型月のキャラがルイズに召喚されましたpart7at ANICHARA
型月のキャラがルイズに召喚されましたpart7 - 暇つぶし2ch750:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:19:13 dulTJQnV

 閑話休題。

 士郎がコルベールの小屋を出れなくなったため、ルイズは少々不満だった。 
 士郎がいつの間にか見当たらなくなったため、キュルケは少々不満だった。

 結果、不満は互いの少女へ向かうことになる。
 「キュルケ! あんたのせいでシロウが困ってんのよ! もうちょっかい出さないで!」
 「ルイズ! あなたシロウをどこに隠したのよ! あたしの恋路を邪魔しないで!」

 「「決闘よ!!」」 ある意味、息はピッタシだった。

 月明かりの元、ヴェストリの広場で背中合わせに立つ2人の女生徒。

 証人兼ジャッジとしてキュルケの親友タバサが呼ばれた。タバサがルールを説明する。
 「10歩歩いたら、振り返って呪文を唱える。先に倒れた方が負け」

 「「わかったわ」」

 「開始」 タバサが開始の宣言をする。

 「「1、2、3、4、5、6、7……」」 互いに杖を胸元まで持ってくる。
 「「8、9」」

 「「10!」」 両者振り向き呪文の詠唱に入る!
 キュルケはお得意の『ファイヤーボール』を唱える。 
 ルイズは先日見つかったばかりの『猫だまし』を唱えた。

 ルイズの呪文が一足先に完成。キュルケの目の前で炸裂する!
 「きゃっ!」 キュルケの呪文の詠唱が途切れる。

 ルイズは既に次の呪文の詠唱に入る。といってもその他の呪文は使えないはずだった。
 (あたしだって『ファイヤーボール』くらいなら使えるはず!)
 呪文完成! 発動……せず。いつもの失敗魔法が発動した!

 <どごぉぉぉん>

 目標のキュルケを大きく外れて、本塔の上のほうに命中したようだ。

 「あなた、どこ狙っているのよ」 ルイズを鼻で笑うキュルケ。
 (さっきはなんか訳のわからない呪文で驚かされたけど……)呪文を詠唱するキュルケ。
 「食らいなさい!」
 『ファイヤーボール』がルイズを跳ね飛ばした。

 「キュルケの勝ち」 タバサがキュルケの勝利を宣言する。
 「くっ! おぼえてなさい!」 雑魚キャラのような捨て台詞を吐くルイズだった。


751:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:20:11 dulTJQnV

 <ずごごごごごぉぉぉ>

 突然の地鳴りと共に、土で出来た巨大なゴーレムが目の前に現れた。
 現れたかと思うと、そのまま本塔に殴りかかるゴーレム。
 <ばごんっ!!>
 本塔の壁が一部壊れる。

 「なに?」 キュルケが突然の成り行きについていけずに誰とも無く訊いた。
 「盗賊」 端的にタバサが答える。
 「止めなきゃ!」 いち早くルイズが行動を起こす。

 「今度こそ!『ファイヤーボール』っ!!」
 失敗魔法発動。 ゴーレムの表面がはじけた。 だが、そのまま修復されるゴーレム。

 キュルケとタバサが続く。
 「『ファイヤーボール』っ!」「『ウィンド・ブレイク』」
 かなりのダメージを食らったようだが、やはり修復されていくゴーレム。

 ゴーレムの肩に黒い人影が見えたと思ったが、本塔に出来た亀裂から中へ消えていった。

 タバサが自分の使い魔の風竜シルフィードを呼んで、他の2人と一緒に乗り込む。
 「『土くれ』のフーケ。最近このあたりに出没しているらしい」
 「このままじゃ学院の宝が盗まれちゃうじゃない!」 ルイズが声を荒げる。
 「奴が出てきたところを集中的に狙いましょう」 キュルケが提案する。

 しばしのち、黒ずくめのローブの人物が、ゴーレムの肩へ戻っていく姿が見えた。
 「「『ファイヤーボール』」」「『ウィンド・ブレイク』」
 3人は、先ほどと同じ呪文を今度はフーケに向かって撃ち込む。

 「や、やったの?」 ルイズがフラグを発動する。

 一瞬、人物に命中したと思えたがそれ自体がダミーだったようだ。
 土煙にまぎれて、逃げおおせたフーケ。 まんまと学院の宝を盗まれてしまった。

 ………翌朝

 トリステイン魔法学院は大騒ぎになっていた。もちろん『土くれ』のフーケ襲来の件である。

 『宝の弓、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 などと、宝物庫の壁に残されていた。

 宝物庫に教師が集まり、口々に好き勝手なことを言い合う。
 「衛兵は何をしていた」「衛兵など平民、それより当直の貴族は誰だ」「ミセス・シュヴルーズですな」
 「ミセス・シュヴルーズ、貴方は何をしていた」「も、申し訳ありません」
 シュヴルーズ以外の教師がシュヴルーズを責め立てる。

 「泣いても、お宝は戻ってこないのですぞ!貴方は『宝の弓』を弁償できるのですかな!」
 「まぁまぁおよしなさい。我々の中にまともに当直の仕事をこなしていた人物、果たして居りますかな?」
 オスマンが弁護をする。
 「それは……」 一番猛烈に責め立てていたギトーは、口篭ってしまう。
 「今回の件は我々全員にあるのじゃ。油断していた我らがまず反省せねばならん」

 「おお、オールド・オスマン、貴方のお慈悲に感謝します。これからは父と呼んでよいでしょうか」
 と、オスマンに抱きつくシュヴルーズ。 オスマンはシュヴルーズの尻を撫でたりしていた。
 「私のお尻でよければお好きなように。 そりゃもう、いくらでも」
 ……オスマンに対する周囲の視線が冷たくなっていく。


752:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:21:12 dulTJQnV

 咳を一つして、オスマンは言った。
 「で、犯行の現場を見ていたのは誰じゃね?」
 「この三人です」 コルベールが自分の後ろに控えていた三人を指し示した。
 ルイズにキュルケにタバサである。士郎はルイズの付き添いでこの場にはいるが、現場は見ていない。

 「詳しい説明をしてもらおうかの」
 ルイズが進み出て、見たままを述べた。

 「大きなゴーレムが現れて、壁を壊したんです。肩に乗っていた黒いメイジが、ここからなにかを……、
  その『宝の弓』だと思うんですけど……、盗んだ後、またゴーレムの肩に乗りました。
  私たちが呪文を唱えて阻止しようとしたんですが、土煙にまぎれて消え去っていきました」

 「それで?」
 「あとには、土しかありませんでした。手がかりになるようなものは特に見つけていません」
 「ふむ、そうか……。 ときに、ミス・ロングビルはどうしたかね?」
 誰も知らないと反応が返ってくる。 そして丁度ロングビルが現れる。

 「オールド・オスマン。盗賊の手がかりをつかみました!」

 「手がかりじゃと?」
 「今朝方、この状況を見てすぐに調査に当たったのです。
  周囲を聞き込んだところ、あやしげな人物を見たとの目撃証言を掴みました」
 「仕事が早いの。ミス・ロングビル。 それでその場所は?」 
 「ここから馬で四時間くらいにある森の廃屋に黒ずくめのローブの人物が入るのを見たようです」

 「すぐ王室に報告しましょう! 王室騎士隊であればあっという間に……」
 「喝ぁぁっ! 王室なんぞに報告してたまるか! 時間も惜しいし、今後王室が学院に関与するなぞ
  不愉快にもほどがある! 我々の問題は我々が解決するのが当然じゃ!!」
 コルベールの提案を即効で却下して、オスマンは皆に言う。


753:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:22:05 dulTJQnV

 「では、捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ」
 誰も杖を掲げない。困ったように顔を見合すだけである。オスマンがいくら促してもだめである。
 だが、ここで一人杖を掲げるものが現れた。ルイズである。シュヴルーズが驚き、声を掛ける。
 「ミス・ヴァリエール! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
 「誰も掲げないじゃないですか!」
 口を少々への字にして、真剣な目をするルイズ。この場の誰よりも格好よかった。

 横目でルイズを見るキュルケ。 やれやれという顔をしながら続いて杖を掲げる。
 「き、君たちも生徒じゃないか!」 コルベールが声をあげる。
 見るとタバサも杖を掲げていた。
 キュルケと目があうと、タバサは一言「心配」と言った。

 「では、君らに頼むとしようか」 オスマンが言う。
 コルベールやシュヴルーズが反対の声を上げるが、オスマンはそんな声を無視する。
 「彼女たちは敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと
  聞いているが?」
 「本当なの? タバサ」 キュルケは思わず訊いてしまう。
 周りがざわつく。シュヴァリエの称号はそれほどの価値があるのだ。

 「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、
  彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いている」
 オスマンは続けた。
 「ミス・ヴァリエールは優秀なメイジを数々輩出したヴァリエール公爵家の息女で……」
 言葉に詰まるオスマン。 色々と秘密の話があるので言葉が濁ってきた。
 「彼女は将来有望なメイジなのじゃ……。 そうそう、その使い魔は、
  グラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンを傷一つ負うことなく倒した腕前じゃ」

 「そうですぞ、なにせ彼はガンダ……」
 不用意に口を滑らせそうになるコルベールにオスマンは杖で地獄突きをかます。
 「ぉごぉぉぉ……」 悶絶するコルベール。

 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 オスマンが宣言する。
 ルイズ・キュルケ・タバサは「杖にかけて」と同時に唱和する。
 そしてスカートの端をつまみ恭しく礼をする。 士郎は黙って見ている。

 「では、馬車を用意しよう。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。
  ミス・ロングビル、彼女たちを手伝ってやってくれ」
 「もとよりそのつもりですわ」 ミス・ロングビルが応えた。

 ………

754:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:22:59 dulTJQnV

 女生徒3人とミス・ロングビルとともに、宝物庫から学院正門まで向かうときに士郎は尋ねた。
 「で、この中に『宝の弓』を見た人間はいるのか?」
 4人とも、『宝の弓』は見たことがないという。
 「……、それじゃあ取り戻すにしたって何が『宝の弓』か判らないじゃないか」
 士郎はあきれて、踵を返す。
 「どこ行くのよ、シロウ」 ルイズが尋ねる。
 「学院長のとこ。『宝の弓』がどんなものか訊いてくる。門の前で待っててくれ」

 ………

 学院の宝物を取り戻しにいく馬車の中。
 「で、『宝の弓』ってどんな物なの?」 ルイズが尋ねる。
 「学院長が言うには、みすぼらしい弓だそうだ」
 「お宝じゃないの~?」 キュルケが不満の声を上げる。
 士郎は聞いた話を皆に伝える。

 オスマンは学院の近くに住む貴族が亜人を見世物として手に入れた話を聞いた。
 酷いことだと憤慨したオスマンは、密かに亜人を脱出させようと計画を練った。
 その貴族の屋敷に忍び込もうとした矢先、もう一人の亜人が仲間の亜人を脱出させようとしていた。
 屋敷は大騒ぎになっていた。オスマンは2人の亜人に協力して、屋敷から離れさせることができた。

 捕まっていた亜人は脱出できたものの、長い監禁生活により体が弱っていた。
 そしてまもなく息を引き取る。女性の亜人だった。助けようとしていた亜人はその連れ添いであった。
 男性の亜人も脱出の折に深手を負っており、永くなさそうだった。
 男性の亜人は最後に一族に伝わる弓と、自分と女性が付けていた宝石をオスマンに渡す。
 自分が死んだ折には、この弓で宝石を月まで打ち上げて欲しいとのことであった。

 その亜人の一族は、葬送の儀として個人が持っている『魂の宝石』を月まで飛ばすそうだ。
 やはり脱出のときに弓もダメージを受けていて、2つの宝石を飛ばすまで壊れないでいるかもわからない。

 士郎は馬車にいるルイズ・キュルケ・タバサ・ロングビルに伝えた。ロングビルは御者をしているが。

 「なんで『宝の弓』なの?」 宝にこだわるキュルケが訊く。
 「弓が“マジックアイテムしか射出できない”マジックアイテムらしい。
 『魂の宝石』を射出するために作られた専用の弓ってことらしいけど。
 『宝の弓』って名前はその由来から、理事長が適当に付けたそうだ」

 「あんのクソじじぃ~っ……」 御者台で言ったロングビルの小声は皆には届かなかった。

 「じゃあなに?『土くれ』のフーケはご大層に宝物庫の中で一番のガラクタを持っていったのね。
  で、『魂の宝石』はどこにあるの?」
 やはりキュルケはお宝にしか興味が無いようだ。
 「理事長室の机の中に保管してあった」

 そんなこんなで、馬車は目的地の森に到着する。
 森の入り口に馬車を停めて、小屋までは徒歩である。
 ルイズとキュルケは不満を言ったが、馬車で敵地に乗り込む馬鹿は居ないと窘められた。

 ………

755:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:23:48 dulTJQnV

 小屋が見える位置に五人は陣取る。まずは士郎とタバサが小屋まで偵察に出る。
 「誰もいないようだな」
 「誰も居ない」
 「鍵はかかっていないみたいだけど、俺が先に中に入るよ」
 杖を構えて、こくりとタバサがうなずく。

 シロウが小屋に入る。中にはひと気がない。特に罠もあるように見えない。
 続いてタバサが中に入る。小屋の中で改めて『ディテクト・マジック』を唱える。
 異常ないようだ。

