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■新曲を歌えるのは誰だ?
世間はW選挙の話題で溢(あふ)れている。一つはこの夏の参議院選挙。
もう一つはAKB48の総選挙だ。
ピーク時(1998年)の約半分の規模まで落ち込む昨今のCD市場を嘲笑(あざわら)うかのように
快進撃を続けるAKB48。本書にはその成功の鍵と現在のメディアの状況を考えるヒントが詰まっている。
AKB48は、下部組織を含め総勢108人という大所帯のアイドルグループ。
その「総選挙」は、次のシングル曲で歌うメンバーや、その立ち位置をファン投票で決めようという試み。
本書は選抜される側である彼女たちの写真や発言を集めたマニフェスト集だ。
従来のようなマスメディア主導型のアイドルではない。秋葉原の劇場で毎日公演が行われ、
マスメディアよりもインターネットを介した口コミで人気が広がった。つまり、ツイッターに代表されるような、
個人メディアが台頭し、個々人の意見が可視化される状況を反映したアイドルなのだ。
現在、若者やネット世代のテレビ離れは着々と進行中。いまだ大衆の存在を前提に情報を送り続ける
テレビは、メディアとしての絶対的地位を失いつつある。だが、その裏をつくAKBの仕掛け人は、
テレビ界の申し子・秋元康。この事実は皮肉のように映る。
実は、これまで秋元が手がけたグループには共通点がある。芸能界の内輪ウケをそのまま見せる
とんねるず、女子校の「放課後」そのままのおニャン子クラブ、テレビの裏方をデビューさせた野猿。
裏側を見せることで共犯関係を生み、作り手と受け手の壁を壊す。それが秋元の手法なのだ。
そう考えるとAKB総選挙もネット時代の反映ではなく、秋元のいつものやり方に過ぎないことがわかる。
作り手と受け手の主従の転倒。まさに現在のメディアの状況そのものである。秋元の手法に状況が追いついてきた。
さて、選挙に勝つのは誰だろう。
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初版・17万5千部
ソース:asahi.com(06/02 )
URLリンク(book.asahi.com)