10/03/31 07:12:23
(>>1の続き)
◇深入りせず前政権の方針を踏襲
「日本の考え方のもとにあることを正確に記述したということだから、何ら問題はないと思う」。
平野博文官房長官は竹島を巡る検定結果について、記者会見でそう語った。
「普天間」や「郵政」など懸案山積の中、与党内に賛否両論ある教科書問題には深入りせず、
旧政権時の方針を淡々と継いだ印象だ。
教育基本法は06年12月、当時の安倍晋三首相の強い意向で改正され「郷土愛」の
文言が入った。08年3月告示の小学校指導要領総則には「伝統文化の尊重」や「愛国心」が
盛り込まれた。今回の検定はそうした流れに沿い、社会科では国旗に関する記述も目立つ。
日章旗を掲げた軍艦「咸臨(かんりん)丸」の絵を添えた教育出版(6年下)などだ。
しかし、民主党内には違和感を持つ勢力も多い。同党は07年、沖縄戦の集団自決における
「日本軍強制」の記述復活を求め、政権交代後も高校地理歴史の新指導要領解説書には
「竹島」を明記しなかった。現時点で政権内の検定見直し機運は小さいが、連立を組む
社民党は反発しており、韓国の出方次第では検定の方向性が変わる可能性も残る。
◇伝統文化の記述拡充 小学3・4年で短歌・俳句 印象派やめ「風神雷神図」
国語では11年度実施の新学習指導要領に基づき、5~6年で古文・漢文の学習と音読が
新たに加わり、3~4年では短歌と俳句を学ぶ。これらは一部の小学校教科書で扱われた
例はあるが、全教科書に本格導入されるのは初めて。1~2年では「ヤマタノオロチ」
「いなばの白うさぎ」などの神話も登場した。
他にも狂言の音読や国宝▽雅楽器▽宇治拾遺物語--など、伝統文化が次々と登場。
図工では西洋の印象派絵画を「風神雷神図」「鳥獣戯画」など日本画に入れ替え、
算数では江戸時代の和算の紹介ページが増加。東京書籍の家庭科(5・6年)では
伝統的な食事として「ご飯とみそ汁」の記述が4ページから6ページになった。
古典をはじめとするこうした記述の拡充について、神奈川県内の小学校女性教諭(30)は
「子供は結構、(古典に)食いついてくると思う。普段聞き慣れない言葉に触れることを
面白がるから」。ある教科書編集者は「昔も今も人は同じようなことを考えていたのだと
知れば、中学で古典を学ぶ時に身構えなくて済む」と言う。
一方、指導歴40年の埼玉県朝霞市立朝霞第十小、三輪民子教諭(62)は「昔の人の
思いを知るのは大事なことだが、(古典などの)あえて難しい素材を持ってくるのは疑問。
『意味が分からないうちから覚えさせ、愛国心を育てよう』という狙いを感じる」と懸念した。
==============
◇教科書編集の基準となる学習指導要領の変遷
年度 特徴や改定の主なキーワード
1961 基礎学力の充実、道徳の時間新設、科学技術教育の向上
71 教育内容の一層の向上、時代の進展に対応した教育内容の導入
80 ゆとりある充実した学校生活の実現、学習負担の適正化
92 社会変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成、生活科の新設
2002 生きる力の育成、教育内容の厳選、総合学習の新設
11 授業時間の増、指導内容の充実、伝統と文化の尊重
※年度は小学校での実施年度