09/11/15 09:46:53
【コラム】「ウ飼い経済」の亡霊
今年8月、LG電子の家電事業本部に非常事態が起きた。両面開きドアの冷蔵庫に使われる
リニアコンプレッサー(冷蔵庫の冷媒圧縮装置)を動かす電子チップを作るNECが突然、
供給量を10分の1に減らすと通知してきたためだ。LG電子の関係者は「NECとの緊急交渉を通じて
緊急ランプは消えたが、まだ気をもんでいる」と話した。
世界の発光ダイオード(LED)テレビ市場を先導するサムスン電子と LG電子の部品購買担当者は
最近、時間さえあれば韓国3Mの工場を訪れる。二重輝度向上フィルム(DBEF)というLEDテレビ用の
革新部品を、少しでも多く確保するためだ。DBEFを独占生産する3Mに対し、
韓国企業が購入争奪戦を繰り広げているわけだ。
韓国が誇る最大の輸出品、携帯電話の場合はさらに深刻だ。携帯電話1個当たりの総費用の
26%を占める、最も高価な部品ベースバンドチップはもちろん、センサーチップ、無線送受信の
機能を担うトランシーバーなどの国産品採用率は現在0%(放送通信委員会の2009年
国政監査資料)だ。源泉技術不在のためだ。ある業界関係者は、「世界的な携帯電話生産国である
韓国の実情を調べてみると、製品の外装だけ国産という恥ずかしい現実がある」と話す。
こうした状況は、金属・鉄鋼分野でも同様だ。昨年、金属素材分野の貿易収支赤字の規模は
110億ドル(現在のレートで約9900億円、以下同じ)で、2007年より67%も増えた。
ある大企業役員は、「宇宙航空・精密化学産業用の金属素材は技術力不足で
全量輸入に頼っているため、世界6位の鉄鋼生産国という肩書きが色あせる」と皮肉った。
要約すると、韓国は世界第9位(今年上半期)の輸出国であり、経済協力開発機構(OECD)加盟
30カ国のうち研究開発(R&D)の総投資費基準では6位だが、基礎・源泉技術水準は
中・後進国のような「不毛地帯」だ。理由はたくさんある。韓国でR&Dの75%以上を占める
民間企業が、すぐに金になる商用技術に集中している上に、試用品開発から商業化まで
5―10年はかかる基礎・源泉技術は政府が率先すべきだが、優先順位が常に後回しにされるためだ。
今年、韓国のR&D予算で基礎研究の割合は16%にすぎない。
結果はどうだろうか。韓国経済はウ(首にひもを付けられた水鳥)と同じだ。
首にひも(部品素材産業)が結ばれているため、魚(完成品)を飲み込んでも、
すぐに主人(日本など技術先進国)にささげるという構造だ。
日本の経済評論家・小室直樹氏が1989年に批判した「ウ飼い経済」の亡霊が、20年過ぎた今でも、
韓国の産業界を締め付けている。
実際に、韓国は昨年だけでも過去最大の327億ドル(約2兆9400億円)の対日貿易赤字を
計上したが、このうち部品素材分野の赤字は209億ドル(約1兆8800億円)に達した。
2001年(103億ドル=約9260億円)に比べ、7年で倍増したかたちだ。輸出すればするほど
部品素材の輸入が増え、本当の果実は日本に手渡している構造が、一層深刻になっているわけだ。
こうした欠陥を招いた根本的な原因は、基礎科学・源泉技術に対する国民的関心と投資、
そして熱意が不十分なことにありそうだ。1901年にノーベル賞が創設されて以降、
これまで韓国人科学者が一人も受賞できていないという事実が、それを示唆している。
ほかの国のノーベル賞受賞をただうらやましがり、金になる中核心技術・部品は外国に依存する
というちぐはぐした状態が続けば、韓国の産業界はうわべだけピカピカした「メッキ加工品先進国」の
域を出ることができない。
部品素材分野は、生産・雇用が製造業全体の40%以上を占める大韓民国の産業の
「草の根」でもある。外貨獲得や雇用創出、産業構造の先進化という3兎(と)を得るためには、
数十年にわたり放置された「ウ飼い経済」に終止符を打つことに全力を傾けるべきだ。
宋義達(ソン・ウィダル)産業部次長待遇
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2009/11/15 09:32:59
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