 外で待機していた他のメンバーも小屋の入り口までやってきた。
 中から士郎とタバサが出てくる。手には『宝の弓』と思われるマジックアイテムを持っている。

 「タバサ、フーケは?」
 ふるふると首を振るタバサ。
 「なによ、盗賊はどこにも居ないの?」 ルイズが少々ホッとしながら表面上文句を言う。

 「盗品は戻りましたが、フーケの捜索をしますか?」 ロングビルが皆に尋ねる。

 「先に弓を持って学院に戻りましょう。報告をまずしないと。
  フーケの捜索なら、改めて組織した方がいいと思います」 士郎が提案する。
 「そうね、そうしましょう」 ルイズもキュルケも賛成のようだ。 タバサも頷く。

 ………

 「ふむ、そうじゃったか。フーケはおらなんだか。 それでも宝物が戻り、何よりめでたい」
 オスマンに報告すると、このような反応が返ってきた。
 「学院長、その『宝の弓』では葬送をおこなわないのですか?」
 「今にも壊れそうでやたらに使えないんじゃ。弓の名手を探すわけにもいかなくてのぉ」
 貴族から逃がしてやった経緯から、表ざたにはできないらしい。

 「よろしければ、俺がその葬送を行いましょうか?」
 「ん?(そういえば武器なら何でも使いこなせるのじゃな。ガンダールヴは)ぜひとも頼もうかの」

 ………

756:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:24:32 dulTJQnV
 「黙祷!」 コルベールが号令をかける。
 本塔の屋上にて、オスマン、ルイズ、キュルケ、タバサ、ロングビル、士郎が黙祷する。
 今回の葬送は内々に行われる。総勢7人。捜索隊のメンバーとコルベール、オスマンのみである。
 しばし黙祷の後、士郎が夕暮れに姿を現した赤と青の月に向けて弓を構える。

 <しゅぃぃん>

 赤い宝石を赤の月へ送る。亜人女性が持っていた『魂の宝石』である。

 <しゅぃぃん>

 青い宝石を青の月へ送る。亜人男性が持っていた『魂の宝石』である。

 <ばきゃっ!>

 役目を終えたとばかりに、『宝の弓』の弓部分が割れる。
 士郎は、弓に掛けられていた魔力が抜けていくのも感じていた。この弓はもう使えないだろう。

 葬送の儀は終わった。 学院長に壊れた弓を渡す。

 「ロングビルさん、ちょっと残ってくれないかな?」士郎がロングビルに声をかけた。
 「どうしたの?」 ルイズが士郎に尋ねる。
 「いや、他の人は先に戻ってくれてていいから」
 塔の屋上に士郎とロングビル、コルベールが残る。

 「なんの用でしょうか?」 警戒しながらロングビルが尋ねる。
 「ミス・ロングビルは『土』系統のメイジでいらっしゃいますよね?」
 「はい、そうですが……」 コルベールの質問に、ロングビルは答える。
 「『土くれ』のフーケはもちろん土系統……。だが今回の捜索では、姿を現さなかった」
 士郎があとを引き取る。

 「なにが仰りたいのでしょうか」 ロングビルがそっと懐に手を忍ばせる。
 「簡単なことですよ……」
 コルベールは、ロングビルの正面へ立ち……

 <がばっ> 土下座をした。

 「私たちと共に、発明の手伝いをしていただきたい」

 「へ?」

 「いや、今シロウ君と色々な製品の開発をしておるのですが、どうにもメイジの数が足りなくて、
  『土』系統のメイジが欲しいのです。
  もちろん、製品になって利益が出たあかつきには分配させていただきますぞ」
 「『土くれ』のフーケが出たら、盗賊稼業をやめることを条件に仲間に入れようと思ってたんです。
  だけど、現れなきゃしょうがないし……」

 「は、はぁ」

 「仲間になっていただけますかな?ミス・ロングビル」
 「……、ええと、利益といってもどの位になるものなのでしょう」
 「品は売れ行きに左右されるので、はっきりとはいえませんが、
  下級貴族の収入程度は超えると予想しております」

 コルベールは必死になってロングビルの勧誘を続ける。 なにか別の思惑もあるようだ。

 「まぁ少々のお手伝い程度でしたら、かまいません。 秘書の仕事の合間で良ければ」
 「よしっ!」 思わずガッツポーズを取るコルベール。

 そんなこんなで、ハルケギニアでの新製品開発メンバーが一人増えたのだった。

757:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/06 00:37:26 dulTJQnV
以上です。とりあえず今回からトリップ付けてみました。
葬送の部分は、ルナル・サーガのエルファが元ネタです。

士郎のハルケギニアでの食事は頭を悩ませています。
パンや麦酒があるから麦はあるんだろうけど、麦飯とか出した方がいいのかなとか、
海があるなら、鰹節とか昆布とかも手に入るのかなと。

Fateみたいな料理の表現求めていた方がいたらすいません。
発明品も色々悩んでいる最中。

ということで、今回が大体1巻部分ですが、舞踏会はちょっと先です。
描写するかも未定です。
ではまた

758:名無しさん@お腹いっぱい。
11/02/08 16:48:50 tO0XjFvU
乙です
なるほど、こう来たか
この後の展開が楽しみだ

759:名無しさん@お腹いっぱい。
11/02/09 21:19:09 bNpUgyrD
乙です。
珍しい展開に期待

760:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:33:02 +sI/NyNY
書き込みできない~

出来たら第8章うpです

761:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:36:10 +sI/NyNY
第8章 王女来訪

 「おお、クルクル回りますなぁ」 出来上がった部品を手に喜ぶコルベール。
 「これはローラーベアリングといいます。中の円柱が接触部分の摩擦を減らすんです」
 士郎の自転車製作計画の第一段階である。
 「円柱は真円にしないといけないので、いろいろ大変ですけどね。
  ちなみに中を玉にしたものがボールベアリングと呼ばれます」
 衛宮家の近所に住んでいる藤村の爺さんのバイクをチューンするうちに得た知識を披露する。

 「この手の作業は、これほどハンマーとヤスリが重要になるとは知りませんでしたよ。
  それにしても、本当にシロウ君はいろいろなことを知ってますな。私の知識など足元にも及ばない」
 「コルベール先生は独自にエンジンを開発するくらいですから凄いものですよ」
 「いや、私は変わり者ですからなぁ」
 ここで前から疑問だったことをコルベールにぶつける。
 「この世界の人たちって、新しい技術とか新しい魔法なんかは作り出そうとしないんですか?」
 「ふ~む、冶金技術とかでしたらゲルマニアの方で新しいものが生まれているようですが、
  基本的に数千年前から代わり映えしないものを使っていると思いますな」

 6千年前の書物が残っているようなこの世界だが、魔法も科学もあまり進歩がないようだ。
 始祖ブリミルとやらが呪いでも掛けたのかと疑ってしまう。

 ちなみにコルベールのエンジンとか今回のベアリングの作成方法は、粘土で成形したものを
 『錬金』で金属化するだけである。習作を作ることに関してはとてもお手軽である。

 「さて、今日はこのくらいにしましょう。もう真夜中近いですから」
 「シロウ君、いつも外でやっているあの変わった座り方はどんな意味があるんですかな?」
 「結跏趺坐のことですか? あれは魔術修行の一環です。精神統一方法なんですけど」

 「ほうほう」

 「俺の世界には“禅”というものがあって、心を平穏にし自己を見つめなおし悟りを得る。
  それを行うのに座禅、つまり座った状態で瞑想を行うんです」
 「ザゼンですか。それは私にもできるものかな?」
 「座り方はあまり気にしないでいいですよ。とにかく、自分の内に埋没して精神統一をする。
  その行為が目的ですから。 まぁ自分も自己流でやってますし」
 「ふむ、では私もやってみましょう」
 好奇心旺盛なコルベールらしい。

 士郎は小屋の外で、コルベールは小屋の中でそれぞれ瞑想に入る。
 この日はこれで終わる。

 ………


762:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:38:33 +sI/NyNY
 朝

 「よう、相棒」
 「なんだ? デルフ」
 「相棒は何で俺っちを左に持って、右側に棒っきれなんぞ持っているんだ?」
 朝の修練中にデルフに声を掛けられた。
 「なんだ、お前。右手の方が良かったのか?」
 「いや、そういうことじゃなくて。 なんで二刀流なのか訊きたかったんだが」
 「俺にはそれが一番向いているんだよ」
 「まぁ確かに相棒の振りを見れば、二刀流向きな気もするが。ん~……」
 「どうした?」
 「いや、昔にそんな使われ方をしてたような……。左手に槍がいて……」
 「お前、昔のことってどれだけ覚えているんだ?」
 「あんま覚えてないわ。なんせ『使い手』と別れてから数千年だからなぁ」
 「『ガンダールヴ』の事知りたいんだけどなぁ。思い出したら教えてくれ」
 「あいよ~」

───────────────

 ハルケギニアで実質宰相のマザリーニ枢機卿は、近頃多忙を極めていた。
 アルビオンではレコン・キスタと称する貴族の反乱で、王家が滅ぼされそうになっていた。
 滅亡までもって数週間だろう。
 ガリアでは軍事行動が活発化している。
 つい最近もトリステイン国境付近で軍事演習が行われた。

 ゲルマニアとの軍事同盟は急務なのだが、肝心のアンリエッタ王女は婚姻に関して乗り気ではなく、
 何かに付けて、引き伸ばし工作を図る。

 本日もガリアとの同盟交渉に王女は列席していたのだが、気品もやる気もない態度に
 トリステインへ戻る馬車の中で小言を洩らしてしまった。

 「いっその事、枢機卿が王になればよろしいんですわ」
 などと言い返される始末……。 振り回されっぱなしである。めっきり老け込んで、ぱっと見、
 オールド・オスマンと大差ないように見えるが、実は四十男である。

 王女に私めを虐めてそんなに楽しいですか?と、問いたい。小一時間問い詰めたい。

 「そうだわ。せっかくですから途中で魔法学院に寄りたいですわ。お友達に会いたいの」
 そのくらいの我侭ならまだかわいい方だ。
 「宜しいでしょう。ゲルマニアに嫁ぐことになれば、そのようなことも出来なくなりますしな」
 「……」
 おもいっきり睨まれた。

 とりあえず、魔法学院に先触れを出さねばなるまい。

───────────────


763:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:42:30 +sI/NyNY

 本日の2時限目の授業はミスタ・ギトーの授業である。
 ミスタ・ギトー。長い黒髪で漆黒のマントを纏ったその風体は、
 自身を覆う冷たい雰囲気と相まって、生徒達からの人気をおとしめていた。

 「では、授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」
 静まり返る教室に満足げのギトー。

 「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
 「『虚無』じゃないんですか?」 答えるキュルケ。 ピクっと反応するルイズ。
 「伝説の話をしているのではない。現実的な答えを聞いているんだ」

 しばらくキュルケとギトーの問答が続く。
 最強は『火』と答えるキュルケとそうではなく『風』というギトー。

 眺めていて士郎は呆れていた。 実際魔法合戦になるんじゃないかと思ってみていると、
 ……やはり、ギトーはキュルケを挑発して『ファイアーボール』を撃たせる。
 そしてギトーは烈風を起こし、炎を掻き消しキュルケを吹っ飛ばす。
 なんて教師だ……。ここまでひどい事は藤ねえでさえ、やら……、やるかもしれない。
 でもやることに何処となく憎めなさを感じる藤ねえとは雲泥の差だ。
 
 「目に見えぬ『風』は、見えずとも諸君らを守る盾となり、必要とあらば敵を吹き飛ばす
  矛となるだろう。そしてもう一つ、『風』が最強たる所以は……」
 杖を構え詠唱に入るギトー。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」

 ここで突然、珍妙な格好をした闖入者が現れる。 コルベールである。
 彼は金髪ロールのでかいウィッグをつけ、レースや刺繍だらけの派手な身なりをしていた。
 「ミスタ?」 あまりの姿にギトーも眉をひそめる。

 「ミスタ・ギトー、失礼しますぞ。本日の授業はすべて中止となりました」
 中止の一言に教室が盛り上がる。

 「えー、皆さんにお知らせですぞ」
 もったいぶった調子でのけぞるコルベール。のけぞった拍子にかつらが床に滑り落ちた。
 一番前に座っていたタバサが、一言言う。

 「禿げ散らかすな」

 教室は爆笑の嵐に包まれた。どうやら親友のキュルケがギトーにいい様にされたので
 不満が毒舌に直結したようだ。

 当のキュルケはすでに先ほどのことなど気にもかけておらず
 「あなた、たまに口を開くと、言うわね」 と反応するだけだった。

 「黙らっしゃい! このこわっぱども! 大口を開けて、下品に笑うとは貴族にもあるまじき、
  行いですぞ!! これでは王室に教育の成果が疑われる!」
 コルベールの剣幕に、おとなしくなる生徒達。

 「恐れ多くも、我がトリステインの誇る姫君。アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からの
  お帰りに、この魔法学院に行幸なされます。 したがって今から歓迎の式典の準備を行います。
  生徒諸君は正装し、門に整列すること」


764:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:45:57 +sI/NyNY
───────────────

 トリステインの王女、アンリエッタは憂えていた。
 ゲルマニアなどという成り上がりの国へ嫁がないといけないというのは、王女にとって
 屈辱以外の何者でもなかった。
 もちろん国の存亡にかかわる事柄だというのはわかっている。軍事同盟は必要だろう。
 
 自分にとって最愛の人が居られるアルビオン。その国家が存亡の危機に瀕している。
 これも憂いの原因でもあった。嫁げるのであればアルビオンへ嫁ぎたかった。

 そして、ゲルマニアとの婚姻に障害となる手紙を、自らがアルビオンの王子に贈ってしまったことも
 アンリエッタが憂えている理由でもある。
 枢機卿には、ゲルマニアとの同盟に付け込まれる隙が無いよう、口を酸っぱくするほど言われている。
 手紙の存在を誰かに知られるわけにはいかなかった。

