10/05/12 20:39:34.29 dQ0WJOCP0
お疲れ様でした!
久しぶりのスレ立てでしたが、覚えていてくださる方もおり、
とても勇気付けられました。ありがとうございます。
明日もまたスレ立てしようと思います。
よろしければお付き合いいただけますと幸いです。
最後になりましたが、ご支援ありがとうございました。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 20:48:04.59 dQ0WJOCP0
>>44
書きたいネタがありますので、なるべくがんばろうと思っています。
返信が遅くなりすみません、日ハムの試合見てました……
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 20:51:01.01 pGgOfJYL0
巨人対日ハムんとき楽しみにしてるぜ!
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 20:58:45.88 dQ0WJOCP0
「ねえ」
「ねえってば」
「なんだよ」
「あなた、夕食は摂ったの?」
朝倉に問われて気付いたが、そういやまだ食ってなかったな。
これからチャリを飛ばしても、家に着くのは九時半を過ぎるだろう。
ハルヒの恫喝にも等しい罰ゲームで近くのファミレスに寄れるような資金もない。まぁ我慢するしかないか。
しかし、朝倉はそんな俺を見て、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
「よかった。じゃあ少し待っててね」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:02:00.02 dQ0WJOCP0
数分後、朝倉は美味そうな匂いを発している物体を運んできた。
俺の視覚が正常ならば、これはロールキャベツという料理だろう。ご丁寧にも白米とサラダ付きだ。
「ねえ、食べてみてよ。これ自信作なんだから」
ころころと鈴のように笑う朝倉に屈したわけではないのだが、芳醇な匂いに惹かれて自然と箸が伸びてしまった。
武士は食わねど高楊枝なんて言葉があるみたいだが、この料理を前にして空腹を我慢できるほど俺は高潔じゃないんだよ。
その様子に、朝倉は満足そうな笑みを浮かべながら、
「あら、あなたって意外と無用心なのね。それとも学習機能に問題でもあるのかしら?」
なんだよ、お前は俺に絡むのが趣味なのか?
「そういうわけじゃないけど。あなたはこの料理に毒が入ってるとか思わなかったの?」
「あほか」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:07:46.43 dQ0WJOCP0
口の役目を会話に費やすのが面倒になってきたので、返事とばかりにロールキャベツを嚥下してやった。
朝倉が毒殺などという回りくどい手段をとるはずがない。
俺を殺すことが目的ならば、台所から包丁を持ってくればいいだけの話ではないか。
それにそんなことを企てていたら、このマンションの七階に住んでる奴が黙っちゃいないだろ?
長門の不在が何よりの安全証明になってるんだよ。
「なによ、少しくらい驚いてくれてもいいじゃない」
朝倉の不服そうな表情を眺めていたからというわけでもないのだろうが、宇宙人お手製のロールキャベツは美味かった。
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:08:50.07 AEKol8M90
ま た お ま え か
待ってました
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:12:08.24 dQ0WJOCP0
やれやれ、俺はいったい何をやってるんだろうね。
かつての殺人未遂犯と食卓を囲んでいるのだから、危機管理能力がないという指摘も不承不承ながら同意してしまいたくなる。
春先のあの騒動でこいつと三度目の邂逅を果たした今、『二度あることは三度ある』という格言にまで戦々恐々としてるってのに……
「あら? わたしがあなたを殺すはずないじゃない」
ツッコミを入れるのも面倒になるようなボケだな。朝倉流のコズミックジョークか?
「あのなぁ……、俺の記憶が改竄されていなければ、お前は二度も俺を殺そうとしたんだぞ」
からかい半分に殺そうとした数を含めれば(迷惑千万な話だが)、更に上積みせねばなるまい……。
「ああ、そのことね。でもそれはあなたが悪いのよ」
朝倉は俺の指摘に動じた様子もなく、それどころか優美なカーブを描く唇を軽く歪めながら、
「だって、あなたは長門さんを傷つけたじゃない」
と言い放った。
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:18:22.29 dQ0WJOCP0
「……なぁ、朝倉」
「なぁに?」
「去年の五月、お前が俺を殺そうとしたことを覚えてるか?」
長門を傷つけたから、という動機を朝倉は述べた。
二度目について釈明するつもりはない。あの文芸部室で風もなく揺れていた入部届を、俺は一生忘れないだろう。
だがな、俺がツッコミたいのはそこじゃない。
あの時のお前は、夕焼けに染まる教室を情報閉鎖空間に仕立て上げ、俺を護ろうとした長門に瀕死の重傷を負わせたじゃないか。
そんな奴がどうして『長門を傷つけたから』という大義名分を挙げられるんだ?
