10/04/23 17:23:04.12 RsG6V3Rm0
背筋がぞっとして、汗が急に出て来た。視線を逸らしてまっすぐ歩いた。
通り過ぎてしまえば大丈夫、もう一回目を合わせなければ大丈夫と思って早足で歩いた。
視界に入ってないのに男がまっすぐこっちに向かってるのがわかって、動悸もやばかった。
向こうから歩いて来る男が目の前まで来た時、俺はただまっすぐ前を向いて決して男と目を合わせないようにしたが、視界には入る。
そいつが顔をこっちに向けるのがわかった。
一層動悸が激しくなり、男を見てしまいそうな衝動を必死で抑えた。
すれ違う瞬間、そいつは体ごとこっちを向いて近づいてきた。
避けるように歩くスピードを早めようとした瞬間、声がした。
「そっちじゃないよ…」
確かに真後ろで囁かれたような、頭に響くような声だった。
半ば走るようにして歩いた。振り向いたら駄目だと感じた。背中にまだ視線を感じていた。
歩道の信号まで歩いたところで人混みから出て、そいつの視線を感じなくなった。
ゆっくり振り返ると、男の姿が無かった。
まっすぐな道だったから路地に入ったという事も無い。消えたんだとわかった。
あの男は俺をどこへ導こうとしてたのか解らんが、得体の知れない恐怖だけが残った。
そしてこれは書きながら気付いた事なんだがこの男とすれ違って奴が顔を向けた瞬間、
はっきり見えた訳じゃないが顔が見えたんだ。
でもいくら思い出してもそいつの目が無い。なんで最初に目が合ったって思ったのかもわからん。
俺は目が悪くて10メートル以上離れてる人間の顔なんぞ見えんのに…