 憂い顔で馬車から外を見ていたら、グリフォン隊の貴族の一人が道に咲く花を魔法を使い摘んでくれた。
 グリフォン隊隊長でワルドと名乗った。

 「あなたの忠誠心はどのくらいのものでしょう? 私に困りごとがあったときには……」
 この質問にワルドは答える。
 「そのような際には、戦の最中であろうが、空の上だろうが、なにをおいても駆けつける所存で
  ございます」

 「あの貴族は、使えるのですか?」 アンリエッタはマザリーニに尋ねる。
 「ワルド子爵。二つ名は『閃光』。かのものに匹敵する使い手は、『白の国』アルビオンにも
  そうそうおりますまい」
 「ワルド……、聞いたことのある地名ですわ」
 「確か、ラ・ヴァリエール公爵領の近くだったと存じます」

 (ラ・ヴァリエール……。私の数少ないお友達。早くルイズに会いたいわ)
 王女は悩み事を打ち明けられる相手に早く会いたいと思って仕方が無かった。

───────────────


765:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:49:30 +sI/NyNY

 王女を乗せた馬車が魔法学院の正門をくぐる。
 馬車が止まると召使いたちが緋毛氈のじゅうたんを馬車まで敷き詰める。
 呼び出しの衛士が、王女の登場を告げる。
 馬車の中から枢機卿が先に現れると、お迎えとして並んだ生徒達が一斉に鼻を鳴らした。
 マザリーニは貴族にも平民達にも良く思われてないと士郎はルイズに教えてもらっていた。
 マザリーニは皆の態度を意に介さず、続いて降りてくる王女の手を取った。

 生徒達の歓声の中、王女はにっこりと薔薇のような笑顔を振りまき手を振る。
 「あたしの方が美人じゃないの」とキュルケはつまらなそうに呟く。
 「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
 ルイズの後ろに控えている士郎に尋ねるキュルケ。士郎は私語を謹んで答えなかった。

 その士郎は、王女に対する第一印象が“がっかり”だった。
 士郎が過去対峙した王族。騎士王然り英雄王然り、にじみ出るオーラに気品と同時に迫力があった。
 比べる相手を間違ったとしか言い様が無いが、アンリエッタは学院にいる貴族(ルイズやキュルケ)に
 毛の生えた程度にしか感じなかったのである。

 そして、ルイズは近衛の一人をずっと見つめていた。羽帽子をかぶった凛々しい貴族である。
 いつの間にかキュルケも同じ人物を見つめて、顔を赤らめていたりしている。
 後ろに控えている士郎は二人の視線はわからないので、(早く終わらないかなぁ)と退屈していた。
 タバサもそばに居たが、座って本を広げていた。 よく怒られないな、と士郎は思った。

 ………

 夜

 今日はさすがに勉強・調査や報告会、修行は休むことになった。王女が学院にお泊りになられるためだ。
 士郎はルイズの部屋を掃除していた。
 ルイズといえば、ベッドに横たわり枕を抱いて天井をぼーっと見上げていた。
 おでこに手を当ててみたが、とくに熱があるようでもない。
 問題ないだろうと判断。士郎はルイズを放置して、掃除を続ける。

 ドアがノックされる音がした。初めに長く二回、それから短く三回……。
 ルイズがはっとした顔で、急いでドアを開く。
 ドアが開かれたとたんに、フードをかぶった人物が素早く滑り込んできた。

 ルイズと士郎が驚いていると、その人物は「しっ」と口元に手を当て、魔法を詠唱する。
 「……ディティクトマジック?」 ルイズが尋ねると頭巾の人物は頷き答えた。
 「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」

 探知の魔法で安心したのか、その人物は頭巾を脱ぐ。
 現れたのは先ほど総出で出迎えたアンリエッタ王女だった。
 「姫殿下!」 ルイズが慌てて膝をつく。
 「お久しぶりね。 ルイズ・フランソワーズ」

 士郎はとりあえず掃除道具を片付けることにした。

766:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/13 22:54:07 +sI/NyNY
以上が第8章です。昨夜には完成していたんですが、
冒険の書がなんたらで書き込めませんでした。

変なとこや判りづらいとこなどありましたら言ってください。
次章は9章になります。いざアルビオンへ

767:名無しさん@お腹いっぱい。
11/02/13 23:51:32 cd+IFkm2
乙です!

768:名無しさん@お腹いっぱい。
11/02/14 00:53:53 bD1raxj/
うむうむ。乙乙。

769:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:02:12.29 NDQnPXMP
テステス、書き込めるかチェックです。

770:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:04:20.80 NDQnPXMP
第9章 思惑

 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
 アンリエッタは女王の前に膝を突いたルイズへ抱きついた。
 ルイズはかしこまって、アンリエッタを立たせようとするが、抱きついたまま離れない王女。

 「……あ~、俺は紅茶でも入れてきますよ」
 席を立つ士郎。
 「彼は?」 とアンリエッタがルイズに尋ねる。
 「えっと、彼は私の……使い魔(サーヴァント)です」
 「そうなの。従者(サーヴァント)なのね。」
 (ラ・ヴァリエール家くらいになると専属の従者を雇うのかしら?)
 少々、行き違いがあるようだ。

 部屋を出て厨房へ向かう士郎。夜になったばかりなので、まだ厨房では大勢働いていた。
 メイドの一人に紅茶を用意してもらう。 ここで、シエスタが声をかけてきた。
 「シロウさん、どうしたんですか?」
 「いや、ちょっと紅茶を貰いにきたんだ」
 「紅茶ですか? 仰っていただければ、幾らでもおいれしますのに」
 「いや、俺がルイズにいれるんだけど……」

 きゅぴーんとシエスタの目が光る。
 「それなら、ちゃんとしたいれ方を覚えないといけませんね!」
 「いや、今は急いでいるから、また今度教えてもらうよ」
 「……約束ですよ! 私、絶対忘れませんから!」
 なんか、シエスタが怖い士郎であった。

 ………

 ルイズの部屋のそばまで来ると、扉の前で一匹の土メイジが、中の様子を伺っていた。

 <ごちぃん>

 ギーシュを殴りつける士郎。
 「なにをしている」 
 「ぐぉぉっ。 いきなり殴るとは酷いね、君は」

 扉を開け、ギーシュを部屋へ蹴り入れる。

 「こいつが盗み聞きしてましたよ」
 驚くルイズとアンリエッタ。
 こんな簡単に盗み聞きされたら、先ほどの探知の魔法など意味がないだろうに。
 「おい、出歯亀メイジ。どこまで話を聞いた?」

 「え~と、なんかアルビオンに手紙を取り戻しに行って欲しいと姫殿下が仰られて……」
 士郎はルイズと王女の反応を窺う。 どうやらそんな話をしていたようだ。
 「で、コイツはどうしましょうか? 塔の天辺から吊るして、魔法でロープを切るとかしますか?」

 ギーシュはがばっと床に伏せて、王女に嘆願する。
 「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
 「なんてほざいてますよ。お二方」 士郎はあくまで冷静だ。

 「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
 「息子でございます。姫殿下」
 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」

 なんかギーシュがその任務とやらに参加することになったようだ。たぶん自分もそのメンバーに
 入っているのだろう。 仕方ないので、詳細を最初から訊くことにした。

771:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:05:26.48 NDQnPXMP

 ………

 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。
  すぐに件(くだん)の手紙を返してくれるでしょう」
 そしてアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜き、ルイズへと手渡す。
 「母君からいただいた『水のルビー』です。せめてものお守りです。
  お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」

 概要はこうだ。現在トリステインはゲルマニアとの同盟を結ぼうとしている状態で、
 アンリエッタはそのためゲルマニアへ嫁ぐことになった。
 だが、アンリエッタは過去、アルビオンの皇太子宛に一通の手紙をしたためた。
 これが、同盟関係を妨げる障害になるらしい。
 それなので、ルイズにアルビオンまで手紙を取り戻しに行ってほしいということらしい。

 士郎としては、ルイズが行くというなら、付いて行くしかないだろう。
 結局明日の早朝出発となった。

───────────────

 『閃光』のワルドこと、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは振って沸いた
 幸運に笑いが止まらなかった。。

 この男、トリステインのグリフォン隊隊長でありながら実は、アルビオンの貴族派
 『レコン・キスタ』と通じているのだ。

 レコン・キスタの総司令と会ったときに、一つ頼みごとをされていた。
 「魔法の使えない貴族が、人を使い魔にしたり未知の魔法を使うことがあったと情報を得たら、
 是非知らせて欲しい。 伝説の『虚無』の魔法使いかもしれない」
 ワルドは魔法の使えない魔法使いと聞いて、真っ先にルイズのことを思い出した。

 『虚無』について調べたりもした。『ガンダールヴ』『ヴィンダールヴ』『ミョズニトニルン』
 という名称の使い魔を従えていたらしい。 このあたりはまだ士郎達も知らないことだ。

 そして最近学院で、人が使い魔として召喚されたとの噂を聞いた。
 これがルイズの仕業なら、『虚無』の力をこの手に出来るチャンスかもしれない。

 丁度、学院に立ち寄る偶然がおきて、しかも王女自らがアルビオンまでの任務を頼んできた。
 ルイズの情報を仕入れるチャンスだ。
 王女はルイズにも任務を頼むようだ。もうここまで幸運が重なると怖いくらいだ。
 
 明日はまず、ルイズの使い魔を確認しよう。と思うワルドであった。
 
───────────────

772:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:08:24.99 NDQnPXMP
───────────────

 王女の我侭のせいで、突然魔法学院などに泊まることになったマザリーニは、仕事をしていた。
 本来なら城に戻ってやらなければならない書類仕事だが、幾許かを学院まで届けてもらった。
 認可、不認可の印を押していく。

 <こんこん>

 そんなマザリーニの部屋の扉をノックするものがいた。

 「誰だ?」
 「枢機卿、学院の教師が面会を求めてきておりますが……」

 なんぞ、嘆願や文句でもあるのだろう。 突然の来訪はこちらの都合によってである。
 学院側にとってはいい迷惑だっただろう。
 さすがに、話くらいは聞かなければなるまいと、客を通すように伝える。

 面倒くさいことにならなければよいなと思いながら。

───────────────

 翌朝

 朝もやけむる学院の門前にルイズがやってきた。ギーシュが先に待っていた。
 「やぁおはよう、ルイズ君。清清しい朝だね」
 「あれ?あんただけ?」
 「他の皆は、今準備をしているとこだよ」
 「みんな?? シロウだけじゃないの?」

 「おや、今回の任務のメンバーはこれだけかね?」

 朝もやの中から登場してきたのは、ワルドである。

 「ワルド様!!」 ルイズが思わず立ち尽くす。

 「僕はこの学院の土メイジ、ギーシュ・ド・グラモン。そちらのお名前をお聞かせ願いたい」
 ギーシュが現れたハンサムに張り合う。
 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
 「これは失礼しました。今回の任務にご同行されるのでしょうか?」
 「陛下直々の任務だからな。 よろしく頼むよ」


773:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:10:35.04 NDQnPXMP

 ギーシュとワルドのやり取りの間呆然としていたルイズがはっとして、尋ねる。
 「私、聞いてないです! ワルドさま……」

 「久しぶりだね。 僕のルイズ!」
 ルイズに駆け寄り、その体を抱えあげるワルド。
 「昨夜突然に陛下に命ぜられてね。 しばらく一緒の旅になる。 楽しみだね」

 「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだ」
 「……お恥ずかしいですわ」
 「ところで改めて尋ねるが、今回の任務、私を含め3人なのかね?」

 「いえ、6人です」 士郎の声が聞こえた。

 <ばさっ、ばさっ>

 大きな羽ばたきの音と共に青い竜の背に、士郎、タバサ、キュルケの3人が乗って現れる。

 「シロウっ!……。……?」 ルイズが驚く。現したその姿に改めて驚く。

 学院のマントに白髪姿の衛宮士郎。凄く違和感があった。背中にはデルフリンガーを背負って……

 ワルドが皆に尋ねる。
 「ふむ、君達も今回のメンバーなのかな? ルイズは知らなかったみたいだけど」

 「はぁ~い、私はキュルケよ、おひげが素敵な2枚目さん。よろしくね」
 ワルドにしなだれかかるキュルケ。それを押しやるワルド。
 「すまんな。婚約者が誤解すると困るんだ」
 ルイズに目をやるワルド。するとルイズが顔を赤らめてうつむいた。
 「なあに? あんたの婚約者だったの?」
 キュルケがつまらなさそうに言う。

 「えっと、あの青い髪の子があたしの親友タバサ。それでこっちの白い髪の男の子はシェロ」
 「よろしく」 一言で済ます士郎。タバサは頷くだけだ。

 「え?」 理解が出来ないルイズ。シェロって誰??

