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◇現実社会を少しだけ誇張した世界描いた
フランスの作家、ブノワ・デュトゥールトゥルさんの現代社会を鋭く風刺した小説
『幼女と煙草』の日本版(赤星絵理訳、早川書房)が刊行された。ブノワさんは
1960年生まれ。サミュエル・ベケットに才能を見出され、ミラン・クンデラが短編を
絶賛したという鬼才に小説への思いを聞いた。【桐山正寿】
完全禁煙となった刑務所。死刑囚が刑の執行直前、法で認められた権利だと最後の
一服を求める。一方、禁煙の市庁舎トイレ。一服していた職員は幼女に喫煙現場を
目撃される。2人の人生は社会のおかしな病理により、驚くべき展開をみせる。
タイトル通り、物語は子供と禁煙をキーワードに進んでいく。
「今の社会は子供信仰が集団の狂気のようになっている。子供は全然嘘をつかないとか、
心に傷を負わせてはならないと過剰になったり……。結局、子供の権力が大人の
権力より大きかったという話にしています。大人が中心だった社会から、これほどの
変化が見られるということも書きました」
「社会がある種の人々を保護しようとする時に、専制的・全体主義的な傾向をもってしまう。
もちろんたばこはあるシンボル的なもので、みんなが幸せを実現しようとして糾弾的に
なる人々を登場させたのです」
ジョージ・オーウェルが『1984年』で誇張して描いた社会。「現実に近いものを書きたい」と
「少しだけ誇張した」現実社会を創造して描いたという。セリーヌやプルーストといった
手の込んだ文体ではなくて、モーパッサンのような透明性のある、シンプルで明快な
文章を心がけているそうだ。そして、次から次へと繰り出される皮肉、哄笑。そして、
予想もつかなかった結末を迎える。
「できるだけ笑いを取り入れたい。ブラックユーモアは自分にとってとても重要な表現です」
「現代社会の矛盾を取り上げようとしています。現実を観察していても、日常生活の
一部になり、なかなかそのバカバカしさに気付かない。そこに光を当てた小説を書くことで、
こんな面白いことが起きているんだと示そうとしているのです」
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