、そうだろう。海上でうろついてくれる分には実害はないんだろう。

 「いったんあそこに降りる」
 遠くに見える島をタバサが指し示した。

 島といっても無人島のようだ。どうやらアルビオンから落ちてきた土の塊のようである。
 草木も生えていない。

 あそこで息を整えてから、遠く高くそびえる大陸に羽ばたくつもりなのだろう。


804:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:25:30.09 eLlJWkxP
色々なことがあって、間がかなり空いてしまったことをお詫びします。

震災後、市販の小説を読んでも味気なく感じたのは、
現実と比べるとあまりにも薄っぺらく感じてしまうせいなのでしょう。

だいぶ調子が戻ったので、少しずつ書き溜めてまたアップしたいと思います。

…それにしても、書き込みしづらい現状は前よりひどくなっていますねーー;
数時間空けないと連続投稿できませんでした。

では、また。

805:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/02 23:02:22.90 ZMlk8A/W

お体に気を付けて執筆頑張って下さい

806:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/03 21:14:06.57 POs0OPK+
投下乙。
ワルド必死だなw

807:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/23 11:41:40.61 yXYODy2R
保守

808:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/06 00:17:53.39 Do3Uo+ul
再来週くらいまでには次のお話うpしたいと思ってます

最低でもアルビオン編までは終わらせますので、ご容赦を

809:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/06 09:52:41.71 g08h7CvF

何時までも待ってる

810:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:02:18.05 GHXApmeL
こん○○は。

1章とはいきませんでしたが、半分くらい書けたので、今からうpします。

連続うpだけど、書いた分は載せられるといいな…と。

811:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:04:57.63 GHXApmeL
第11章 接触

 一行がアルビオン大陸の名も知られていない小さな港町に着いたのは、夕暮れ間近の頃であった。

 すう勢は貴族側に傾いているので、貴族側の兵士が港の出入りを見張ってはいるが、
 あまりにも国外脱出の人数が多いので、とてもチェックしきれないでいた。
 その隙間をつくように、町にもぐりこめた一行である。

 「ええと、これからどうしよう。シ、シェロ?」
 呼びなれていない名前に噛んでしまうルイズ。
 「ん~、情報集めかな?でも、あんまり派手に動くと貴族軍に目を付けられそうだしなぁ」

 「この手の会話も聞かれないように気をつけたほうがいいね。
  情報集めの方は私が一人でしておこう」
 自分の活躍の場を見つけたワルド。
 もちろん『レコン・キスタ』として情報を味方から集めるつもりである。

 「え?伯爵一人で情報を集めに行くなんて危険よ!せめて、一人くらい一緒に……」
 事情を知らないルイズは止めようとする。
 「大丈夫だよ、僕のルイズ。こういうことは一人で動いた方が安全だし、
  情報も入りやすいんだ。君達は、宿と馬の手配の方をたのむよ」

───────────────

 「で、我が軍の密偵からの情報では、トリステインの使節が我が領内に入り込んだというのだな?」
 「はい。ニューカッスルを目指すそうです。いかがいたしましょうか?」
 「ふむ……。うまく泳がせてニューカッスルに潜り込めるようにしてやろう。
  王か皇太子の命でも盗れれば、あの城の陥落もぐんと早まるだろう……」

───────────────


812:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:07:38.85 GHXApmeL
 とある酒場の片隅に一向は集まっていた。

 「どこの宿も国外脱出の人達であふれていて、一部屋しか借りることができなかったわ……」
 ルイズはワルドにがっかりした様子で報告をする。
 「今の時期は仕方ない。泊まれる場所があることに感謝しよう」
 さして気にしないワルドである。
 「情報収集はうまくいったよ。この付近に王族側の兵士が潜伏しているとの情報を掴んだ。
  一時期貴族軍に捕まっていたが隙を見て逃げ出したということだ。
  その兵士と接触できれば、ニューカッスル城へ入ることができるはず」

 おぉ~、と一同が感嘆の声を漏らす。思わずどや顔になってしまうワルド。

 「じゃあ、宿屋の部屋でこれからの手順を確認しましょう」ルイズが言う。
 「その前に食事にしましょ。お腹がすいては闘うこともできないわよ」
 キュルケの提案にタバサがコクコクと頷く。
 「しようがないわねぇ。ねえ、なんか適当に料理や飲み物注文してきてよ」
 ルイズが士郎に言う。名前を呼ぶのはなるべく避けることにしたようだ。
 「あいよ」

 カウンターへ向かう士郎を見ながら、ワルドはルイズとの婚約話をいつ切り出せばいいか
 考えていた。

 ………

 宿屋で話し合う一行。

 「ここの港のはずれに、彼ら(王族軍兵士)が潜伏しているようだ。
  この情報は貴族側はまだ掴んでないらしいが、時間の問題だろう」
 「それじゃあ、急がないといけないわねぇ~」キュルケが意見を述べる。
 「うむ、明朝出発するつもりだ。準備は今夜中にしておいてくれ」
 「(わかったわ)(了~解)(コク)(任せておいてくれ)(はい)」
 五者五様といった感じで、応じる一行。


813:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:09:42.81 GHXApmeL

 「あ~、それとルイズとシェロ君に話したいことがあるんだがいいかね?」
 「え?なに?」
 「ちょっと3人だけで話したいのだが……」 他のメンバーに目配せするワルド。
 (ふ~ん)となにやらにやけた顔のキュルケ。
 「わかったわ」と、タバサとギーシュを連れてさっさと部屋を後にする。

 他の人間がいなくなったのを見計らい、ワルドはルイズに話しかける。

 「……率直に聞こう。シェロ君はルイズの恋人なのかい?」

 「え?……え───っ!?」一瞬何を言われたか解らず、反応が遅れるルイズ。

 「そっ、そんなわけないでしょっ!! シ、シロ、シェロはわた、わたしの従者なだけよ!」
 顔を真っ赤にして反論する。

 「そうか、それを聞いて少し安心したよ。かなり永い間会わなかったから、
  僕のルイズが他の人のものになってしまってたらどうしようとそればかり考えてた」
 「お、大げさなのよ。ワルド様は…」

 「で、従者のキミは本当にただの従者ってことでいいのかな?」
 「えぇ、俺は単なるルイズのサーヴァントですから」
 微妙なニュアンスが含まれているのだが、それはルイズと士郎にしか読み取れなかった。

 ワルドは切り出すのは今だとばかりに、
 「ルイズ……。この旅が終わったら、僕と結婚式を挙げて欲しい。」


814:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:11:58.54 GHXApmeL

 「けっ、けけけっ、決行式!?」
 「ああ、結婚式だ」 ルイズの言い間違いはもちろんスルー。
 「そんな、無理よ。私、そんな……」
 「僕は本気だよ。旅が終わったら返事を聞かせてもらえればいい。それまで考えてくれないか?」

 「…………、うん。考えてみるわ」
 「従者君、この事をしばらく、皆に内緒にしておいてくれるかな?」
 「え?あ、そうですね。考えておきます…」
 目の前の突然の成り行きに、目が点の士郎。ワルドがプロポーズするとは思わなかった。

 場の流れは完全にワルドペースになった。

 「そういえば、ルイズ。会わない間に魔法の方は使えるようになったかい?」
 「!!!」 ルイズは士郎に、眼で助けを求めてしまう。
 「あ~、ルイズは魔法使えますよ…」
 「!! なに! それは本当かっ!!」ワルドが慌てて問いただす。

 「そ、そうよ。か、彼は、私の魔法の先生でもあるの」
 「僕に(魔法を)見せてもらえないか? 君の成長をぜひこの眼で確かめたい」

 「機会があったらということで。 今は、明日の準備を先に済ませましょう」
 士郎がそう言って話を引き取る。

 「う、うむ。そうだな。 ……ちなみに、ルイズの系統はなんだったのかい?」
 「『火』よ!」「『風』です」 ルイズと士郎が同時に答える。
 互いに眼を合わせるルイズと士郎。
 「『風』よ!」「『火』でした」 また同時に答えるルイズと士郎。

 「………」 三人の間に訪れる沈黙。

 ワルドは、
 「まぁ、実際見ればわかるから、それまで楽しみにしておこう」
 と、部屋を出て行った。


815:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:14:29.73 GHXApmeL
とりあえず、ここまでで。
11章の残りは出来上がり次第うpしますね。

…やたらとワルドの話になってしまいました。
まぁ主人公だからしかたないよね。

ではノシ

816:マグマ・フレイム
11/06/19 01:08:35.84 NPHoYJQC
 どうも始めまして、FATEは結構好きですよ~♪ やはりクラウン・クラウンと言う方のFATE二次小説は最高です★

 っとこのゼロ魔×FATEでは関係ないので割合させて貰いまして。

 レーヴァテイン Laevatain 北欧神話
 北欧神話、9つの鍵で封印された災いの剣。スルトが振るった炎の剣と同一視される。

 これなら炎を打てます。 無論、士郎ならその剣は既に見ているでしょう。

 リットゥ (マルドゥックの炎の剣)
バビロニアの神話伝承。マルドゥク、マルドゥーク神の炎の剣だという。
 
劈風刀(へきふうとう)(『水滸伝』) - 方臘配下の将軍石宝の持つ宝刀。三重の鎧であろうと風を断つがごとく斬り破る鋭さを持つ。

817:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/19 06:37:20.87 JdKjmJL+
士郎の人乙
翌日イベントはどうなるのやら

818:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/19 17:52:09.27 CCQ+UaGl
士郎の人乙
そしてワルドも色々な意味で乙w

819:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/07 00:02:12.13 /Tilb9wc
うう、全然次が出来上がらない。

とりあえず保守です(つд⊂)

820:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/07 07:08:08.21 F1BHVZ/p
まぁ、じっくり考えてくだされ

821:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/15 11:22:43.74 QX+gLgBB
保守ですよ

822:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/22 22:56:14.54 /f/S1zOQ
ふぅ、やっとでけた。
今晩か明晩にあげる予定です。

それにしても、ヤマグチノボル先生の方がいろいろ大変なようですね…
自分なんか何もできないので、祈るくらいになってしまいますが。
回復をお祈り申し上げます。

では、また。

823:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:06:24.79 olZN03rO

 部屋を出たワルド。一気に脱力する。
 (ルイズが魔法を使えるようになったと聞いたときには、心底焦った……
  でも、あの様子だと魔法を使えること自体、事実かわからない。
  系統不明の魔法だとすれば、『虚無』の可能性はまだあるしな)
 とりあえずは、明日の行動の準備をすることを優先することにしたワルドであった。

 ………

 「ねぇ、シロウ………」
 ものすごく冷めた声のルイズ。
 「な、なんだ。ルイズ」

 「私怒っているのよ……」
 「何にかな?……」

 「≪無断で!勝手に!いろいろ!決めていたことによっ!!≫」

 ルイズの怒りが爆発した。先ほどのプロポーズも含め、ストレスが溜まっていたのだろう。
 さすがに「バカ犬~!!」と怒鳴って鞭を振り下ろすようなことはないが、
 藁が詰まった枕を士郎に投げつけた。

 「ご、ごめん。謝るから…、許してくれ」

 「なんで!なんで私に黙って色んなこと決めちゃうのよっ!!」

 「い、いや、他意はないんだけど……」
 嘘である。 実は士郎はルイズにはある事実を隠している。



824:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:08:40.04 olZN03rO
───────────────
アルビオン出発前日~学院~マザリーニ居室

 <こんこん>

 「誰だ?」
 「枢機卿、学院の教師が面会を求めてきておりますが……」

 (やれやれ、王女の気まぐれ逗留は学院にはさぞ迷惑だっただろうから、
  要望とか出されるようであれば、ある程度受諾せねばなるまい……)

 「こちらへお通ししろ」
 「はっ」

 ………

 「夜分に申し訳ありません。私はここで教師をしておりますコルベールと申すものです」
 「そちらのお連れの方は?」

 「衛宮士郎といいます。えっと、ルイズ・フランソワーズの従者です」
 士郎は一番無難そうな肩書きで名乗る。

 「フランソワーズ……。ああ、王女の古くからのご友人ですな。で、なにか?」

 「実はさっきまで、ルイズの部屋に王女が来て…いや、いらしてたんですが、
  俺の主人に頼み事をしてきたんですよ……」
 「ふむ、どのような事をかな?」
 「アルビオンまで行って、皇太子から手紙を取り戻して欲しいとか……」
 士郎は詳細を語った。

 「やれやれ、まったく王女もしょうがない人だ……」
 マザリーニは額に手をやり、眉間にしわを寄せ難しい顔をした。

 「悪いが王女の希望通り、手紙とやらを取りに向かってもらえないだろうか?」
 「あ、はい。そうしていいんでしたら」

 「うむ、頼む。
  ……そうだな、王女なら誰か近衛の者を君たちの任務に付けるかもしれない」
 マザリーニは鋭い目付きで士郎を見ながら、
 「実は近衛の中に、スパイがいるかもしれんのだ。
  以前からスパイ疑惑があったのだが、最近になってその人物が絞られてきた。
  それなので、君たちに同行する者がいたとして、それが近衛兵だとしても
  油断をしないでもらいたいのだ」

 士郎とコルベールは衝撃の事実に目を丸くした。
 マザリーニは続ける。

 「できれば、君たちが信頼の置ける同行者を探して、協力して旅立ってもらいたい。
  そのほうが、安全だと思う。
  資金は些少だが私のポケットマネーから出そう」

 「わかりました。2名ほど心当たりがあるので明朝声をかけてみますよ」
 「うむ、頼む。 まぁ恋文程度なら、
  もみ消すのは難しいことではないから、自分たちの安全を第一に考えてもよいからな」

───────────────


825:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:10:51.79 olZN03rO

 そんなやりとりがあったことはルイズには言えない。
 正直ルイズには腹芸は向いてない。(士郎も人のことは言えないが……)

 この旅の間にワルドが見せた反応はどう見ても怪しい。
 先ほどのプロポーズも、何かの企みではないかと思えてしまうのだ。
 だから士郎はルイズにこう言った。
 「ルイズ、頼みがあるっ!」
 「えっ!? な、何よっ!?」
 「さっきのワルドのプロポーズを断ってくれないか……」

 (どきっ) ルイズは思わず顔を赤らめる。
 (そ、それってヤキモチを焼いたのかな?)

