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日本と韓国が共催した2002年ワールドカップの取材に備え、かつてソウルの延世大学で1年間、語学研修を
受けていた時のことだ。クラスメートには、在日韓国人の学生がたくさんいた。だいたいが20歳前後の3世だった。
祖父母が生まれ育った地に来て、自分のルーツを体感しようという動機の人が多かった。幼少の頃から自然と
日本語が脳内を支配し、韓国語があえて学ぶ対象だったのは私と同じだった。
日本人が話す韓国語は、現地の人には赤ちゃん言葉に聞こえるらしい。それでも速やかな言葉の習得が命題だった
私は恥ずかしげもなく、知り合った人々に迷惑を承知で韓国語を話し続けた。いくら発音が変でも、一定の水準以上の
韓国語を日本人が話すとなれば、それは「当たり前」ではない。お世辞半分に、「チャラセヨ(お上手です)」という
反応が一般的だった。
ところが、在日たちへの反応は違った。名前は韓国人。なのに、言葉は発音も滑舌も悪い。
「なんでそんなに下手なんだ?」と、在日という事情も環境も理解されず、軽蔑の眼差しで見られる。
同じ赤ちゃん言葉を喋っても、日本人は褒められ、在日は蔑まれる。
結果、若者たちが抱く心持ちは、大別して2種類だった。それでも自分のルーツがある朝鮮半島に親近感を覚え、
体内に流れる血を誇らしく感じる人。そして、日本で生まれ育った韓国人として自分が何者なのかを確認しにきた
はずなのに、疎外感しか覚えず、さらに混迷に陥る人。どちらかといえば、後者の方が多かった。
ワールドカップ・南アフリカ大会開幕まで2か月を切り、ここぞとばかりにサッカー本が書店に並ぶ。
そんな中、異彩を放っているのは「祖国と母国とフットボール」(慎武宏著、ランダムハウス講談社)である。
現役北朝鮮代表の鄭大世、安英学、梁勇基のほか、元北朝鮮代表の李漢宰、韓国代表歴のある朴康造、
日本国籍を取得した李忠成たちの心の深層を、在日の著者が描破している。
>>2以降に続く
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