10/05/30 16:12:04
1年8カ月前、米国ニューヨークのウォール街で始まった世界的な金融危機は、東欧やアラブ首長国連邦(UAE)・
ドバイで「余震」を引き起こした後、今度は南欧で猛威を振るっている。そんな中、今回の金融危機の「勝ち組」と
「負け組」の構図が見えてきた。現在、「勝ち組」とされている国々を見ると、共通分母を見つけられる。人口が多く、
市場の潜在力が大きい国か、輸出できる原材料が豊富な資源大国が「勝ち組」というわけだ。前者には中国や
インドが、後者にはブラジル、オーストラリア、インドネシア、カナダ、トルコが該当する。
これらの国々には、世界中から資金が集まっている。資源が豊富なオーストラリアは、6回にわたって金利を引き上げる
ほど景気が回復しただけでなく、人口増加のペースも世界平均の2倍に達し、経済大国への歩みを着実に進めている。
また、ブラジルは今回の危機を克服する過程で、深海油田の開発や、中間層の拡大という、経済成長に向けた強力な
エンジンを搭載した。2億 5000万人の人口と豊富な資源を抱えるインドネシアも、東南アジアのダークホースとして頭角を
現している。
一方、「負け組」にも共通点がある。困難に直面したとき、国民を一つにまとめる政府のリーダーシップが弱い国々だ。
ギリシャ、スペイン、ポルトガルは、「変化」や「競争」よりも、パイを分け合うことに腐心してきた左派政権の無能さが危機を
招いた。また、イギリスの左派政権も、借金の山を膨らませた揚げ句、発足から13年で退場を余儀なくされた。
韓国は現在のところ、「勝ち組」に属している。人口が少なく、内需が弱く、資源も少ないにもかかわらず、危機を順調に
克服しているのは、アジア通貨危機を経験した国としての危機管理能力によるところが大きい。危機が発生した直後、
数十兆ウォン(10兆ウォン=約8020億円)の財政出動を前倒しし、適切な時期に財政投入を行って、市場を刺激する
大規模な流動性を供給するという荒療治を敢行したことが功を奏した。
締め付けを厳しくしようとした政府に石を投げて抗議したギリシャの市民に対し、米国のあるコラムニストは最近、「(アジア
通貨危機当時)国民が率先して純金を集めた韓国を見習うべき」と主張した。その記事を見たときには胸が詰まる思い
だったが、一方で別の考えが頭をよぎった。
もし、韓国経済が再び破たんの危機に直面したら、国民は石を投げることなく、率先して純金を集めようとするだろうか。
これにはためらいなく「そうだ」と言える自信がない。韓国は過去十数年間、地域の分裂がさらにひどくなり、階層間の対立の
溝もさらに深まった。
理念や世界観が異なるグループが、韓国社会のあらゆる分野に根を下ろした。今、経済が危機に直面したとすれば、
純金を集めるのではなく、デモや闘争が盛んになる可能性が高い。米国産牛肉を食べると狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)に
感染するというデマで国民をあおった勢力が、また表に出てくるだろう。
韓国経済は、莫大(ばくだい)な財政投入によって今回の危機を克服しているが、国内は傷だらけになっている。中央政府の
負債は急速に膨れ上がり、地方自治体は票を得るために税金の無駄遣いを続け、借金の山が膨らんでいる。長期間にわたる
低金利の中、家庭の借金も危険といわれるレベルにまで膨れ上がった。中間層は減少し、貧困層が増えている状態だ。
その上、経済全体に影響を与えかねない不動産バブルの兆しも見られる。世界で最も強力な労働組合が力を持ち、世界で最も
早く高齢化が進んでいる。
薄氷のような経済が再び破たんするのを防ぐためには、何よりも国民を団結させられる、強いリーダーシップが求められる。国の
成功をもたらした勢力も、内部の権力闘争に巻き込まれれば、国としてのリーダーシップに空いた穴はさらに大きくなるとみられる。
アジア通貨危機当時、人々が率先して純金を集めた韓国で今は、ギリシャのように、石を投げる勢力が登場している。
約10年前の韓国と、現在の韓国は違う。
尹泳信(ユン・ヨンシン)経済部長
朝鮮日報: 2010/05/30 09:32:26
URLリンク(www.chosunonline.com)
URLリンク(www.chosunonline.com)