 「い、いいけど……。どの道、今はプロポーズなんて受けている暇はないものね……」

 「ありがとう。助かるよ」

 「後で機会を見てワルドには断りを入れておくから。とりあえず明日の準備を急ぎましょ」
 「あぁ、とりあえず何が必要かな……」

 ………

 早朝

 ワルドを先頭に薄暗い中、一行は港街のはずれに向かっていた。
 時々、街中に巡回の兵士が見て取れたが、とりあえず気づかれることはなかった。

 「あそこだ」
 ワルドが一軒の小屋を指さす。
 「僕が先にあの小屋にいる人物と接触してみる。君たちはここで待機していて欲しい。
  10分以上戻らない場合や小屋で騒ぎが起きた場合は一目散に逃げてくれ。
  いいかい?」

 「いやよ、その時は助けに向かうわ」と、ルイズが言う。
 「僕のルイズ。その気持ちは嬉しいが、今は任務を優先しないとダメだ。いいね」

 そう言うとワルドは、小屋へさっさと向かっていった。

 ワルドが扉をノックする。中から聞こえた声となにやらやりとりをする。
 扉が開きワルドは中に滑り込む。
 ルイズは食い入るように小屋を見ている。

 その間、キュルケ・タバサ・士郎は周りの警戒を怠らない。
 ギーシュも警戒をしているように見えるが、無意味にあちこちを振り返るばかりで
 かえって素振りが怪しく見える。
 キュルケに頭を叩かれる。

 「アンタ、もっと落ち着きなさいよ! こっちの気が散ってしょうがないわ」
 「叩いたね。オヤジにも叩かれたことがないのにぃ!w」

 その口ぶりにイラッとした士郎は、ギーシュの頭に拳骨を食らわすのであった。

 ………

826:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:13:02.25 olZN03rO

 5分ほどしてワルドが扉から顔を出し、皆に手招きをする。
 素早く、そして用心深く一項は小屋へ入る。

 はたして、そこには一人の軍人らしき人物がいた。

 「紹介しよう。彼は王軍側の兵士で、名はエイブ。 こっちが我々の仲間だ」
 ワルドは互いに紹介をする。
 「よろしく。俺はエイブ。 正当なアルビオン軍人だ。
  最近まで貴族軍に身柄をされていてね、なんとか逃げ出してこれから王族軍に戻るつもりだ」

 ワルドが後を引き取る。
 「そこで我々が彼に協力する。ついでに王族軍へ接触するという算段だ」

 手順は単純。船を一隻借り上げて、出航するだけ。
 後は、アルビオンの下あたりを貴族側に見つからないように飛行していれば
 向こうから接触してくるだろうということだった。

 「なんだ、簡単じゃぁないか」 ギーシュが意見を述べる。
 「ねぇ、その船ってどうやって借りるつもりなの? クルーは?」 ルイズが尋ねる。

 「まぁ普通に金を払って1隻借りれれば一番問題はないんだが」
 ワルドはにやりと笑い、
 「それが無理だとしても大丈夫だ。こう見えて私はかなり腕は立つ……」

 力ずくも辞さないようだ。

 と言っても、キュルケもタバサも荒事に対しては特に抵抗感はないようなので、
 嫌な顔をしたのはルイズとギーシュ位だった。
 (士郎は最初から諦めている)


827:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:17:47.16 olZN03rO
以上が11章後半です。

うpにあたり、時間が空いてすいません。
あと、切った張ったの描写が少なかったり、色々不満点あると思いますが、
目をつぶってください。

ちなみに今回出たエイブは100%オリキャラのつもりなんですが、
何かとかぶっていても他人ですから気にしないでください。

では、12章を早めにうpできるよう頑張ります。ノシ

828:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/23 17:17:11.14 Zi/N0ywu
乙です
次回も楽しみにしてます

829:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/26 21:48:19.02 N5U4IQN0
…身柄をされるってなんだ。
「最近まで貴族軍に身柄を拘束されていてね」
が正しいです。

んも~

830:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/29 08:05:06.09 AFF8hsu9
投下乙


831:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/07 01:15:00.68 mRNF60C2
乙です
普通に「身柄を拘束されて~」って読んでたw
そして「んも~」が可愛いwww

832:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:29:33.63 ydwYlZPS
こっそり投下

833:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:31:36.67 ydwYlZPS
第12章 試合

 「ということで、君と戦うことにしたから……」
 突然のワルドの宣告。

 ここは先程の脱走した兵士がいた隠れ家近くの森の中。
 ワルドに連れ出された士郎。 他のメンバーは隠れ家に待機している。

 士郎は「へ?」と気の抜けた返事をした。

 「な、なんでですか?」
 「おいおい、今までの話を聞いてなかったのかい?
  さっき、ルイズが僕のところへ来て、
  『あなたのプロポーズを断りに来たの。だって、士郎が断れって言うんだもの』
  って言ってきた。 これは君からの宣戦布告なんだろう?」

 「いやいや、今から王族軍へ接触しようってこんな時に決闘なんて、正気ですか?」

 「こんな時だからだよ。この機会を逃せば次に君と雌雄を決する機会が来るとは限らない。
  安心したまえ、もし君が倒れても、ちゃんと船には運んであげるから……さッ!」

 ワルドは言いつつものすごい勢いで突っ込んでくる。

 士郎は距離を取ろうとバックステップを踏みつつ、デルフリンガーを抜き構える。

 <ぎんっ!!>
 ワルドの杖とデルフが交差し火花を上げる。鍔迫り合いの状態のままワルドが問う。
 「君は、魔法を使わないのかい?」

 「魔法よりこっちの方が得意なんすよっ!!」と士郎はデルフを押し込む。

 「ふむ!そうかい!でも、こっちは遠慮なく魔法を使わせてもらうよ!」

 ワルドはバックステップを踏み、少し距離をとった。だがすぐさま連撃に移る。

 「魔法衛士隊のメイジはただ魔法を唱えるのではない!
  詠唱さえ戦闘に特化されている!構え、受け、突きなどの動作の中にも詠唱が行われる!
  杖を剣としつつも!魔法を発動できるのさ!」

 ご丁寧に説明してくれるワルド。そして呪文を詠唱した。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 デルフが警告を発する。
 「相棒!くるぜ!」

 空気の塊が士郎を横殴りに弾き飛ばす。10メイルは飛ばされただろうか。
 だが、士郎はなんとか空中で体制を整え無事に受身を取る。そして剣を構えた。

 「ほほぅ。この程度の魔法は君には通じないかな……。
  だが、杖を持たないメイジなど僕の敵たりえない。それを証明しよう。

  デル・ウィンデ!」

 不可視の刃『エア・カッター』が士郎に襲いかかる。

 士郎は見えないながらも気配から『エア・カッター』を両断しようと剣を振るう。

 「無駄だよ、シェロ君。 その程度の迎撃で僕の『エア・カッター』は受けきれない!」


834:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:34:22.25 ydwYlZPS
 
 その通りであった。
 手応えからみるに士郎は『エア・カッター』を両断することには成功したようだ。
 が、その魔法の勢いはそれで消しきれず、士郎の二の腕に傷を負わせた。

 「僕はこうして、『エア・カッター』だけを唱え続けるだけで君を倒せるのさ…。
  デル・ウィンデ! デル・ウィンデ!! デル・ウィンデ!!!」

 こうなると士郎は防戦一方である。デルフを盾がわりにして左右に避け続けるしかない。
 それでも『エア・カッター』を確実に避けれるわけでもなく細かい傷を負っていく士郎。

 ましてや、ワルドの魔法を避けるためには大きく横っ飛びするくらいしか方法がない。
 ワルドの魔法による精神力の消耗より、士郎の体力の消耗がどう見ても早い……



 ……かに見えた。

 何度か左右に避けていた士郎だが、なぜか最初のように『エア・カッター』を両断する方法に
 変えた。

 「ほほう、なにか意図でもあるのかい?
  でもその方法では、『エア・カッター』の威力は消しきれないことは証明済みだろう」

 その後、3度(たび)ワルドは『エア・カッター』を詠唱した。
 だがよく見ると、士郎が今以上の傷を負うような気配がない。

 「何?……」

 「もう無駄ですよ。その攻撃は見切った……」

 「何…だと…」

 再度『エア・カッター』を唱えるワルド。だが士郎の剣のひと振りで消え失せる魔法。
 士郎がなにか魔法を使っているのか、それとも純粋な剣技によってなのか、
 もはや『エア・カッター』が士郎に届くことはなかった。

 「そろそろやめません?」 士郎が尋ねるが、
 「まだだっ!!」 ムキになったワルドが応える。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 士郎を最初に吹き飛ばした魔法の詠唱だ。
 士郎はワルドの動きをつぶさに見て、おおよその魔法の方向を見極める。「左だっ!!」
 
 魔法の発動と同時に、デルフがその魔法のただ中に突き出される。

 「なっ!!」 ワルドが声を上げる。
 たったのひと突きで、魔法が掻き消えてしまった。

 「僕の魔法をこうもあっさり破るとは……いったい、何をしたんだい?」
 「それは秘密ですよ」
 士郎はにやりと笑う。


835:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:37:08.55 ydwYlZPS

 「……ふん、じゃあ次の魔法で最後としよう……」

 呪文を唱え始めるワルド。『ライトニング・クラウド』の呪文である。
 ワルドの頭上の空気が冷え始めた。ひんやりとした空気が士郎にも伝わってくる。

 士郎は慎重にワルドの出方を見る。

 「相棒!くるぞ!!」

 空気が震え、パチンと音がすると同時に、稲妻が士郎とデルフめがけて飛んでくる。

 稲妻はデルフを直撃し、士郎は後方に跳ね飛ばされた……

 ………

 (少々本気になってしまった……)
 ワルドは士郎の方へと歩いていく。

 「す、すまない。ここまでやるつもりはなかったのだ……」
 ひょっとして死んでしまったのでは、と思いながらも士郎に声をかける。


 「……痛てて。ちょっとシャレになんないんじゃないですか?」
 不満げな声で士郎が応えた。地面に大の字になったままだが。

 (!!!。馬鹿な!!またしても無傷だとっ!!)

