09/09/13 08:40:22
戦慄(せんりつ)の内容である。喋(しゃべ)ったほうも取材したほうも、よくここまで踏み込んだものだと唸(うな)らされる。近年話題になった
『国家の罠』『反転-闇社会の守護神と呼ばれて』に勝るとも劣らぬ衝撃作だ。
本書の語り手は旧三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)淡路支店取引先課長だった岡野義市氏(後に同行泉ケ丘支店長)。銀行が
部落解放同盟大阪府連合会元飛鳥支部長の小西邦彦(大阪市の業務を巡る詐欺・横領で懲役6年の有罪判決を受け控訴中に
病死)を極度に恐れる一方、暴力団や警察・検察とのダーティーワークに小西を利用し、ずぶずぶの関係にのめり込んでいく様子が濃密に
描かれている。
旧三和銀行淡路支店の顧客の中で小西はアンタッチャブルで、「絶対に怒らせてはならない」「担保の話はするな」と腫れ物のように
扱われていた。「ワシやけどな、シモちゃんに1000万しといて」と一方的な電話があれば、黙って下村建設に1000万円を振り込む。
キタ新地の高級クラブで、ブランデー2本分をアイスペールになみなみと注がせ、淡路支店の男性行員たちがそれを回し飲みし、胸を
かきむしるのを見て、小西は「ワシも飲むで」と上機嫌になる。「今日の午後3時までに20億振り込んでくれや」といわれれば20億円を
無担保・無承認で融資し、翌日、担保の株券を大阪駅前のビルにとりに行くと、夜、屋上にヘリコプターが到着し、許永中の関係者が
30億円分の仕手株の現物を手渡す。
かつて三和銀行を牛耳った頭取の渡邉滉には、事業開発部長の清水美溥という懐刀がいた。清水は関西地区で大型不動産開発
計画を次々と打ち出し、その裏で地上げ業者が奔走し、大阪府警や裏社会対策を小西が引き受けるという仕組みが出来上がっていた。
本書が優れているのは、単に一銀行と元暴力団構成員の同和団体幹部の関係だけに留まらず、小西のようなアウトローがいかに政界、
国税当局、検察、警察、裏社会、芸能界などと癒着し、この国の仕組みが出来上がっているかを、徹底して白日の下に晒(さら)している
点である。
ソース(MSN産経ニュース、作家・黒木亮氏) URLリンク(sankei.jp.msn.com)