 「よろしく。では、出発しようか。 ルイズは私と一緒にグリフォンに乗ろう……」

 「あ~、申し訳ないんだけど、ルイズと話があるんで、そっちにギーシュを乗せてください」
 士郎がそう言う。 ワルドもルイズと話をしたいというので後で乗り換えるということにして、
 まずはタバサの竜に士郎、ルイズ、キュルケ、タバサと乗り、グリフォンにワルド、ギーシュと
 乗ることになった。

 見知らぬ男とグリフォンに跨ることになったワルドは、やはり少々不機嫌だった。


774:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/02/20 02:13:50.94 NDQnPXMP
今回のお話は以上です。

原作との相違点がじわじわ増えてきました。
話のペースは早くなる(と思う)んですが、作る速度遅くなってしまうかも。

遅くなっても怒らないでくんしゃい。では、次回までノシ

775:名無しさん@お腹いっぱい。
11/02/27 00:18:58.64 bPErxTgO

原作からの乖離は新しい展開としてむしろ希望するところですw
どんどんやっちゃってください

ところで
士郎の言動に違和感を感じてしまうんだけど、自分だけかな

776:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/04 12:00:43.67 vx3Yccf4
自分は特に違和感感じなかったな。
8~9章見返して
・対コルベール
士郎は基本ぶっきらぼうだけど、年上や目上にまでタメ口ってわけでもないし(身内と嫌悪や敵対してる相手以外には)
こんな感じかと
・対デルフ
一番遠慮のいらない、素のしゃべりっぽい。
・対アンリエッタ
普通に丁寧語。
・対シエスタ
士郎にしては如才ない受けこたえだけど、原作終了からちょっとたってるし、おかしくはない
・対ギーシュ
立ち聞き見つけた時の対応はひどいけど、ホロウの日常パート比べてそこまでキャラ違うってほどでもないと思う。

細かいとこまで見ると、ちょっと自分が書くとしたらのしゃべりと違うなって場所はあるけど、
自分の中の士郎像が完璧に正しいなんて言えないから、どっちがより原作に近い言動かなんて解らんし

777:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/04 22:53:03.05 nz6ddu7F
ホロウは基準にしちゃいかんと思うんだがどうか?

778:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/03/05 18:41:47.70 3YJ1MCNo
最近また書き込めないし…

アドバイスありがとうです
士郎ってステイナイトだと敬語って使わないから、ホロウあたり参考にしようと
思ってインストールしようとしてたんですが、意味ないですかね?

ちなみにまだ次の部分書き終えてないので、もうしばらく待ってください

779:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/08 06:03:29.78 B5e8XcRm
精密機械の釣竿投影みたいな、きのこ発言に矛盾したのはアレだけど、
きのこが書いたものに矛盾してない部分のホロウは参考にしてもいいんじゃない?
絶対の基準てわけじゃなくて、ホロウ基準使っても使わなくてもいいって感じで。
Fate二次創作はみんなステイナイトと同じ雰囲気で書かないといけないわけじゃないし

780:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 21:27:39.22 VuHIEtTA
でもホロウは実際は士郎じゃなくてアンリが士郎という存在の皮を被っているだけだから

781:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 21:30:45.11 VuHIEtTA
途中送信失礼

でもホロウは実際は士郎じゃなくてアンリが士郎という存在の皮を被っているだけだから
意味がないとは言わないけどいくぶん違和感が生じると思いますよ。
ステイナイトの漫画やアンソロあたりを参考にするのがまだいいかと。

782:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 05:30:55.23 UEcs4F4e
アンソロ参考にしていいなら、もうなんでもいいような。
西脇だっとのステイナイト本編漫画ならともかく(こっちに敬語出てるかは知らないけど)

783:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 06:24:03.92 e5yucgbp
まだ漫画版ならともかくアンソロはねぇだろw

784:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 16:43:20.32 A2h/eyGd
アンソロは実質同人誌だからなあ…

785:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 23:33:15.04 w402xRl5
士郎の投影は固有結界からの派生だから世界から修正を受けないんだよね?
ゼロ魔世界に存在しないはずの宝具をゼロ魔世界で投影しても修正受けないのかな?

786:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 21:45:14.77 j6qlRcNr
>>780
ホロウ内でも言われてるけどアンリも士郎そのものだぞ
本来のアンリは人格を持つ権利さえ剥奪されてるので士郎そのもの
アヴェンジャー状態も士郎の一面

787:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 23:43:46.38 MrnQQFvN
>>786
本来の三次では人格なしで四日も戦えたのか……

788:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 03:36:28.46 6ZMOWlVP
士郎の考える「悪」がアンリ士郎だからなんか小悪党みたいな感じになってるってのをどっかで聞いた

789:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 12:54:14.49 ODIyvGGb
まあアンリ士郎の性格が何なのかはいろんな解釈があるだろうけど、
カレン以外に対する、昼間の衛宮士郎の言動は、四日ループに突入する前(というか本物の衛宮士郎)と何一つ変わってないってことになってるはず。

790:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/02 22:27:26.47 FetfDveX
>>787
第三次では普通の村人Aとして召喚されて最初に出会ったサーヴァントに秒殺
その後に聖杯に取り込まれる時に聖杯の力が働いて本物のアンリマユになってしまった

>>788
士郎の考えってより士郎の悪性だから単なる捻くれ好青年になっちゃったらしい

791:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/04 18:51:36.89 wpbHtbDe
ほんとは士郎の悪性とか使われてない部分とかを、きのこが真面目に考えてデザインした性格っていうか、
DDDのアリカの方向性を変えただけじゃなかったっけ。
そこまでアリカと似てるようにも思えないから、やっぱ士郎の内面も入ってるだろうけど。

792:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/10 21:02:01.94 B8Yw9SAc
>>790
宝具もスキルも何も無いガチの村人Aだったんだよなw

793:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/16 23:51:12.89 1l0+yK6i
あの作品のキャラが遠坂凛に召喚されました
スレリンク(anichara板)l50

794:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/21 18:21:44.60 2GHXgV1M
士郎が使い魔を期待しつつ待機

795:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/04/29 21:16:27.69 pbbogRdC
書き込みテスト

時間が空いちゃってすいません。
明日10話載せる予定です。

796:名無しさん@お腹いっぱい。
11/04/30 18:35:12.81 eP795Oc1
まだかな~

797:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:09:04.52 eLlJWkxP
では、10話です。

798:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:11:20.04 eLlJWkxP
第10章 

 「なによ、どうゆうことなの? シェロって何? なんでそんな格好なの?」

 グリフォンを先に行かせて、声の届かないくらいの位置でタバサの竜はついていく。
 開口一番、ルイズは士郎に尋ねた。

 「いや、俺が『ガンダールヴ』とか使い魔とか一切秘密だから、こんな格好したんだけど
  名前はキュルケのアドリブ。 おれも初耳」
 ルイズの耳元でひそひそ声で答える。
 「じゃあ何でツェルプストーとタバサが一緒なのよ?」

 「昨夜コルベール先生に相談したんだよ。そしたら、タバサの使い魔ならあっという間に
  移動できるって言うからタバサに相談しにいったらキュルケが付いてきた……」
 「なによ、移動なら馬でいいでしょ?」

 (馬に慣れてないから嫌という事は置いといて)
 「来週のダンスパーティ、楽しみにしてたんじゃないのか?」
 馬での移動なら往復1週間以上かかってしまうとコルベールから聞いた士郎。
 「それはそうだけど……。でもこれって一応秘密の任務なんだから……」
 といいつつ、士郎の心遣いに心温まるルイズであった。

 「とりあえず、ルイズの使い魔のことを訊かれたら、召喚したけど他の使い魔に食べられたと
  いうことにしてくれ。 俺のことは貧乏貴族で、“従者”として雇っているとかで」
 士郎がルイズに付き添って出た初めての授業を思い出す。
 ルイズの爆発魔法で誰かの使い魔が食われたとか騒ぎになっていた。
 「え~、なによ。それ」 不満を言いつつもルイズは納得した。

 「じゃあしばらくしたら休憩して、ルイズはあっちに乗り換えてくれ。
  俺のことは秘密な。 近衛やっている人間には特に秘密にしないとな」
 「わかったわ」
 なんだかんだ、士郎の言うことには素直に従うルイズである。

799:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:14:01.86 eLlJWkxP
 ………

 道中の小高い丘。 しばらくの休憩である。

 「君はルイズの従者らしいけど、なんで学院の生徒が従者をやっているんだい?」
 「彼の家、とても貧乏なの。 でも貴族だから学院に見栄をはって通わせてもらって、
  生活費とかは私が出す代わりに、私専属の従者をやってもらっているの」
 ルイズはすらすらと嘘をついた。
 「ほほう。 彼はなんのメイジなんだね?」
 「『土』系統よ。 土のドット」
 「ちょっと魔法を見せてもらってもいいかな?」
 妙にこだわるワルド。 士郎はそんなワルドに素直に答える。
 「いいですよ」

 右手に杖を構え(もちろん杖など必要ないのだが)、『錬金』の詠唱をする士郎。
 (──投影、開始) そして、聞こえぬ声で唱えた。

 士郎の左手に現れる小刀。
 「これでいいですか?」
 このとき、士郎の左手に刻まれているルーンは光を放っていない。
 実は左手は肌色の湿布とファンデーションで偽装が施されていた。
 「あ…あぁ、ありがとう。あと、君が従者をやっているって、どんなことをやっているのかい?」
 しつこいほど、士郎に話を聞くワルドである。

 「お茶を入れたり、掃除をしたり色々です。 あぁそういえば、お茶の用意をしてあった」
 士郎は自分の荷物から、ポットを取り出す。 そして皆に木のカップを配る。
 「ジンジャーのはちみつ漬けです。 まだ熱いから気をつけてください」

 蜂蜜と生姜を1対1から2対1の割合で用意する。
 生姜は皮をむき、薄くスライスして蜂蜜に浸るようにして壜に漬け込む。
 これで一晩寝かせれば、生姜のエキスと蜂蜜がまざりあう。
 お湯に溶かして飲めば、蜂蜜生姜湯の完成である。


800:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:16:09.85 eLlJWkxP

 「熱いって、そんなポットに入れていたらすぐ冷めちゃうんじゃないの?」
 キュルケが尋ねると、ギーシュが答えた。
 「ふふふふ、そう思うだろう。 だが、このポットは僕が開発した大発明品なのだよ」
 
 本当は、士郎が設計してコルベールを製作したものに一部改良を施しただけだった。
 内部のガラスを補強のため、ギーシュが錬金で銅を覆ったのだ。
 これが以外にも冷めにくくなるという利点を発揮。(輻射熱の放射を抑えるため)

 ふふん、と鼻を高くするギーシュをよそに、士郎は皆にポットの中身を注いで回る。

 「あ、おいしい」 ルイズがまず反応する。
 コクコクとタバサが頷く。 かなり気に入ったようだ。すかさずおかわりを要求する。
 タバサにおかわりを注いだ後、他の人間にも注ぐ士郎。

 くつろぐルイズ一行。休憩を終えると、ルイズはワルドのグリフォンへ騎乗。
 かわりにギーシュがタバサの竜へ乗り込む。
 「じゃあ、このままアルビオンへ向けて一気に飛ぶけど、おひげのおじさま、用意はよろしくて?」
 「ラ・ロシェールに寄るのではないのか?」
 キュルケの言葉に疑問をさしはさむワルド。

 ラ・ロシェールはアルビオン行きの船が発着している港町である。
 もちろん普通はアルビオンまでは船に乗っていくのだが、士郎が早く行き帰り出来るように
 わざわざタバサに頼んで竜に乗せてもらっている。直接向かえるならそれにこしたことはない。

 アルビオンは浮遊大陸なので、同じ場所に居るわけではない。次回の最接近は一週間は先だ。
 それなので、一気にアルビオンまで行くのは、一般的には無謀の極みであるが、
 タバサの竜なら問題が無かった。

801:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 01:17:59.52 eLlJWkxP

 「いや、私のグリフォンならそれくらいなら飛べるはずだが…。
  一気といっても、小休止くらいはとるのだろう?」
 「まぁ、時々はね。大丈夫のようでしたら早速出発しますわよ」

 ………

 アルビオンへ向かう空の上。ワルドはルイズを乗せてグリフォンを操っていた。

 「……」
 いざ、ルイズに使い魔の事を聞こうと思ったが、どう切り出すか悩むワルド。
 すでに色々予定が狂ってきているので、心の整理が必要だった。
 「あ~、ルイズ。君は使い魔は連れてきて居ないのかい?」
 とりあえず無難に質問してみた。

 「……、他の使い魔に食べられちゃったの……」
 うつむき加減で応えるルイズ。 ぱっと見、悲しくて俯いているようにも見える。
 その実、こんなことを言わされて不機嫌な顔を隠しているのだが。
 「そ、そうか……。残念だったね」
 話が途切れてあわてるワルド。
 「あ、そうそう、君の従者くんはどこらへんの貴族なのかな?」
 (え!?)とあせるルイズ。その設定は聞いてなかった。ロバ・アル・カイリエというのも
 おかしい気がする。
 「え、ええと……。聞いてない……の。あとでシロ…シェロに聞いてみるわ」
 いつぼろが出るか気が気じゃない。なるべく黙っておこうとルイズは思った。

 ………


802:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:18:51.04 eLlJWkxP
 ルイズの反応が急に無くなって、ワルドは手が打てなくなってきた。
 予定では、ルイズに使い魔の話を訊いて、そのあと婚約の話を切り出すつもりだったのだが。

 とりあえずワルドは現状を再確認する。

 ルイズが人間を召喚したという話は裏づけがまだ取れない。今聴いた話が事実なら、
 普通の使い魔を召喚したということだろうか…? 要再確認。

 ルイズは魔法を一度も使えなかったことは知っているが、今もそうなのだろうか?
 これも本人に確かめておかねばなるまい。

 以上2つの事柄により、今後のルイズとの接し方も変わる。
 ルイズが伝説の人物と同じ(虚無の使い手)ならば、できうる限り大切に扱わなければなるまいし、
 そうでなければ、他の任務を優先して動かねばならないだろう。
 そう、アンリエッタの手紙の奪取とアルビオン皇太子の暗殺である。