「わたしが有機生命体の死の概念を理解できないように、あなたたちもわたしたちの死というものが理解できないのね」
朝倉は俺の疑問に回答するでもなく、出来の悪い生徒を前にした進路指導教官みたいな溜息を吐きやがった。
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:25:22.12 dQ0WJOCP0
「あなた、情報生命体ってなんだと思う?」
「知らん」
ハルヒや佐々木なら、人類を代表してお前の満足するような回答を導くかも知れんが、標準的な高校生には土台無理な話なんだよ。
「わたしたち情報生命体は、今の人類には観測できないけれど存在するの」
そんな様子を見た朝倉は、バカな俺でも理解できるよう配慮してくれたのだろうか、噛んで含めるように説明して下さるご様子だ。
「あなたたち人間の言葉を借りるなら……、そうね、星間物質ではないのだけれど『ダークマター』みたいなものになるのかしら」
ダークマターか、そういえば聞いたことがあるな。あれは確か……
―今から二年ほど前になるだろうか、放課後を迎えた二人きりの教室で、あいつの講釈に聞き入っていた場面を思い出す。
曰く、天文学において光学観測できないが存在するもの、それらを総称して暗黒物質(ダークマター)と呼んでいるらしい。
『観測できないから暗黒と名付けるとは安直にも程があると思わないかい?』
そう言ってくつくつと笑う姿が今でも鮮明に思い起こされる―
「……どうしたの?」朝倉が不安そうな……というよりは不審そうな視線を俺に投げかけていた。
「考え込んだと思ったら急にニヤニヤしちゃって……。あなたの情報処理能力が飽和して、自律機能が停止したのかと思っちゃったわ」
「すまん、そっち関係については明るくないんもんでな。もう少しわかりやすい表現をしてもらえると助かる」
何かをごまかすように真面目ぶる自分が滑稽でならなった。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:32:23.65 dQ0WJOCP0
「そうね、あなたの貧弱な知識でも理解しやすい表現をするなら『魂』に近いかもしれないわ」
魂ね……。よりによってお前が言うのか。
科学とオカルトは紙一重だと思うが、ここまで話が飛躍してしまうと、朝倉なりのボケであるようにも思えてくる。
「あの時―二度目のときもそうだけど、わたしは長門さんによって肉体を消滅されたわよね?」
そうだな。お前が砂時計のように零れ落ちる様を、確かにこの目で見た。
「じゃあさ、そのわたしがどうしてまたここに居られるのかって、あなたは疑問に思わなかったの?」
それは……、長門が何か特別な力を使ってお前を生き返らせたんじゃないのか?
「人間はさ、自分の理解できない事象を解釈する時、得てして未知の力を信じたがるものよね」
なんだそりゃ、古代における宗教の存在意義について討論でもするつもりなのか?
「あなたたちとは大きく異なる形態をとっているけれど、わたしたちも生命体なの。死が訪れれば、生き返ることはできないわ」
じゃあ何だ? あの時、粉々になったお前は死んでなかったとでも言うのかよ。
「そうよ、わたしたちの本体は『魂』そのものなの。だから、この肉体が失われたとしても死ぬわけじゃないのよ」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:34:00.18 UYVpgzhOP
スレイヤーズの上位魔族みたいなもんか
こういう例えしか浮かばないのもどうかと思ったが
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:36:20.26 dQ0WJOCP0
「だからわたしは、長門さんの有機インターフェースを破壊することで、彼女自身を助けようとしたの」
「朝倉、俺の記憶によれば、お前は長門のバックアップだったよな? なんでそんなことをする必要があったんだ」
俺は、長門が朝倉に助けを求めるような弱い人間であるようには思えなかった。
けれど、朝倉の回答はそんな甘っちょろい考えを吹き飛ばすには充分な衝撃を持っていたのだ。
「長門さんはね、苦しんでいたの」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:42:56.66 dQ0WJOCP0
「去年の五月、長門さんは苦しんでいたの」
それは初耳だな。
「正確には、あなたに連れられて図書館へ行った日から」
「…………」
「その原因は特定できたけれど、わたしには長門さんの心理が理解できなかった。どうしてそんなことであの長門さんが思い悩むのか」
朝倉はずっと溜め込んできた想いを吐露するように、言葉を紡ぎ出していた。
仮に、俺が朝倉の長広舌を止めようとしても無駄だっただろう。それほどの意思が、朝倉の言葉には満ちていたのだ。
