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2009年12月17日 社説
[天皇特例会見]
政治利用の疑念招くな
中国の胡錦濤国家主席の後継候補ナンバーワンと目される習近平国家副主席の公式訪問は、
事実上の「日本デビュー」だっただけに、天皇特例会見だけがクローズアップされたのは残念だった。
天皇会見には「1カ月ルール」があるという。会見を希望する外国要人は、1カ月前までに申請することが
1995年に文書で定められた。多忙な公務の日程調整を円滑に進めるのが目的だったが、2004年以降は、
前年に天皇が前立腺がんの摘出手術を受けられたこともあり、厳格化しているという。
胡国家主席は、副主席時代の1998年に天皇と会見している。共同通信などによると、中国側は習副主席が
会見できなければメンツにかかわるとして、1カ月ルールに反するにもかかわらず、強く会見を要請した。
外務省は当初、宮内庁の意見を入れ、断っていた。官邸と宮内庁の間で、再三押し問答があり、最終的に
鳩山由紀夫首相と官邸が宮内庁を押し切った形だ。
背景には、急速に経済大国化する中国を重視する鳩山政権の姿勢があるのは間違いない。
憲法の下で天皇は「日本国民統合の象徴」と位置づけられ、内閣の助言と承認の下で国事行為のみを行う。
「国政に関する権能を有しない」のである。羽毛田(はけた)信吾長官が「陛下は政治的に中立でないといけない。
政治的懸案があれば陛下を打開策に、となれば憲法上の陛下のなさりようが大きく狂うことになる」と、
政治利用に当たるとの異例の懸念を表明したのはこのためだ。
これに対し、小沢一郎民主党幹事長は宮内庁批判をエスカレートさせた。同党国会議員140人余を含む
大訪問団を組んで訪中を控えていた時期と重なっていたこともあり、小沢氏が会見実現を働き掛けたのではないか、
との見方が出ている。
小沢氏はこれを否定した上で
「政府の一部局の一役人が内閣の方針に、どうしても反対なら辞表を提出した後に言うべきだ」
「(1カ月ルールを)宮内庁の役人が作ったから金科玉条で絶対だなんてばかな話があるか」
などと恫喝(どうかつ)としかいいようのない非難を繰り返した。
外国要人との会見は、国事行為ではない。内閣の責任の下でなされ政治的な性質を持たない「公的行為」と
される。鳩山首相からの指示で平野博文官房長官が「中国は政治的に重要」と、1カ月ルールを破ってまで
宮内庁に会見を受け入れさせたことで、友好親善のための「公的行為」が「政治化」してしまった。
鳩山首相は「判断は間違っていなかった」といい、平野氏は「政治利用ではまったくない」と釈明した。
天皇の外国要人との会見は、羽毛田長官が「政治的重要性や国の大小を超えたところで、純粋な友好関係を
図ることで成り立ってきた」というように、国際親善に大きな役割を果たしている。
民主党政権は今回例外をつくり、天皇の政治利用に疑念を抱かせる結果となった。象徴天皇の地位に
かかわる問題でもある。もっと慎重に対応する姿勢がほしかった。
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