11/03/07 00:02:53.57 PL/ByVjB
「それで、ルルーシュさんは?」
「……ごめんね、そこまではレナも知らないの」
沙都子が訊ねるとレナは俯き気味に視線を逸らして首を横に振る。
「そんな……じゃあ彼は……」
まるで足元が崩れ去ってしまったかのように身体から力がぬけてゆく。
今まではルルーシュという存在が私を勇気づけ支えてくれていた。再び運命に立ち向かう意思を持てたのも彼がいたからだ。もし彼が敵の手に捕らえられてしまったのなら私は……。
貧血の時に起こるような酷い眩暈が私を襲ったが、そのまま倒れてしまいそうになるのを隣にいる沙都子が支えてくれた。
「梨花! 大丈夫ですの?!」
「え、ええ……ありがとう沙都子。でも……」
最悪な現状は変わらない。
ルルーシュの場合、捕まっても例のブラフにより殺されはしないだろう。しかし、殺されずとも死ぬよりもつらい拷問を受けることになり、そうなれば流石のルルーシュでも喋らざるを得ない。
「ルルーシュが鷹野に捕らわれたのだとしたら……」
もう私たちに勝ちの目はなくなってしまう。
彼の安否が不明というだけで、急速に私の心は沙都子が鉄平に連れ去られたあの日のように衰弱していくようだった。
「―その心配は無用だ」
「誰?!」
どこか聞き覚えのある男の声が聞こえ、皆一様に声のする方角―レナの現れた隠し通路のほう―を向いた。
何者かがコツコツと靴音を鳴らし、私たちの居る場所へゆっくりと近づいてくるのが分かる。この通路の秘密を知っているのは仲間だけのはず……。ふとルルーシュの顔が頭に浮かぶ。
一歩、二歩……。ゆっくりと距離が詰められ、その姿が室内の明かりにさらされる。はっきりと見えるようになるまでにそう時間はかからなかった。
あれは……ルルーシュでは、ない?
暗闇の奥から現れた人物は漆黒のマントとヘルメット型の不気味な仮面を身に付け、その場に立っていた。
「あなたは……ゼロ?!」
その姿を認識するなり、皆の声を代弁するかのようにレナが彼の名を叫んだ。