10/04/09 06:58:35 BE:406782443-PLT(14445)
放送批評懇談会が選ぶベスト番組【ギャラクシー賞月間賞】
“日本固有の文化”なるフィクションを打ち砕く~NHK「日本と朝鮮半島2000年」
(GALAC 2010年4月号掲載) 2010年4月6日(火)配信
ETV特集
「シリーズ 日本と朝鮮半島2000年」全10回
2009年4月26日~2010年1月31日放送 22:00~23:30
日本放送協会
2009年4月から、全10回にわたるETV特集「日本と朝鮮半島2000年」を観て、たくさんの未知の歴史と出会った。
それは、他者を通して自らを振り返ることの反復であり、同時に新たな考古学上および歴史研究の実証を伴って、
“日本固有の文化”というフィクションの虚妄性を明らかにする過程でもあった。
番組は弥生中期以降の日韓交流史を、常に東アジア全体を俯瞰する視点から考察した。
だから水稲も鉄器も、漢字や仏教、さらに律令制度から暦に至るまで、生活・社会に係る大多数の事物や文化が、
朝鮮半島経由で渡来したことに今更ながら感嘆させられた。
全10回を総評するのは容易でない。が、たとえば第5回、6世紀ごろには玄海灘でなく日本海ルートの“民間交流”が
渤海(中国東北部)やロシア沿海州のクラスキノにまで及んでいたこと。
第6回、蒙古襲来を阻んだのは“神風”よりも、朝鮮の軍事集団「三別抄」の蒙古軍への猛反撃だったこと。
さらにはベトナムの蒙古軍撃退が3度目の日本襲来を断念させたこと。第8回、秀吉の7年にわたる朝鮮侵略は民衆を苦しめ、
5万とも20万ともいわれる「被虜人」(朝鮮人連行)を生んだこと。
日本兵も飢餓に瀕し、この出兵が豊臣政権を崩壊させたこと。
第9回「朝鮮通信使」の往来が、鎖国の江戸時代に時ならぬ韓流ブームを招来したこと。
そして第10回、福沢諭吉と朝鮮の若き開化派金玉均の親交は、「脱亜」の一言では片付けられぬ近代化の苦悩と可能性を
孕んでいたこと等々、いわば日本の文化・政治体制を相対化し、批判する視点を提示する深い「教養」番組であったことに
敬意を表したい。
番組中での地名、人名は江華島(カンファド)、李舜臣(イシュンシン)のようにすべて朝鮮語で発音された。
また朝鮮語会話に堪能な大桃美代子らの現地リポートと日韓双方の学者による歴史分析にも行き届いた配慮が見えた。
この番組のバトンを引き継ぐ4月以降のNHKスペシャルに期待したい。(藤久ミネ)
URLリンク(news.nifty.com)