 「お~い、相棒~。大丈夫かぁ~?」
 「!!!」ワルドは慌てて声の出どころを探す。驚くことに剣がしゃべっているようだ。

 「シ、シェロ君、これはインテリジェンスソードかい?」

 「よぉ、魔法使いの旦那。俺様の名前はデルフリンガー。気軽にデルフって呼んでくれな」

 「ああ、そういうことか。僕の魔法をことごとく破ったのはこの剣のせいだな」
 起き上がった士郎がそれに答えた。
 「そういうことです。俺も今さっき、そんな芸当ができることを知ったんですけどね」

 士郎は歩いてきてデルフを拾い上げると、鞘に戻し背負う。
 「もうこの辺でいいでしょう?」

 さすがにワルドもこれ以上の戦闘を行おうとは思わなかった。
 「いや、悪かったね。でもルイズに変なことを吹き込む君も悪いんだ」

 「ああ、そのことですか。いや、プロポーズはせめてこの任務が完全に終わってからに
  してくれれば、こちらもとやかく言わないですよ」

 「まぁ、それは君の言い分の方が正しいか……。 では、さっさとその任務を果たしに行こう」
 ワルドはすたすたと歩いていってしまった。


836:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:39:12.93 ydwYlZPS

 ワルドは帰り際思った。
 (魔法が通じない相手か……。こいつは少々厄介だな。
  これからの“私の”任務に邪魔になる可能性があるな……)

 士郎も思う。
 (魔法衛士隊隊長の腕は伊達じゃない。スパイがワルドだとしたら、無傷じゃすまない。
  いや、王軍が壊滅させられることもあるかもしれない…。どうすれば……)

 互いに相手の腹の探りあいになる。
 だが士郎は正直、陰謀戦などには向いていない。
 キュルケあたりと相談して対応を決めようかと士郎は考えた。


837:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:49:55.11 ydwYlZPS
以上です。

夏休みシーズンなので、自分が巡回しているやる夫スレがお休み中
安西先生、早く続きが読みたいです。

>>831
“んも~”は植田まさし先生の漫画のセリフです^^

ヤマグチノボル先生の手術は無事終えられたようで一安心
経過も順調であればとてもうれしいですね


さて、今回は2巻5章に当たる部分です。
さすがに戦闘シーンが少なすぎって感じがしたので入れてみました



では、また次の章で……

838:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 04:57:41.76 JCFss+O/
投下乙

839:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 19:02:54.79 HBrGEoIl
ルイズなんつーことをw

投下乙ですb

840:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 22:01:32.40 0kUXkiw9
シロウの人乙

841:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 14:52:33.11 JtKXdNpD
見直ししたので投下します

842:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 14:55:50.74 JtKXdNpD
第13章 空軍

 「ところで、お前どのくらいまで過去のこと思い出したんだ?」
 「なんでぇ、藪から棒に」

 ワルドと一戦交えた帰りの、森の中での士郎とデルフの会話である。

 「別に藪から棒でもないだろうが。お前の能力次第で、俺の戦う方法も左右されるだろ」
 「なるほど……。悪りぃな、そんなに思い出したことはねぇや。
  魔法を吸収できるってことは思い出したんだけどなぁ」

 「ふ~ん。お前、魔法を吸収し続けるとレベルアップするとかしたりはしないのか?」
 「いや、そんなことすると寧ろ壊れちまわぁ。限界ってモンがあらぁな」
 「ということは、吸収する回数は有限なのか」
 「時間を置けば、その回数も元に戻るけどな」
 「どういうことだ?」
 「吸収した魔法は少しずつ消化されていくからな。人間の腹ン中と一緒さ」

 「なるほどね。じゃあ魔法は何回分くらい吸収できるんだ?………………」

 ………

 「ただいま」
 扉を開けてワルドが戻ってきた。 一人で、である。

 「ワルド、私の従者は?」
 「彼ならじきに来るよ」
 「そう」

 ワルドは小屋へもどる道すがらシェロ対策を練った。
 結論として、1対1に持ち込めば何とでもなると思われたので、
 そのシチュエーションをつくることに尽力すべきだと決める。
 ただ、この大人数のパーティをばらけさせるのは容易ではなさそうだ……。

 「ただいまぁ」 士郎もしばらくして帰ってきた。
 「遅いっ!!」 ルイズが怒鳴る。
 「ごめん。……じゃあ時間がもったいないから、早速出発」
 「…ったく、じゃあワルド、あなたが用意したっていう船にみんなを案内してよ」

 「そうだね。では、なるべく目立たないようにみんな付いてきてくれ」

 ………

843:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:02:01.15 JtKXdNpD

 無事、誰も欠けることなく一行は港へ停泊している船へとたどり着いた。
 船といっても、それほど大きなものではない。寧ろ、小型船といったほうがいいだろう。
 ワルドがポケットマネーで借り上げた船だ。
 積荷はグリフォンとドラゴンが1頭ずつだけなので、小型船でも問題はない。

 「へへっ、お待ちしてましたぜ、旦那」
 船長らしき人物がワルドに話しかけてきた。

 「で、旦那方はどちらの国に亡命しようとしてらっしゃるんで?」
 どうやら船長は、一行がアルビオンから国外逃亡を図っていると思っているようだ。

 「ああ、そこはまだ特に決めてないんだよ。すまないね」
 ワルドはいけしゃあしゃあと返答する。
 「そうですかい。ところですぐに出立でよろしいんですよね?」

 「ああ、針路の方は彼の指示に従ってもらいたいんだ。そこらへんは全て任せているんだ」
 と、脱走兵(エイブ)を指し示す。

 わかりやした。と船長が返事をして出発の準備に取り掛かる。

 ………

 船が発進し、クルーはそれぞれ持ち場に従いて仕事をしている。
 エイブが船長に針路を指示している間、一行は甲板の上で周囲を警戒していた。

 とりあえずは何事も無く港を離れることができたが、いつ貴族軍に見つかるかわからない。

 エイブが示す針路はなぜか大陸の真下を目指していた。

 「この進路で本当にいいんですかい?」
 船長がたまらず尋ねるが、問題ないとエイブは返答。

 浮遊しているアルビオン大陸は、下の部分は常に雲に覆われている。
 その雲の下を潜り込むようにして船は進んでいく。

 ………

 アルビオンの下に潜り込んでから10分くらい経っただろうか。
 「上の雲の中に何かいるみたいよ……」
 キュルケが何かを発見する。

 「ありゃ、軍船ですぜ。……あの旗は、劣勢の王軍のようですが」
 船長が望遠鏡を使い、雲の中から現れた船に掲げられた軍旗を確認する。
 「どうしやす?」

 「あぁこのまま停船してもらっていいかな。実は我々はあの船に用があったのだ」
 「へ? そうなんですか? まぁ今の雇い主はあんた方だから従いやすが……」
 不振な目で船長はワルド達を見る。 それはそだろう、戦争中の軍に接触するなど
 下手したら何か酷いことに巻き込まれかねないのだから。

 相手の船から停船命令がなされた。既に停船しているので相手の接触待ちである。

 ………


844:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:10:32.08 JtKXdNpD

 「我らはアルビオン王立空軍、本国艦隊である。
  貴様たちの身分と、何故このような場所を航行しているのかを述べよ」
 接舷後に乗り込んできた兵士が船長に向かって問う。

 「あっしらはこちらの方々に雇われまして、その、単なる、輸送中なだけでさぁ」
 「輸送中だと? 怪しいな。 このような場所にいる理由がわからんぞ」
 亡命船であれば、たしかにこのような航路を取る必要がないから当然である。

 そこで脱走兵のエイブが口をはさむ。
 「自分は王立空軍兵士のエイブであります。貴族どもに捕らえられておりましたが、
  なんとか脱走して、王立空軍の一員としてまた戦うべく、こうしてやって来たのであります」

 「我が軍の所属だと? 階級と名前を述べ、身分を証明するものを提示せよ」
 「了解であります」
 軍人同士のやりとりが行われる。他のメンバーはそのやり取りを見守る。

 ………

 「よし、貴官の身分は分かった。そして、他はどのような者たちだ?」
 「彼らはトリステインからの使者であります。縁あってこうして同行することになりました」
 「トリステインの使者だと!」
 突然の成り行きに驚く兵士。自分では判断がつけられぬとみて上司に報告を仰ぐことにした。
 「よし、しばし待たれよ。 上の者に報告してくるのでな」

 ………

 しばらくして、数人の人間が軍船から乗り込んできた。
 先頭に立ってやってきた身分の高そうな人間が口を開く。

 「ようこそ、トリステインの方々。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーです」

 慌ててルイズが前に出る。 

 「わ、私はトリステインの姫殿下、アンリエッタ様の使者としてやってきました
  ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールで、こっちは共の者です」
 「ようこそ、ルイズ」

 士郎から見たウェールズの第一印象は、雰囲気がたしかに王族っぽいなというものだった。
 それにしても、皇太子ほどの者がこのような危険な場所にいてもいいものなのか心配だった。
 それはルイズにしても同じだったらしい。こう尋ねた。
 「あの、失礼ですが本物の皇太子さまなんでしょうか?」

 「あはは、こんなとこにうろついていては無理もないな。
  う~ん、そうだ、証拠をお見せしましょう」

 と、皇太子はルイズの指に光るルビーを見つめて言った。
 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。
 2つの宝石は共鳴しあい、虹色の光を振りまいた。

 「この宝石は、アルビオン王家に伝わる風のルビーだ。きみが嵌めているのは、
  アンリエッタが嵌めていた、水のルビーだ。そうだね?」

845:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:14:05.63 JtKXdNpD

 ルイズは頷いた。

 「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」

 皇太子がなんか言っているが士郎には聞こえていなかった。アンリエッタ王女は
 今ルイズがしている指輪を「お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」とか
 言って渡していた。 慌ててたとかうっかりのレベルで済む問題ではなかろう。
 無事に戻ったら、一言言わないではいられない。

 「まぁとりあえずは君たちも我々と共に城に戻ろう。こちらの船も随伴するのかね?」

 「いえ、この船はアルビオンの港で借り受けただけですので、ここでお別れしようと思ってます」
 ルイズがそう返答すると、皇太子は部下に向かって
 「おい、この船長にお礼をいくらか渡しておいてくれ」と指示をする。

 「では、皆さん、我が軍の船へいらしてください」

 ………

 アルビオン王立空軍の軍船に乗った一行。先程まで乗っていた船は港へと戻っていった。
 ちなみに小型船の船長は、結構な報酬をもらってホクホク顔だった。

 一行は軍船の中の広い部屋へ案内された。会議室兼食堂の部屋だろう。

 「この船の本日の哨戒任務は終了しましたので、既に城へ向かっております。
  じきに到着しますので、しばらくはここでお待ちください」
 そう、兵士の一人に告げられる。

 「あの、甲板に出てもいいですか?」 士郎が尋ねる。

 「そうですね、我々の邪魔にならなければ問題ないと思います」

 兵士の許可をもらい士郎は甲板へと向かう。
 「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
 ルイズが後からついてくる。

 「どうした?ルイズ」
 「べ、別になんでもないわよ。
  ただアンタはご主人様を放っておいて勝手にどこかに行くなんて許さないんだから」
 (意訳:士郎と一緒にいたい)ってことです。

846:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:19:26.87 JtKXdNpD

 士郎はルイズを伴い、甲板に出る。

 甲板上では多くのクルーが持ち場で周囲を見張っていた。
 それはそうだろう。すでに船は雲の中を進んでおり、辺りはねずみ色一色なのだから。

 「右舷5度に目標C4」
  「右舷5度に目標C4」
   「右舷5度に目標C4」
 クルー同士で伝言が伝わっていく。
 そして船が方向を変える。見事な統率である。

 「どうだい? 我が軍の凄さが分かってもらえたかい?」
 いつの間にかそばにウェールズ皇太子がやってきていた。

 「えぇ、見事なもんですね。 何も見えない雲の中を楽々と進むなんて」
 士郎は正直な思いを告げた。それにしても、なぜ雲の中を進むのだろう。士郎が尋ねると

 「ああ、城の上は敵が見張ってて降りるのも容易じゃないんだ。
  だから、城の地下、大陸の地下から潜り込まないといけないんだよ」

 船の周りはついに真っ暗になった。太陽光も届かない場所になったからだ。
 それでも難なく船は進む。測量と魔法の明かりだけで航行しているのだ。

 大陸の裏側に300メイルほどの穴が現れた。そして船はそこに飛び込んでいく。

 「僕はこの瞬間がたまらなく好きなんだ。冒険心をくすぐられるからね」

 「なんか空賊っぽいですね」 士郎が言うと、
 「わかるかい? そうなんだよ!」 と皇太子は返事をした。

 「いっそのこと、空賊に転職したらいかがです?」
 その士郎の言葉に、

 「空賊……、空賊か!! こいつはいい!!!
  城に戻ったら早速提案してみよう!!」

 と冗談ともとれない感じで皇太子は満面の笑みで答えた。

847:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:27:59.91 JtKXdNpD
以上です。

…キュルケもタバサもギーシュも全然活躍してない。
ファンの人にはごめんなさい

で、とりあえず現状を再確認

現在、士郎はシェロと言う偽名で白髪で学院の服を着ています
キュルケとギーシュは使い魔は連れておりません
士郎たちは、ワルドを怪しんでおりますが、裏切っている証拠を持っているわけではないです
ルイズだけは、ワルドが怪しいという情報を持っていません

ワルドはルイズが虚無の魔法使いだと考えていますが、こちらも証拠がありません

時間軸的に原作より早く進んでおり、ニューカッスルは陥落までまだ余裕があります
フーケさんはレコンキスタに捕まっていない模様です

ということで、ノシ

848:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/22 01:00:52.49 2Hi3UYB0

毎回楽しみにしてるよ!

849:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/26 12:14:34.46 F8vVRlKc
テス

850:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:31:31.59 Oflo42N4
ふぅ、一通り見直し終了。
まだ誤字脱字ありそうだけど、投下してみますのです。

851:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:33:33.92 Oflo42N4
第14章 謁見

 一行が城に到着したその夜にささやかながらパーティが開かれた。

 「皆、今宵はこれからの戦いへの英気を養うのと、
   トリステインから来た方たちの歓迎、
   そしてこれから送り出す我らが家族のしばしの別れを惜しむための
   合同パーティである。

   大いに飲み、食べ、笑い、泣き、楽しんでもらいたい!!!」

 ………

 壇上のウェールズの姿を見ながら、ルイズは士郎に尋ねた。
 「家族を送り出すって、戦時だから避難させるってことかしら?」
 「そうじゃないか? 女性や子供の姿が見えるから」
 「どの国へ避難させるのかしら……」

 「トリステインで受け入れたいってこと?」
 キュルケが口をはさむ。
 「えぇ、できればそうしたいわ」
 「といっても、姫殿下に許可とか得てるわけじゃないだろう」
 ギーシュが質問する。
 「でも、姫殿下も同じ気持ちだと思うわ」 ルイズが反論する。
 ここでワルドが、
 「じゃあ、使いを出してみればいいんじゃないか?
  ええと、タバサ君だっけ? 彼女の竜が一番早く飛べそうだけどね」
 「断る。かなり疲労しているから」 タバサの返事はそっけない。

 「そうか……。僕のグリフォンを使って連絡を取ってもいいけど……」
 「まぁそれはきちんと謁見して、話を伺ってから決めましょう」

 ………

 戦時下のため、お世辞にも豪勢とは言えないが、それでも気持ちのこもった料理が並んだ。

 一行はそれぞれパーティを楽しんでいた。
 タバサは黙々と食べ物を口に運ぶ。
 キュルケはいろんな人たちと談笑し、華を振りまいていた。
 ギーシュの周りにもそれなりに輪ができていた。どうやら、魔法瓶の売り込みをしているようだ。

 ルイズも作り笑いながら、うまく他の人と語らっていた。

 ワルドは、壁に背をあずけて何かを考えているようだった。

 そんなワルドを横目に見ながら、士郎はウェールズと話をしている。
 「どうだい? 楽しんでもらえてるかな?」
 「あ、はい。 まぁ楽しんでますよ」
 「おや、君はお酒は飲まないのかな?」
 「あんまり飲めないんですよ。 でも、この紅茶は美味しいですね」
 「アルビオンの水で淹れたお茶は美味しいんだよ。どんどん飲んでくれて結構だから」
 「いや、そんなには…」
 と、苦笑する士郎。


852:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:35:41.04 Oflo42N4

 「まぁ、それもそうか」と、ウェールズは去ろうとする。

 「あ、皇子。なんか落としましたよ」
 と、士郎はしゃがみこんで紙を拾い上げた。手紙のようだ。
 「ん?これは……。 やぁすまないね。ありがとう」
 手紙を受け取るウェールズ。

 「それじゃあ、後ほどまた会おう」

 ………

 パーティも終わり、一行は王に呼ばれ謁見室と思われる場所に呼ばれた。

 玉座についているのはアルビオン王であるジェームズ1世。
 ウェールズは玉座の前にある段の下で、皆の方を向き立っている。
 一行の顔を見回して王が述べる。
 「遠路はるばる、よく来ていただいた。 トリステインの姫殿下が遣わした使節の方々。
  先に謝っておこう。 本来なら先に謁見を済まして、パーティを開くべきだったのだが、
  我が兵たちの家族はこれから脱出の準備に取り掛からねばならぬ関係で、
  このような順番に相成った。 申し訳ない」

 一行の代表であるルイズが応える。
 「いえ、過分のお言葉、痛み入ります」

 ウェールズが引き継ぐ。
 「では、使者殿の用向きを伺うとしようか」

 「え~、すいません。皇太子殿下。お人払いをお願いできますでしょうか?」
 「ふむ、2人きりで話がしたいと……?」
 「できることでしたら、お願いします」

 だが、ワルドが
 「いや、ルイズ。ここで話してしまったほうがいい」
 と、ルイズに囁いた。
 「え? でも……」
 「ここは正式な謁見の場だ。 内密にするかどうかの判断は彼らがしなければならないと思う」
 「…………、そうね。 わかった」

 ルイズは再度言い直す。
 「ウェールズ皇太子殿下、実はアンリエッタ姫殿下から一つの下命を受けました。
  姫殿下から皇太子殿下に送られた手紙を受け取りに参ったのです」
 「……なるほど。相分かった。理由は皆まで言わないでも理解した。アンリエッタらしい」

 皇太子は何事か思い出に浸っている。ふふふと小さく笑みをこぼした。

 「わかった。手紙は後ほど受け渡そう。その代わりといってはなんだが、一つ頼みがある」
 「なんでしょうか?皇太子殿下」
 「我が兵たちの家族の亡命……いや、避難先としてトリステインを選択したいのだ。
  受け入れを正式に要請する」
 「わかりました。 では、それは国に連絡を取りたいと思います」
 「よろしく頼む。 他に何か用向きが無いようなら、謁見はこれで終わろうと思うが、よいか?」
 「はい、ありがとうございました」

 ルイズは優雅に一礼をした。
 ワルドもキュルケ、タバサ、ギーシュも貴族の作法に則って礼をする。
 士郎だけ深く頭を下げる礼をした。 他の者は不思議な目で士郎を見た。

 ………


853:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:37:46.36 Oflo42N4

 ウェールズに呼ばれて、ルイズと士郎、そしてワルドがウェールズの居室に案内された。
 「すまないな。来てもらって」

 ルイズはとんでもございませんと返し、こう続けた。
 「先ほどはお渡しできませんでしたが、姫殿下より密書を言付かっております」
 「ふむ、密書か……」
 「こちらでございます」

 ルイズは懐よりアンリエッタの手紙を取り出し、ウェールズに渡した。

 ウェールズは丁寧に封を切ると、中の手紙を取り出し読み始めた。

 「ああ、彼女の婚姻はほぼ決まったようだな……。愛らしいアンリエッタ……」

 手紙を最後まで読んだウェールズは3人に向き直る。

 「先程の避難先の受け入れ要請での連絡は不要になったよ。
  既にこの手紙に避難民の受け入れが明記されていた」
 微笑むウェールズ。

 「さて、あとは昔、彼女から送られた手紙だね……。
  ……
  これは、どうしても返却しなければならないだろうか?」

 「え!?」 予想もしないウェールズの反応にルイズは驚く。

 「ああ、勘違いしないでくれたまえ。返すことは問題ないんだ。
  でも、これを君に渡すと君の身が狙われないかと思ってね。
  万が一、貴族派やレコンキスタ共に奪われたなんてことになると、アンリエッタに
  顔向けできないよ」

 「では、燃やしてしまいましょう」 士郎がそう言う。
 「まて!」 ワルドが慌てる。
 「それは本末転倒だろう。姫殿下からの要請は手紙を持ち帰ることではないのか?」
 「そうよ! 何、勝手に物騒なこと言い出してるのよ!!」

 「だってさ、本来の目的はゲルマニアとの婚姻を滞りなく進める障害の除去が目的だろ。
  わざわざ危険を冒して、手紙を敵に奪われましたなんて笑い話にもならないよ」
 「僕がいて、みすみす奪われるようなことになると思うのかい?」
 「でも、行動は常に最悪の事態を想定して動くべきです。
  燃やせば、奪われることは絶対に無いし、襲われるリスクや隠す必要もなくなる」
 「君は民間人だからいいが、私は近衛なんだ。姫殿下のご命令であれば、遂行する必要がある」

 <パチパチ>
 焦げ臭い臭いと共にそんな音が聞こえてきた。

 「ああ、君たち。すまないな。(討論が)長くなりそうだから、勝手に処分させてもらった」

 「え??」ワルドとルイズが慌てて振り向くと、ウェールズはランプの蓋を開けて、
 手紙に火をつけていた。すでに粗方燃えてしまっている。

 ガックリ膝を付くワルド。
 「わ、私の任務が……」

 「まぁ気を取り直してくれ。他のことだったらいろいろ協力するから」

 これで会談はお開きとなった。



854:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:39:56.76 Oflo42N4
───────────────

 「ふむ、敵陣に潜り込むことは成功したのだな」
  「はい。やつらは明日、兵の家族を脱出させるようですが……」
 「ああ、それは既に聞いている」
  「では、一斉攻撃はその後でよろしいのでしょうか?」
 「ふふ、何を言っている? 船を沈める絶好の機会ではないか」
  「!!! では、軍人ではないものが乗っている船を一斉に沈めると!?」
 「何者が乗っているかなど、我らの知るところではない。
  城から発進しているのなら、それは軍事行動と取られても致し方あるまい」

 えげつない攻めをする。そうは思っていても顔に出すような愚かなまねは決してしない。
 命令どおりに任務をこなすだけだ。そう、男は思った。

 「ああ、王や皇太子は極力きれいな状態でいてもらいたい。
  そのために、渡した『毒針』をうまく活用してくれたまえ」
  「御意」

 男はその言葉を残すと何処かへと消えた。

───────────────

 翌朝……

 城の一画に武装を取り払われた大型船が5隻停まっていた。
 もちろん軍旗も外され、代わりに白旗が掛かっている。

 兵が大声で指示を飛ばしている。
 「昨日の指示通り、手荷物は極力減らしてください。家族ごとに集まり、離れないようにして下さい。
  兵の指示に速やかに従ってください。 では、乗船してください。」

 この城のどこにこれだけ居たのかと思うほどの人が、船の周りに集まっていた。
 兵の指示に従い、停泊中の各船に吸い込まれていく。

 城の中からその様子を見下ろす皇太子と共に、一行はいた。

 「君達はどのようにして国に戻るつもりかね? あの船に一緒に乗っていくかね?」
 「私達は竜とグリフォンに乗って帰る予定です。皇太子殿下」
 ルイズが応える。

 「ふむ、そうか。島の抜け穴から帰るようなら、雲が晴れるまでは真っ直ぐ下りていけばいい。
  この時期なら、そちらの大陸とはそれほど距離は無いから、無事着けるだろう」
 「はい、ありがとうございます」
 「では、私はここで失礼するよ。兵の指揮もしなければならないからね」

 そういうと、ウェールズは扉をくぐり去っていった。

 ………


855:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:42:02.19 Oflo42N4

 避難船がまず1隻飛び立った。ニューカッスル城の周りには現在、敵船は見当たらない。
 王軍側は、敵軍も気を利かせて兵を下げているのだろうと、胸をなでおろした。

 船が十分な高度に達すると移動を開始した………

 その直後、轟音と共に大砲が放たれた。

 同時に避難船のマストが根元からへし折れる。この世界の船は、海に浮かぶ船と大した違いは無い。
 浮力を『風石』と呼ばれるもので得ているのが違っているくらいだ。
 マストが折られた程度だと、急に墜落するものではないが満足に移動はできない。
 避難船は徐々に高度を落としていく。

 避難船が高度を下げ始めたと同時に何処に隠れていたのか、
 敵兵がわらわらと避難戦へ向かっていく。

 城壁から船の行方を見守っていた皇太子は声を荒げた。
 「船を守れ~ッ!!! 敵兵を近づけるなぁっ!! 乗員を城へ連れもどせぇっ!!!」

 なんだこれは!避難船を急襲するとは!! ウェールズ達王軍側は猛り狂う。
 ニューカッスル城から王軍が雪崩出る。
 城の周りに隠れていた貴族軍の兵がそれを迎え撃つ。
 乱戦になると同時に、貴族側の軍船が多数現れた。

 城の中からこの様子を見ていたルイズ達。
 「ど、どうしよう!シロウ。 あたし達、どうすればいいッ!?」
 士郎は周りを見る。 ワルドが居ない!
 「しまった!! ワルドを見失ったッ!!」

 一行も周りを見るが確かにワルドは影も形も無い。
 士郎は皆に指示を飛ばす。
 「タバサ、竜を呼び出してくれ。 奴のグリフォンはどうしてる?」
 「厩につながれている。 今のところワルドがグリフォンを操ろうとしている気配は無い」
 タバサが精神感応で即座に情報を得る。
 「よし、奴は城内で破壊工作をするかもしれない。タバサ、空から監視してくれ」
 「了解」
 「ギーシュとキュルケは俺とルイズと一緒に皇太子のところへ急ぐぞ。
  奴が居なくなったことを早く伝えないと」
 「わかったわ」「まかせろ」

 「え? え? え?」
 ルイズは展開についていけない。ワルドのスパイ疑惑を聞かされていないので当然である。

 「ルイズ! 周囲に気をつけてくれ。 いつワルドが襲ってくるかわからない。
  ギーシュ、キュルケ頼むぞッ!!」

 一行は走り出した。移動しながらルイズは士郎に疑問をぶつけた。 
 「ちょ、ちょっと、どういうことか説明してよッ!!」
 「ワルドが敵のスパイの可能性があるんだっ! このタイミングで姿を消すってことは
  疑いが濃厚になった!」
 「なに、それ! いつから疑っていたのよッ!!」
 「最初から」
 「なんで私に教えてくれなかったのよッ!!」
 キュルケが口を挟む。
 「あなた、疑っていることを相手に隠し通せる性格なの?」
 「うっ!!」
 「わかった?」
 ルイズはそれ以降、憮然と黙り込んでしまう。

 今は皇太子の下へ急ぐ一行であった。

856:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 04:05:16.72 Oflo42N4
とりあえず投下は以上です

やっと戦闘に突入
あと少しでアルビオン編が終わる

終わったら小話を作ってあげようかなと思っております

眠いので、ではでは

857:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/29 06:09:54.48 RMCqWNdK
乙でした

858:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/30 14:11:24.70 ehCrpUsw
投下乙です

859:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/30 23:58:19.53 PwvSr/Au
書き手が一人なのに頑張れるのは凄い。

860:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/31 07:50:50.15 3TpNykZj
シロウの人乙

861:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 16:57:28.67 cvvUfLFW
さて、投下いたします

