10/02/12 20:27:24
地方公務員の採用試験で、在留資格によって設けられた受験制限。
外国人採用を認めてこなかった国籍条項が撤廃されて10年余がたつが、
在留資格が新たな壁となっている格好だ。外国籍の子どもたちを支援する関係者からは
「国際化が進む地域の現実に即していない。このままでは『第二の国籍条項』になってしまう」
と危惧(きぐ)する声が上がる。
夕暮れ時、学校帰りの子どもたちの弾むような声が響く。
中国、フィリピン、タイ、ウクライナ、ロシアと国籍はさまざま。
横浜市南区にある「信愛塾」は、在日外国人の子どもの学習支援を行っているNPO法人だ。
約30年前、地域や学校で孤立しがちな在日コリアンを支える場として始まり、
今ではニューカマーの子どもたちが中心だ。県民約900万8千人のうち、外国籍は約17万5千人。
県民50人に1人が外国籍の計算だ。中国、フィリピン国籍の増加が目立ち、塾の日常はその縮図。
事務局長を務める大石文雄さんは「この子たちもあと数年で就職を迎える。
定住化も進み、やがて公務員として働きたいという若者も出てくるはず」と見通す。
そこに立ちはだかる在留資格による受験制限の壁。脳裏で結び付く記憶がある。
在日コリアンの権利向上を求め、外国人の地方公務員就労に道を閉ざす国籍条項の撤廃運動
が広がったのは1990年代後半のこと。大石さんは市民団体の代表として、その先頭に立ってきた。
「在日は公務員になれない」という壁が、
どれだけ日本人と机を隣にした在日の若者の可能性を摘み、劣等感を刻み付けてきたか。
その裏返しとして、どれだけ日本社会の差別意識を助長し、国際化を妨げてきたか―。
その目に、在留資格による制限は「第二の国籍条項」に映る。
民間企業では、留学生を中心に外国人を積極的に採用する動きが進む。
大手コンビニのローソンでは昨年採用した正社員約120人のうち、3分の1が外国籍。
「期待しているのは多様性。日本人だけでは出てこない新しい発想を求めている」。
いずれも将来、管理職や役員になる人材としての位置付けだ。
一方で変わらぬ役所の閉鎖性、外国人を地域を構成する市民として見ることができない認識の低さ。
午後6時半、勉強を終えたスリランカ国籍の女の子が目を輝かせた。「受験まであと少し。頑張ります」。
両親と来日して1年だが、母国語と日本語を使いこなす聡明(そうめい)で利発な中学3年生。
大石さんは思いを新たにする。「今後はこうした多言語、多文化を備えた子どもたちが必要とされ、
社会を担っていく。役所の人たちにはこの現実を知ってほしい」
ソース カナコロ(神奈川新聞) 2010年2月12日
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