09/10/11 18:39:49
◇金大中氏が残したもの
一見リーダーシップについての本、実は、韓国元大統領、金大中氏についての本だ。
大学生時代、韓国民主化連帯運動に取り組んだ著者にとって、
往年の金氏は<たった一つの青春のシンボル>だった。
本書は、著者と金氏の対談が核になっている。4カ月後、金氏は亡くなった。
しかし「金氏の話だけでは、なかなか広い読者に届かない。
そこで、最近関心のあるリーダーシップ論を加え、
政治を志す人やビジネスマンにも手に取りやすくしました」。
極端な対立軸が見えにくい時代のリーダーは、タイトル通り人々の「半歩前を歩く」べし。金氏の言葉だ。
何歩も先で前衛ぶるのではなく、人々が付いてこられるように、少し先を行く。時には、あえて人々より遅れてみる。
「私は今、政治的立場は保守リベラルがいいと思っています。
保守とは、歴史に学びながら、守り保つために少しずつ変わること。
それには、半歩だけ先にいるリーダーが必要です」
リーダーに必要な能力として挙げるのは、動員力や判断力、決断力など七つ。
なかでも、金氏との対話で重要性を感じたのは、先見力だという。
金氏は、韓国が必ず民主化されると信じて、投獄や国外追放、軟禁を耐えた。
それだけではない。東アジア共同体の推進論者でもあった。
「共同体構築の過程で国際環境を改善し、(朝鮮半島)統一を成し遂げる、
つまりインターナショナリズムを通したナショナリズムの成就を考えた。
鳩山由紀夫首相も東アジア共同体を唱える今、金氏の先見力は高く評価されていい」
著者は金氏を近代中国の父、孫文になぞらえる。日中韓の連帯は、100年前の韓国人、安重根も唱えた。
近代東アジアの民主と連帯の歴史は、金氏最晩年の言葉を通して、著者に手渡されたのかもしれない。
<文・鈴木英生、写真・津村豊和>
ソース 毎日新聞 2009年10月11日 東京朝刊
今週の本棚・本と人:『リーダーは半歩前を歩け』 著者・姜尚中さん
URLリンク(mainichi.jp)