あいも変わらず読みずらい文章だなぁと思いますが、ご愛嬌ということで

862:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:09:13.64 cvvUfLFW
第15章 決闘

 辺りには土埃の臭いや物が燃える臭いが立ち込めていた。砲弾と矢と魔法と怒声が飛び交う。

 ルイズたち一行はウェールズ皇太子のもとへと走っていた。
 一行といっても、ワルドの姿は無い。裏切りがほぼ確定したからだ。

 「シロウっ!! あそこっ!!」
 キュルケが何かを見つけた。 指差す先にはワルドの姿があった。
 その姿はすぐ物陰に見えなくなる。
 「キュルケ! ギーシュと一緒に奴の後をつけてくれ!」
 「了解、ダーリン」

 ルイズと士郎はウェールズのところへ、キュルケ、ギーシュはワルドを追う。
 士郎は途中に出会った兵士にウェールズの居場所を聞く。
 最初は城壁にいたのだが今は移動しているらしい。 全体が見える塔から指揮をしているようだ。
 そこへ向かおうとして、途中城内で兵が騒いでいる場所があった。
 何事かと見てみると、王の周りで幾人かの兵が泣いていた。

 「お、王様~……」「我が君よ……」「陛下~、陛下~……」
 王をよく見ると、王の肌は石としか呼べないものになっていた。
 何者かによって石化させられてしまったようだ。
 水メイジが必死に王の石化を解こうとしているのだが、何の役にもたっていないようだった。

 これもワルドの仕業だとしたら、一刻も早く皇太子の元に向かわなければならない。
 おそらく皇太子も狙われているのだから。

 「ルイズっ!急ぐぞっ!!」
 「う、うんっ…」

 走っている最中、ルイズは士郎に気になったことを聞いた。
 「今の、石化した王様って……。やっぱり……」
 「ああ、多分、ワルドがやったんだろう」
 「なんで!? なんでワルド子爵はあんな酷いことを」
 「本人に聞かなきゃわかんないよ。 だから奴を早く見つけなきゃならないんだ」

 ルイズと士郎はウェールズがいるという塔の部屋までたどり着いた。
 頻繁に伝令が出入りしているので、扉は空いたままである。
 士郎がまっ先に口を開く。
 「失礼します。皇太子殿下、急ぎ伝えないといけないことがあって参りました」
 「君たちか。なんだね? 伝えたいこととは」
 「ワルドを見失いました。 それと陛下が……」
 「ああ、父のことは先ほど聞いた。今は戦場の指揮せねばならない。父に関しては後回しだ」

 その時突然、部屋の扉が閉まった。
 士郎は嫌な気配を感じて、ルイズと扉の間に立ちふさがる。
 「ルイズ! 皇太子のところまで下がれっ!! 皇太子、ルイズを頼みます」

 扉の周りには人影は見えない。だが、確かに何かがいる……。

 「ぐっ……」

 うめき声が聞こえた。ウェールズの……

 士郎が振り返ると、そこには膝をついたウェールズとルイズを後ろから抱えたワルドがいた。



863:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:12:03.56 cvvUfLFW
 「シロウっ!!!」
 「ルイズっ!!!」
 「おっと、近づかないでもらいたいな、シェロ君。ルイズの命がどうなってもいいのかね?」
 「テメエっ……!!」
 「君たちにはすっかり騙されていたよ。まさか僕がスパイだということに気づいていたなんて。
  ちょっと腹が立ったから、お礼をしてあげようかな……」

 「ぐはっ!」
 士郎の肩に熱い痛みが走る。振り向くとそこにはもう一人のワルドが杖を振り下ろしていた。

 「ハハハハ。どうだい? 僕の魔法で作った風のユビキタス(偏在)だ。
  痛いかい? 手も足も出せないという状況。悔しいだろう? 歯がゆいだろう?」
 肩を斬られたが、士郎はそんなことを気にせずにワルドを睨みつけた。
 「テメェ、皇太子に何をした…」
 「ああ、こいつら親子のことかい。 ちょっと毒針を打たせてもらったんだよ」
 「毒針だとォ?」
 「身体中が石になってしまう呪いの毒さ。これって希少なんだよ。エルフの秘術さ。
  我々人間では解けない呪い。まぁあと1回くらいしか使えないけどね……ハハハハハハ」

 ウェールズの全身は既に石と化している。先ほど見た王と同じ症状だ。

 ルイズを拘束しているワルドの方へ一歩踏み出す士郎。
 「近づくなといったはずだがね……。この毒針、今度はルイズを刺すことになるよ」
 「お前はルイズを手に入れたかったんじゃないのか!?」
 「ああ、そうさ。僕は手に入れる!! 世界を!! 全てを!!!
  だから欲しかったのさ! ルイズを! ルイズの能力を!! ルイズの力を!!!」

 ルイズは鳴き声になった。
 「ワルド……」
 「ルイズ、君は優秀なメイジにきっとなるだろう。それこそ始祖ブリミルの肩を並べるくらいに。
  僕は君が『虚無』の魔法使いと言うことを知っているのだよ。
  そしてそこにいるシェロ君。彼は君の使い魔だ。『ガンダールヴ』だと言うこともね」

 ワルドは自分に酔いしれて、話し続ける。
 「ルイズ、ああ僕のルイズ。君は僕と共に居るべきなんだ。君に世界を見せてあげよう。
  僕と共においで。 いや迷うことなんてない。 ほら、いい返事を聞かせておくれ」
 「…………嫌よ。」
 ワルドの顔が険しくなる。
 「なんだって? よく聞こえなかったんだが?」
 「わたしは世界なんてどうでもいい! あなたはわたしの能力だけ求めている!!
  そんなの死んでもお断りだわ!! たとえ脅されたってあなたの言うことなんて聞かないっ!!!」

 「……そうかい。そういえば昔から、君は聞き分けの悪い子だったね。 そんな子には御仕置きだ!」
 「待て、ワルドっ!! ルイズ~っ!!」

 士郎の叫びも虚しく、ワルドは毒針をルイズに打ち込んだ。
 「いやぁぁぁっ!!!」
 ルイズはワルドに抱きかかえられたまま、足元から石化していく。
 「ワルドぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 デルフリンガーを抜き放った士郎はワルドへ切りかかる。

 「おっと、危ない」
 ワルドはルイズを放し、士郎の剣から逃れる。

 士郎はルイズを抱え、壁際へと下がる。そっとルイズを壁に立てかけ、その前に立ちふさがった。
 「お前だけは決して許さない。俺の目の前に這い蹲らせてやる」
 ぎりっと奥歯を噛み締める士郎。
 「ほほう、出来るかな? こっちは一人ではないんだよ」
 ワルドがそう言うと、新たに2人のワルドが現れる。合計4人のワルド。


864:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:14:13.54 cvvUfLFW

 <ドン、ドン、ドン> 扉が激しく叩かれた。

 「殿下!! どうかされましたか!? 殿下!! 開けてください、殿下!!」
 「ちっ! あまり時間は残されてないか」
 ワルドが舌打ちをする。

 「まぁいい。ルイズと手紙は手に入らなかったが、陛下と皇太子の命はいただいたからな。
  あとは君を倒して、おさらばといこうか」
 「ああ、そうかよ。できるものならやってみろ!」
 士郎を囲むようにワルドはばらけた。そして、別々に斬り掛かってくる。

 唐突に激しい破裂音が部屋の中で響く。
 風のメイジは元来耳がいい。それがワルドに致命的な隙を作ることになった。
 その隙をついて、デルフリンガーが『偏在』の1体を餌食とした。

 ワルドは憎々しげに音の源を探す。
 見るとルイズが体の半ばまで石化されながら杖を持ち魔法を唱えたようなのだ。
 「ざ……、ざまぁ……、みな……さい」
 「くそっ、最後の最後まで思い通りにならないガキだったか……」
 腹立ち紛れにルイズへ向かい杖を振り下ろす一体のワルド。

 完全に石化したルイズの腕が、へし折られて落下する。

 ─
 ─
 ──
 ──!!!!!!!!!

 「ワ ル ド ぉぉぉォぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」
 怒髪天を衝く。士郎の怒りが頂点に達した。

 「なっ!」
 ワルドが驚きの声を上げる。
 士郎が叫んだと思ったその瞬間に、残り2体のワルドが既に斬り伏せられていた。
 慌てて新たに『偏在』を呼び出す呪文を唱えるワルド。
 士郎は大人しく、ワルドが『偏在』を呼び出すのを待っている。

 先ほどと同じように士郎を取り囲むように『偏在』を配置した………はずであった。
 が、
 士郎の体が一瞬ぶれたと思った瞬間には、『偏在』は居なくなっていた。

 「ば、馬鹿な……。 そ、そんな非常識な……。 何者なんだ……、お、お前は……」

───────────────
 このときデルフリンガーは思い出していた。
 自分が長年『ガンダールヴ』の相棒として存在していたことを。
 そして、『ガンダールヴ』は心を震わせれば震わせるほど力が増していくことを。
 今の相棒に敵などいない。 敵など片っ端から切り伏せてしまうだろう。
───────────────


865:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:16:14.70 cvvUfLFW

 ワルドは半狂乱になって残りの魔法を打ち尽くす。
 『エア・カッター』 『エア・ハンマー』 『ウィンド・ブレイク』
 『ライトニング・クラウド』 『ライトニング』
 打てる限りの魔法を唱える。きっと限界以上の魔法を出し切っただろう。
 それは己が命を削ってまで撃った証拠だ。

 しかしその全ては士郎に届くことはなく、デルフリンガーの糧となった。

 「もう終わりか?ワルド……。魔法の貯蔵は出し尽くしたようだな」
 「ま、待て。 待ってくれ。 頼む、助けてくれ」
 一歩一歩とワルドに迫る士郎。
 「ルイズなら元に戻せる! 『レコン・キスタ』に戻れば解呪の秘薬もあるはずだ!!」

 「もう遅い─」

 ワルドは自身の力が急激に抜けていくのを感じた。
 「あ……。ぁ………」
 無念のうちに人生に幕を下ろしたワルドであった。

 ………

 部屋の扉が開かれ、兵士がどっと雪崩込む。一目散に皇太子の元へと走る。
 他の兵と共にキュルケとギーシュが士郎の元へと飛び込んできた。
 「シロウ!! ワルドはっ!?」
 ワルドの死体を指さす士郎。そしてルイズの所へと歩いていく。

 転がっているルイズの腕を拾い上げると、ギーシュに呼びかける。
 「ギーシュ! この腕、元通りにくっつけることができるか?」
 「え?腕? ………うわぁぁぁぁっ、ルイズっ!!!!」
 「きゃあぁ! ルイズっ!!!」
 「いいから答えろ! 腕を元に戻すことができるか?」

 「あ、あぁ石なら、素材が石なら、僕の…分野だが……。どうするんだ?」
 「できるだけ慎重に元に戻してくれ。 石化の呪いなら治せるかもしれない」

 ざわっ……。

 皇太子のそばにいた兵士が色めき立つ。
 「ほ、本当なのか??」「殿下も元に戻してもらえるのか!?」「まずは殿下を……」

 士郎は落ち着いた様子で
 「ギーシュは慎重にルイズの腕をくっつけててくれ。 俺は皇太子殿下の石化を解いてみる。
  あと、人払いを。 ギーシュとキュルケ、あと水メイジ以外は部屋から出ていってもらいたい」

 渋る兵士もいたが、比較的素直に要求に応じる面々。
                          トレース オ ン
 士郎はマントで手元を隠すと、(──投影、開始)
 『ルールブレイカー』を取り出す。

 水メイジに言う。
 「今から皇太子殿下の解呪を試みます。石化が解けたら速やかに皇太子殿下の体に異常がないか、
  調べてください。 いきます。」

 士郎は勢いよく皇太子の胸元めがけて、投影した剣を突き立てる。
 するとどうだろう。ウェールズの肌に血色が戻ってきて、柔軟さを取り戻した。
 膝を突いたままのウェールズは前方に倒れこむ。
 だが呼吸はしっかりしているようだ。


866:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:18:16.75 cvvUfLFW

 しばらくして意識も回復するウェールズ。
 水メイジが容態を確認しているが、特に異常も見られない。

 「う、私はいったい……」
 「殿下! 殿下は敵の凶刃に倒れられたのです。 トリステインの使者殿に救っていただきました」
 「はっ! 戦は! 避難船はどうなったッ!?」

 「目下のところ、救出隊が善戦しておりますが、如何せん敵の数も多く……」


 士郎はウェールズが回復したと見ると、すぐにルイズの元へ移る。
 「ギーシュ、様子はどうだ?」
 「ああ、仕上がりは完璧さ。 今まで(腕が)欠けていたなんて誰も思えないだろう」
 「ありがとう。ギーシュ。お礼は後でしてやるよ」
 士郎は早速ルイズの石化も解きにかかる。

 ………

 「……ワルドぉ!! お前なんて[ピー]してやる~!!」

 意識の戻ったルイズの最初の台詞だ。
 「あんた、何物騒なこと口走ってんのよ」
 キュルケが少々涙目ながら、冷静に突っ込みを入れる。
 「あれ?? キュルケ?? それにギーシュも。 シロウ! 戦いはどうなったの?」
 「ワルドはあそこにいるよ。もう動かないけどな」

 「そういえば私は石になっちゃったはずだけど」
 「俺が治した」
 「ふふん、僕も手伝ったんだぜ」
 ギーシュの余計な茶々。

 「ルイズ、何処も異常ないか、あそこにいる水メイジに体を見てもらってくれ。
  俺は殿下と少々話がある」

 「おお、え~シェロ殿だったな。助けてもらってすまない。 礼は何でもするぞ」
 「殿下、ではこの場所をしばらくお借りてもよろしいでしょうか?
  もしかしたら、見える範囲の敵なら一掃できるかもしれません」

 「何っ!!?
  ……わかった、私は謁見室に移って指揮を取るのでここは自由に使ってもらって構わん。
  父上も心配だしな。 後ほど、父の解呪も頼んでもよいか?」
 「了解しました」

 ウェールズとルイズの容態を見た水メイジは部屋から出て行き、謁見室へと移動する。


 「さて、デルフ。お前に訊くが、さっきの戦いでかなりの魔法を吸収したよな?」
 「おう相棒。そうさなぁ、まだ余裕はあるが、それでも結構な量を食わせてもらった」

 「それをこっちに回せるか?」
 「回すだと?
  ああ、オメエさん、メイジだもんな。俺っちの魔法の力をそっちで使いたいってわけか。
  いいぜ、いくらでも分けてやるぜ。 相棒の頼みとあっちゃ断れねえからな」

 (これで魔力は足りるか?)