 今は様子見ということで、兎に角アルビオンの大陸を目指すことを最優先にしよう。

 ワルドのグリフォンは優秀といっても、タバサの操る竜ほどでスタミナがあるわけではない。
 グリフォンにはかなり負担をかけることになってしまう……
 祖国や知人を裏切るようなワルドでも、自分の愛馬(?)はやはりかわいいものなのだ。
 アルビオンへ着いたら、用意できる最高の餌と水を用意してやろうと決めたワルドである。

 ………

803:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:20:34.01 eLlJWkxP

 士郎はアルビオンが浮遊大陸であるということは聞いている。
 だから離陸前のキュルケとワルドのやり取りは大体理解していた。

 それでも実感していたわけではない。脳内の想像だけである。

 だから、こうして少しずつその風景が見えてきたとき、士郎の口は開きっぱなしになっていた。

 「で、でかい………………」

 島の下部は雲に覆われているが、全体の巨大な影は決して見逃せるものではない。

 島が浮いているのではなく、大陸が浮いている光景。こんなものが空を飛んでいる世界。
 地上に住んでいる人間は、おちおち生活していられないのではないかと思うのだが、
 この世界の住人には慣れっこになっているのか、あまり気にしていないようだ。

 「あれが、一定の軌道を周っているんだよな?」
 「あぁ、そうさ。僕も最初見たときは、かなり驚いたものだよ。」
 「ハルケギニアの大陸の上は通らないのか?」
 「たしかに近づくことはあるけど、上に来ることは無いみたいさ。
  そんなことになったら、普通に暮らしてなんか居られないよ」

 まぁ、そうだろう。海上でうろついてくれる分には実害はないんだろう。

 「いったんあそこに降りる」
 遠くに見える島をタバサが指し示した。

 島といっても無人島のようだ。どうやらアルビオンから落ちてきた土の塊のようである。
 草木も生えていない。

 あそこで息を整えてから、遠く高くそびえる大陸に羽ばたくつもりなのだろう。


804:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/05/01 03:25:30.09 eLlJWkxP
色々なことがあって、間がかなり空いてしまったことをお詫びします。

震災後、市販の小説を読んでも味気なく感じたのは、
現実と比べるとあまりにも薄っぺらく感じてしまうせいなのでしょう。

だいぶ調子が戻ったので、少しずつ書き溜めてまたアップしたいと思います。

…それにしても、書き込みしづらい現状は前よりひどくなっていますねーー;
数時間空けないと連続投稿できませんでした。

では、また。

805:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/02 23:02:22.90 ZMlk8A/W

お体に気を付けて執筆頑張って下さい

806:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/03 21:14:06.57 POs0OPK+
投下乙。
ワルド必死だなw

807:名無しさん@お腹いっぱい。
11/05/23 11:41:40.61 yXYODy2R
保守

808:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/06 00:17:53.39 Do3Uo+ul
再来週くらいまでには次のお話うpしたいと思ってます

最低でもアルビオン編までは終わらせますので、ご容赦を

809:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/06 09:52:41.71 g08h7CvF

何時までも待ってる

810:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:02:18.05 GHXApmeL
こん○○は。

1章とはいきませんでしたが、半分くらい書けたので、今からうpします。

連続うpだけど、書いた分は載せられるといいな…と。

811:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:04:57.63 GHXApmeL
第11章 接触

 一行がアルビオン大陸の名も知られていない小さな港町に着いたのは、夕暮れ間近の頃であった。

 すう勢は貴族側に傾いているので、貴族側の兵士が港の出入りを見張ってはいるが、
 あまりにも国外脱出の人数が多いので、とてもチェックしきれないでいた。
 その隙間をつくように、町にもぐりこめた一行である。

 「ええと、これからどうしよう。シ、シェロ?」
 呼びなれていない名前に噛んでしまうルイズ。
 「ん~、情報集めかな?でも、あんまり派手に動くと貴族軍に目を付けられそうだしなぁ」

 「この手の会話も聞かれないように気をつけたほうがいいね。
  情報集めの方は私が一人でしておこう」
 自分の活躍の場を見つけたワルド。
 もちろん『レコン・キスタ』として情報を味方から集めるつもりである。

 「え?伯爵一人で情報を集めに行くなんて危険よ!せめて、一人くらい一緒に……」
 事情を知らないルイズは止めようとする。
 「大丈夫だよ、僕のルイズ。こういうことは一人で動いた方が安全だし、
  情報も入りやすいんだ。君達は、宿と馬の手配の方をたのむよ」

───────────────

 「で、我が軍の密偵からの情報では、トリステインの使節が我が領内に入り込んだというのだな?」
 「はい。ニューカッスルを目指すそうです。いかがいたしましょうか?」
 「ふむ……。うまく泳がせてニューカッスルに潜り込めるようにしてやろう。
  王か皇太子の命でも盗れれば、あの城の陥落もぐんと早まるだろう……」

───────────────


812:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:07:38.85 GHXApmeL
 とある酒場の片隅に一向は集まっていた。

 「どこの宿も国外脱出の人達であふれていて、一部屋しか借りることができなかったわ……」
 ルイズはワルドにがっかりした様子で報告をする。
 「今の時期は仕方ない。泊まれる場所があることに感謝しよう」
 さして気にしないワルドである。
 「情報収集はうまくいったよ。この付近に王族側の兵士が潜伏しているとの情報を掴んだ。
  一時期貴族軍に捕まっていたが隙を見て逃げ出したということだ。
  その兵士と接触できれば、ニューカッスル城へ入ることができるはず」

 おぉ~、と一同が感嘆の声を漏らす。思わずどや顔になってしまうワルド。

 「じゃあ、宿屋の部屋でこれからの手順を確認しましょう」ルイズが言う。
 「その前に食事にしましょ。お腹がすいては闘うこともできないわよ」
 キュルケの提案にタバサがコクコクと頷く。
 「しようがないわねぇ。ねえ、なんか適当に料理や飲み物注文してきてよ」
 ルイズが士郎に言う。名前を呼ぶのはなるべく避けることにしたようだ。
 「あいよ」

 カウンターへ向かう士郎を見ながら、ワルドはルイズとの婚約話をいつ切り出せばいいか
 考えていた。

 ………

 宿屋で話し合う一行。

 「ここの港のはずれに、彼ら(王族軍兵士)が潜伏しているようだ。
  この情報は貴族側はまだ掴んでないらしいが、時間の問題だろう」
 「それじゃあ、急がないといけないわねぇ~」キュルケが意見を述べる。
 「うむ、明朝出発するつもりだ。準備は今夜中にしておいてくれ」
 「(わかったわ)(了~解)(コク)(任せておいてくれ)(はい)」
 五者五様といった感じで、応じる一行。


813:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:09:42.81 GHXApmeL

 「あ~、それとルイズとシェロ君に話したいことがあるんだがいいかね?」
 「え?なに?」
 「ちょっと3人だけで話したいのだが……」 他のメンバーに目配せするワルド。
 (ふ~ん)となにやらにやけた顔のキュルケ。
 「わかったわ」と、タバサとギーシュを連れてさっさと部屋を後にする。

 他の人間がいなくなったのを見計らい、ワルドはルイズに話しかける。

 「……率直に聞こう。シェロ君はルイズの恋人なのかい?」

 「え?……え───っ!?」一瞬何を言われたか解らず、反応が遅れるルイズ。

 「そっ、そんなわけないでしょっ!! シ、シロ、シェロはわた、わたしの従者なだけよ!」
 顔を真っ赤にして反論する。

 「そうか、それを聞いて少し安心したよ。かなり永い間会わなかったから、
  僕のルイズが他の人のものになってしまってたらどうしようとそればかり考えてた」
 「お、大げさなのよ。ワルド様は…」

 「で、従者のキミは本当にただの従者ってことでいいのかな?」
 「えぇ、俺は単なるルイズのサーヴァントですから」
 微妙なニュアンスが含まれているのだが、それはルイズと士郎にしか読み取れなかった。

 ワルドは切り出すのは今だとばかりに、
 「ルイズ……。この旅が終わったら、僕と結婚式を挙げて欲しい。」


814:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:11:58.54 GHXApmeL

 「けっ、けけけっ、決行式!?」
 「ああ、結婚式だ」 ルイズの言い間違いはもちろんスルー。
 「そんな、無理よ。私、そんな……」
 「僕は本気だよ。旅が終わったら返事を聞かせてもらえればいい。それまで考えてくれないか?」

 「…………、うん。考えてみるわ」
 「従者君、この事をしばらく、皆に内緒にしておいてくれるかな?」
 「え?あ、そうですね。考えておきます…」
 目の前の突然の成り行きに、目が点の士郎。ワルドがプロポーズするとは思わなかった。

 場の流れは完全にワルドペースになった。

 「そういえば、ルイズ。会わない間に魔法の方は使えるようになったかい?」
 「!!!」 ルイズは士郎に、眼で助けを求めてしまう。
 「あ~、ルイズは魔法使えますよ…」
 「!! なに! それは本当かっ!!」ワルドが慌てて問いただす。

 「そ、そうよ。か、彼は、私の魔法の先生でもあるの」
 「僕に(魔法を)見せてもらえないか? 君の成長をぜひこの眼で確かめたい」

 「機会があったらということで。 今は、明日の準備を先に済ませましょう」
 士郎がそう言って話を引き取る。

 「う、うむ。そうだな。 ……ちなみに、ルイズの系統はなんだったのかい?」
 「『火』よ!」「『風』です」 ルイズと士郎が同時に答える。
 互いに眼を合わせるルイズと士郎。
 「『風』よ!」「『火』でした」 また同時に答えるルイズと士郎。

 「………」 三人の間に訪れる沈黙。

 ワルドは、
 「まぁ、実際見ればわかるから、それまで楽しみにしておこう」
 と、部屋を出て行った。


815:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/06/18 02:14:29.73 GHXApmeL
とりあえず、ここまでで。
11章の残りは出来上がり次第うpしますね。

…やたらとワルドの話になってしまいました。
まぁ主人公だからしかたないよね。

ではノシ

816:マグマ・フレイム
11/06/19 01:08:35.84 NPHoYJQC
 どうも始めまして、FATEは結構好きですよ~♪ やはりクラウン・クラウンと言う方のFATE二次小説は最高です★

 っとこのゼロ魔×FATEでは関係ないので割合させて貰いまして。

 レーヴァテイン Laevatain 北欧神話
 北欧神話、9つの鍵で封印された災いの剣。スルトが振るった炎の剣と同一視される。

 これなら炎を打てます。 無論、士郎ならその剣は既に見ているでしょう。

 リットゥ (マルドゥックの炎の剣)
バビロニアの神話伝承。マルドゥク、マルドゥーク神の炎の剣だという。
 
劈風刀(へきふうとう)(『水滸伝』) - 方臘配下の将軍石宝の持つ宝刀。三重の鎧であろうと風を断つがごとく斬り破る鋭さを持つ。

817:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/19 06:37:20.87 JdKjmJL+
士郎の人乙
翌日イベントはどうなるのやら

818:名無しさん@お腹いっぱい。
11/06/19 17:52:09.27 CCQ+UaGl
士郎の人乙
そしてワルドも色々な意味で乙w

819:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/07 00:02:12.13 /Tilb9wc
うう、全然次が出来上がらない。

とりあえず保守です(つд⊂)

820:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/07 07:08:08.21 F1BHVZ/p
まぁ、じっくり考えてくだされ

821:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/15 11:22:43.74 QX+gLgBB
保守ですよ

822:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/22 22:56:14.54 /f/S1zOQ
ふぅ、やっとでけた。
今晩か明晩にあげる予定です。

それにしても、ヤマグチノボル先生の方がいろいろ大変なようですね…
自分なんか何もできないので、祈るくらいになってしまいますが。
回復をお祈り申し上げます。

では、また。

823:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:06:24.79 olZN03rO

 部屋を出たワルド。一気に脱力する。
 (ルイズが魔法を使えるようになったと聞いたときには、心底焦った……
  でも、あの様子だと魔法を使えること自体、事実かわからない。
  系統不明の魔法だとすれば、『虚無』の可能性はまだあるしな)
 とりあえずは、明日の行動の準備をすることを優先することにしたワルドであった。

 ………

 「ねぇ、シロウ………」
 ものすごく冷めた声のルイズ。
 「な、なんだ。ルイズ」

 「私怒っているのよ……」
 「何にかな?……」

 「≪無断で!勝手に!いろいろ!決めていたことによっ!!≫」

 ルイズの怒りが爆発した。先ほどのプロポーズも含め、ストレスが溜まっていたのだろう。
 さすがに「バカ犬~!!」と怒鳴って鞭を振り下ろすようなことはないが、
 藁が詰まった枕を士郎に投げつけた。

 「ご、ごめん。謝るから…、許してくれ」

 「なんで!なんで私に黙って色んなこと決めちゃうのよっ!!」

 「い、いや、他意はないんだけど……」
 嘘である。 実は士郎はルイズにはある事実を隠している。



824:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:08:40.04 olZN03rO
───────────────
アルビオン出発前日~学院~マザリーニ居室

 <こんこん>

 「誰だ?」
 「枢機卿、学院の教師が面会を求めてきておりますが……」

 (やれやれ、王女の気まぐれ逗留は学院にはさぞ迷惑だっただろうから、
  要望とか出されるようであれば、ある程度受諾せねばなるまい……)

