09/09/26 07:29:54
朝鮮半島から遠く離れたインドネシアの島で今夏から、ハングルが使われ始めた。少数民族チアチア族がハングルを表記文字に採用した。
アルファベットより忠実に自らの言語を表記できるのだという。チアチア族には独自文字がない。
▼ハングルは李朝時代の15世紀半ば、第4代の世宗大王が制定した。当時は漢字表記だったが、庶民も楽に学べるよう作った表音
文字だ。朝鮮半島には数多くの侵略を受けた歴史がある。独自の文字導入は民族の誇りや自立心を高める意図もあった。戦争、
民族、言語。ハングルの輸出は重い歴史の一幕にすぎない。
▼日本でも戦後、日本語をローマ字や仮名文字にする案があったという。米教育使節団の勧告だ。いわく。難しい漢字を庶民が読める
はずはない。事実を知らないから死にもの狂いで戦う。漢字なる悪魔の文字は全廃を。敗戦は「言語上にも大きな変化をもたらす」と、
故大野晋氏が「日本語の教室」で書いている。
▼どうやら救われた日本語だが、「日本語が亡(ほろ)びるとき」(水村美苗)を読めば、いま新たな危機にある。この本の副題は「英語の
世紀の中で」。水村氏が命名した「普遍語」である英語に目を背けるわけにもいかない。鳩山由紀夫首相の国連での英語演説は、
決して流ちょうではなかったが、まじめさが伝わった。
ソース(日経新聞・春秋) URLリンク(www.nikkei.co.jp)