 ………


867:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:23:05.30 cvvUfLFW

 キュルケとギーシュには、王軍の援護を頼んだ。一人でも救援は多いほうがいい。

 「ルイズ、以前俺が言ったことを覚えているか?」
 「なに?」
 「街への買い物に出た日、固有結界って教えただろ?」
 「うん、なんかよくわかんない説明だったけど」
 「今から見せてやるよ。 俺の固有結界。 これが俺の魔術の全て。
  《強化》も《投影》も、すべては今から見せる魔術のかけら……」

         体は 剣で 出来ている
 「――I am the bone of my sword.」


868:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:32:16.41 cvvUfLFW
以上、15章 決闘でした

最初考えていたときは、ワルドは原作と同じく逃亡できるようにしようと思ってたんですよ
でも、いざ書いてみると……。
「なんでワルドすぐ死んでしまうん?」

自分の中の士郎の強さって、サイトの倍なんですよ
だからガンダールヴに目覚めた士郎なら、ワルドじゃ止められない

むぅ、士郎好きが書くSSだとこうなっちゃう典型かなぁ
ということで、 次回まで、また(o・・o)/~

869:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/01 17:48:22.26 cvvUfLFW
あ、追記。
石化の呪いの指輪はオリジナルです。(オリジナルだよね?)
ご都合アイテムなので、突っ込まないでいただけるとありがたい。

870:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/02 00:25:49.51 uLhtsGhL
投下乙
うむ、燃えてきますた

871:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/02 11:37:15.38 IcPj7wbf
まだこのスレ稼動してたのか……
一気に全部読んできた。投下乙。次回も期待

872:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/03 14:24:55.50 IDYV7/mV
乙乙
一番ルイズと相性が悪い型月キャラは誰だろ
やっぱ第四次キャスターか

873:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/04 02:30:48.69 YVMZxU20
う~む、自分のあげた1話を読み直したら、なんか色々酷いーー;

説明文が多すぎ、話の展開が強引過ぎ、2話目以降が恥ずかしくて読めない……
こんな自分の文章読んでもらって、皆さんには本当に申し訳ない。あとありがとう
16章は今50%ってとこです。来週までには上げる予定です

ルイズと相性いいキャラ…
あんまり強いキャラだとルイズが空気になっちゃいますよね
なんかエクスプロージョン憶えることなく戦争が終わっちゃいそうで


そういえば、シェフィールドとメディアってなんかキャラ被るね

874:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/04 17:31:21.16 /d+oCNTS
次が楽しみだ

875:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/05 11:52:55.35 yggfBxGh
>873
そういえば、別のキャラでしたね。

876:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/05 12:55:23.97 j3gp0qn+
ルイズの鯖連中との相性は凛と似たようなもんかな
キャスターや赤セイバーは愛でるだろうけど

877:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 00:59:44.35 s0w3aXUb
さて、今から投稿です

878:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:01:47.51 s0w3aXUb
第16章 決着

         体は  剣で 出来ている
 「――I am the bone of my sword.」

 (…ルイズの知らない異世界の言葉を紡ぎ出す士郎)

        血潮は鉄で     心は硝子
 「――Steel is my body, and fire is my blood」

 (…その呪文はルイズの心の奥底まで届いてくる)

        幾たびの戦場を越えて不敗
 「――I have created over a thousand blades.
     ただ一度の敗走もなく、
      Unaware of loss.
     ただ一度の勝利もなし
      Nor aware of gain」

 (…わたしが呼び出した、私の為の私だけの従者)

          担い手はここに孤り。
 「――With stood pain to create weapons.
         剣の丘で鉄を鍛つ
       waiting for one's arrival」

 (…この人はこの世界にいる限り私を守り続けてくれるだろう)

      ならば、  我が生涯に 意味は不要ず
 「―I have no regrets.This is the only path」

 (…ならばわたしは、この従者のために何をすればいい)

         この体は、   無限の剣で出来ていた
 「――My whole life was “unlimited blade works”」


 瞬間、周囲の全てが一転した。

 ――炎が走る。

 燃えさかる火は壁となって境界を造り、世界を一変させる。
 現れたのは、荒野に無数の剣が乱立した、剣の丘であった。
 アンリミテッドブレイドワークス
 “無限の剣製”
 それが衛宮士郎の固有結界の名前である。

 (シ、シロウ……)
 ルイズは言葉も出ない。今まで見てきた、知っていた魔法とは根本的に違う。
 そこにある無数の剣は、まるで戦に敗れた死者を弔う墓標にも思えた。

 「うへぇ、なんだ、こりゃぁ~!」
 床に置き去りにされていたデルフリンガーは、驚きの声を上げる。
 「こりゃ、おったまげ~た。おどろいた。スゲェ居心地が悪い!前の武器屋の方が快適だね」
 どうやらこの空間がお気に召さないようだ。

 士郎が歩き出した。そうすると、前方にポッカリと窓が現れた。
 どうやら、未だにニューカッスル城であることに間違いないようだ。
 窓の外には多数の軍船、兵士、ドラゴンなどが見え隠れしている。


879:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:04:51.63 s0w3aXUb
 いつの間にか士郎の左手には、一張の弓が握られていた。
 それは、いつか学院の屋上で使っていた、フーケに盗まれ取り戻した弓である。
 そして右手にも一振りの剣が現れる。
 弓に剣を番える士郎。
 目の前の窓から、矢(剣)を放つ。

 それは無音にも近い射出であった。矢は一直線に敵の一番大きい船に向かって飛ぶ。 

 その矢を視認できたものは士郎とルイズ以外に果たして居ただろうか?
 それが船に着弾するとともに……空は白一色で覆われた。

───────────────

 轟音と共に、船だったものが落ちていく。 その船の名は『レキシントン』。
 全長2百メイルの船はアルビオン、いやハルケギニア最大の船であったろう。
 それが只の一撃で沈んでゆく。 その様子を見ていたものは、自分の目を疑っただろう。

 誰もが言葉を失って空を見上げる。 そして2射目が放たれた。

 目標になったのは次に大きいと思われる戦列艦。 やはり一撃で沈む。

 事ここに至ってようやく、これは貴族軍に対する攻撃だと理解する戦場の人間達。
 王軍は勢いを増し、貴族軍は敵の砲撃におびえる。
 ニューカッスル城から兵が怒涛のようにあふれ出し、避難船までの道を完全に掌握した。

 貴族側の艦隊もおとなしくやられているわけではない。二射目の出所がニューカッスル城にある
 尖塔からだとわかると一斉に砲撃と魔法攻撃を開始する。
 視界が0になるほどの一斉砲撃である。この攻撃では、塔など跡形も残らないだろう。

 だが、塔の周りの煙が晴れると
 そこには先ほどとなんら変わりの無い塔と、花弁のような光が現れた。
 信じられないことに、一斉砲撃でも大した被害を受けていないようだった。

 花弁の光が消えると同時に、再びの射撃が始まった。
 その塔からの攻撃を受けると、船が一撃で沈む。
 ありえない攻撃力とありえない防御力を目の当たりにした貴族軍は恐慌状態に陥る。
 どの船、どの兵も一目散に退却をはじめた。

 塔のからの追撃で船を20隻落とされた時点で、貴族軍は城周辺からは完全に撤退した。


 貴族軍が今回の作戦に投入した軍船は40近い。
 『疲弊している敵の殲滅戦においては全軍をもって当たるべし』
 アルビオンに伝わる用兵術通りに、投入した兵はほぼ全軍である。
 それが結果、貴族軍側の被害を増すことになった。

 王軍損害  中型輸送艦 1隻     中破
         風竜     5頭
         兵士     死者21名 重症者 19名
 貴族軍損害 旗艦レキシントン     大破
         大型戦列艦 15隻    大破12・中破3
         大型輸送艦 2隻     大破2
         中型戦列艦 2隻     大破1・中破1
         火竜     7頭
         風竜     9頭
         兵士     死者225名 重症者460名
 なお貴族軍の兵士被害の多くは、船の墜落によってである。

───────────────


880:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:07:20.29 s0w3aXUb

 士郎はぐったりしてしゃがみこむ。さすがに今回の投影は士郎にとってもオーバーワークであった。
 固有結界の展開自体はデルフリンガーに回してもらった魔力で補うことができたが、
 弓の投影と“熾天覆う七つの円環”と呼ばれる光の花弁は、士郎の残りの魔力を根こそぎ
 持っていった。 矢として使った“偽・螺旋剣”の投影自体に魔力消費は発生しなかったものの
 ワルドとの戦闘の直後に20もの連続投影・連続射撃を行ったので、ほとほと疲れ果てた。

 「ね、ねぇ、シロウ。今のって魔法?? あんなの見たこと無いわよ。 幻覚?」
 「ぁ~……、今のが固有結界。術者の心象世界を現実に侵食させる……魔術」
 そういうとふらふらと歩き出す士郎。
 ルイズはあわててデルフリンガーを拾い上げて、士郎について行く。

 ………

 士郎は途中で兵士に(石化された)王様の場所を聞き出して、そこへと向かった。

 先ほどまでは、城内は混乱の極みに達していた。だが、敵兵が一斉撤退を始めたので、
 今はその騒ぎも収拾に向かっていた。
 戦場へ指示を飛ばしていた皇太子も今は落ち着いて、王の様子を見に来ていた。

 「ああ、使者殿!! 大戦果だった。我が軍の被害は最小限ですみ、敵に大打撃を与えた。
  これもひとえに使者殿のおかげ。 このお礼はしてもし足りないほど。
  だから、なんなりと申して欲しい」
 士郎としてはこそばゆいほどの言葉であった。
 「あ、いえ。 ありがとうございます。 とりあえず王様の石化を解きにきたのですが」
 「そうか! そうだな、早速お願いしよう。 始めてくれたまえ!!」
 「では、水メイジ以外の人のご退室をお願いします」
 「いや、そうか! 気が利かなぬですまぬな。
  なにやら特別な秘術があるようだ。 ほら、皆の者、部屋から出るぞ!!」

 皇太子は水メイジ一人を残して、兵と共に部屋を出て行った。

 「え~と、水メイジの人。 すまないけど、頼みがあるんだ。
  俺がこれから石化を解く方法を……他言無用にして欲しいんだけど」
 「それはもちろんです。私は後ろを向いておりますので、済んだらお声をおかけください」

 これで投影魔術を知られるのは最小限で済みそうだ。皇太子を治したときに水メイジに見られた
 だけで、あとはキュルケとギーシュ、そして今一緒にいるルイズの計4人。
        トレース オン
 「──投影、開始」

───────────────

 戦いは一段落となった。 圧倒的優位であったはずの貴族軍は多数の死者・怪我人を出し、
 また多くの兵士が捕虜となった。 ただ、王軍は篭城戦をしている側なので、捕虜を
 収容する余裕などあまり無い。 早々に身代金にての捕虜返還をおこなう予定だ。

 篭城側の王軍は捕虜に糧食を分けないことを公に宣言した。
 貴族軍側が王軍の物資の消耗を狙わないように、先手を打ったのである。
 これにより、貴族軍が捕虜引渡しを行わないとなると、貴族軍の士気は低下するだろう。
 といっても、元々白旗を上げた避難船を襲うような貴族軍などには、士気や規律など
 既に有って無いようなものだった。
 今回の大敗でそれはさらに酷いものになるだろう。

───────────────


881:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:09:24.31 s0w3aXUb
 謁見室では国王、皇太子とルイズ一行、軍の重鎮が集まっていた。

