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『幻の脱北映画』やっと日本公開 棚ざらし1年、配給会社変更
北朝鮮を脱出する住民(脱北者)や北朝鮮内にある収容所の実態をリアルに描いた韓国映画
「クロッシング」が四月に日本で公開される。韓国では二〇〇八年に公開され数々の賞に輝いた
が、日本では上映されず「幻の映画」となっていた。関係者が正式契約し、一年以上かかって日
本公開が実現した。 (外報部・五味洋治)
映画の舞台は北朝鮮にある炭鉱の町。サッカー選手だった男性は、妻の病気の治療代を稼ぐ
ため中国に行くが、韓国亡命に追い込まれる。その後、妻は病死。男性は韓国で懸命に金を稼
ぎ、北朝鮮に残されホームレスとなった息子を救い出そうとする。
制作に当たったキム・テギュン監督は、脱北者百五十人以上に会い、一年半かけてシナリオを
練り上げた。モンゴルや中国で秘密撮影を敢行し、細部まで迫真の仕上がりとなっている。
韓国では観客百万人を動員。韓国の映画評論家協会賞を受賞したほか、〇九年の米アカデミ
ー賞外国語映画賞韓国代表作品にも選ばれた。厳しい監視をかいくぐって決行される脱北や、
暴力が横行する北朝鮮内の収容所の実態を本格的に描いた作品。
脱北ルートであるタイや、人権問題に関心の高い米国で自主上映されている。
日本では、映画「フラガール」「パッチギ!」などを制作した映画制作・配給会社「シネカノン」(東
京都渋谷区)が買い付け、〇九年春からの一般公開を予告したが、棚ざらしになっていた。
シネカノンは結局、資金繰りが悪化して今年一月末に負債四十七億円を抱えて民事再生法の
適用を申請し、事実上「倒産」。上映を望む人たちと配給会社のアジア映画社が正式契約し、四
月十七日から東京・渋谷の「ユーロスペース」を皮切りに全国公開されることになった。
韓国統一省によると、二〇〇九年に韓国入りした脱北者は推計で二千九百五十二人。総数は
一万八千九人となり、今年中に二万人を超す見通しだ。
公開決定にあわせて来日したキム監督は、「非常に敏感な問題であり、政治的な非難を受けな
いよう事実に即して制作した」と説明。「北朝鮮や脱北者問題に関心の高い日本で公開が実現し、
うれしい。日本の人たちにも脱北者の苦痛、閉鎖社会に住む悲しさを感じていただけたら」と期待
を寄せた。
ソース:東京新聞 2010年2月14日 朝刊
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)
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