「あなたを殺せば大きな情報爆発の発生が予想されたわ。そうすれば涼宮ハルヒを観察するという任務も終わる」
「そして長門さんも、彼女が抱える悩みから開放されるはずだった」
伏し目がちだった朝倉が、射るような視線を投げかける。
去年の五月、あの改変された教室で見せた無機質な瞳とは、まるで違う光を放っていた。
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:46:16.47 dQ0WJOCP0
「ただ情報爆発を誘発するだけなら、他にいくらでも方法はあったわ。例えば涼宮さんの目の前で情報改変能力を使うとかね」
「でも、わたしはあなたを殺すという方法を選択したの。……どうしてだと思う?」
俺は何も答えることができなかった。
「わたしがあなたを殺そうとした最大の理由は、大規模な情報爆発を誘発するためだったけど、個人的にもう一つ大きな理由があったの」
「長門さんを苦しめるあなたが許せなかったから」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:51:38.94 dQ0WJOCP0
「……そうか」
長い長い沈黙の経て、全脳細胞をフル活動させた結果、出てきた言葉がこれだ。我ながら情けない……。
「朝倉はずいぶんと長門に優しいんだな」
「長門さんはね、傷つきやすいの」
「だからわたしは、彼女を元の世界に帰したかった。仮初の肉体を破壊してね」
「肉体が破壊されれば、再び情報統合思念体の一部としてストレージされることになるの」
だから、この有害な環境から長門さんを助けられると思ったんだけどね。
「他ならぬ長門さんに阻止されたのは、さすがにショックだったわ……」
朝倉の言い分を要約すると、こうであるらしい。
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 21:55:41.70 dQ0WJOCP0
自らの分身とも言える長門が、任務の途上でトラブルに陥った。
朝倉は長門を大いに心配し、長門のトラブルを解消するために奔走した。
その甲斐あって原因は特定したものの、対処がわからない朝倉は強硬手段に出た。つまり原因の強制排除だ。
しかし、それを阻止すべく張本人の長門がやってきた。朝倉は大いに動揺したが、次善の策として長門を元の世界へと戻そうとしたのだ。
その結果が、朝倉の退場というのだから、なんというかこいつも不憫な命運を巡っていたのかもしれないな……。
黙考する俺をどう思ったのか、朝倉はポツリポツリと言葉を紡ぎだした。
「やっぱりわたしには理解できないもの。あれほど苦しい思いをして傍に居ようとする気持ちが」
訥々と語る朝倉は寂しそうに目を伏せている。
誰の傍に、とは聞けなかった。
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 22:03:13.89 dQ0WJOCP0
「ねぇ、明日はどうするの?」
すっかり冷めてしまったロールキャベツを平らげた頃、朝倉から声がかかった。
『明日』というのは、交流戦の第二戦を指しているのだろう。
生命の危機に晒される―というよりは、長門の手を煩わせることがないと判明した今、断る理由もない。
ただ、ここで素直に『はい、行きます』と答えてしまうのも、なんだか朝倉にビビっていたことを白状するようで格好がつかないよな。
なにか妙案はないだろうか……
「そうだな」
「明日はシチューがいい。うん、エビとかホタテが入ってるシーフードシチューだ」
一瞬呆れたような顔をした朝倉だったが、
「なによそれ、カレシ面でもしてるつもり?」
頬を膨らませ、咎めるような視線を送ってきた。
ごく普通の高校生がやったにしては、高性能の宇宙的暗黒物質生命体を相手に効果があったと認めていいだろう。
この程度の冗談が、こいつの慰みになればそれでいい。
常識外れだが、友達思いの宇宙人に―
<つづく>
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 22:04:58.25 UYVpgzhOP
乙
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 22:19:26.70 zAIeSo2pi
来週のいつかは知らんが、日ハムx巨人戦に続くん?
佐々木に期待。乙。
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
10/05/12 22:31:54.68 dQ0WJOCP0
>>57
すみません、スレイヤーズを知らないので何とも……
>>65
直接続くのは明日の巨人×西武です
来週の日本ハム戦は、05/18,19となります