 「父上、無事元の姿に戻られたようで何よりです」
 「うむ、わし自身は石にされていたときのことは憶えておらんので、なんとも言えんのだがな」
 とアルビオン国王が笑う。
 「使者殿にはその上、敵の排除までしていただきました。何か御礼をと思うのですが」
 「ふむ、そうだな。 だいぶ目減りしたとはいえ宝物庫にはまだ高価なものも残っておる。
  好きなものを一つずつ選んでいってもらおうではないか」

 「いけません、国王陛下。そんな過分な褒美をいただくわけには参りません」
 あわててルイズが言っても、
 「どうせこの城も長くは持たん。 貴族軍どもに漁られるくらいならこのようなときに
  贈ってしまうほうが有意義というものだ。 残りはできる限り避難船に積んでしまえ」
 国王は意に介さない。 皇太子も軍の重鎮達もうんうんと頷くばかり。

 一行は結局、厚意をありがたく頂戴することにした。早速、宝物庫に案内される。

 ………

 「ねぇ、シロウ。どうしよう……。なにか選ばないといけないのかな?」
 「俺に言われても……」
 「なによ、あんた達。 シロウなんて大活躍だったじゃないの。
  2、3品選んだって文句は言われないわよ」
 「そうそう、僕らだって命がけで戦ったんだ。ご褒美の一つは欲しいところだよ」
 ギーシュは早速、物色を始めた。金色の鎧に興味を引かれているようだ。
 タバサは杯(さかずき)にディティクトマジックを掛けている。
 キュルケは刀剣の類を見に行った。士郎にプレゼントでもしようと思っているのだろう。

 「ダーリン。ねぇ、ここの剣の中でどの剣が一番上等?」
 キュルケが尋ねてきたので仕方なしに見に行く士郎。
 「!!!。この刀は──、日本刀!!」
 独特の反りの入った鞘に収められている刀がそこにあった。何故このような物がここにあるのか、
 士郎は刀を手にとってみる。どうやら戦時中に作られた軍刀のようだ。
 という事は、この世界と士郎のいる世界は過去何らかの形で繋がった事があるのだろう。
 「ふ~ん、その剣がいいのね。 じゃあ、あたしはそれを選ぶわっ」
 キュルケは士郎が掴んだ刀を持っていった。

 宝物庫にそのほかには、士郎の世界の物は無いようだった。

 とりあえず士郎自身は一番みすぼらしくみえた宝を選んだ。オルゴールのようだ。
 ルイズはマントを手にとっていた。タグが付いており、そこには『浮遊』が掛けられているとの
 説明が入っている。
 タバサが選んだのは杯。それはマジックアイテムで『水作成』でいくらでも水が湧き出る。
 ギーシュは結局、黄金色の鎧を選んだ。早速着込んでいる。 あれでまともに動けるのだろうか。

 ………

 宝物戸から現れた一行を見て、皇太子は早速訊ねる。
 「おや、使者殿。そのようなモノ一つでよろしいのか? 他にも色々あったろうに」
 「ああ、いいんですよ。あまり嵩張るものを貰っても困りますから」
 「ずいぶんと欲がない……。では、これを贈るので是非貰って欲しい」
 皇太子は自分の嵌めている風のルビーを士郎に差し出した。
 「これって国宝なんじゃ………?」
 「いや、いいのだ。既に国としてのアルビオンは無くなったも同然。国宝だのなんだのと、
  そのような事に価値は無い。それに使者殿には是非に自慢できるものを贈りたいのだ」
 「……わかりました。では、遠慮なく頂戴いたします」


882:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:11:37.98 s0w3aXUb

 「で、君たちはあと一晩くらいは泊まっていかれるか?」
 「いえ、私たちは学生の身ですので、学院になるべく早く戻ろうと思っております。皇太子陛下」
 ルイズが応えた。
 「おお、そうか。城の方から出るようだと、また敵に襲われるかもしれん。
  大陸の裏から船で途中まで送ろう」

 こうして、ルイズ一行はアルビオンを後にするのだった。

───────────────
───────────────

 「ひ~、ひ~、重い……」
 「お前、そんなの選ぶ前から分かるだろ。なんで甲冑なんて選んだんだよ」
 「これが一番高価そうに思えたんだから、仕方ないだろう」
 「『浮遊』を唱えればいいんじゃないの?」
 「さっきの戦闘で魔法はほとんど出し尽くして……、もう…、唱え、られない……」
 「ったく、しょうがねぇ奴─。ルイズ、ちょっとだけ貰ったマント貸してやってくれ」
 「え~~~、せっかく私が頂いたのに……。(ぶつぶつ)まぁ可哀想だから貸してあげるわよ」

 「ふぅ、やっと普通に歩ける。ありがとう、ミス・ヴァリエール」
 丁寧に感謝するギーシュ。
 「貸すだけなんだからね!!後で返してもらうんだからね!!」
 「わ、わかっているよ」

 ………

 「でね、そこでダーリンが颯爽と魔剣を取り出して、皇太子をずいって刺したのよ。
  私も驚いたわ。だって石になったとはいえこの国の王子様よ。
  そしたら、見る間に皇太子の肌艶が普通の人に戻っていったんだもの……」
 「興味深い──」
 「その後はルイズにも、同じように魔剣を刺したの。あの魔剣、すごいデザインだったわ。
  こうギザギザなのよ。色もいろんな色が禍々しい感じで浮き出していたわね」
 「他に情報は?」
 「ん~、あとはダーリンに直接訊いた方がいいんじゃない? だって私も詳しくは知らないもの」
 「わかった」


 「お~い、君たち、そろそろ大陸が見えてくるぞ。準備をしてくれ」
 「「「はーい」」」

 トリステインへの帰路についた一行であった。


883:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/07 01:19:31.94 s0w3aXUb
UBWの解釈とかどうなんですかね?自分勝手に解釈しているから…
対艦戦では士郎無双すぎると感じる人もいますよね^^;
あと、敵の数や被害も具体的に作るのって難しい

色々な原作のフラグを壊しながら話を進めてますので、
この先はどんどん方向が変わると思います。

あ、最後読み直したら、ギーシュが鎧を着ているという描写を書いてなかった。
ルイズの心理描写ももう少し練ったほうがよかった。
というか、ルイズは亡命勧めるところを完全に無視してました。

と、後悔だらけの私ですが、次回でアルビオン編終了です。
お付き合いいただいてありがとうございました。

884:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/07 08:06:03.52 7LT4yfOu
投下乙
爽快な無双だったと思いますよ、自分的には

885:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/08 01:20:51.75 7+gpVJdW
乙乙。次回も期待。

886:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/09 02:17:34.30 rl6trxmO
いまさらながら乙
次も楽しみにしてます!

887:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/09 03:26:01.85 /oY0K7iw
乙乙
続き待ってる

888:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/10 00:37:49.72 yZo/228M
修正点いっぱいあるんですけど、ちょっと酷すぎる間違い見つけたので訂正させていただきます

12章
『あなたのプロポーズを断りに来たの。だって、士郎が断れって言うんだもの』
                ↓
『あなたのプロポーズを断りに来たの。だって、シェロが断れって言うんだもの』



17章は現在30%くらいです。書きたいシーンがあるのになかなかそこまでいかないよ~

889:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/10 21:21:03.93 wAif18LQ
乙でした。続きも楽しみに待っています。

ところで、固有結界展開後の状況が上手くイメージできない部分があるのですが、
窓を外界との接点として、室内に展開したってことでしょうか?

デルフから魔力引き出せるなら普通に複数投影すればよかった気もしますが、本格的な
無限の剣製の活躍はまたの機会に期待できるってことでいいですか?

890:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/10 21:34:59.26 yZo/228M
えと、一度無限の剣製を書いてみたかったのが正直なとこですが、
偽螺旋剣×20とロー・アイアスと弓の投影では魔力量が足りないという状況だったと思ってください。

無限の剣製を行ったときには偽螺旋剣の投影に魔力は必要なくなり、
ロー・アイアスと弓は必要魔力量が減少したという計算でした。

もっとデルフに魔法貯蔵がされていれば投影は(無限の剣製の如何を問わず)
どちらでも問題ありません。

あと、外界の窓はその通りです。
その姿はまるで『どこでも窓』のように荒涼とした地に浮かんでいるのです。

891:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/11 11:40:39.30 Vi7GS1b+
>888
そこは、「し、シェロが」と言い直そうとする状況でそのまま言っちゃったのか?くらいに思ってました。

892:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/11 12:47:53.77 vnJPBpOU
>891
そうすると、士郎ではなくてシロウなので。
いつもは士郎とシロウのチェックで見つけてたはずなんですが、この時はなぜか見逃してしまいました

893:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/11 23:20:42.66 rhee7KPQ
無限の剣製って展開後に新しく剣を投影するときは必要魔力多くなるんじゃなかったっけ?

894:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/11 23:26:43.14 vnJPBpOU
必要魔力が累積するのかな?む~、それだとまずいな

とりあえず、一度ここの士郎の魔力量や『無限の剣製』の設定をお話にしてみよう

        ひと  辻褄あわせ
そう、それを他人は、外伝と呼ぶ

こんなので許してください

895:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/12 20:33:34.52 NuZcCiJJ
無限の剣製時は、既に剣があるから魔力はいらなかったはず。
ただ、結界維持に莫大な魔力が必要で、SN時点では士朗に単独での展開は不可。というか、10年以上の研鑽があってようやく展開。維持は知らん

896:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/13 15:32:47.12 QCoKL65l
偽螺旋剣だけ連続で撃つと不都合が起きるなら、
いろんな剣を打ち出したことにすればいいとかなんとか
赤原猟犬やらもあることですし

897:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/13 15:56:22.75 IZnE402r
そですね。我様の剣いっぱい見てるはずだから士郎の原っぱってかなりいろんな武器あるはずだから
ゲーム中、細かい説明あるのは少数だけど^^;

898:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/09/15 10:53:37.92 7V7WuKRZ
一回、UBWのこと把握しなおして、描写を書き直そうかなァと思っているんですが
どうでしょう

899:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/20 19:04:18.32 4iGHchVw
名剣や魔剣だけでも千以上は刺さってる

900:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/20 19:56:14.22 WE7FhA5+
千は超えないけど、数え切れないから無限じゃなかったっけ

>>898
汝の為したいように為すがよい

901:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/20 20:10:04.61 4iGHchVw
アーチャーのUBWだけで千に届く名剣や魔剣が刺さってるのは本編で言われてる
そこからギルのGOBを見たので更に増えてる

902:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/20 21:48:59.87 K2DoNDl7
>>901
> そこからギルのGOBを見たので更に増えてる
さらに増えるって言うかそもそも生前に見てるからあれだけ刺さってるんだと思うが

903:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/21 23:40:10.26 PuVn7BrL
本編でUBW見た後の士郎は見た事の無い武器とかもギルは使ってる

904:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/22 01:12:39.16 RwK81kAB
>>900
十や二十では利かない
百や二百には届かない
けれど数えきれぬのならば、それは真実無限である

じゃなかったけか。原作

905:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/22 20:40:52.46 bbgYuZIJ
>千に届く名剣・魔剣を記録するアーチャーの腕でさえ、そんな武器の情報はない

HFルートでこう書かれてる

906:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/24 20:47:56.95 bRaZHguh
ずっと疑問だったんだけど、「~に届かない」とか「~は越えない」とかって、数えきれていないとわからないんじゃないだろうか?

907:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/25 14:20:52.50 ZaEL8lph
>>898
あからさまに矛盾してなければ気にしなくていいと思うけど、作者が気になるのなら修正してしまっていいのでは
ただ、この手の修正はあっちを直したらこっちもそっちもが気になるというような泥沼になる可能性があるからほどほどにした方がいいかも

>>906
きのこ節にそんな事言う方が野暮で空気読めてない

908:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/27 21:51:36.77 iJw37ia5
>>906
数え切れてないから大体で言ってる
HFルートは検索機能を得たので千に届くって分かった

909:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/28 19:57:00.33 kaKrpX+2
無限の剣製は検索機能無かったら使い勝手悪そうだな
自分の知ってるのだけで使い回しで終わりそう

910:名無しさん@お腹いっぱい。
11/09/30 04:05:05.38 9X4CyHpy
どっかにあったFateSSで士凛の娘が固有結界『唯一の剣製』で臓硯爺ちゃん滅殺してたな

あれは解析魔術は使えたけど宝具を視る機会がなかったからだと述懐してた

911:名無しさん@お腹いっぱい。
11/10/01 04:56:14.01 Gid1TXC3
>解析魔術は使えたけど宝具を視る機会がなかったから

そこらの、制限なしに無限の剣製使うオリ主に聞かせてやりたい

912:名無しさん@お腹いっぱい。
11/10/01 07:13:57.03 w4GT4K+J
正義の味方と同じ精神じゃないと無限の剣製が使えないってのもあったけどな
でもそれも違うと思うんだよあれは士郎の先天的な魔術回路が無限の剣製に特化してただけだしさ
せいぜい心象風景が変わるだけで
むしろ元ひきこもりニートが転生して使ったら自分の部屋に無数の剣が突き刺さってたとか誰かやってくれないかなぁと

913:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/10/15 15:59:19.54 C8H1tviD
一月以上開いてしまったけど、うpしますね

914:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/10/15 16:01:38.81 C8H1tviD
第17章 珈琲閑話

 トリステインの王宮の門前ではいつも通り、当直の魔法衛士隊の隊員たちが厳重に跨り闊歩している。
 一国の王宮であるから、様々な用向きで訪れる人がいる。
 仕立て屋、出入りの菓子屋、色々な陳情を申し立てる者。その中にルイズと士郎がいた。
 アルビオンから直接、王宮へ出向いたのだ。
 キュルケやタバサ、ギーシュは街で待ってもらっている。

 謁見待合室に通されたルイズと士郎。
 「シロウ、姫殿下の前では失礼の内容にしてね」
 「無駄口は叩かないよ。礼儀作法とかよくわかんないから細かいとこは任せる」
 「もう、シロウもちゃんと覚えてよ。私の従者なら礼儀作法は必須になるんだから」

 「アンリエッタ姫殿下がお待ちである。…付いてくるように」
 アンリエッタの私室へ案内されるルイズと士郎。

 ………

 案内係の兵士は、コンコンと部屋のノックをして2人を連れてきたことを述べる。
 中からどうぞと声がする。アンリエッタの声だ。

 「失礼いたします」
 丁寧な貴族のお辞儀とともに部屋へ入るルイズ。士郎は頭を下げてルイズの後を付いていく。

 中にはアンリエッタと一緒に、マザリーニ枢機卿もいた。
 だがアンリエッタはマザリーニの存在を快く思っていないようだ。
 「枢機卿、わたくしは今から大事なお友達とお話をしたいのです。ご退室願えないかしら?」
 「それには従えませんな。こちらの話が終わってからなら、ご自由にと思いますが」
 「では、その用件とはなにかさっさと仰ってくださいますか」

 「そうですな。では、そういたしましょう。
  シロウ君と言ったかな。私の希望は叶えてもらえたかな?」
 「ええ、万事問題ありませんよ。 詳細は俺の主人から聞いてください」

 突然のマザリーニと士郎の会話に“?”マークの浮かぶアンリエッタとルイズ。
 士郎はルイズに報告をするように促す。訳のわからないまま、ルイズは報告を始める。

 「姫殿下、ええと、姫様が送ったお手紙なんですが、敵の手に渡るのは阻止できましたが、
  ウェールズ皇太子が万が一のことを考えて燃やしてしまわれました………」
 「………そうですか。あの方が自ら…」
 「アルビオンから避難船がやってまいります。そちらの受け入れの方はできてますでしょうか?」
 「そちらは大丈夫です。 ここにいる枢機卿にも相談して受け入れる用意はしておきました」

 「あと、姫殿下には大変言いづらいのですが、ワルド子爵は敵の間者でした。
  わたくしの従者が討ち取りましたが……」
 目を丸くして驚くアンリエッタ。まさか近衛の中に裏切り者がいるとは予想してなかった。
 だが、マザリーニにとっては予想の範疇内だった。
 ただ、自分が重用しているグリフォン隊の隊長が敵と通じていることまでは思っていなかったが。

 他に何を報告すればいいか考えるルイズ。士郎が敵艦隊を落としたことについての報告は
 保留することにした。 なにせガンダールヴに絡みかねない問題だ。
 国の重鎮(王女と枢機卿)などに報告するとどんな要求をされるかわかったものではない。

 「以上でございます。姫殿下」


915:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/10/15 16:03:56.37 C8H1tviD

 「枢機卿はこの度の指令のことは知ってらしたということですね?」
 アンリエッタがマザリーニに尋ねる。
 「はい。姫殿下。
  ヴァリエール嬢の従者から相談を受けまして、指示の通り動いてもらっておりました」
 アンリエッタは不機嫌そうな顔でマザリーニを見た後、士郎を少しだけ睨んだ。

 「正直申しまして、最初から私に仰ってもらえれば同盟破棄などの火種になどには
  ならなかったのですがね。
  いや、放置していてももしかしたら何の影響も出なかったかもしれませぬ」
 「どういうことです?」
 「言葉の通りですよ。ゲルマニアという国は色恋沙汰に関してわが国よりも大らか。
  たかが愛をしたためた一通の手紙など、あの王は歯牙にもかけなかったやも知れませんな」
 マザリーニの物言いにアンリエッタは悔しそうに俯く。マザリーニは挨拶もそこそこに退室した。

 マザリーニが退室したので、ルイズの口調が少しだけ砕けたものになった。
 「これをお返しします。姫さま」
 ルイズは水のルビーを指から外して差し出した。
 「それはあなたにあげた物です。 わたくしは他に褒美など用意できないので、
  せめてそれを受け取ってもらえると嬉しいのですよ。ルイズ」
 そう言われては返すのも躊躇われる。 ルイズはそっと自分の指に戻した。
 「姫さま、わたしができることがあれば何なりと仰ってください。
  いかなる時でも参じて、お力になりたいと思っております」
 ルイズはそう言って、士郎と共に退室をした。

 兵に付き添われて廊下を歩いていると、マザリーニが二人に声を掛けてきた。
 「此度は苦労を掛けてすまなかった」
 「いえ」
 そっけないルイズ。
 「ルイズ、先に行っててくれ」
 「え? なんで? わたしはシロウと一緒に居るわよ。 秘密の話でもしたいの?」
 士郎の主はルイズなので、追い払うわけにもいかず、マザリーニは仕方なしに二人を自分の執務室へと
 案内した。

 ………

 「さて、早速なのだが私の頼んだことはどうなったであろうか?」
 「はい。 枢機卿の手紙は皇太子へ渡しました」
 「君から見た貴族派『レコン・キスタ』はどのような感じだったかな?」
 「そうですね。全体的に士気は低い気がしました。
  白旗を掲げている船を襲ったりできる指揮系統なんかには驚きましたよ」
 「白旗を上げた船だと?」
 「ニューカッスル城からの避難船ですよ。武装もはずしてました。後から聞いたら、あらかじめ
  貴族軍にも連絡入れていたそうです。 こういうのって襲わない慣例なんでは?」
 「ああ、普通はそうだ。敵味方とはいえ内乱が発端であるから、兵の家族がどちら側にいるか
  わからん状態だからな。 避難船を襲うということは身内を襲う怖れがあるということだ」

 士郎は王軍が貴族軍に大打撃を与えたこと(自らが多数の船を落としたことは伏せた)、
 多くの捕虜を捕らえたこと、捕虜の様子から士気や規律が低いことを知ったことなどを
 マザリーニに伝えた。

 「ううむ……………」
 黙りこんでしまったマザリーニ。アルビオンの内乱の動向はトリステインに多大な影響を及ぼす。
 できればアルビオンにはじっとして貰いたいのだが、下手をすると戦争状態になりかねない。
 アルビオンへの間者の数を増やして、もっと詳しい動向を探る必要があるかもしれないと
 マザリーニは考えた。
 「いや、すまない。 大変参考になったよ。
  またなにか依頼をするかもしれんが、その時はよろしく頼む」

 ………

916:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/10/15 16:06:06.60 C8H1tviD

 「シロウ、枢機卿となんか約束でもしたの?」
 王宮を出て、他の皆と合流すべく城下町を歩く道すがらルイズは士郎に尋ねた。
 「ああ、任務の見返りにトリステインにある図書館での閲覧許可を貰えるように頼んであった」
 (そうか! シロウは帰る方法を探すために……。わたしは彼に協力しないとダメなのに!)
 「シロウっ!! 頑張りましょ!!」
 「え? あ、あぁ頑張ろう。………?」

 ………

 「お~い、シロウ、ルイズ。こっちだこっち!」
 待ち合わせのカッフェで手を振るギーシュ。すぐに飲み物の追加注文をするキュルケ。
 「待たせて悪かったわ」
 「いいわよ。しばらくここで休んだら学院に戻りましょ。ね、ダーリン」
 しばらくして飲み物が運ばれてくる。緑茶を口にする士郎。
 「げ、砂糖入りかぁ……」
 しょんぼりした士郎を見て、キュルケが尋ねる。
 「え? ふつう『お茶』って砂糖入りでしょ」
 「いや、俺の国じゃお茶はそのまま飲むんだよ」
 「え~、そのまま飲むなんて苦いだけじゃないっ」
 「紅茶なら、砂糖とかミルクなんか入れるのは普通だけど。
  お茶も紅茶も原料は同じでも、飲み方がぜんぜん変わってくるのは面白いな─」

 「「「「「………え~~~~~っ!!!」」」」」

 ルイズ・キュルケ・ギーシュだけではなく、一部周囲の客も驚きの声を上げた。
 「嘘でしょッ! お茶と紅茶が同じものだなんて。味も香りも全然違うじゃないッ!」

 「え? いや、常識だろ。あれ?常識だろ?」
 周りの反応に戸惑う士郎。あれ?常識だろ?
 どうやら、この世界ではあまり知られていない事実だったらしい。紅茶自体はかなり昔から貿易で
 入ってきていたのだが、『お茶』は最近知られるようになったので、まったく別物扱いだった。
 そのことをカッフェのオーナーに色々解説をしてもらったお客一同。

 ついでなので、オーナーに士郎は前に思った疑問をぶつけてみる。
 「ここってカッフェですよね。『COFFEE』は取り扱っていないんですか?」
 「あ~、君なかなか通だね。昔は普通に扱ってたんだよ。
  ただ外来物はどうしても交易路に依存するから、交易が廃れるとその品物は一気に入らなくなる。
  『カフィ』も昔は人気があったけど、最近は南と交易していないようだから入ってこないねぇ。
  あ、だけど擬似『カフィ』ならあるよ。 麦で作った『orz』って飲み物が」
 『orz』と聞いて周りの反応が悪くなる。なにかとても苦いものを口にしたような顔だ。
                                         ハ,,ハ
 空気を読んだ士郎はそれを注文することを丁重にお断りします( ゚ω゚ )
 ※イタリアにはORZOと言う飲み物が実在しますが、筆者は飲んだことがございません。
  麦茶好きの筆者はいつか呑んでみたいと思っております。きっとおいしい飲み物だと思います。

 この世界においても、カッフェの語源はやはりCOFFEEだったようだ。

 ………


917:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/10/15 16:08:55.70 C8H1tviD

 「やれやれ、帰りもあの鎧を着ることになるのか……」
 ギーシュが文句をたらたらと言う。それは自業自得だと他の面々は思った。
 「わたしがマント貸してあげてるの忘れてるんじゃないでしょうね」
 「あー、それはもちろん感謝しているよ。ミス・ヴァリエール」
 「まぁいいわ。それは貸しだからね」
 意外と強かなルイズである。ギーシュは渋い顔。

 「まぁいいわ。ここに用事が無いようだったら早く帰りましょ」
 一同賛成する。タバサの竜に皆で乗り込み早速学院を目指す。

 「短いような長いようなそんな旅だったなぁ」
 士郎がそんな感想を漏らす。
 「旅じゃないわ!任務でしょ!!」
 ルイズが訂正する。
 「ああ、そうだな。やたら疲れた。風呂にでもゆっくり浸かりたいな……」

 学院で働いている平民には風呂と言うものは、サウナだけしかない。
 五右衛門風呂の釜かドラム缶あたりを投影して作ってみようかと士郎は思った。

 もちろん学院には人が風呂代わりに使えるような大鍋など無いし、
 仮にあったとしても鍋を火に掛けたまま入るような事もできないし、
 ましてや2人一緒に入れる(異常に大きい)鍋なんて存在する道理など無いのである。

 ………

 「おかえり、シロウ君。 早速だが付いてきてくれ給え」
 学院に戻った一行を真っ先に出迎えたのはコルベールだった。
 なにかを見せたくてしょうがないという顔である。

 一行はコルベールと共に、彼の小屋の裏手へと向かった。

 そこには小さめのプール。いや、大きさで言えばジャグジー位の水溜りがあった。
 「なんですか? これ?」
 ルイズが尋ねる。
 「お風呂だよ、ミス・ヴァリエール。シロウ君が前から入りたがっていたから、学院長に
  生徒用の風呂に入れないか尋ねたら断られたが、作ってもいいと許可を貰ってね」
 「ありがとうございます、コルベール先生!!」
 士郎は大喜びである。士郎の喜びようがよくわからない他の面々。
 「そこまで彼が喜ぶ理由がわからない……」「そうね……」

 この日は学院長に任務の顛末を掻い摘んで話して解散となった。

 ………

 「あ゙~~、生き返る~~………」
 夜、満天の星空の下、風呂に入る士郎。
 彼の入っている風呂はいわば単なるプールであるから、もちろん直接焚くわけにもいかない。
 プールの横に湯沸しできるような仕組みがあった。(コルベールに長々説明を受けた)
 日本にある普通の風呂釜と同じような仕組みである。

 プール自体は錬金した石に覆われている。結構立派な露天風呂だ。
 さすがに人気の少ない場所とはいえ、裸をさらす気は無い士郎はシーツで風呂の周囲を囲う。
 (でもこんな変な覆いだと、かえって何だろうと覗くような奴も出てくるかもしれないな)




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