 「こちらへお通ししろ」
 「はっ」

 ………

 「夜分に申し訳ありません。私はここで教師をしておりますコルベールと申すものです」
 「そちらのお連れの方は?」

 「衛宮士郎といいます。えっと、ルイズ・フランソワーズの従者です」
 士郎は一番無難そうな肩書きで名乗る。

 「フランソワーズ……。ああ、王女の古くからのご友人ですな。で、なにか?」

 「実はさっきまで、ルイズの部屋に王女が来て…いや、いらしてたんですが、
  俺の主人に頼み事をしてきたんですよ……」
 「ふむ、どのような事をかな?」
 「アルビオンまで行って、皇太子から手紙を取り戻して欲しいとか……」
 士郎は詳細を語った。

 「やれやれ、まったく王女もしょうがない人だ……」
 マザリーニは額に手をやり、眉間にしわを寄せ難しい顔をした。

 「悪いが王女の希望通り、手紙とやらを取りに向かってもらえないだろうか?」
 「あ、はい。そうしていいんでしたら」

 「うむ、頼む。
  ……そうだな、王女なら誰か近衛の者を君たちの任務に付けるかもしれない」
 マザリーニは鋭い目付きで士郎を見ながら、
 「実は近衛の中に、スパイがいるかもしれんのだ。
  以前からスパイ疑惑があったのだが、最近になってその人物が絞られてきた。
  それなので、君たちに同行する者がいたとして、それが近衛兵だとしても
  油断をしないでもらいたいのだ」

 士郎とコルベールは衝撃の事実に目を丸くした。
 マザリーニは続ける。

 「できれば、君たちが信頼の置ける同行者を探して、協力して旅立ってもらいたい。
  そのほうが、安全だと思う。
  資金は些少だが私のポケットマネーから出そう」

 「わかりました。2名ほど心当たりがあるので明朝声をかけてみますよ」
 「うむ、頼む。 まぁ恋文程度なら、
  もみ消すのは難しいことではないから、自分たちの安全を第一に考えてもよいからな」

───────────────


825:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:10:51.79 olZN03rO

 そんなやりとりがあったことはルイズには言えない。
 正直ルイズには腹芸は向いてない。(士郎も人のことは言えないが……)

 この旅の間にワルドが見せた反応はどう見ても怪しい。
 先ほどのプロポーズも、何かの企みではないかと思えてしまうのだ。
 だから士郎はルイズにこう言った。
 「ルイズ、頼みがあるっ!」
 「えっ!? な、何よっ!?」
 「さっきのワルドのプロポーズを断ってくれないか……」

 (どきっ) ルイズは思わず顔を赤らめる。
 (そ、それってヤキモチを焼いたのかな?)

 「い、いいけど……。どの道、今はプロポーズなんて受けている暇はないものね……」

 「ありがとう。助かるよ」

 「後で機会を見てワルドには断りを入れておくから。とりあえず明日の準備を急ぎましょ」
 「あぁ、とりあえず何が必要かな……」

 ………

 早朝

 ワルドを先頭に薄暗い中、一行は港街のはずれに向かっていた。
 時々、街中に巡回の兵士が見て取れたが、とりあえず気づかれることはなかった。

 「あそこだ」
 ワルドが一軒の小屋を指さす。
 「僕が先にあの小屋にいる人物と接触してみる。君たちはここで待機していて欲しい。
  10分以上戻らない場合や小屋で騒ぎが起きた場合は一目散に逃げてくれ。
  いいかい?」

 「いやよ、その時は助けに向かうわ」と、ルイズが言う。
 「僕のルイズ。その気持ちは嬉しいが、今は任務を優先しないとダメだ。いいね」

 そう言うとワルドは、小屋へさっさと向かっていった。

 ワルドが扉をノックする。中から聞こえた声となにやらやりとりをする。
 扉が開きワルドは中に滑り込む。
 ルイズは食い入るように小屋を見ている。

 その間、キュルケ・タバサ・士郎は周りの警戒を怠らない。
 ギーシュも警戒をしているように見えるが、無意味にあちこちを振り返るばかりで
 かえって素振りが怪しく見える。
 キュルケに頭を叩かれる。

 「アンタ、もっと落ち着きなさいよ! こっちの気が散ってしょうがないわ」
 「叩いたね。オヤジにも叩かれたことがないのにぃ!w」

 その口ぶりにイラッとした士郎は、ギーシュの頭に拳骨を食らわすのであった。

 ………

826:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:13:02.25 olZN03rO

 5分ほどしてワルドが扉から顔を出し、皆に手招きをする。
 素早く、そして用心深く一項は小屋へ入る。

 はたして、そこには一人の軍人らしき人物がいた。

 「紹介しよう。彼は王軍側の兵士で、名はエイブ。 こっちが我々の仲間だ」
 ワルドは互いに紹介をする。
 「よろしく。俺はエイブ。 正当なアルビオン軍人だ。
  最近まで貴族軍に身柄をされていてね、なんとか逃げ出してこれから王族軍に戻るつもりだ」

 ワルドが後を引き取る。
 「そこで我々が彼に協力する。ついでに王族軍へ接触するという算段だ」

 手順は単純。船を一隻借り上げて、出航するだけ。
 後は、アルビオンの下あたりを貴族側に見つからないように飛行していれば
 向こうから接触してくるだろうということだった。

 「なんだ、簡単じゃぁないか」 ギーシュが意見を述べる。
 「ねぇ、その船ってどうやって借りるつもりなの? クルーは?」 ルイズが尋ねる。

 「まぁ普通に金を払って1隻借りれれば一番問題はないんだが」
 ワルドはにやりと笑い、
 「それが無理だとしても大丈夫だ。こう見えて私はかなり腕は立つ……」

 力ずくも辞さないようだ。

 と言っても、キュルケもタバサも荒事に対しては特に抵抗感はないようなので、
 嫌な顔をしたのはルイズとギーシュ位だった。
 (士郎は最初から諦めている)


827:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/23 04:17:47.16 olZN03rO
以上が11章後半です。

うpにあたり、時間が空いてすいません。
あと、切った張ったの描写が少なかったり、色々不満点あると思いますが、
目をつぶってください。

ちなみに今回出たエイブは100%オリキャラのつもりなんですが、
何かとかぶっていても他人ですから気にしないでください。

では、12章を早めにうpできるよう頑張ります。ノシ

828:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/23 17:17:11.14 Zi/N0ywu
乙です
次回も楽しみにしてます

829:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/07/26 21:48:19.02 N5U4IQN0
…身柄をされるってなんだ。
「最近まで貴族軍に身柄を拘束されていてね」
が正しいです。

んも~

830:名無しさん@お腹いっぱい。
11/07/29 08:05:06.09 AFF8hsu9
投下乙


831:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/07 01:15:00.68 mRNF60C2
乙です
普通に「身柄を拘束されて~」って読んでたw
そして「んも~」が可愛いwww

832:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:29:33.63 ydwYlZPS
こっそり投下

833:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:31:36.67 ydwYlZPS
第12章 試合

 「ということで、君と戦うことにしたから……」
 突然のワルドの宣告。

 ここは先程の脱走した兵士がいた隠れ家近くの森の中。
 ワルドに連れ出された士郎。 他のメンバーは隠れ家に待機している。

 士郎は「へ?」と気の抜けた返事をした。

 「な、なんでですか?」
 「おいおい、今までの話を聞いてなかったのかい?
  さっき、ルイズが僕のところへ来て、
  『あなたのプロポーズを断りに来たの。だって、士郎が断れって言うんだもの』
  って言ってきた。 これは君からの宣戦布告なんだろう?」

 「いやいや、今から王族軍へ接触しようってこんな時に決闘なんて、正気ですか?」

 「こんな時だからだよ。この機会を逃せば次に君と雌雄を決する機会が来るとは限らない。
  安心したまえ、もし君が倒れても、ちゃんと船には運んであげるから……さッ!」

 ワルドは言いつつものすごい勢いで突っ込んでくる。

 士郎は距離を取ろうとバックステップを踏みつつ、デルフリンガーを抜き構える。

 <ぎんっ!!>
 ワルドの杖とデルフが交差し火花を上げる。鍔迫り合いの状態のままワルドが問う。
 「君は、魔法を使わないのかい?」

 「魔法よりこっちの方が得意なんすよっ!!」と士郎はデルフを押し込む。

 「ふむ!そうかい!でも、こっちは遠慮なく魔法を使わせてもらうよ!」

 ワルドはバックステップを踏み、少し距離をとった。だがすぐさま連撃に移る。

 「魔法衛士隊のメイジはただ魔法を唱えるのではない!
  詠唱さえ戦闘に特化されている!構え、受け、突きなどの動作の中にも詠唱が行われる!
  杖を剣としつつも!魔法を発動できるのさ!」

 ご丁寧に説明してくれるワルド。そして呪文を詠唱した。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 デルフが警告を発する。
 「相棒!くるぜ!」

 空気の塊が士郎を横殴りに弾き飛ばす。10メイルは飛ばされただろうか。
 だが、士郎はなんとか空中で体制を整え無事に受身を取る。そして剣を構えた。

 「ほほぅ。この程度の魔法は君には通じないかな……。
  だが、杖を持たないメイジなど僕の敵たりえない。それを証明しよう。

  デル・ウィンデ!」

 不可視の刃『エア・カッター』が士郎に襲いかかる。

 士郎は見えないながらも気配から『エア・カッター』を両断しようと剣を振るう。

 「無駄だよ、シェロ君。 その程度の迎撃で僕の『エア・カッター』は受けきれない!」


834:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:34:22.25 ydwYlZPS
 
 その通りであった。
 手応えからみるに士郎は『エア・カッター』を両断することには成功したようだ。
 が、その魔法の勢いはそれで消しきれず、士郎の二の腕に傷を負わせた。

 「僕はこうして、『エア・カッター』だけを唱え続けるだけで君を倒せるのさ…。
  デル・ウィンデ! デル・ウィンデ!! デル・ウィンデ!!!」

 こうなると士郎は防戦一方である。デルフを盾がわりにして左右に避け続けるしかない。
 それでも『エア・カッター』を確実に避けれるわけでもなく細かい傷を負っていく士郎。

 ましてや、ワルドの魔法を避けるためには大きく横っ飛びするくらいしか方法がない。
 ワルドの魔法による精神力の消耗より、士郎の体力の消耗がどう見ても早い……



 ……かに見えた。

 何度か左右に避けていた士郎だが、なぜか最初のように『エア・カッター』を両断する方法に
 変えた。

 「ほほう、なにか意図でもあるのかい?
  でもその方法では、『エア・カッター』の威力は消しきれないことは証明済みだろう」

 その後、3度(たび)ワルドは『エア・カッター』を詠唱した。
 だがよく見ると、士郎が今以上の傷を負うような気配がない。

 「何?……」

 「もう無駄ですよ。その攻撃は見切った……」

 「何…だと…」

 再度『エア・カッター』を唱えるワルド。だが士郎の剣のひと振りで消え失せる魔法。
 士郎がなにか魔法を使っているのか、それとも純粋な剣技によってなのか、
 もはや『エア・カッター』が士郎に届くことはなかった。

 「そろそろやめません?」 士郎が尋ねるが、
 「まだだっ!!」 ムキになったワルドが応える。
 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」

 士郎を最初に吹き飛ばした魔法の詠唱だ。
 士郎はワルドの動きをつぶさに見て、おおよその魔法の方向を見極める。「左だっ!!」
 
 魔法の発動と同時に、デルフがその魔法のただ中に突き出される。

 「なっ!!」 ワルドが声を上げる。
 たったのひと突きで、魔法が掻き消えてしまった。

 「僕の魔法をこうもあっさり破るとは……いったい、何をしたんだい?」
 「それは秘密ですよ」
 士郎はにやりと笑う。


835:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:37:08.55 ydwYlZPS

 「……ふん、じゃあ次の魔法で最後としよう……」

 呪文を唱え始めるワルド。『ライトニング・クラウド』の呪文である。
 ワルドの頭上の空気が冷え始めた。ひんやりとした空気が士郎にも伝わってくる。

 士郎は慎重にワルドの出方を見る。

 「相棒!くるぞ!!」

 空気が震え、パチンと音がすると同時に、稲妻が士郎とデルフめがけて飛んでくる。

 稲妻はデルフを直撃し、士郎は後方に跳ね飛ばされた……

 ………

 (少々本気になってしまった……)
 ワルドは士郎の方へと歩いていく。

 「す、すまない。ここまでやるつもりはなかったのだ……」
 ひょっとして死んでしまったのでは、と思いながらも士郎に声をかける。


 「……痛てて。ちょっとシャレになんないんじゃないですか?」
 不満げな声で士郎が応えた。地面に大の字になったままだが。

 (!!!。馬鹿な!!またしても無傷だとっ!!)

 「お~い、相棒~。大丈夫かぁ~?」
 「!!!」ワルドは慌てて声の出どころを探す。驚くことに剣がしゃべっているようだ。

 「シ、シェロ君、これはインテリジェンスソードかい?」

 「よぉ、魔法使いの旦那。俺様の名前はデルフリンガー。気軽にデルフって呼んでくれな」

 「ああ、そういうことか。僕の魔法をことごとく破ったのはこの剣のせいだな」
 起き上がった士郎がそれに答えた。
 「そういうことです。俺も今さっき、そんな芸当ができることを知ったんですけどね」

 士郎は歩いてきてデルフを拾い上げると、鞘に戻し背負う。
 「もうこの辺でいいでしょう?」

 さすがにワルドもこれ以上の戦闘を行おうとは思わなかった。
 「いや、悪かったね。でもルイズに変なことを吹き込む君も悪いんだ」

 「ああ、そのことですか。いや、プロポーズはせめてこの任務が完全に終わってからに
  してくれれば、こちらもとやかく言わないですよ」

 「まぁ、それは君の言い分の方が正しいか……。 では、さっさとその任務を果たしに行こう」
 ワルドはすたすたと歩いていってしまった。


836:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:39:12.93 ydwYlZPS

 ワルドは帰り際思った。
 (魔法が通じない相手か……。こいつは少々厄介だな。
  これからの“私の”任務に邪魔になる可能性があるな……)

 士郎も思う。
 (魔法衛士隊隊長の腕は伊達じゃない。スパイがワルドだとしたら、無傷じゃすまない。
  いや、王軍が壊滅させられることもあるかもしれない…。どうすれば……)

 互いに相手の腹の探りあいになる。
 だが士郎は正直、陰謀戦などには向いていない。
 キュルケあたりと相談して対応を決めようかと士郎は考えた。


837:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/07 03:49:55.11 ydwYlZPS
以上です。

夏休みシーズンなので、自分が巡回しているやる夫スレがお休み中
安西先生、早く続きが読みたいです。

>>831
“んも~”は植田まさし先生の漫画のセリフです^^

ヤマグチノボル先生の手術は無事終えられたようで一安心
経過も順調であればとてもうれしいですね


さて、今回は2巻5章に当たる部分です。
さすがに戦闘シーンが少なすぎって感じがしたので入れてみました



では、また次の章で……

838:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 04:57:41.76 JCFss+O/
投下乙

839:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 19:02:54.79 HBrGEoIl
ルイズなんつーことをw

投下乙ですb

840:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/08 22:01:32.40 0kUXkiw9
シロウの人乙

841:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 14:52:33.11 JtKXdNpD
見直ししたので投下します

842:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 14:55:50.74 JtKXdNpD
第13章 空軍

 「ところで、お前どのくらいまで過去のこと思い出したんだ?」
 「なんでぇ、藪から棒に」

 ワルドと一戦交えた帰りの、森の中での士郎とデルフの会話である。

 「別に藪から棒でもないだろうが。お前の能力次第で、俺の戦う方法も左右されるだろ」
 「なるほど……。悪りぃな、そんなに思い出したことはねぇや。
  魔法を吸収できるってことは思い出したんだけどなぁ」

 「ふ~ん。お前、魔法を吸収し続けるとレベルアップするとかしたりはしないのか?」
 「いや、そんなことすると寧ろ壊れちまわぁ。限界ってモンがあらぁな」
 「ということは、吸収する回数は有限なのか」
 「時間を置けば、その回数も元に戻るけどな」
 「どういうことだ?」
 「吸収した魔法は少しずつ消化されていくからな。人間の腹ン中と一緒さ」

 「なるほどね。じゃあ魔法は何回分くらい吸収できるんだ?………………」

 ………

 「ただいま」
 扉を開けてワルドが戻ってきた。 一人で、である。

 「ワルド、私の従者は?」
 「彼ならじきに来るよ」
 「そう」

 ワルドは小屋へもどる道すがらシェロ対策を練った。
 結論として、1対1に持ち込めば何とでもなると思われたので、
 そのシチュエーションをつくることに尽力すべきだと決める。
 ただ、この大人数のパーティをばらけさせるのは容易ではなさそうだ……。

 「ただいまぁ」 士郎もしばらくして帰ってきた。
 「遅いっ!!」 ルイズが怒鳴る。
 「ごめん。……じゃあ時間がもったいないから、早速出発」
 「…ったく、じゃあワルド、あなたが用意したっていう船にみんなを案内してよ」

 「そうだね。では、なるべく目立たないようにみんな付いてきてくれ」

 ………

843:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:02:01.15 JtKXdNpD

 無事、誰も欠けることなく一行は港へ停泊している船へとたどり着いた。
 船といっても、それほど大きなものではない。寧ろ、小型船といったほうがいいだろう。
 ワルドがポケットマネーで借り上げた船だ。
 積荷はグリフォンとドラゴンが1頭ずつだけなので、小型船でも問題はない。

 「へへっ、お待ちしてましたぜ、旦那」
 船長らしき人物がワルドに話しかけてきた。

 「で、旦那方はどちらの国に亡命しようとしてらっしゃるんで?」
 どうやら船長は、一行がアルビオンから国外逃亡を図っていると思っているようだ。

 「ああ、そこはまだ特に決めてないんだよ。すまないね」
 ワルドはいけしゃあしゃあと返答する。
 「そうですかい。ところですぐに出立でよろしいんですよね?」

 「ああ、針路の方は彼の指示に従ってもらいたいんだ。そこらへんは全て任せているんだ」
 と、脱走兵(エイブ)を指し示す。

 わかりやした。と船長が返事をして出発の準備に取り掛かる。

 ………

 船が発進し、クルーはそれぞれ持ち場に従いて仕事をしている。
 エイブが船長に針路を指示している間、一行は甲板の上で周囲を警戒していた。

 とりあえずは何事も無く港を離れることができたが、いつ貴族軍に見つかるかわからない。

 エイブが示す針路はなぜか大陸の真下を目指していた。

 「この進路で本当にいいんですかい?」
 船長がたまらず尋ねるが、問題ないとエイブは返答。

 浮遊しているアルビオン大陸は、下の部分は常に雲に覆われている。
 その雲の下を潜り込むようにして船は進んでいく。

 ………

 アルビオンの下に潜り込んでから10分くらい経っただろうか。
 「上の雲の中に何かいるみたいよ……」
 キュルケが何かを発見する。

 「ありゃ、軍船ですぜ。……あの旗は、劣勢の王軍のようですが」
 船長が望遠鏡を使い、雲の中から現れた船に掲げられた軍旗を確認する。
 「どうしやす?」

 「あぁこのまま停船してもらっていいかな。実は我々はあの船に用があったのだ」
 「へ? そうなんですか? まぁ今の雇い主はあんた方だから従いやすが……」
 不振な目で船長はワルド達を見る。 それはそだろう、戦争中の軍に接触するなど
 下手したら何か酷いことに巻き込まれかねないのだから。

 相手の船から停船命令がなされた。既に停船しているので相手の接触待ちである。

 ………


844:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:10:32.08 JtKXdNpD

 「我らはアルビオン王立空軍、本国艦隊である。
  貴様たちの身分と、何故このような場所を航行しているのかを述べよ」
 接舷後に乗り込んできた兵士が船長に向かって問う。

 「あっしらはこちらの方々に雇われまして、その、単なる、輸送中なだけでさぁ」
 「輸送中だと? 怪しいな。 このような場所にいる理由がわからんぞ」
 亡命船であれば、たしかにこのような航路を取る必要がないから当然である。

 そこで脱走兵のエイブが口をはさむ。
 「自分は王立空軍兵士のエイブであります。貴族どもに捕らえられておりましたが、
  なんとか脱走して、王立空軍の一員としてまた戦うべく、こうしてやって来たのであります」

 「我が軍の所属だと? 階級と名前を述べ、身分を証明するものを提示せよ」
 「了解であります」
 軍人同士のやりとりが行われる。他のメンバーはそのやり取りを見守る。

 ………

 「よし、貴官の身分は分かった。そして、他はどのような者たちだ?」
 「彼らはトリステインからの使者であります。縁あってこうして同行することになりました」
 「トリステインの使者だと!」
 突然の成り行きに驚く兵士。自分では判断がつけられぬとみて上司に報告を仰ぐことにした。
 「よし、しばし待たれよ。 上の者に報告してくるのでな」

 ………

 しばらくして、数人の人間が軍船から乗り込んできた。
 先頭に立ってやってきた身分の高そうな人間が口を開く。

 「ようこそ、トリステインの方々。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーです」

 慌ててルイズが前に出る。 

 「わ、私はトリステインの姫殿下、アンリエッタ様の使者としてやってきました
  ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールで、こっちは共の者です」
 「ようこそ、ルイズ」

 士郎から見たウェールズの第一印象は、雰囲気がたしかに王族っぽいなというものだった。
 それにしても、皇太子ほどの者がこのような危険な場所にいてもいいものなのか心配だった。
 それはルイズにしても同じだったらしい。こう尋ねた。
 「あの、失礼ですが本物の皇太子さまなんでしょうか?」

 「あはは、こんなとこにうろついていては無理もないな。
  う~ん、そうだ、証拠をお見せしましょう」

 と、皇太子はルイズの指に光るルビーを見つめて言った。
 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。
 2つの宝石は共鳴しあい、虹色の光を振りまいた。

 「この宝石は、アルビオン王家に伝わる風のルビーだ。きみが嵌めているのは、
  アンリエッタが嵌めていた、水のルビーだ。そうだね?」

845:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:14:05.63 JtKXdNpD

 ルイズは頷いた。

 「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」

 皇太子がなんか言っているが士郎には聞こえていなかった。アンリエッタ王女は
 今ルイズがしている指輪を「お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」とか
 言って渡していた。 慌ててたとかうっかりのレベルで済む問題ではなかろう。
 無事に戻ったら、一言言わないではいられない。

 「まぁとりあえずは君たちも我々と共に城に戻ろう。こちらの船も随伴するのかね?」

 「いえ、この船はアルビオンの港で借り受けただけですので、ここでお別れしようと思ってます」
 ルイズがそう返答すると、皇太子は部下に向かって
 「おい、この船長にお礼をいくらか渡しておいてくれ」と指示をする。

 「では、皆さん、我が軍の船へいらしてください」

 ………

 アルビオン王立空軍の軍船に乗った一行。先程まで乗っていた船は港へと戻っていった。
 ちなみに小型船の船長は、結構な報酬をもらってホクホク顔だった。

 一行は軍船の中の広い部屋へ案内された。会議室兼食堂の部屋だろう。

 「この船の本日の哨戒任務は終了しましたので、既に城へ向かっております。
  じきに到着しますので、しばらくはここでお待ちください」
 そう、兵士の一人に告げられる。

 「あの、甲板に出てもいいですか?」 士郎が尋ねる。

 「そうですね、我々の邪魔にならなければ問題ないと思います」

 兵士の許可をもらい士郎は甲板へと向かう。
 「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
 ルイズが後からついてくる。

 「どうした?ルイズ」
 「べ、別になんでもないわよ。
  ただアンタはご主人様を放っておいて勝手にどこかに行くなんて許さないんだから」
 (意訳:士郎と一緒にいたい)ってことです。

846:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:19:26.87 JtKXdNpD

 士郎はルイズを伴い、甲板に出る。

 甲板上では多くのクルーが持ち場で周囲を見張っていた。
 それはそうだろう。すでに船は雲の中を進んでおり、辺りはねずみ色一色なのだから。

 「右舷5度に目標C4」
  「右舷5度に目標C4」
   「右舷5度に目標C4」
 クルー同士で伝言が伝わっていく。
 そして船が方向を変える。見事な統率である。

 「どうだい? 我が軍の凄さが分かってもらえたかい?」
 いつの間にかそばにウェールズ皇太子がやってきていた。

 「えぇ、見事なもんですね。 何も見えない雲の中を楽々と進むなんて」
 士郎は正直な思いを告げた。それにしても、なぜ雲の中を進むのだろう。士郎が尋ねると

 「ああ、城の上は敵が見張ってて降りるのも容易じゃないんだ。
  だから、城の地下、大陸の地下から潜り込まないといけないんだよ」

 船の周りはついに真っ暗になった。太陽光も届かない場所になったからだ。
 それでも難なく船は進む。測量と魔法の明かりだけで航行しているのだ。

 大陸の裏側に300メイルほどの穴が現れた。そして船はそこに飛び込んでいく。

 「僕はこの瞬間がたまらなく好きなんだ。冒険心をくすぐられるからね」

 「なんか空賊っぽいですね」 士郎が言うと、
 「わかるかい? そうなんだよ!」 と皇太子は返事をした。

 「いっそのこと、空賊に転職したらいかがです?」
 その士郎の言葉に、

 「空賊……、空賊か!! こいつはいい!!!
  城に戻ったら早速提案してみよう!!」

 と冗談ともとれない感じで皇太子は満面の笑みで答えた。

847:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/21 15:27:59.91 JtKXdNpD
以上です。

…キュルケもタバサもギーシュも全然活躍してない。
ファンの人にはごめんなさい

で、とりあえず現状を再確認

現在、士郎はシェロと言う偽名で白髪で学院の服を着ています
キュルケとギーシュは使い魔は連れておりません
士郎たちは、ワルドを怪しんでおりますが、裏切っている証拠を持っているわけではないです
ルイズだけは、ワルドが怪しいという情報を持っていません

ワルドはルイズが虚無の魔法使いだと考えていますが、こちらも証拠がありません

時間軸的に原作より早く進んでおり、ニューカッスルは陥落までまだ余裕があります
フーケさんはレコンキスタに捕まっていない模様です

ということで、ノシ

848:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/22 01:00:52.49 2Hi3UYB0

毎回楽しみにしてるよ!

849:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/26 12:14:34.46 F8vVRlKc
テス

850:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:31:31.59 Oflo42N4
ふぅ、一通り見直し終了。
まだ誤字脱字ありそうだけど、投下してみますのです。

851:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:33:33.92 Oflo42N4
第14章 謁見

 一行が城に到着したその夜にささやかながらパーティが開かれた。

 「皆、今宵はこれからの戦いへの英気を養うのと、
   トリステインから来た方たちの歓迎、
   そしてこれから送り出す我らが家族のしばしの別れを惜しむための
   合同パーティである。

   大いに飲み、食べ、笑い、泣き、楽しんでもらいたい!!!」

 ………

 壇上のウェールズの姿を見ながら、ルイズは士郎に尋ねた。
 「家族を送り出すって、戦時だから避難させるってことかしら?」
 「そうじゃないか? 女性や子供の姿が見えるから」
 「どの国へ避難させるのかしら……」

 「トリステインで受け入れたいってこと?」
 キュルケが口をはさむ。
 「えぇ、できればそうしたいわ」
 「といっても、姫殿下に許可とか得てるわけじゃないだろう」
 ギーシュが質問する。
 「でも、姫殿下も同じ気持ちだと思うわ」 ルイズが反論する。
 ここでワルドが、
 「じゃあ、使いを出してみればいいんじゃないか?
  ええと、タバサ君だっけ? 彼女の竜が一番早く飛べそうだけどね」
 「断る。かなり疲労しているから」 タバサの返事はそっけない。

 「そうか……。僕のグリフォンを使って連絡を取ってもいいけど……」
 「まぁそれはきちんと謁見して、話を伺ってから決めましょう」

 ………

 戦時下のため、お世辞にも豪勢とは言えないが、それでも気持ちのこもった料理が並んだ。

 一行はそれぞれパーティを楽しんでいた。
 タバサは黙々と食べ物を口に運ぶ。
 キュルケはいろんな人たちと談笑し、華を振りまいていた。
 ギーシュの周りにもそれなりに輪ができていた。どうやら、魔法瓶の売り込みをしているようだ。

 ルイズも作り笑いながら、うまく他の人と語らっていた。

 ワルドは、壁に背をあずけて何かを考えているようだった。

 そんなワルドを横目に見ながら、士郎はウェールズと話をしている。
 「どうだい? 楽しんでもらえてるかな?」
 「あ、はい。 まぁ楽しんでますよ」
 「おや、君はお酒は飲まないのかな?」
 「あんまり飲めないんですよ。 でも、この紅茶は美味しいですね」
 「アルビオンの水で淹れたお茶は美味しいんだよ。どんどん飲んでくれて結構だから」
 「いや、そんなには…」
 と、苦笑する士郎。


852:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:35:41.04 Oflo42N4

 「まぁ、それもそうか」と、ウェールズは去ろうとする。

 「あ、皇子。なんか落としましたよ」
 と、士郎はしゃがみこんで紙を拾い上げた。手紙のようだ。
 「ん?これは……。 やぁすまないね。ありがとう」
 手紙を受け取るウェールズ。

 「それじゃあ、後ほどまた会おう」

 ………

 パーティも終わり、一行は王に呼ばれ謁見室と思われる場所に呼ばれた。

 玉座についているのはアルビオン王であるジェームズ1世。
 ウェールズは玉座の前にある段の下で、皆の方を向き立っている。
 一行の顔を見回して王が述べる。
 「遠路はるばる、よく来ていただいた。 トリステインの姫殿下が遣わした使節の方々。
  先に謝っておこう。 本来なら先に謁見を済まして、パーティを開くべきだったのだが、
  我が兵たちの家族はこれから脱出の準備に取り掛からねばならぬ関係で、
  このような順番に相成った。 申し訳ない」

 一行の代表であるルイズが応える。
 「いえ、過分のお言葉、痛み入ります」

 ウェールズが引き継ぐ。
 「では、使者殿の用向きを伺うとしようか」

 「え~、すいません。皇太子殿下。お人払いをお願いできますでしょうか?」
 「ふむ、2人きりで話がしたいと……?」
 「できることでしたら、お願いします」

 だが、ワルドが
 「いや、ルイズ。ここで話してしまったほうがいい」
 と、ルイズに囁いた。
 「え? でも……」
 「ここは正式な謁見の場だ。 内密にするかどうかの判断は彼らがしなければならないと思う」
 「…………、そうね。 わかった」

 ルイズは再度言い直す。
 「ウェールズ皇太子殿下、実はアンリエッタ姫殿下から一つの下命を受けました。
  姫殿下から皇太子殿下に送られた手紙を受け取りに参ったのです」
 「……なるほど。相分かった。理由は皆まで言わないでも理解した。アンリエッタらしい」

 皇太子は何事か思い出に浸っている。ふふふと小さく笑みをこぼした。

 「わかった。手紙は後ほど受け渡そう。その代わりといってはなんだが、一つ頼みがある」
 「なんでしょうか?皇太子殿下」
 「我が兵たちの家族の亡命……いや、避難先としてトリステインを選択したいのだ。
  受け入れを正式に要請する」
 「わかりました。 では、それは国に連絡を取りたいと思います」
 「よろしく頼む。 他に何か用向きが無いようなら、謁見はこれで終わろうと思うが、よいか?」
 「はい、ありがとうございました」

 ルイズは優雅に一礼をした。
 ワルドもキュルケ、タバサ、ギーシュも貴族の作法に則って礼をする。
 士郎だけ深く頭を下げる礼をした。 他の者は不思議な目で士郎を見た。

 ………


853:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:37:46.36 Oflo42N4

 ウェールズに呼ばれて、ルイズと士郎、そしてワルドがウェールズの居室に案内された。
 「すまないな。来てもらって」

 ルイズはとんでもございませんと返し、こう続けた。
 「先ほどはお渡しできませんでしたが、姫殿下より密書を言付かっております」
 「ふむ、密書か……」
 「こちらでございます」

 ルイズは懐よりアンリエッタの手紙を取り出し、ウェールズに渡した。

 ウェールズは丁寧に封を切ると、中の手紙を取り出し読み始めた。

 「ああ、彼女の婚姻はほぼ決まったようだな……。愛らしいアンリエッタ……」

 手紙を最後まで読んだウェールズは3人に向き直る。

 「先程の避難先の受け入れ要請での連絡は不要になったよ。
  既にこの手紙に避難民の受け入れが明記されていた」
 微笑むウェールズ。

 「さて、あとは昔、彼女から送られた手紙だね……。
  ……
  これは、どうしても返却しなければならないだろうか?」

 「え!?」 予想もしないウェールズの反応にルイズは驚く。

 「ああ、勘違いしないでくれたまえ。返すことは問題ないんだ。
  でも、これを君に渡すと君の身が狙われないかと思ってね。
  万が一、貴族派やレコンキスタ共に奪われたなんてことになると、アンリエッタに
  顔向けできないよ」

 「では、燃やしてしまいましょう」 士郎がそう言う。
 「まて!」 ワルドが慌てる。
 「それは本末転倒だろう。姫殿下からの要請は手紙を持ち帰ることではないのか?」
 「そうよ! 何、勝手に物騒なこと言い出してるのよ!!」

 「だってさ、本来の目的はゲルマニアとの婚姻を滞りなく進める障害の除去が目的だろ。
  わざわざ危険を冒して、手紙を敵に奪われましたなんて笑い話にもならないよ」
 「僕がいて、みすみす奪われるようなことになると思うのかい?」
 「でも、行動は常に最悪の事態を想定して動くべきです。
  燃やせば、奪われることは絶対に無いし、襲われるリスクや隠す必要もなくなる」
 「君は民間人だからいいが、私は近衛なんだ。姫殿下のご命令であれば、遂行する必要がある」

 <パチパチ>
 焦げ臭い臭いと共にそんな音が聞こえてきた。

 「ああ、君たち。すまないな。(討論が)長くなりそうだから、勝手に処分させてもらった」

 「え??」ワルドとルイズが慌てて振り向くと、ウェールズはランプの蓋を開けて、
 手紙に火をつけていた。すでに粗方燃えてしまっている。

 ガックリ膝を付くワルド。
 「わ、私の任務が……」

 「まぁ気を取り直してくれ。他のことだったらいろいろ協力するから」

 これで会談はお開きとなった。



854:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:39:56.76 Oflo42N4
───────────────

 「ふむ、敵陣に潜り込むことは成功したのだな」
  「はい。やつらは明日、兵の家族を脱出させるようですが……」
 「ああ、それは既に聞いている」
  「では、一斉攻撃はその後でよろしいのでしょうか?」
 「ふふ、何を言っている? 船を沈める絶好の機会ではないか」
  「!!! では、軍人ではないものが乗っている船を一斉に沈めると!?」
 「何者が乗っているかなど、我らの知るところではない。
  城から発進しているのなら、それは軍事行動と取られても致し方あるまい」

 えげつない攻めをする。そうは思っていても顔に出すような愚かなまねは決してしない。
 命令どおりに任務をこなすだけだ。そう、男は思った。

 「ああ、王や皇太子は極力きれいな状態でいてもらいたい。
  そのために、渡した『毒針』をうまく活用してくれたまえ」
  「御意」

 男はその言葉を残すと何処かへと消えた。

───────────────

 翌朝……

 城の一画に武装を取り払われた大型船が5隻停まっていた。
 もちろん軍旗も外され、代わりに白旗が掛かっている。

 兵が大声で指示を飛ばしている。
 「昨日の指示通り、手荷物は極力減らしてください。家族ごとに集まり、離れないようにして下さい。
  兵の指示に速やかに従ってください。 では、乗船してください。」

 この城のどこにこれだけ居たのかと思うほどの人が、船の周りに集まっていた。
 兵の指示に従い、停泊中の各船に吸い込まれていく。

 城の中からその様子を見下ろす皇太子と共に、一行はいた。

 「君達はどのようにして国に戻るつもりかね? あの船に一緒に乗っていくかね?」
 「私達は竜とグリフォンに乗って帰る予定です。皇太子殿下」
 ルイズが応える。

 「ふむ、そうか。島の抜け穴から帰るようなら、雲が晴れるまでは真っ直ぐ下りていけばいい。
  この時期なら、そちらの大陸とはそれほど距離は無いから、無事着けるだろう」
 「はい、ありがとうございます」
 「では、私はここで失礼するよ。兵の指揮もしなければならないからね」

 そういうと、ウェールズは扉をくぐり去っていった。

 ………


855:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 03:42:02.19 Oflo42N4

 避難船がまず1隻飛び立った。ニューカッスル城の周りには現在、敵船は見当たらない。
 王軍側は、敵軍も気を利かせて兵を下げているのだろうと、胸をなでおろした。

 船が十分な高度に達すると移動を開始した………

 その直後、轟音と共に大砲が放たれた。

 同時に避難船のマストが根元からへし折れる。この世界の船は、海に浮かぶ船と大した違いは無い。
 浮力を『風石』と呼ばれるもので得ているのが違っているくらいだ。
 マストが折られた程度だと、急に墜落するものではないが満足に移動はできない。
 避難船は徐々に高度を落としていく。

 避難船が高度を下げ始めたと同時に何処に隠れていたのか、
 敵兵がわらわらと避難戦へ向かっていく。

 城壁から船の行方を見守っていた皇太子は声を荒げた。
 「船を守れ~ッ!!! 敵兵を近づけるなぁっ!! 乗員を城へ連れもどせぇっ!!!」

 なんだこれは!避難船を急襲するとは!! ウェールズ達王軍側は猛り狂う。
 ニューカッスル城から王軍が雪崩出る。
 城の周りに隠れていた貴族軍の兵がそれを迎え撃つ。
 乱戦になると同時に、貴族側の軍船が多数現れた。

 城の中からこの様子を見ていたルイズ達。
 「ど、どうしよう!シロウ。 あたし達、どうすればいいッ!?」
 士郎は周りを見る。 ワルドが居ない!
 「しまった!! ワルドを見失ったッ!!」

 一行も周りを見るが確かにワルドは影も形も無い。
 士郎は皆に指示を飛ばす。
 「タバサ、竜を呼び出してくれ。 奴のグリフォンはどうしてる?」
 「厩につながれている。 今のところワルドがグリフォンを操ろうとしている気配は無い」
 タバサが精神感応で即座に情報を得る。
 「よし、奴は城内で破壊工作をするかもしれない。タバサ、空から監視してくれ」
 「了解」
 「ギーシュとキュルケは俺とルイズと一緒に皇太子のところへ急ぐぞ。
  奴が居なくなったことを早く伝えないと」
 「わかったわ」「まかせろ」

 「え? え? え?」
 ルイズは展開についていけない。ワルドのスパイ疑惑を聞かされていないので当然である。

 「ルイズ! 周囲に気をつけてくれ。 いつワルドが襲ってくるかわからない。
  ギーシュ、キュルケ頼むぞッ!!」

 一行は走り出した。移動しながらルイズは士郎に疑問をぶつけた。 
 「ちょ、ちょっと、どういうことか説明してよッ!!」
 「ワルドが敵のスパイの可能性があるんだっ! このタイミングで姿を消すってことは
  疑いが濃厚になった!」
 「なに、それ! いつから疑っていたのよッ!!」
 「最初から」
 「なんで私に教えてくれなかったのよッ!!」
 キュルケが口を挟む。
 「あなた、疑っていることを相手に隠し通せる性格なの?」
 「うっ!!」
 「わかった?」
 ルイズはそれ以降、憮然と黙り込んでしまう。

 今は皇太子の下へ急ぐ一行であった。

856:シロウが使い魔 ◆vVcjSMqk46
11/08/29 04:05:16.72 Oflo42N4
とりあえず投下は以上です

やっと戦闘に突入
あと少しでアルビオン編が終わる

終わったら小話を作ってあげようかなと思っております

眠いので、ではでは

857:名無しさん@お腹いっぱい。
11/08/29 06:09:54.48 RMCqWNdK
乙でした


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